ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

「………………………」
ガチャ  ガチャン  ガチャ ガチャ

深い、深い闇に包まれた地下鉄の線路の上を、漆黒の鎧を纏った騎士がその節々を軋ませながら徘徊する。
泥新宿にて語られし、『地下鉄歩き』あるいは『トーキョークーロンのアリアドネの糸』。
泥新宿のセイバー(2)は、その日も変わらずに線路の上を徘徊していた。

「………………………」
ガチャン  ガチャン ガチャガチャ   ガチャ
ガチャン

「………………………………………………」
その歩みが、止まった。
ゆっくりと兜を回し、その奥に潜む青の瞳が背後の虚空を睨む。


   タン           タタン


「………………………」
ズルリ
その背に背負われていた身の丈ほどの長剣が、大上段に振り上げられた。
光差さぬ地下の暗闇を、青い清廉なる光が淡く煙る。

 ガタン   ガタン  ダタン ダタンダタンガタガタガタン

それに対し彼方より来たるのは、赤のヘッドライト。
おお、見覚えがある。あの車体には見覚えがある。
それは、ある意味では自然な物
セイバーよりも大きく、早く、線路を噛んで疾走する。
おお、しかし、しかし
都営地下鉄新宿線、東京都交通局10-300形電車
その銀と黄緑に輝く車体は今や真逆。金と緋のまだらに彩られ、豪なる輝きの中に襲い来る。

そしてその屋根に鎮座する、猛き獣の姿。

「キャリイイイイィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!」
「■■■■■■■■ッ!!!!」

深い地下の洞穴にて、何より眩き赤と青の閃光をしかし、目撃したものは当人以外には存在しなかった。





「………………………」
ガタン  ガタン  ガタン  ガタン  ガタン

するり、セイバーは再び構えを備える。
あの刹那、確かに去来する正体不明の電車に対し振り下ろした宝具の一撃。
その手ごたえは無く、今自分は疾走する電車の車内にただ一人。
不条理、不合理。なれどサーヴァントの、泥新宿の闘争なれば、これも想定の内の一つ。
なれば、己の為すべき事に変わりなく。この存在に、邪悪なる妄念に、終末を。

『ザ…ザーーーーーーザザッー美事ーーーだ。ーーーーーセイバー。』
かすれたノイズと共に、車内に音声が鳴り響いた。
口調は尊大にして、高圧。

『そのーー一撃。大したもんだ。誇ってもいい。俺がーーーー認めてやろう。人にしてはーーーー中々だとなァ!−−』
「………………………」
『無口なのはーーーー気に食わねぇーーーが、許そう。−−−−その武勇に免じーーーーー』
『貴様にはこの俺からーーーー進むべき道を提示してやる。ーーーーーー選択の権利すら与えようーーーーー』

『一つ。−−−−−−俺のーーーーー手下と成れ。−−−貴様には安寧とーーーー食事と住家を保証しようーーー自由もだ。−−−無論俺の命令にはーー絶対服従だが。』
『賢明ならばーーーこれを選べ。−−−−−貴様を導いてやる。−−−我が王道を、いや神道をーーーーー辿る名誉を授けよう。−−』



「………………………」
くるり、向き直り、セイバーは乗車ドアに迷う事無く剣を振るう。
劈く剣戟と共に、ドアには袈裟懸けに巨大な痕が付けられる。
しかし、破れはしない。真名開かされぬとはいえ、かの輝かしき剣とセイバーという使い手を以てしても


『ーーーああーーそうだ。その道は全くの愚者の道でありーーーーーーー俺も期待した道だ。ますます気に入ったーーー』
『ならばーーー降りてみろセイバー。この電車からーーーー俺の身体から。』
『さもなくばーーーーーー今度はマグロではなくーーーーーーー』




『次はーーーー活け造りだ』




ざわり  ざわり ざわり     ざわりざわり

いたるところからその身を表すは、火眼金睛の裸の大猿。
玩具の様にフォークやチェーンソーを持つ者も交え、その数を増やし続ける。



「………………………」
ギリギリギリギリと、漆黒の騎士の構えた剣が背後に引き絞られ、その刀身に再び青い光を宿す。




『掛れーーーーーー身外身共』
「■■■■■■■■ッ!!!!」


泥新宿地下を、猛き光が覆い尽くした











ズ ズドドウウゥゥゥゥ  …ンン

「………………地下かな?ジョン」
「……だろうな。揺れてるからな」

トーキョークーロン構内上層部、資材置き場一角。
太ったハムスターをそのまま擬人化した様な男、トンプソンの問いに、相棒の魔術師ジョンこと俺は相槌を返した。

「あれか?下水道にいるって噂のバケモノが暴れているのかな?」
「もしそうなら今夜のションベンは一人で行けトンプソン。物資調達をサボった罰で飲料水も減らされるだろうし手早く済むだろ」
「なんだよ、ちょっと気にするぐらい良いだろ?ジョンこそ長いことこんなとこに居すぎたせいで感覚が鈍ってるんじゃねぇか?」
「鈍りもする。週に一度は死にかけて、五日に一度はブッ飛ばされて、かれこれ三日は飯を食ってねぇんだからな」

うつろな目で錆びたラックからほこりまみれの段ボールを引きずり出し、荒々しく開封する。
ペット用のおもちゃ、哲学書のセット、ウナギゼリーのカンヅメ。ゴミだ。

「一獲千金を夢見てはるばるジャパンまで来たってのに、ここのところ乞食のコソ泥しかやってねぇぜ?わずか三代でここまで家名を貶めちまうとは思わなかった」
「お前んとこは魔術師よりもマッサージ業の方が主業だろ。ここじゃそのナニをこする技術も持ち腐れだがな」
「怒る気力もねぇよクソが」

ブアアァァァァァーーーー  ガタ  ガタガタ ガタ  ガタガタガタ

またしても地下から奇妙な音と振動が響き、すぐさまどこかへ消え去った。
電車の発信音にも聞こえたそれに、一瞬脱出のスペルを思い浮かべ、すぐさま消し去る。二階から一階に降りる事すらままならねぇこのトーキョークーロンで、消え去っちまった音だけを頼りに追跡できるものか。

代わりに思い浮かんだのはStarvation。日本語では餓死だったか。出口なんかよりもよっぽど近いところに、そのゴールはぽっかりと口を開けている。
なぜこんな状況でトンプソンのアホは未だにブクブク太れているのだろう。右手の一本くらい差し出してくれりゃあちょうどいいダイエットだろうに。
そんな目で睨んでいる俺の視線に気づいてか否か、トンプソンはお得意の与太話を始めた。

「そういやよ、ジョン。ドリームランドの噂を知っているか?」
「…ああ。今夜の夕飯と同じくらいには知ってるよ」
「やっぱり知らねぇか。なんでもよ、この泥新宿には地上でも地下でもねぇ秘密裏に隔離された空間があってよ、何らかの条件を満たすとそこに行けるらしいんだよ。」
「ほお、なんだその条件ってのは。自分の肘を舐める事か?」
「いちいちまぜっかえすなよ。なんでも新宿のいたるところに『案内人』が隠れていてよ、そいつを見つけることが条件らしい。そんでドリームランドでは着てる服とかも変わっちまってよ、ヘンテコな森だの山だのがそこら中にある、ここよりもイカレた場所らしい」
「アホくせぇ。地獄を下るだけじゃねぇか」
「いや、良いとこらしいんだよ。入るのに多少のカネはいるが、中では面白おかしく過ごせるんだとさ」
「んな金あったらとっくにメシを買ってるさ」
「着ている服でも良いらしい」
「そりゃいい、素っ裸の無課金ユーザーってか?ヒヒ」

自分で言ったジョークのあまりのくだらなさに思わず笑ってしまう。
見ればトンプソンも太った顔を更に膨らまして笑いをこらえている。やったぜ。

「ヒ、ヒヒ、なんだよドリームランドもせちがれぇなぁオイ、ヒヒヒ」
「ヒヒ、最初にみぐるみ剥がされちまえばなんと無料で遊べちまうんだ!ヒヒヒヒッ!!」
「「ギャーッㇵっハッハハハハハハ!!!!」」

いよいよ栄養失調が脳にキたのか、二人で腹を抱えて床を転げまわる。埃でむせてゲホゲホせき込み、また爆笑しちまう。
抱腹死なら餓死よりは多少ましかもしれねぇ。よそから見れば史上最低にくだらねぇ死に様だろうが。

見ろ、ラックの下に隠れていたネズミも俺たちを見て目をまあるく…
………………

「メシだトンプソン!!!捕まえろォォォッ!!!!!」
「ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!??!!!」

瞬間、トンプソンの巨体がラックの隙間にみっちりと押し込まれる。
コイツの肉体操作魔術は何度見ても圧巻の大道芸だ。魔術師よりダウンタウンでシルクハットをかぶっている方がなんぼか儲かっただろう。

「やったか!捕まえただろうなトンプソン!?」
「ばっちりだぜ!!見えねぇけどこの両手でしっかりと………」

唐突な沈黙。モチめいて突き出されたトンプソンの丸々とした下半身に、俺は瞬きを二回ほど待ってから声をかけた。

「どうした?噛まれたか」
「……ジョン、なんか変だ。このネズミ、なんか手触りがおかしい」
「オイオイ潰しちまったのか?」
「イヤ、なんつうかこう、やけに耳が大きいというか…」
「Ha-ha!」
「………あ?」

「ギャァァ!!」
突如、すっとんきょうな悲鳴と共にトンプソンの上半身がぶりゅんと這い出てきた。
「おいてめえ!手にネズミを持ってねぇじゃねぇか!!!逃がしやがったなトンマ野郎!!」
「ち、ちげぇ!!!ジョン、あのネズミしゃべりやがったんだ!!確かに俺に流暢な英語で「Oh,boy!」って!!」

わたわたと弁明するトンプソンの胸ぐらをつかみ上げ、思いつく限りの罵詈雑言を浴びせようとした時だ。

「フーンフーフーンフーフンフンフン↑」
「……………」

鼻歌が、聞こえた。
甲高いトーンで流れる、聞き覚えのある歌が。

「フーンフーフンフーフッフフッフフン↑」
「………お前じゃ、ねぇよなトンプソン」
「お前でもないよな、ジョン」

「「「フーンフー(フッフフー↑)フッンフー(フッフフー↑)」」」
「増えたよ、ジョン」
「……耳がデカいネズミっつったよな、トンプソン」

「「「「「フフッフフッフフッフフッフフンッ↑(フ フ フ↑)」」」」」
「なあ、なんかとてもヤバいんじゃないかジョン!!」
「ものすごくヤバいぞ!アメリカ人なら誰だってヤバいと思う!!!」

嗚呼、嗚呼、しかし遅すぎた。俺たち二人は確かに感覚が鈍っていて、この泥新宿という地において逃走という判断を下すのがあまりに遅すぎたのだ。
嗚呼、嗚呼、見よ、見よ
ラックの下から
天井のパイプから
開封したばかりの段ボールから
廊下に面した窓から
ウナギゼリーの中から

あまりにも印象的な、丸い耳と楕円の鼻の
クソッタレの赤白ストライプのズボンを履いた
あのネズミが


「「「「「「「ハハッ!!オメデトウ!!!隠レ泥新宿ノキャスターヲヨク見ツケタネ!!!」」」」」」」
                                                        「「「「「「「オ祝イニ!!!」」」」」」」
「「「「「「「君タチヲ!!!」」」」」」」


「「「「「「「「「「「「「「「泥ズニーランドニ招待スルヨ!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」




「「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!????!!」」









ここは魔都、泥新宿。今宵、二人の男が消息を絶った。
しかしそのようなことを気に掛ける者は無く、街は訪れぬ朝を待つことなく輝き続ける。
地下鉄内で響いた轟音の正体を知る者は無い。ただ相も変わらず『地下鉄歩きの黒騎士』は地下鉄道を徘徊し続け、精神を病む者、吸い込まれる様に地下鉄のホームに吸い込まれて行く者が急増しただけだ。

街は変わらずカップの中のミルクティーの様に廻り続け、その混沌を深めていく。
街は何も変わらない。

この街で夢など見るものではないと
幾人かが改めて思い知った以外には

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