梅田迷宮地下88階層にて
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nevadakagemiya 2019年04月18日(木) 01:59:17履歴
──────梅田迷宮仮称地下87層。
下層へと続く通路の前に焚き火が焚かれていた。
その前には座り込んだ黒い犬と折り畳んだ携帯椅子に座ったバンダナを巻き、ジャケットを着込んだ男。
背負った背嚢には大量の荷物、旧時代の遺物や発掘品、巣食っていた魔術師から奪った礼装などを詰め込んでいた。
頭に巻いたバンダナを巻き直すと焚き火の周りに置いた串に刺した肉、撃破したキメラから剥ぎ取った肉を焼いたものを掴むと、一息に食らいついた。
キメラ肉、ヤギの部分は筋が多く、多少固いが食べられないことはない。 むしろこの手の肉では上等な方だ。
と、そこで男、水木トウマは自分に向けられた視線に気付いた。
「……食うか？」
答えは分かっているが聞いてみる。
「食べるわけ無いでしょ」
聞いた先、目の前の座り込んだ黒犬のアサシン、ケルベロスは呆れたような声で言った。
犬の表情は分かりにくいが、人間だったら多分すごい顔をしているに違いない。
「……前々から言っておきたかったんだけど」
「何だ？」
こちらを睨みつけながらすくっと立ち上がるケルベロス。
「私の身内、兄弟にキマイラがいるって知ってる？ 眼の前で兄弟に似た存在を解体されて食われたりするのを見てどうも思わないと思ってる訳？ 人の心がないの？ 無神経なの？ バカなの？」
「……だってどうも思ってないだろ、お前」
いい加減付き合いも長い、いつもの毒舌だと流せる程度にはお互いを理解している。
「当たり前じゃない。 魔術師が作り出したような合成生物と仮にも神の血、海神オケアノスと地母神ガイアの孫であり、魔獣の王テューポーンの血を引く由緒正しい血筋を一緒にしないでくれる？」
「ああ、そうですかー」
ふふん、と鼻高々にするケルベロスを無視して手製の地図を見る。
こいつは暇つぶしにこっちをからかって遊びたいだけだ。
（地上への帰還を考えると猶予は3日……いや、休養期間も含めると2日ってとこか)
都市間対抗擬似聖杯戦争、前哨戦が終わり都市戦争が始まるまで既に一週間を切っている。
今回はボス達、アルスくんやイブキくんに無理を言って局所戦を欠席してでの探索だ。
流石に本戦である都市戦争の開催日までに顔を出さない訳にはいかない。
俺たちがいなくてもなんとかなるだろうが、アリスの負担も増えるだろうしな。
後で恨み言を言われることは望むところではない。
「……さて、行くか」
立ち上がると腰のホルスターからG-MEDを取り出し、空気中の水分を集め薪を消火する。
ケルベロスは体を振ると前後に伸びをしていつでも動けるようにしていた。
──────梅田迷宮仮称地下88層。
「…………壁？」
下層への通路を下り、88層にたどり着いた俺達が見たのは土壁とどうぞここは無視して先に進んでくださいとでも言わんばかりの次の階層へと行く通路だった。
「あからさまねぇ。 どうするの、先に行く？」
大きな欠伸をしたケルベロスは首を振るとこちらに問いかけてきた。
確かにここまであからさまだと無視した方がいい気すらしてくる。
……とは言え、ここまでアレだと逆に探究心がふつふつと燃え上がってくる。
「一応開けられる隠し通路があるか探して、ないなら諦めて下に行く」
「りょーかい」
ケルベロスは匂いを嗅ぎ、スキル気配探知(嗅覚)を使いながら、壁沿いを歩いていく。
「ここが一番匂いが濃いわ」
「よし」
G-MEDを引き抜き、再び空気中の水分を集め、水滴を扉があると思われる壁へと張り付けた。
目を瞑り、魔術の行使に集中する。
意識の一部を水へと送り、水を操り、壁でありながら壁でない場所を探す。
通路があるということはどうしても壁に僅かでも隙間が出来る。
自由に形を変える液体、水或いは気体、水蒸気ならば僅かな隙間でも入り込め、何があるかを探ることが出来る。
「……あった」
土壁の中にただの土壁には存在しない筈の明らかな異物、金属部品……シリンダーを見つけた。
G-MEDを構えると、シリンダーの位置に向け、磁力操作魔術を起動させる。
やがて、土壁の一部が唸り音を上げ、徐々に左右へと開いていった。
「Jackpot！」
「お見事、さてこの先になにがあるかしらね」
指を鳴らすとケルベロスが前に出る。
ケルベロスの言葉で喜んでいる場合ではなかった、おそらくはこの先は魔術師の工房、そこに土足で入り込もうとする自分たちを許すお人好しがいるとは思えない。
「そうだな、罠があることを前提に行こう……っ！」
一歩、土壁の内側に足を踏み入れた瞬間、猛烈な違和感に襲われ、一瞬立ちくらみを起こす。
「ちょっと！ 大丈夫なの!?」
「……悪い、大丈夫だ」
珍しく慌てたケルベロスの声に深呼吸し、平静を取り戻す。
一応ケルベロスのスキルと磁気探査で罠がないのは確認したが迂闊に中に入ったのは失敗だったかもしれない。
「……なにこれ、駅？」
「魔術で空間圧縮して取り込んでやがるな、感じからして旧大阪駅辺りか？」
土壁の内部の中にあったのは魔術師の工房とは思えない、近代的な設備。
改札や売店、トイレに屋根まであるなんとも不可思議な光景だった。
と入っても破損している箇所などもあり、整備はされていないようだ。
「旧大阪駅をそのまま利用した……？」
「それにしても理由がわからん……」
話しながら、しかし周囲を警戒しながら先に進ん末に大阪駅のホームにたどり着いた。
「妙だな。 この線路、埃が積もってねぇ。 それどころかついさっき使ったような感じだ」
線路に降り、線路のレールを触るがそこは他の場所と違い、今まで使っていたかのような真新しさがあった。
念のために電流を走らせ、探知を行う。
「……電流が帰ってこねぇ、なんかあるな」
「トウマ、後ろ！」
立ち上がった瞬間、ケルベロスの声が耳に入り、ホームへと飛び退く。
振り向いたトウマの目に写ったのは既に走って居ない筈の旧時代の電車だった。
「あぶねぇ！ なんで列車が走ってんだ!?」
「人の家に入り込んで、危ないだのなんでだの騒がしい……恥というものはないの？」
息を荒げ、思わず叫んだトウマの前にそれは現れた。
一見老婦人のような声と気配だが、その姿はドレスを着た幼い少女だった。
「そりゃ悪かったな。 ところで俺たちは土地の地権者に頼まれてここらを調査してるんだが、あんた正式に契約してこの土地使ってるのか？」
「はぁー……地権者ねぇ？ 国鉄？ それとも阪急？」
思わずため息が出た。
分かってはいたが、こりゃ曲者だ。
戦前からの魔術師……世界再編を経て、今に至っても廃業せずに穴蔵に籠もり魔術師を、根源への道の探求を続けている奴が曲者でない筈がないのだが。
「どっちももうねぇよ。 しかも国鉄とか歳隠す気ねぇな、婆さん」
「あら、今はJRだったかしら？ それにしても失礼ね、こんな幼い子に相手に婆さんなんて！」
腕を組み、プンスカと怒った様子を見せる魔術師。
親父や兄貴にもやられたことがある。 これはこちらを欺き、隙を見せるか『試して』いる。
「あんたの気配で見掛け通りの年齢で無いことを見抜けなかったら、そいつはモグリもいいとこだ」
俺の言葉で目の前の少女、魔術師の表情が変わる。
ニコニコとしたどこか作り物じみた笑みから目を細めてこちらを値踏みする魔術師のそれへと。
「ふーん、中に入ってきたことも含めてそれなりの知識と実力はあるみたいね、若い魔術師さん」
俺の足元から頭の天辺まで舐めるように見ると、組んだ腕を下ろした。
「……訂正しとくぜ、俺は根源には興味が無いから魔術師じゃない。 魔術使いだ。 ……あんたは違うんだろう？ 魔術師」
「なら魔術師の工房に土足で踏み込んだらどうなるか分かっているんでしょう、魔術使い！」
瞬間、魔術師の雰囲気と魔力の質が変わった。
全身から殺気と魔力をこちらへと向けてくる。
だが、まだ本気じゃない。 これならどうにか凌いで逃げ出せる。
『やっぱりこうなったわね……』
『問答無用で殺しに来ない分、まだ多少話が出来るだけマシだ。ちょっと試したいことがある、合図がするまで攻撃するなよ』
『はいはい、分かりましたよ。 マスター』
念話で話しかけて来ながらもケルベロスは気配遮断で魔術師の後方へと回り込もうとしていた。
俺はわざと大袈裟な動作でホルスターからG-MEDを引き抜くと、いくつかの防御魔術を行使する準備をする。
「……なにそれ、銃？ 貴方、魔術師なのに銃使うの？」
俺のG-MEDを目にした瞬間、魔術師の殺気がわずかに薄れ、興味深そうな目でG-MEDを見た。
思った通り興味を持ってくれたようだ。
穴蔵に籠もっているタイプの魔術師は時計塔で言う賢者タイプ、所謂自己探究型だが、同時に煮詰まり兼ねない自分の研究に新しい風を吹き込んでくれるものを求めている場合がある。
今回は見事に予想が当たった、これなら交渉に……
「へぇ……魔術書と杖を電子機器をベースに融合させてる礼装？ 興味深いわね、貴方を倒してからじっくり研究させてもらうわ」
持ち込めなかった。
向こうの解析能力の高さを甘く見ていた。
先程より目を輝かせ、こちらを倒してあの奇妙な礼装を奪ってやるとやる気が増した感すらある。
『トンマ。 藪蛇って知ってる？』
心底バカにしたようなケルベロスの念話、こちらをトンマと呼ぶ時は俺がやらかしたか揚げ足を取れる時だ。
『お前の尻尾？』
『はっ……勝手に仕掛けるわ』
思わず苦しい冗談を返すしか無い。
だが、その冗談も鼻で笑われ、ケルベロスは戦闘態勢に入った。
このやるせなさは戦闘に向けるしか無かった。
「行きなさい！」
ガンドのような指向性を持たせた魔力を放つ魔術師。
小手調べと行ったところか。
「疾っ！」
G-MEDに魔力を注ぎ、予め準備していた電磁結界を起動することで魔力を防ぐとG-MED下部のバレルマガジンを装填。
魔力を磁力へと変換し、コイルガンを撃ち返した。
「ふぅん、陰陽師系のアレンジ？ 戦闘もそれなりにこなせるのね」
そう言うと魔術師は左手を薙ぎ払うように振るう。
左手から発生した衝撃波は魔力を纏った弾丸を一振りではたき落としてみせた。
……化け物じみてる。
理屈的にはサーヴァントの魔力放出を魔術師の魔力と出力でやってるわけだが。
俺が真似しても出力が足りず弾丸の軌道を若干変える程度にしか出来ないだろう。
そもそも恐ろしくてやりたくもないが。
「貰った！」
魔術師の意識が俺に集中している状況を好機と見たのか、気配遮断を解除したケルベロスは瞬時に巨大化、その背に武装が装着された。
躊躇いなくその武装のメインウェポン283�佶い鮗�をつんざく轟音と共に魔術師へ放つアサシン。
毎回思うがアサシンの武器じゃねぇなアレ。
「へぇ、面白いサーヴァントね！」
瞬時に振り向いた魔術師は今度は開いた右手を砲弾へと掲げる。
だが、サーヴァントの神秘を帯びた砲弾が魔術師の防御魔術で防げるものか。
しかし魔術師は防ぐために右手を掲げたわけではなかった。
掌を握り込むと中指と人差し指だけを砲弾へと向け、ゆっくりと折り畳むと親指で弾き、指を鳴らした。
「砲弾が!?」
（体が、動きが鈍い！）
初速910m/sの砲弾の動きは次第に遅くなっていき、やがて完全に停止した。
動こうにも体がまるで重りを付けられたかのように鈍く、身動きが取りづらい。
魔術師はこちらを一瞥するとつかつかと空中に静止した砲弾に近づく。
右手でノックするように砲弾を叩くと、砲弾は鎖から解き放たれた犬のようにあらぬ方向へと飛び出していった。
「くっ……まさか、時間操作魔術か!? 封印指定級じゃねぇか！」
体に自由が戻る。
人の身であれほど時間操作に長けているのなら旧世界であれば時計塔に執行者を差し向けられていたであろう事は間違いない。
魔術師はこちらの驚愕が面白くてたまらないのか、満面の笑みを見せている。
「その割には全く消耗してないし反動も受けてないみたいだけど？」
ケルベロスの言葉に思考を巡らせる。
外部魔術タンクや単に魔力量が尋常ではない？
それでは世界の修正力により時間の誤差を補おうとする反動を免れない。
「いくら強大な魔力を持ってても世界の修正力による反動は免れない……固有結界か」
答えは一つ。
現実世界を心の在り方で塗りつぶす魔術の最奥。固有結界。
固有結界であれば世界をだまくらかし、世界の修正力を無視できる。
固有結界が維持されている間であれば。
「土壁の内部が工房にして固有結界ってとこ？ どうやって延々と維持してるのよ」
「……大阪環状線」
「はぁ？ 大阪環状線がどうしたのよ？」
魔術には疎いケルベロスの疑問から推察が導き出される。
「へぇ？ それなりに出来るとは思ったけど解析もそれなりに行けるのね。 まぁ、厳密に言えば固有結界じゃないけれど正解としておくわ」
とそこでそれまで沈黙を保っていた魔術師は感心したように声を上げた。
こちらの回答にうんうんと満足そうに頷くその様は生徒を見る教師のようにも思える。
「あんた大阪環状線の縮小版か何かを工房に持ち込んで、術式を刻んだ列車を延々回して固有結界内に魔力を満たしてやがるのか？ そりゃ線路に走らせた電流が帰ってこないはずだ、俺の魔術も食いやがったな！」
反発心から思わず声を荒げるも、魔術師は逆に頬に手を額に手を当てなにか考え込んでいる。
「……それに関しては半分正解ってとこかしら。 それと婆さんだのあんただのは止めなさい。 そうね、残響時間 とでも呼んで頂戴」
「昔話をしましょうか、もう十年以上前の話よ。 私の古い知り合いに山手線と輪廻の蛇との親和性を声高に主張する魔術師がいたの」
「割と古い魔術師の家出身なのにオカルトが大好きでね、よく面白い話をしていたわ。……本人は至って真面目だったみたいだけど」
「まぁ何らかの実験をしようとして東京のホテルで爆死したのだけどね。 ここにある私のサーヴァントは彼の思想の模倣、最も目的はまるっきり別物だけれど」
（そう、これは呼び水に過ぎない。 私の目的は時計塔で手に入れた情報、かつてアメリカ西部に存在し聖杯戦争まで起きた『もの』を再びこちらに呼び起こすための……）
「で、これからこの魔力使って根源にでも行くつもりか？」
俺の言葉に頷くでもなく首を振るでもなく、口元に笑みを浮かべるのを俺は見逃さなかった。
……なにか別の目的がある？
「まぁそんなところね、よく出来ました……じゃ、さようなら」
「さよなら？ アサs……ぐっ！」
残響時間 の言葉に首を傾げた。 それと同時に体が引っ張られる。
磁力探知で引っ張られている場所を探知……迷宮の入り口か！
ケルベロスの方を見たがケルベロスも引っ張られないように踏ん張るのが精一杯のようだ。
「貴方の愚直さと少しは話し合おうとした知性に免じて今回は見逃してあげる」
「そうそう、ここの地権者さんにも伝えて頂戴。 貴方達に迷惑をかけるつもりはないから邪魔しないでって、工房内に入らないならここのフロアは好きにしてもいいわ。 貴方ももう来ないでね」
残響時間 はこちらの無駄な努力を見ながらため息を付き、先程までとは違う穏やかな諭すような口調で話しかける。
なんとか体が持っていかれないように踏ん張るのが、おそらくは無駄だ。
これは時間操作魔術の一種だ。
多分世界の修正力をこちらに押し付け、きっと掛けられた側を未来位置か過去の位置へと強制的に移動させるとかそんな感じの……あぁ畜生！思考がまとまらん！
「くそっ！ 覚えとけよ、ババア！」
なんとか捨て台詞を吐くのがやっとだった。
──────梅田迷宮表層入り口
超大型の掃除機を思わせる音が周囲に響く。
入口付近に人がいれば、悲鳴じみた一人と一匹の叫び声が段々と近づいてくるのがわかっただろう。
やがて入り口から飛び出たそれらは派手な音とともに地面に打ち付けられた。
「くそっ！ アサシン！無事か！」
迷宮入り口からまさに吐き捨てられるように飛び出た俺は尻を強く打ち付けた。
激痛に思わず尻を押さえながら相棒であるアサシンを探す。
「なんとかね……あぁ、ひどい目に合ったわ」
仰向けに転がっていたケルベロスはその場でぐるりと半回転すると全身を震わせ、体についた土埃を払った。
「全くだ、回収した荷物はあるか」
自分と相棒の無事を確認した俺は、背嚢を下ろし中身が無事であることを確認する。
せめて回収したものでも無事じゃなきゃなにしに88層まで降りたんだって話だ。
一息つき、周囲を見渡すと遠くから駆け寄ってくる人影が見えた。
「刀根ちゃんじゃねぇか……ああ、騒がしいから様子を見に来たのか？」
「派手な音したものね」
やれやれまたなんか言われるなと肩を落とした俺を目にしてケルベロスもため息をつく。
「あんたら！」
「どうもただいま……今回はいろいろと都合が、でも割と収穫が」
開口一番怒鳴られた。
気まずさから思わず目をそらして言い訳じみたことを述べる。
「今まで何やってたんや！ 『帰還予定からもう一週間過ぎて』都市戦争も始まってるんやで！」
だが、刀根ちゃんもとい棟梁の言葉は説教ではなく、驚愕の事実だった。
「は……？ 一週間？」
思わずケルベロスと目を見合わせる。
理解できない、88層からここまで移動した体感時間は精々20分。
上に向かって綱なしバンジージャンプするような地獄の20分だった。……くそったれ！
それが10日以上過ぎている!? どうなってる。
念の為に時計を見ると、たしかに今の日付は都市戦争開始から一週間、88層を追い出されてから10日が過ぎていた。
「や り や が っ た な ！ あ ん の バ バ ア！！！！！」
なんとか恨み節を叫ぶのがやっとだった。
──────梅田迷宮仮称地下88層。
「やれやれ……あの子達はこれに懲りてもう来ないでしょう。 さて、実験を続けましょうか、ライダー？」
残響時間 と名乗った魔術師はホームの待合ベンチに腰掛け、ため息をついた。
延々と周囲を周回する列車に話しかけると列車、彼女のサーヴァント、ライダーはサイレンじみた鳴き声をあげる。
「根源へ辿り着くための前準備、未来確定装置『聖櫃』を呼び出すための実験をね……」
to be continued..............？
Next......キタとミナミと西
下層へと続く通路の前に焚き火が焚かれていた。
その前には座り込んだ黒い犬と折り畳んだ携帯椅子に座ったバンダナを巻き、ジャケットを着込んだ男。
背負った背嚢には大量の荷物、旧時代の遺物や発掘品、巣食っていた魔術師から奪った礼装などを詰め込んでいた。
頭に巻いたバンダナを巻き直すと焚き火の周りに置いた串に刺した肉、撃破したキメラから剥ぎ取った肉を焼いたものを掴むと、一息に食らいついた。
キメラ肉、ヤギの部分は筋が多く、多少固いが食べられないことはない。 むしろこの手の肉では上等な方だ。
と、そこで男、水木トウマは自分に向けられた視線に気付いた。
「……食うか？」
答えは分かっているが聞いてみる。
「食べるわけ無いでしょ」
聞いた先、目の前の座り込んだ黒犬のアサシン、ケルベロスは呆れたような声で言った。
犬の表情は分かりにくいが、人間だったら多分すごい顔をしているに違いない。
「……前々から言っておきたかったんだけど」
「何だ？」
こちらを睨みつけながらすくっと立ち上がるケルベロス。
「私の身内、兄弟にキマイラがいるって知ってる？ 眼の前で兄弟に似た存在を解体されて食われたりするのを見てどうも思わないと思ってる訳？ 人の心がないの？ 無神経なの？ バカなの？」
「……だってどうも思ってないだろ、お前」
いい加減付き合いも長い、いつもの毒舌だと流せる程度にはお互いを理解している。
「当たり前じゃない。 魔術師が作り出したような合成生物と仮にも神の血、海神オケアノスと地母神ガイアの孫であり、魔獣の王テューポーンの血を引く由緒正しい血筋を一緒にしないでくれる？」
「ああ、そうですかー」
ふふん、と鼻高々にするケルベロスを無視して手製の地図を見る。
こいつは暇つぶしにこっちをからかって遊びたいだけだ。
（地上への帰還を考えると猶予は3日……いや、休養期間も含めると2日ってとこか)
都市間対抗擬似聖杯戦争、前哨戦が終わり都市戦争が始まるまで既に一週間を切っている。
今回はボス達、アルスくんやイブキくんに無理を言って局所戦を欠席してでの探索だ。
流石に本戦である都市戦争の開催日までに顔を出さない訳にはいかない。
俺たちがいなくてもなんとかなるだろうが、アリスの負担も増えるだろうしな。
後で恨み言を言われることは望むところではない。
「……さて、行くか」
立ち上がると腰のホルスターからG-MEDを取り出し、空気中の水分を集め薪を消火する。
ケルベロスは体を振ると前後に伸びをしていつでも動けるようにしていた。
──────梅田迷宮仮称地下88層。
「…………壁？」
下層への通路を下り、88層にたどり着いた俺達が見たのは土壁とどうぞここは無視して先に進んでくださいとでも言わんばかりの次の階層へと行く通路だった。
「あからさまねぇ。 どうするの、先に行く？」
大きな欠伸をしたケルベロスは首を振るとこちらに問いかけてきた。
確かにここまであからさまだと無視した方がいい気すらしてくる。
……とは言え、ここまでアレだと逆に探究心がふつふつと燃え上がってくる。
「一応開けられる隠し通路があるか探して、ないなら諦めて下に行く」
「りょーかい」
ケルベロスは匂いを嗅ぎ、スキル気配探知(嗅覚)を使いながら、壁沿いを歩いていく。
「ここが一番匂いが濃いわ」
「よし」
G-MEDを引き抜き、再び空気中の水分を集め、水滴を扉があると思われる壁へと張り付けた。
目を瞑り、魔術の行使に集中する。
意識の一部を水へと送り、水を操り、壁でありながら壁でない場所を探す。
通路があるということはどうしても壁に僅かでも隙間が出来る。
自由に形を変える液体、水或いは気体、水蒸気ならば僅かな隙間でも入り込め、何があるかを探ることが出来る。
「……あった」
土壁の中にただの土壁には存在しない筈の明らかな異物、金属部品……シリンダーを見つけた。
G-MEDを構えると、シリンダーの位置に向け、磁力操作魔術を起動させる。
やがて、土壁の一部が唸り音を上げ、徐々に左右へと開いていった。
「Jackpot！」
「お見事、さてこの先になにがあるかしらね」
指を鳴らすとケルベロスが前に出る。
ケルベロスの言葉で喜んでいる場合ではなかった、おそらくはこの先は魔術師の工房、そこに土足で入り込もうとする自分たちを許すお人好しがいるとは思えない。
「そうだな、罠があることを前提に行こう……っ！」
一歩、土壁の内側に足を踏み入れた瞬間、猛烈な違和感に襲われ、一瞬立ちくらみを起こす。
「ちょっと！ 大丈夫なの!?」
「……悪い、大丈夫だ」
珍しく慌てたケルベロスの声に深呼吸し、平静を取り戻す。
一応ケルベロスのスキルと磁気探査で罠がないのは確認したが迂闊に中に入ったのは失敗だったかもしれない。
「……なにこれ、駅？」
「魔術で空間圧縮して取り込んでやがるな、感じからして旧大阪駅辺りか？」
土壁の内部の中にあったのは魔術師の工房とは思えない、近代的な設備。
改札や売店、トイレに屋根まであるなんとも不可思議な光景だった。
と入っても破損している箇所などもあり、整備はされていないようだ。
「旧大阪駅をそのまま利用した……？」
「それにしても理由がわからん……」
話しながら、しかし周囲を警戒しながら先に進ん末に大阪駅のホームにたどり着いた。
「妙だな。 この線路、埃が積もってねぇ。 それどころかついさっき使ったような感じだ」
線路に降り、線路のレールを触るがそこは他の場所と違い、今まで使っていたかのような真新しさがあった。
念のために電流を走らせ、探知を行う。
「……電流が帰ってこねぇ、なんかあるな」
「トウマ、後ろ！」
立ち上がった瞬間、ケルベロスの声が耳に入り、ホームへと飛び退く。
振り向いたトウマの目に写ったのは既に走って居ない筈の旧時代の電車だった。
「あぶねぇ！ なんで列車が走ってんだ!?」
「人の家に入り込んで、危ないだのなんでだの騒がしい……恥というものはないの？」
息を荒げ、思わず叫んだトウマの前にそれは現れた。
一見老婦人のような声と気配だが、その姿はドレスを着た幼い少女だった。
「そりゃ悪かったな。 ところで俺たちは土地の地権者に頼まれてここらを調査してるんだが、あんた正式に契約してこの土地使ってるのか？」
「はぁー……地権者ねぇ？ 国鉄？ それとも阪急？」
思わずため息が出た。
分かってはいたが、こりゃ曲者だ。
戦前からの魔術師……世界再編を経て、今に至っても廃業せずに穴蔵に籠もり魔術師を、根源への道の探求を続けている奴が曲者でない筈がないのだが。
「どっちももうねぇよ。 しかも国鉄とか歳隠す気ねぇな、婆さん」
「あら、今はJRだったかしら？ それにしても失礼ね、こんな幼い子に相手に婆さんなんて！」
腕を組み、プンスカと怒った様子を見せる魔術師。
親父や兄貴にもやられたことがある。 これはこちらを欺き、隙を見せるか『試して』いる。
「あんたの気配で見掛け通りの年齢で無いことを見抜けなかったら、そいつはモグリもいいとこだ」
俺の言葉で目の前の少女、魔術師の表情が変わる。
ニコニコとしたどこか作り物じみた笑みから目を細めてこちらを値踏みする魔術師のそれへと。
「ふーん、中に入ってきたことも含めてそれなりの知識と実力はあるみたいね、若い魔術師さん」
俺の足元から頭の天辺まで舐めるように見ると、組んだ腕を下ろした。
「……訂正しとくぜ、俺は根源には興味が無いから魔術師じゃない。 魔術使いだ。 ……あんたは違うんだろう？ 魔術師」
「なら魔術師の工房に土足で踏み込んだらどうなるか分かっているんでしょう、魔術使い！」
瞬間、魔術師の雰囲気と魔力の質が変わった。
全身から殺気と魔力をこちらへと向けてくる。
だが、まだ本気じゃない。 これならどうにか凌いで逃げ出せる。
『やっぱりこうなったわね……』
『問答無用で殺しに来ない分、まだ多少話が出来るだけマシだ。ちょっと試したいことがある、合図がするまで攻撃するなよ』
『はいはい、分かりましたよ。 マスター』
念話で話しかけて来ながらもケルベロスは気配遮断で魔術師の後方へと回り込もうとしていた。
俺はわざと大袈裟な動作でホルスターからG-MEDを引き抜くと、いくつかの防御魔術を行使する準備をする。
「……なにそれ、銃？ 貴方、魔術師なのに銃使うの？」
俺のG-MEDを目にした瞬間、魔術師の殺気がわずかに薄れ、興味深そうな目でG-MEDを見た。
思った通り興味を持ってくれたようだ。
穴蔵に籠もっているタイプの魔術師は時計塔で言う賢者タイプ、所謂自己探究型だが、同時に煮詰まり兼ねない自分の研究に新しい風を吹き込んでくれるものを求めている場合がある。
今回は見事に予想が当たった、これなら交渉に……
「へぇ……魔術書と杖を電子機器をベースに融合させてる礼装？ 興味深いわね、貴方を倒してからじっくり研究させてもらうわ」
持ち込めなかった。
向こうの解析能力の高さを甘く見ていた。
先程より目を輝かせ、こちらを倒してあの奇妙な礼装を奪ってやるとやる気が増した感すらある。
『トンマ。 藪蛇って知ってる？』
心底バカにしたようなケルベロスの念話、こちらをトンマと呼ぶ時は俺がやらかしたか揚げ足を取れる時だ。
『お前の尻尾？』
『はっ……勝手に仕掛けるわ』
思わず苦しい冗談を返すしか無い。
だが、その冗談も鼻で笑われ、ケルベロスは戦闘態勢に入った。
このやるせなさは戦闘に向けるしか無かった。
「行きなさい！」
ガンドのような指向性を持たせた魔力を放つ魔術師。
小手調べと行ったところか。
「疾っ！」
G-MEDに魔力を注ぎ、予め準備していた電磁結界を起動することで魔力を防ぐとG-MED下部のバレルマガジンを装填。
魔力を磁力へと変換し、コイルガンを撃ち返した。
「ふぅん、陰陽師系のアレンジ？ 戦闘もそれなりにこなせるのね」
そう言うと魔術師は左手を薙ぎ払うように振るう。
左手から発生した衝撃波は魔力を纏った弾丸を一振りではたき落としてみせた。
……化け物じみてる。
理屈的にはサーヴァントの魔力放出を魔術師の魔力と出力でやってるわけだが。
俺が真似しても出力が足りず弾丸の軌道を若干変える程度にしか出来ないだろう。
そもそも恐ろしくてやりたくもないが。
「貰った！」
魔術師の意識が俺に集中している状況を好機と見たのか、気配遮断を解除したケルベロスは瞬時に巨大化、その背に武装が装着された。
躊躇いなくその武装のメインウェポン283�佶い鮗�をつんざく轟音と共に魔術師へ放つアサシン。
毎回思うがアサシンの武器じゃねぇなアレ。
「へぇ、面白いサーヴァントね！」
瞬時に振り向いた魔術師は今度は開いた右手を砲弾へと掲げる。
だが、サーヴァントの神秘を帯びた砲弾が魔術師の防御魔術で防げるものか。
しかし魔術師は防ぐために右手を掲げたわけではなかった。
掌を握り込むと中指と人差し指だけを砲弾へと向け、ゆっくりと折り畳むと親指で弾き、指を鳴らした。
「砲弾が!?」
（体が、動きが鈍い！）
初速910m/sの砲弾の動きは次第に遅くなっていき、やがて完全に停止した。
動こうにも体がまるで重りを付けられたかのように鈍く、身動きが取りづらい。
魔術師はこちらを一瞥するとつかつかと空中に静止した砲弾に近づく。
右手でノックするように砲弾を叩くと、砲弾は鎖から解き放たれた犬のようにあらぬ方向へと飛び出していった。
「くっ……まさか、時間操作魔術か!? 封印指定級じゃねぇか！」
体に自由が戻る。
人の身であれほど時間操作に長けているのなら旧世界であれば時計塔に執行者を差し向けられていたであろう事は間違いない。
魔術師はこちらの驚愕が面白くてたまらないのか、満面の笑みを見せている。
「その割には全く消耗してないし反動も受けてないみたいだけど？」
ケルベロスの言葉に思考を巡らせる。
外部魔術タンクや単に魔力量が尋常ではない？
それでは世界の修正力により時間の誤差を補おうとする反動を免れない。
「いくら強大な魔力を持ってても世界の修正力による反動は免れない……固有結界か」
答えは一つ。
現実世界を心の在り方で塗りつぶす魔術の最奥。固有結界。
固有結界であれば世界をだまくらかし、世界の修正力を無視できる。
固有結界が維持されている間であれば。
「土壁の内部が工房にして固有結界ってとこ？ どうやって延々と維持してるのよ」
「……大阪環状線」
「はぁ？ 大阪環状線がどうしたのよ？」
魔術には疎いケルベロスの疑問から推察が導き出される。
「へぇ？ それなりに出来るとは思ったけど解析もそれなりに行けるのね。 まぁ、厳密に言えば固有結界じゃないけれど正解としておくわ」
とそこでそれまで沈黙を保っていた魔術師は感心したように声を上げた。
こちらの回答にうんうんと満足そうに頷くその様は生徒を見る教師のようにも思える。
「あんた大阪環状線の縮小版か何かを工房に持ち込んで、術式を刻んだ列車を延々回して固有結界内に魔力を満たしてやがるのか？ そりゃ線路に走らせた電流が帰ってこないはずだ、俺の魔術も食いやがったな！」
反発心から思わず声を荒げるも、魔術師は逆に頬に手を額に手を当てなにか考え込んでいる。
「……それに関しては半分正解ってとこかしら。 それと婆さんだのあんただのは止めなさい。 そうね、
「昔話をしましょうか、もう十年以上前の話よ。 私の古い知り合いに山手線と輪廻の蛇との親和性を声高に主張する魔術師がいたの」
「割と古い魔術師の家出身なのにオカルトが大好きでね、よく面白い話をしていたわ。……本人は至って真面目だったみたいだけど」
「まぁ何らかの実験をしようとして東京のホテルで爆死したのだけどね。 ここにある私のサーヴァントは彼の思想の模倣、最も目的はまるっきり別物だけれど」
（そう、これは呼び水に過ぎない。 私の目的は時計塔で手に入れた情報、かつてアメリカ西部に存在し聖杯戦争まで起きた『もの』を再びこちらに呼び起こすための……）
「で、これからこの魔力使って根源にでも行くつもりか？」
俺の言葉に頷くでもなく首を振るでもなく、口元に笑みを浮かべるのを俺は見逃さなかった。
……なにか別の目的がある？
「まぁそんなところね、よく出来ました……じゃ、さようなら」
「さよなら？ アサs……ぐっ！」
磁力探知で引っ張られている場所を探知……迷宮の入り口か！
ケルベロスの方を見たがケルベロスも引っ張られないように踏ん張るのが精一杯のようだ。
「貴方の愚直さと少しは話し合おうとした知性に免じて今回は見逃してあげる」
「そうそう、ここの地権者さんにも伝えて頂戴。 貴方達に迷惑をかけるつもりはないから邪魔しないでって、工房内に入らないならここのフロアは好きにしてもいいわ。 貴方ももう来ないでね」
なんとか体が持っていかれないように踏ん張るのが、おそらくは無駄だ。
これは時間操作魔術の一種だ。
多分世界の修正力をこちらに押し付け、きっと掛けられた側を未来位置か過去の位置へと強制的に移動させるとかそんな感じの……あぁ畜生！思考がまとまらん！
「くそっ！ 覚えとけよ、ババア！」
なんとか捨て台詞を吐くのがやっとだった。
──────梅田迷宮表層入り口
超大型の掃除機を思わせる音が周囲に響く。
入口付近に人がいれば、悲鳴じみた一人と一匹の叫び声が段々と近づいてくるのがわかっただろう。
やがて入り口から飛び出たそれらは派手な音とともに地面に打ち付けられた。
「くそっ！ アサシン！無事か！」
迷宮入り口からまさに吐き捨てられるように飛び出た俺は尻を強く打ち付けた。
激痛に思わず尻を押さえながら相棒であるアサシンを探す。
「なんとかね……あぁ、ひどい目に合ったわ」
仰向けに転がっていたケルベロスはその場でぐるりと半回転すると全身を震わせ、体についた土埃を払った。
「全くだ、回収した荷物はあるか」
自分と相棒の無事を確認した俺は、背嚢を下ろし中身が無事であることを確認する。
せめて回収したものでも無事じゃなきゃなにしに88層まで降りたんだって話だ。
一息つき、周囲を見渡すと遠くから駆け寄ってくる人影が見えた。
「刀根ちゃんじゃねぇか……ああ、騒がしいから様子を見に来たのか？」
「派手な音したものね」
やれやれまたなんか言われるなと肩を落とした俺を目にしてケルベロスもため息をつく。
「あんたら！」
「どうもただいま……今回はいろいろと都合が、でも割と収穫が」
開口一番怒鳴られた。
気まずさから思わず目をそらして言い訳じみたことを述べる。
「今まで何やってたんや！ 『帰還予定からもう一週間過ぎて』都市戦争も始まってるんやで！」
だが、刀根ちゃんもとい棟梁の言葉は説教ではなく、驚愕の事実だった。
「は……？ 一週間？」
思わずケルベロスと目を見合わせる。
理解できない、88層からここまで移動した体感時間は精々20分。
上に向かって綱なしバンジージャンプするような地獄の20分だった。……くそったれ！
それが10日以上過ぎている!? どうなってる。
念の為に時計を見ると、たしかに今の日付は都市戦争開始から一週間、88層を追い出されてから10日が過ぎていた。
「や り や が っ た な ！ あ ん の バ バ ア！！！！！」
なんとか恨み節を叫ぶのがやっとだった。
──────梅田迷宮仮称地下88層。
「やれやれ……あの子達はこれに懲りてもう来ないでしょう。 さて、実験を続けましょうか、ライダー？」
延々と周囲を周回する列車に話しかけると列車、彼女のサーヴァント、ライダーはサイレンじみた鳴き声をあげる。
「根源へ辿り着くための前準備、未来確定装置『聖櫃』を呼び出すための実験をね……」
to be continued..............？
Next......キタとミナミと西
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