ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

喪失帯。星の内海に沈み、緩やかに滅びを待つ世界のカケラ。
決して現世と交わらぬモノ。
しかし彼らはそこに呼び込まれた。それは夢でありながら、現実であった。
全てがねじれた世界において。彼らを導くのはさまざまのトランプ。
移動する先に立ち並び、這いずるのは。敗者。敗者。敗者。彼らは敗喪徒レムナント。この世界の住民であり、敗北の運命に縛られた者たち。

崩壊寸前の要塞にて。"陵辱"のレムナント、ファランゼムとの戦闘を避け、更なる頁へと移動した一行。
そこに現れた空間は、凄惨かつ奇妙な球戯場だった。

────結末




         終焉


破滅                  



    幕引

               最後




        


   敗北



絶滅








喪失


LAST CLOSING


いつか来たる終わり


**

3.死亡遊戯の古球戯場

たどり着いた先は地下空間。薄暗く、仄暗い。
ハヤニエのように串刺しにされた人型と、特徴的な建築。転がっている石のボール。
そう、ここは球戯場だった。しかしそれは、どうやら人の命を捧げるもののようで。
「何これ……。」
魔術の祖、アラディアとしては専門外の光景に、異様への感想を述べるしかなかった。
「さすがに野球とかサッカー場につくわけではなかったんだね。…生観戦、してみたかったな。」
最後は小声で。遙が残念そうに。
「ふむ…これは…マヤの建造物か…?」
バーサーカーのサーヴァント、ノーベルがその見識を以って分析する。
「古代マヤ文明では、球戯の敗者を生贄として捧げていた。そのような伝承がある。」
「球戯場。生贄にされた人たち。ここも先のアルタゲルスと同じように何かを再現した舞台だとすれば、そういうことかもしれんな。」
そう、締める。
「なるほど。マヤの球戯場。私も話に聞いたことがありますが、そんな凄惨なものだったとは。」
マギはノーベルの知識に驚く。彼女もあらゆる知識を蓄えてはいるが、それはまだまだ穴が多いと実感する。
「…生贄なんて、意味ないのに。人の命は、何かに捧げるためのものじゃない。」
「…流火。」
流火はかつて人の命を喰らう生き物、だった。命の保持を否定しようとした。死に様のみを求めようとした。
それを救った一人が、御門遙。今彼女の横に立つ、大切な友人。
彼女達の絆は、この世界でも途切れない。
「さて。」
マギが一言。検索の構えを取り、周囲を把握しようとした、その時だったーーーーーー

遺跡の上方から見下ろすように、15人の人影が姿を見せる。
「ぐわはははは! 新たな生贄が現れたか!」
仮面の男が豪快に笑う。
「我らが地下世界の地獄球戯の冴えは、未だ衰えを知らぬ!」
もう一人の男が、永遠に続くと豪語する。
「何が敗喪徒か、何が敗北の世界か! 我らに敗北などあるものか! 我らこそ大地の支配者!」
それに連れられし13体の怪物の面をつけた男たち。豪胆にも、世界そのものを否定する。
「生贄…球戯場…マヤ文明…ここはチチェン・イッツァか?」
ザイスティスはその言葉からノーベルの推察が確実なものだと理解する。しかし。
「行くぞ挑戦者! この合図を受け取るがよい! プレイ・ボール!」
石球が蹴り飛ばされる。
強制的に、死合は開始された。
「いきなり過ぎるでしょうが!審判がプレイボール言いなさいよ!」
それは試合を名乗りながら、ほとんど卑劣な奇襲だった。
この程度の攻撃なら容易に弾き返せるはずのアラディア。しかし不意をつかれ、迎撃に失敗してしまう。
「あわわ。ごめんみんな!そっち飛ばしちゃった!」
勢いは僅かに弱まるも、止まらない。唯のボールではないようだ。
「…!」
流火へと死球が向かう。虚空より剣が現れ、打ちかえそうとするも。
…石球は更なる変化を遂げた。収納された刃が展開され、軌道は変化し凶器へと変貌する。
刃と剣ががかちあい、またあらぬ方向へ飛んでしまう。その先は、サーヴァントを持たない遙。
「…遙!」
流火は思わず叫ぶ。間に合わない。
だが。これはあくまで球状の物体。…それなりに心得はあった。
「つまり…蹴鞠みたいなものということ…だよねっ!」
言って、刃の合間を縫い。蹴り飛ばしてきた男に向かって。正確に、お返しした。
「他の人が勢い弱めてくれなかったら流石に無傷ではいられなかっただろうし、ありがと。」
そう言って、にこりと。サーヴァントを連れていない、この場では最も非力な彼女だが。
その力強さは、本物だった。
「こういうの、男手に任せたいんだけどな。…まあ、適材適所だよね。」
ザイスティスの方をちらり。彼がどうもこの中では一番非力らしいことはなんとなくわかってきていた。
(観戦に徹していて良かった。)
彼も、悪びれもせずそう考えていたのは言うまでもない。

「ぐううわああああーー!!!」
ボールを返された男は、呆気なく爆発四散した。
「あっ、勢いよく蹴りすぎた。」
遙はバツが悪そうに…はあまりしていない。
「馬鹿な!? キクリスカックがやられただと!?」
「おのれ! 一旦撤退して立て直すぞ!」
そう言って、怪物たちは奥へ姿を消した。
「恐ろしい連中だね…皆は大丈夫?」
ふう。と息を吐き。遙は皆に語りかける。
「……う、うん。何とか。」
流石に友人といえど困惑する流火。
「あんたも大概恐ろし……いや、なんでもない。」
少し恐怖を感じたザイスティス。
「なかなか。人の可能性を見ました。」
興味深そうに言うマギ。
「あんなのを何度もされたら、サーヴァントのいない私含めてひとたまりもないよ。気を付けないとね。」
遙はそう言うが。
「一寸喰らったくらいだし、これくらいならどうとでも。」「……然しいきなり飛んできたのを蹴り返して殺害する、って…。」
そう呟くアラディア含め、一同が真に慄いたのは味方にいる存在かもしれない。
「事故!あれは事故だから!」
そう遙が弁明していると。
「…あれ、何か降ってきましたよ?」
セイヴァーが空から舞い降りるものに気づく。
ザイスティスが手に取る。それはトランプ、クラブのJだった。それだけでなく、文字が書かれていたのだが…
「地獄を踏破せしは武勇と知略なり、か。」
それをザイスティスが確認すると、その文字は消え去ってしまった。
「奥にはやはり。トランプと同種の魔力があります。他にもその道の途中に何かの存在を感じます。」
一息ついて、マギの検索が終わる。進むしか、ないようだ。
しかして注意せよ。此度の敵はマヤの地下世界に住むラワハル・シバルバー。悪辣にて卑劣な集団。そこには無数の罠が仕掛けられている。

**
【案山子の開会場】
部屋を進むと、石壁に囲まれた草原が広がる。壁画があり、そこからこの場所の用途が読み取れた。
ここは選手宣誓の場。正々堂々闘うことを誓い、互いに握手する場。そして中心にはシバルバーの王の1人を模した等身大の人形が置かれていた。
握手してくれ、と言わんばかりに。だが。
「ふむ。魔力を検索しましょうか。…周りには無数の魔力。逆にこの像は魔力が薄い。十中八九、罠ですね。」
「つまり、この像は偽物か。なら、ポポルヴフに倣えばこれに声をかけることが敗北を意味してしまうかもしれない。」
マギとザイスティスによって、その罠は看破されてしまった。
「…ここ、見取り図みたいなのがあるよ。」
罠を見抜いた後、遙と流火が像に近寄らないようにしながら探索していると、見取り図らしき壁画を発見した。
「これ、マヤ語?なのかな。読めないよ、読め…うーん…。」
遙は何故かそのニュアンスが理解できた。前世の記憶だろうか?そんなことを考えながら、読み進める。
「今いる場所は【案山子の開会場】。前の部屋は【回廊】。
その先の部屋は【情熱の控え室】。更に其の先は【苦難の聖火台】、最後に【決戦の球戯場】。…で、最後の部屋の奥に隠し部屋がある、かな。」
「すごいな…。なんでもできるのか。」
ザイスティスは思わず舌を巻く。
「読めるはずのない、とは言えません。言語を分析し解読したということでしょうか。素晴らしい能力です。」
マギが純粋に褒め称える。
「…遙、そんな特技があったんだね。」
友人の意外すぎる姿に驚きを隠せない流火。
「というより、体系は違うけれどこれ呪術的な模様とかがあるからさ。たぶん、こんな感じかなと思うだけだよ。
それじゃあ、球技場の奥に進んでみようか。もしかしたらまた何かあるかもしれないし。ね!」
誤魔化すように言って、強制的に皆を連れ出す。遙とマヤ文明の関係の真相は、闇の中である。

**

【情熱の控え室】
そこは古風な休憩室のようだ。
石の椅子と机、水源と水差し、器、軽食などが一通り揃っている。
壁画によると試合前の選手控え室らしい。
「これも南米の文化的な何かなのかな?」
マヤ文明には詳しくない、という素振りを見せる遙。
「さぁ……? あそこに罠が仕掛けられてるくらいだし、こんな怪しげなアレは通り過ぎるに私は一票」
先ほどより露骨な罠。アラディアはそう断じた。
「魔力が薄い。先ほどの石像と同じ意図を感じます。」
念のため、マギが魔力を探知する。
「…魔力的なものを感じないなら、トランプとかもなさそうだよね。」
流火もどうやら同意見のようで。
「賛成、正直僕らを罠にはめようって意図しか感じない。行こう。」
ザイスティスがそうまとめ、全てを無視して通り過ぎた。
…ちなみに椅子は焼けるように熱く、食事には毒が含まれているのは言うに及ばないだろう。

**

【苦難の聖火台】
階段を登り、眼下の闇の中に球戯場を見下ろすことができる高台へたどり着いた。
赤い羽毛のオウムが「イラッシャイマセ」と語りかけてきたが、よく見るとスピーカー付きの剥製であった。
ここにあるのは聖火台と、原始的な発火道具、燃料用らしき藁のようなものの備蓄など。
脇にある壁画と状況から、この聖火台に灯した火が球戯場の照明となることが読み取れる。
「誰かが火をつけ続けなければいけない仕組みのようですね。暗闇の中では一方的に蹂躙されてしまうでしょう。」
マギの解析。戦力を削る小賢しい策略の一つだった。
「正直何も思い浮かばないね。」
やっぱりマヤ人じゃないのかも、と肩をすくめる遙。
「フンアフプーとイシュバランケーによれば。彼らはオウムの羽を火に見せかけて誤魔化したそうだ。」
ザイスティスが、神話の内容を述べる。
「…ちょうど、赤い毛のオウムがいるね。」
流火は先程の剥製を思い出す。
「本当なら蛍がいれば、なおよかったんだけど。
ちょうどそこに剥製があるみたいだし、試してみる価値はあるんじゃないかな。」
「へえ……というか、そうね。影乙女たちに任せようかと思ったけれど、私が離れると消えてしまうから意味無かったわ。」
アラディアは言って、乙女に命じオウムの羽根を毟らせ聖火台に置かせる。すると、蛍がどこからか飛んできて、明かりの代わりになった。
「最悪、サーヴァントがいない私が燃やし続けることになると思ったけど、これならみんな進めそうだね。」
遙がほっと息をつく。
「まるで、試されているかのよう、ですね。」
マギは呟く。答えを用意された問いかけが、先の要塞からずっと続いているような気がしたから。

ホタルの背中にはトランプが張り付いていた。クラブの4。遙がそれを手にとる。
「このトランプ、もしかしたら持ってたら危ないかもしれないけど。そのデメリットは全部請け負うから。」
サーヴァントを持たない自分がデメリットを受け持つのが戦略的でしょう、と遙は告げる。その覚悟は強く、皆を納得させるものがあった。
「御苦労様。 じゃ、先に進みましょうか。」
アラディアは影乙女をねぎらう。そして、いよいよ決戦の地へ。古の球戯、敗戦への復讐。ラワハル・シバルバー達との死闘が始まる。

**

【決戦の球戯場】
一行は広大な球戯場へと踏み出した。
無人の観客席と、14人の敵選手が迎え入れる。
奥の壁、上方には石の輪が鎮座している。あれが本来のゴールなのだろう。
敵選手はゴールなど目にくれず、球戯場に入ってきた彼らめがけてボールをシュートする気のようだが。
「くくく、死ぬ準備はできたようだな。」
"球戯"のレムナント。そのリーダーの一角、ヴクブ・カメーが迎え入れる。
「死人が出てるのはそっちなんじゃが…。」
ノーベルは指摘するも。
「うるさい!ボールの錆となるがいいわ!」
彼らは聞く耳を持たない。
「人死にが出るなんてスポーツではない気がする…。」
遙はそう呟く。ボールの錆、なんて単語は初めて聞いた。
「プレイ・ボール!」
リーダーのもう一角、フン・カメーが宣言する。
そう、"球戯"のレムナント、ラワハル・シバルバー。彼らはマヤ神話において、卑劣な罠と反則的なプレイによって球戯を勝ち進めた存在。
しかし、彼らは所詮英雄に敗北する運命にある敵役だった。フンアフプーとイシュバランケーの双子。その勝利の神話は、シバルバーにとっては敗北の神話であった。
だから彼らはここにいる。負けているからここにいる。それでも負けを認められないから、戦うのだ。

「あぶないから眼鏡は外しておこう。」
御門遙が魔眼を開く。敵意を見極め戦闘を有利にする魔眼。両者臨戦態勢。
「死ねい!」
仮面の男が流火へ向けて球を放つ。刃が展開され、当たればひとたまりもない。しかし。
流火は、かつてヒトならざるものであった時期がある。そして彼女の周りにも、またヒトならざる力を持つ者が多く居た。
彼女の瞳は、視たものの悉くを覚え刻む。故に、医学に長けた彼女であれば。その体の動きを視て、その先を視通すことも、できるだろう。
「馬鹿な! よけただと!」
完全に、見切った。一度受けた攻撃を喰らうわけにはいかない。流火はこの球戯における人体の動きを完全に把握したと言ってよかった。
そして、手番は此方に移る。
「ぐわあああああ!!!」
唐突に、選手三人が断末魔を上げた。…女神アラディアの仕業である。
不意に、選手の前を黒猫が横切った。それに気を取られ、目を落としていると激しく心臓が痛み出す。
「あら、御免なさいね。 でも、よそ見はいけなくてよ?」
魔術のエキスパート。最早球戯のルールに則ってはいないが、それはおたがいさまである。
「シック! キクシック! キクレー!」
「一度に3人を屠るだと!? なんということだ!」
フン・カメー達が狼狽える。一度に3人など、想定外だ。ルール違反だ。
…散々罠を仕掛けておいて、言えたものではないが。
“幻想歩き”が続けて攻撃する。
ずるりと虚空から生えた腕が、ボールを剣で撃ち飛ばす。
俗に言う、デッドボールというヤツである。
「ぐえええええっ!!!」
ボールを受けた男たちはドカンと弾け飛ぶ。…また、3人減った。剣でボールを撃ち飛ばすなど、完全に火力過剰ということである。
「可哀想。」
全く心のこもっていない声で遙が呟く。
「なんだと! パタン! アハルメス! アハルトコブ!」
「くっ……! 臆すな! まだ数ではわしらが上回っている!」
名を呼ぶ声が空しく響く。『まだ』なんて言っている時点で、もう負けていると認めたようなものである。
「……なあ、今さらなんだが、この競技各チームのプレイヤー人数の上限4人じゃなかったか?」
ザイスティスが思い出したように呟くが。
「そうなんだ…」
心底意外そうにしかし少し呆れながら遙が反応する。
「シバルバーだから、仕方ない。」
「まあ。どう考えてもあちらからルールを逸脱してるので。こちらも遠慮なく。」
流火とマギの言う通りである。最初に15人がかりで襲った時点で4人のルールなど崩れている。
「まあ、球技というなら投擲しましょうか。」
言って、マギは『解析変成』を行う。空気中から炭素鋼の巨塊を生み出し、思い切り投げつけた。
…ちなみに蹴球なので、投げるのはルール通りではない…がどうでもいいことだろう。
「ぎゃああああああ!!!」
一気に3人を押しつぶす。逃げ場もないほど巨大だった。
「ねえ。このスポーツって、こんなに人が死ぬものなの?」
鋼の精神を持つ遙も流石に困惑が隠せない。
「死ぬもんだよ。」
ザイスティスの返答は、心なしか投げやりだった。
「恐ろしいスポーツなんだね。」
それに対する返しも、諦めた風だった。
「なんということだ! チャミアホロム! シキリパット! クチュマキック!」
「馬鹿な! 相手は素人のはず! 何故だ……何故負ける!?」
そんな分かりきったことを今更言うのだろうか。
「貴方達がルール無用の殺戮を持ち込んだからじゃないの? 普通に球技した方がまだ勝ち目あったわよ、きっと。」
「ほぼ乱戦状態で素人も何もあったもんじゃないしのう…。」
アラディアとノーベルの言う通り、これをいまだに球戯だと思っているのはシバルバー達だけである。
「もうスポーツでもなんでもないんだけどさ。」
諦めたように遙は呟き、逃げ惑うレムナントをナイフで刺し、ボールを奪う。
「とりあえずルール?通りにボールはゴールに投げ入れるね。」
…この場で一番ルールを守っているのは、彼女かもしれない。
「うげええええ!!!」
ナイフで刺されると、呆気なく崩れ落ちる。
「……これ結局投げるものなの?蹴るものなの?」
一応球戯のルールは知っておきたい、そんな遙だった。
「一応、手は使っちゃだめだったはず。」
一応、ザイスティスは教える。
「アハルプー! アハルガナー! チャミアバック! 死ぬな!」
「おのれおのれおのれえ! 負けるものか……負けるものかあ!」
そう怒りを露わにするが。会話は続き、まるで聞いていない。
「あっそれじゃあ最初の蹴り返しは正しかったんだ。でもさ。正しく蹴り返して死者が出るスポーツっておかしくない?」
「まあ、うん。これは正しいとかもうないしね。さて、俺の戦闘能力はゴミだ。だからまあ、ノーベル。任せた。あんた一応バーサーカーなんだから筋力はあるでしょ。」
「蹴ろうと投げようと、結果は変わりません。そもそもルールがなさすぎますね。」
「最初に不意打ちしてきた時点でもうダメよね。プレイボールって選手が言うもんじゃないったら。」
「…まあ、シバルバーだし。」
ルール無用、罠上等で挑んだ挙句蹴散らされていく男たちへの同情やらなんやらは、残念ながらあまり湧かなかった。
「儂科学者であって肉体派ではないんじゃがな、まあよいわ。消えい!」
ノーベルが最後の2人へ向けてボールを全力で蹴り飛ばす。
「があああああ!」
「おのれ生ける者……我ら……我らは……冥府の支配者なれば……。」
「命あるものになど……負けるわけが……わけが……ぐふっ。」
"球戯"のレムナントの亡骸はゴールへとシュートされ、壁ごと爆散した。
哀れというにはあまりにも同情の余地のない結末である。
策を弄し、結局は敗北する。『ポポル・ヴフ』の再演である。
敗者は再び敗者となる。当然のこと。しかしそれは。
一つ。怨嗟が溜まった。

破壊された壁の向こうには、ゴールと同じ意匠の門のようなものがあった。
トランプのスートのようなものが刻まれている。
スペードの9、ダイヤの4、ハートの3。その3つだった。
「さてスポーツ…スポーツ?は終わったけど。奥に何かあるらしいし見ておこうか。…トランプだね。」
スポーツとは言えないな、と遙は言って思った。
「……此処から飛べ、ってことなのかな?」
流火も、とりあえずさっきまでの混沌から現実に帰ってくる。
「うーん。平和の祭典みたいなスポーツがよかったなあ…。」
セイヴァーはなんとも血生臭いスポーツにショックを受けているようだ。
「一応祭典ではあるんだけどね、あのスポーツ。生贄の為の儀式的な意味で。」
ザイスティスがフォローにならないフォローをする。
「大江山か、図書館か。鬼は避けたいね。それじゃ、図書館行こうか?」
遙が提案する。鬼よりは、図書館の方が平和的に見える。それは間違いなかった。
「しかし、今のところ敵の攻撃は緩いね。俺らが上手く回避できているとみるか、油断を誘ってるとみるか…。ま、飛び込んでみない事にはわからないか。うん。行こう。」
「行こう。」
「図書館。興味深い。智を尊ぶ者としては、見逃せませんね。」
「図書館ね。面白い本はあるかしら。」
そうして意見は一致し。トランプを壁に押しつける。

**

白い光がまた全てを包み込む。
その白い光の中で、先程戦った相手の恨みの悲鳴が聞こえる。そして、それだけではなく。
かけていく少女の姿が見えた。

全員に。


「あの時の…。」
遙は驚く。だって、先程要塞からここに来た時は見えなかった。
「……あれか、最初に話していた少女ってのは。」
ザイスティスも驚きを隠せない。それは明確な変化だから。
「"愛された"のかもね。さっきの一件で。」
アラディアも、警戒を露わにする。
白い光が収まると、目の前にはまた別の光景が広がった。
:その白い光の収まった先は、ただ1つの建物がたたずむだけの場所だった。
ここはどこか────。そう考えながら建物を観察していると、途端に気温が下がってくる。
「…寒い。」
流火が白い息を吐く。
みるみるうちに気温が下がり、吹雪へと天候が変わる。
「ええ。これは生身の人間には危険だと判断します。天候も荒れ、人の生きていける場所ではありません。速やかに避難しましょう。」
マギはそう他人事のような忠告で促し。一行は吹雪から逃れるために目の前の建物へと駆けこんだ。

図書館。それは叡智の殿堂。人の歴史と文化を積み重ねたもの。全てに価値があると知らしめるためのもの。しかし本当にそうなのか?憎くてたまらないものもあるのではないか?消し去りたい記録もあるのではないか?
そして忘れるな。此度の敗者は敵として滅したことを。敗者を再び敗者たらしめたことを。救えなかったことを。呪われたことを。

深淵界忘却譚 ゲヘナ。そしてそこに縛られし敗喪徒レムナント。己の無力故に敗北した。己の無力故に嘆いた。己の無力故に許せなかった。そう、彼らは無力な存在たち。だから、蹴散らすのは簡単だ。…救うのは、困難だ。

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