最終更新:ID:lgwQ39oReA 2018年09月01日(土) 12:23:04履歴
ここは泥濘の新宿。
化け物が闊歩し、時空が歪み、環境が変質した新宿。
しかし、そのような異常事態でも、私たち一般市民には生活がある。
食事をし、交流をし、トイレに行き、床に就き――生きていかなければならない。
そう、食事。このような異常事態でも営業している食事処を探し、私は友人と共にランチを取っていた。
他愛もない会話。いつも通りの味。
異常な新宿における、数少ない日常に、私は束の間の癒しを感じていた。
しかし、やはりこの新宿は異常なのだと、次の瞬間思い知ることになる。
いつものように談笑していた友達が、私の方に近づいてきた。
当然受け入れる。だって、友達なんだから。
近づいて、近づいて、近づいて。そして、何の前触れもなく。
何の予備動作もなく。何の殺気もなく。
友達は、私の喉にフォークを突き立てた。
「えっ――」
何をされたのか分からなかった。何が起きたのかわからなかった。どうしてそうなったのか分からなかった。
わけもわからず、意味も分からず、私は自分の五体がバラバラになるのを感じた。
フォーク一本でどうやって、などという疑問には気が回らなかった。
ついさっきまで楽しくお話してたのに、どうして、という気持ちと。
ああ、死ぬんだ――という気持ちが、泥のように混ざり合って、私の頭を支配していた。
そしてその気持ちも、泥のように消えていき。
そこで私は意識を手放した。
ここは泥濘の新宿。化け物が闊歩する町。この魔境において、あらゆるものは信用できない。
親しい友人でさえ、次の瞬間には殺人鬼に変貌しているかもしれないのだから。
――と。私は目の前に転がる自分自身のバラバラ死体を見ながら、そう想起した。
自分の死体など見たくもないし、ましてや自分が殺される光景など思い出したくもないのだが、
さて。目の前に転がる死体は私で、今それを見ている私も私で。どちらが本当の私だろう。
ああ、そういえば私は森にも迷い込んだ気がする。森に迷い込んで、自殺した気がする。
着物姿の少女に出会った気がする。少女だと安心していたら、乱暴を受けた様な気もする。
竜に襲われたような、サメに食われたような、眠らされたような、少女かと思ったら怪物に食われたような、
血を吸われたような、スライムに呑まれたような、バイク乗りに首を切られたような、冷たい怪物に食われたような、
マスクの女に襲われたような、動く東京タワーに襲われたような、毒虫たちに集られたような。
雷に打たれたような。
とにかくいろんな記憶があり、とにかくいろんな死に方をしていた気がするが。
さて、どれが本当の私なのか。それも本当の私なのか。そもそも本当の私など居るのか。
ここは泥濘の新宿。化け物が闊歩する町。この魔境において、あらゆるものは信用できない。
それは自分自身でも例外ではなく。ふとした瞬間に、ふと死んだ瞬間に。
私自身が私自身と全く同じ別の私と入れ替わっていることも、またあり得てしまう。
私は私か、私は誰か。どこまでが私で、どこからが他人か。
私は私で、私の名前は私自身で。
そして、私の真名は――スワンプマン。
何度死んでも発生する、もう一人の自分自身 にして、私じゃない私自身 。
化け物が闊歩し、時空が歪み、環境が変質した新宿。
しかし、そのような異常事態でも、私たち一般市民には生活がある。
食事をし、交流をし、トイレに行き、床に就き――生きていかなければならない。
そう、食事。このような異常事態でも営業している食事処を探し、私は友人と共にランチを取っていた。
他愛もない会話。いつも通りの味。
異常な新宿における、数少ない日常に、私は束の間の癒しを感じていた。
しかし、やはりこの新宿は異常なのだと、次の瞬間思い知ることになる。
いつものように談笑していた友達が、私の方に近づいてきた。
当然受け入れる。だって、友達なんだから。
近づいて、近づいて、近づいて。そして、何の前触れもなく。
何の予備動作もなく。何の殺気もなく。
友達は、私の喉にフォークを突き立てた。
「えっ――」
何をされたのか分からなかった。何が起きたのかわからなかった。どうしてそうなったのか分からなかった。
わけもわからず、意味も分からず、私は自分の五体がバラバラになるのを感じた。
フォーク一本でどうやって、などという疑問には気が回らなかった。
ついさっきまで楽しくお話してたのに、どうして、という気持ちと。
ああ、死ぬんだ――という気持ちが、泥のように混ざり合って、私の頭を支配していた。
そしてその気持ちも、泥のように消えていき。
そこで私は意識を手放した。
ここは泥濘の新宿。化け物が闊歩する町。この魔境において、あらゆるものは信用できない。
親しい友人でさえ、次の瞬間には殺人鬼に変貌しているかもしれないのだから。
――と。私は目の前に転がる自分自身のバラバラ死体を見ながら、そう想起した。
自分の死体など見たくもないし、ましてや自分が殺される光景など思い出したくもないのだが、
さて。目の前に転がる死体は私で、今それを見ている私も私で。どちらが本当の私だろう。
ああ、そういえば私は森にも迷い込んだ気がする。森に迷い込んで、自殺した気がする。
着物姿の少女に出会った気がする。少女だと安心していたら、乱暴を受けた様な気もする。
竜に襲われたような、サメに食われたような、眠らされたような、少女かと思ったら怪物に食われたような、
血を吸われたような、スライムに呑まれたような、バイク乗りに首を切られたような、冷たい怪物に食われたような、
マスクの女に襲われたような、動く東京タワーに襲われたような、毒虫たちに集られたような。
雷に打たれたような。
とにかくいろんな記憶があり、とにかくいろんな死に方をしていた気がするが。
さて、どれが本当の私なのか。それも本当の私なのか。そもそも本当の私など居るのか。
ここは泥濘の新宿。化け物が闊歩する町。この魔境において、あらゆるものは信用できない。
それは自分自身でも例外ではなく。ふとした瞬間に、ふと死んだ瞬間に。
私自身が私自身と全く同じ別の私と入れ替わっていることも、またあり得てしまう。
私は私か、私は誰か。どこまでが私で、どこからが他人か。
私は私で、私の名前は私自身で。
そして、私の真名は――スワンプマン。
何度死んでも発生する、
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