ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。




「う〜ん………これどうなってんだろ〜……」
「どうしたんスかしゃちょー」

FFF社にて、現FFF社社長のフェリシア・F・ファーディナンドは
ペンで頭を掻きながら困惑の表情を浮かべ画面とにらみ合いをしていた。
そこに社員の一人である加藤幸がふらりと声をかける。

「んーあのね?なんか礼装保管庫から礼装が2つほど消えてるのよー。」
「正直仕事が無駄に増えて失意の底だが、まぁ俺の担当となればしょうがねぇな」

何処からともなく、礼装保管庫勤務のサミィ・L・メイが顔を出す。
「またさぼろうとしてたのか?」とユキは軽口を叩こうとしたが、社長の前なので辞めた。

「そりゃまた一大事で。何が消えたんです」
「えーっと……あのノウレッジシリーズのぉ……
なんか壺の……えーっと……」
「ノウレッジ・グレイル。しっかりしてくださいよ」
「ああ、それそれ。無くした覚えは無いし、人を保管庫に入れた記憶もこの前の探索が最後だし……。
でもベアズリーちゃんもエンプティちゃんも持ってってる風には見えないしぃー……何処行ったんだろうー……」

画面に複数の人物が映っている写真を写しながら社長はバリバリ頭を掻く。
そこに、FFF社のマスコットが近づく。

「ギィピュィ♪」
「うぉわぁぁぁぁぁぁっ!?い、いたのかロアぁ!?」
「あ、ロアちゃんどうしたの?ご飯?」
「ピィー」

突如として近づいてきた生物にユキは数歩飛び下がる。
社長は慣れた手つきでその生物をよしよしとあやした。
その後すると、その生物は画面に移った写真の一点を毒針のある尾で差す。

「んー?なになにー?……あれ?この男の人誰だっけ?」
「……あれ?こんな奴来てましたっけこの間。」

その差された一点には、以前彼女が礼装庫探索に招いた者たち、
ベアズリー・オフィーリア、エンプティ・ディスストーンに加えて
更にもう一人。髪の長い男が映っていた。

「確か呼んでたの2人だけでしたよね」
「いやでも募集要項は3人で……あれ?」
「ギィピューィ?」

その写真に写っていた男はなぜかそこだけ解像度が悪く、
まるで影絵か何かのような印象を抱かせ、自然と視線を避けるように映っていた。

「………………。」

その差された男を見て、社長とユキは首を傾げる。
しかしサミィ・L・メイだけは、信じられない者を見るような目つきでその男の顔を凝視していた。
まるで、死人か幽霊にばったり出会ったかのようないような表情だ。

「ん?どうしたレイ。知り合いかこいつ?」
「い、いや……機械が記録してるには、
こう解像度が悪いなと驚いただけだ」
「確かに、なんか魔術的なアレがソレしてるのかも」

そう言うと社長は横にかさばり合った書類の束をひっくり返す。
巻き込まれたレイとユキはその一枚一枚をじっくり見定め、
ようやくその男らしき男の情報が書かれた書類を見つけた。

「あったあった!えーっと?クリスティア・トリス・ファウスト?
多分この人ね!データにも一人だけ一致がないし!」
「っつーか明らかに偽名ですよねそれ」
「よし!ユキ、お前に調査任せた!」
「えっ!?俺!?」
「当然ッ!わが社の礼装をふんだくるような
調子に乗った輩をとっ捕まえてお縄につかせてやってちょうだい!」
「はぁ……、まぁ別に今やる仕事ないですから良いですけど」
「頑張れよー」

そういって男は、あるツテから聞いた彼の母国の情報屋へ向かった。
曰く、信頼は出来るし"裏"にその会調べた足跡が流れることは無いという。
まぁ礼装泥棒など良くある話だが、念のためと彼はその情報屋へと向かった。

「んじゃあ、俺は引き続き礼装の点検をば」
「あいあい〜。」

そう言ってレイはその場を離れる。
部屋を出てすぐに、つつー…と頬から冷や汗を流した。
何故?他でもない。彼が先ほど見た男は、"明らかにこの時代にいるはずのない"男であったからだ。

「………何故奴が生きている……マイルストーン…。」


◆  ◇  ◆


やぁ、語り部の部屋にようこそ。

………なぁんちゃって、雰囲気出るだろう?
まぁ僕が語り部などと語るのはおこがましいかもしれない。
だけど物語の質はともかく数で言えば僕に敵う者はいないと断言しよう。
かのアラビアのシェヘラザードの千すら超える物語群、そのすべてを詳細に語れるのだから。

で?何を聞きたいの?
へぇ、良いだろう。では語って見せよう。"彼"について。
かつて理想に燃え、そして絶望に墜ちた、一人の騎士団の長の物語だ。
それは何処にでもある物語じゃあない。

──────なにせこの物語は、この世界が袋小路に閉ざされる、
"直接の原因"となった一大事件なんだからねぇ─────
──────────────
────────
────
──



かつて、一人の男がいた。名をジャック=ド・モレー。
誉れ高きテンプル騎士団の第23代団長である。

男の人生の半分は分かっていない。ただ男は、まっすぐに生真面目であった。
キリスト教徒の聖地巡礼を守護する為に設立された"とされる"テンプル騎士団を、
ただその目的が正しいと信じ、一心不乱に進み続けた男であった……。

それがある日を境に、魔術を取り入れると提案したのはいつ頃であったか。
今まで信じてきた騎士団長の言葉故、団員たちは疑わずに魔術を先頭に取り入れ始めた。
これは、そんな騎士団の日常が少し変化したある日の出来事の物語だ。

「貴公がテンプル騎士団の団長、モレーかね。
優秀であると聞いている。実際この戦闘訓練のレベルは大したものだ」
「お褒めの言葉、感謝の限り」

悪徳教皇、ボニファティウス8世が騎士団の戦闘訓練の視察に来ていた。
それに対してジャック=ド・モレーは丁寧に応対する。
例え前教皇を姑息な手で追いやった男とて、彼は教皇だ。
一端の騎士団長である彼は敬意を以て接するしかない。
─────そう、モレーの応対は非常に優れた物であった。
だが─────────

「(────なんだ?この違和感は)」

ボニファティウス8世は、腐っても教皇だ。
後に地獄の獄炎に焼かれる男であるとしても、十字教に殉ずる者だ。
故に、彼は男の持つ違和感に気づいた。まるで死人か何かと話しているような、
そんな日常生活では在り得ない、違和感に……。

「どうなされましたか?」
「い、いやなんでもない。
しかし、何故突然魔術を騎士団に?
このご時世、リスクが伴うのではないかな?」

ボニファティウス8世は違和感の正体を探っていることをばれないように話を逸らす。
そう、この時代……十字教が絶対たる時代では、魔術とは悪しき物であるとされていた。
中世の魔女狩り等がいい例であろう。人間とは、何か自分の理解できない物を拒む習性を持つ。
それに宗教という大義名分がついているのだ。人間の悪性と言う物は、そうなると留まる事を知らない。

「そして君も知っているだろう。今のフランスの王は"あの"フィリップ4世だ。
奴は現在軍事費の捻出に力を入れている。……君たちは莫大な財産を有しているだろう?
もしこの魔術を口実に、解体などという話になれば────────────」
「御忠告感謝致します教皇、ですが…心配はいりませんよ」

クルリ、とモレーはボニファティウスに振り向いて微笑みかける。
その笑みは、男ですら妖艶と思える怪しく、そして悍ましい色気があった。
しかし、その眼には、肌には、人の"生気"が感じられなかった。

「例え我ら騎士団が解散された程度で、我らの理想は止まらない。
拷問の末に火刑に処されたとしても、我らの意志は生き続けることでしょう」

モレーは、まるでこれから先にそうされるかのように、
いや…"過去に全く同じ結果に行き当たったかのように"鮮明な言葉を口にした。

「(この表情……余は見覚えがある…何処かで……!)」

だがボニファティウスはその言葉の内容は耳に入っていなかった。
彼にはこの表情に見覚えがあった。人ならざる存在でありながら、
人を惑わすカリスマ性を持つ"化け物"を。

「(ッ!!そうだ……死徒か!)」

死徒、それは人を、神を、人理を否定するガイアの怪物。
代行者と呼ばれる聖堂教会の者たちに狩られる、人の血を吸らう悪しき怪物だ。
ボニファティウスは若き頃、その聖堂教会が死徒を狩る一部始終を見た時があった。
故に、目の前に立つ男が人ではないという事を、瞬時に察したのだ。

「(だが……何かが違う!神を冒涜する存在であることは間違いない…!
だが何だ!?この…それよりもおぞましく、そして強大な魔力…いやカリスマは!)」
「どうなされましたか?」

モレーは再度微笑みかける。
その笑みはまるで蜜のように甘く、されど刃の如き鋭利さを見せた。
それだけでボニファティウスは気づく。目の前に立つ男は、危険であると。
──────────────────だが、

「いえ、なんでもありませんよ。此処の所少し贅沢が過ぎたのか、立ち眩みが」
「ああ、そうですか。ならば騎士団特性の健康食はいかがかな?」

ボニファティウスは何の動揺も見せずに談笑へと話の舵を切る。
彼の誇るべき長所の一つとしては、その胆力が挙げられるだろう。
「利用できるものならば、すべてを利用しつくす」という太い芯が彼にはあった。
でなければ、ここまでのし上がることなど不可能だったはずだ。

故に彼は目の前の"化け物"すらも利用してやろうと考えた。
どれだけ力がある物とて、所詮は一端の騎士団の長、手玉になどいくらでも取れると……。

「(例え悪魔であろうと利用してくれよう……!
 信仰を鼻で笑うならば、それは悪魔の影とて同じ事!)」

彼は心の奥底で目の前に立つ男の恐怖を理解しつつ、
そしてそれを利用すると決めた。それが、出来たかどうかはさておいて………。


◇  ◆  ◇


日本のとある情報屋……の門前にて、
金髪の青年と黒髪の褐色少女がにらみ合っていた。

「もうやめなさいジェシカ、こんな往来で」
「うるせぇこっちは売られた喧嘩は買う主義だ」
「時間の無駄。こっち、後回し。早く」

金髪の少女とだぼだぼの制服を来た少女が
にらみ合ってる褐色の少女を引っ張る。

「おうおうどうした?その程度かいお前さんがた」
「待ってろや、ひよっこお嬢さんが喧嘩も出来ねぇって言うからよ」
「むっ、言ってくれますわねぇジェシカ……」
「グロ、乗っちゃダメ乗っちゃダメ。」

何故か一対一の喧嘩が一対一対一になるという所で車が止まり、
そこからにこやかな男が降りてきた

「お前たち、ちょっといい加減にしないか」

ビクゥッ!!と3人が同時に肩を撥ねさせる。
喧嘩を売っていた金髪の青年も、その降りてきた男から只者でない気配を感じた。

「いやぁ済まなかったね少年。
僕らの依頼は後で良いからまずは君の……」
「───待てよ……、なんでこんな辺境の地に、
わざわざウィルマース財団のトップ様が来てんだ?」

ギロリ、と睨みつけるような目つきで青年は……
FFF社社員加藤幸は車から降りてきた男性を見る。

「………………あちゃあ、こりゃ同業者だったか?」
「まぁ、そんなとこだ。FFF社の加藤幸って言う。
しゃちょーから聞いてるぜ、頭がキレッキレの三枚おろし野郎だとな」
「あっはっは、そりゃ嬉しいな」

そう、男の名はアーサー・マイヤー。
人類の守護を掲げる団体、ウィルマース財団の現統括理事長。
そんな大御所が、日本の小さな情報屋にやってきているのだ。
ユキが疑問に思うのも無理がない事であろう。

「一体どうしてここに?
彼女から何か用事でも承ったのかい?」
「質問をする前に自分の事を話すのが礼儀ってもんじゃねぇですかい?」
「貴っ様ぁ!アーサーさんに向かって無礼な!」
「落ち着いて、落ち着いて」

褐色の少女をだぼだぼの少女が必死に抑える。

「ふぅむ、そうだね。
……では、少し目を閉じてみてくれ。僕らが探している男の顔を"送る"」
「………………テレパスってぇ奴か?財団は進んでますねぇ」

ユキは察した。なるほどこの男は同じ人探しが目的で来ているのだろうと。
そしておそらくそれはトップシークレット。口に出すのも憚れるほどの秘密だと。
─────────そして、それを話されるほどに、FFF社である自分は信用されているんだと。

「(どんだけお人よしなんだよこの人は………。)」

そう思いながら、ユキは目を瞑る。
相手の言う通りにして目を瞑る自分も、同じくらいお人よしだなと自嘲しながら。

そして一瞬だけ瞼の裏に、一人の男の顔が映った。
その男はフードを被り、影絵の如く判断がつかず、
されど脳裏に強烈に焼き付く気味の悪い静かな笑みを浮かべていた。

「──────ッ………………!」

ユキは一瞬よろめくが、すぐさまに立ちあがる。

「………これだけだ。僕たちが言える情報は、これが全てなんだ。」
「………………じつを言うとですね、俺たちが探してんのもこいつなんですよ……」

ユキは口を押えながら言う。
そう、その瞼に映った顔には見覚えがあった。
他でもない。今彼が、情報屋に問おうとしていた男と完全に一致した顔であった。

「この前礼装が盗まれましてね?保管庫から。
んで、犯人捜しとして洗ったらこいつが浮かび上がりまして………。」
「まさか…………いや、そんなはずは………。」

男は一瞬驚いた顔をしたが、
すぐに真剣な表情へと変えて情報屋の中へと連れていく。

「詳しくは中で聞こう。ああ君たちも一緒に来てくれ」
「え?あ…はい!」

5人が一斉に情報屋……柏木フリージャーナルへと足を運ぶ。
その最中、アーサーが発した一言を、ユキは聞き逃さなかった。

「どうなっている……在り得るはずがない………。」


◆  ◇  ◆


ジャック=ド・モレーは魔術師の家系に生まれた。
生前の大半の記録が残っていない彼ではあったが、それは当然だ。
彼は、魔術の家系の中でも"最重要機密"として扱われたある個体なのだ。

ソロモンの弟子たちが一人より継承されし"魔術刻印"という技術、
その仕組みに根本から手を加えようとしたのが、モレー一族であった。
継ぎ足して往く、のではなく"分け与え、そして奪い取る"という新しい形を彼らは提唱した。

仮称:『分割刻印(レシーヴィング・ギアス)』は……、
扱うには人間の肉体の臓器からして設計しなおす必要があった。
それは言うなれば、人間の肉体を用いて術式を描くような行為であった。

「これさえ完成すれば、王が恐れた結末は………、
自滅因子をこれで………………!」

そう、かつてモレーの父は語った。
幼きモレーは、その言葉の意味が分からなかった。だが、悪しき物なのではと考えていた。
人が人を思うがままにするという事は、悪しき行為である。
それは人の領分すらも乗り越えた領域、神の領域であった。
──その領域へと踏み入れることは、神への冒涜に他ならない。
そう、彼は考えていた。幼いながらも彼は、
『自分と言う存在は、神を冒涜しているのではないか』
という自責の念と共に、育って行った。

『人でありながら……人の領分を超える者よ。
その罰をこの私が受け入れよう。その身を代償として!』
「ッ!」

モレーが10になったその時であった。
声が響いた。何事か、と疑問に思う時間すらもなかった。
その"存在"は、冒涜と言う在り方に反応する。そして、その身を奪いとるべく動き出す。
そうやってその存在は、幾千幾万と言う月日を人類と共に歩んできたのだ。

「………………。」

此度もそうであった。
人類の、神より与えられた肉体を人のエゴで改造する、
という神への冒涜を犯して生まれた人間を乗っ取り、"己"とした。
────────しかし、何か違和感があった。いや……違和感とは"逆"か………

「何だ………?この肉体………何故、こうも"馴染む"?」

彼は人間ではない。故に、人間の肉体に馴染むには相応の時間がかかった。
しかし、今の彼にはそれがない。まるで"その肉体が最初から彼を受け入れる為に作られた"
かの如く、彼はその肉体に瞬時に馴染むことが出来たのだ。

「……まぁ良い、好都合だ。
今後は"この肉体"を拠とし、活動を行うとしよう………。」

その存在は、ニヤリとおぞましい笑みを浮かべた。


◇  ◆  ◇


「─────というわけで、この男の行方の調査を、
いや………正確には"過去にどれほどこの男がいたのか"を調べてもらいたい」

パサリ、とウィルマース財団トップ、
アーサー・マイヤーは目の前に座る少女に写真を手渡す。
その写真は非常に色あせており、まるで数百年前に撮られた代物のようであった。

「分かったわ。調べてみる。」

写真を手渡された少女、柏木フリージャーナルのトップたる少女、
柏木緋月はその写真を手に、奥へと向かって言った。

「? これおかしくないっすか?
なんでつい最近うちんとこに来た男がこんな古いような写真に?」
「いや、"ような"………ではないんだ加藤君」

アーサーは真剣な表情で答える。

「これは正真正銘……1832年にアメリカで撮影された物………。
男の名はコード:メルクリウス……、そして隣に立つ男はジャック=ド・モレーと呼ばれている。」
「………………なんかの冗談か何かですか?」

その言葉を聞いた加藤ユキは眉を顰めた。

「ほんの2週間かそこら前にこいつはうちに来てた。
それがどうして200年も前の写真に……それにジャック=ド・モレーといやぁ、
テンプル騎士団の最後の何かでしょう?都市伝説で見ましたよ!
映ってる連中が全員ちぐはぐだ!」
「だからこそ……僕らはこうやって調査に来たんだ。
もしかしたら、別の時代にも………と思ってね」
「…随分とまぁ常識外れじゃないですか」
「常識などないと考えるのが財団の第一理念だ」

そんな会話をしていると、奥から写真を受け取った柏木緋月が出てきた。
その表情は、まるで見た物が信じられないといったような表情だ。

「…どうなさいましたか」
「どうした……ってほどじゃないんだけど…」

ん〜、とうなりながら少女はペンで頭を掻く。

「ちょっと調べただけでゴロゴロ出てきたわこいつ……。
10や20じゃない。まるで"私は此処にいる"と主張かけてくるみたいに、
わざと自分の足跡を残してるんじゃないかって程情報が出てきた。」

バサササ、と柏木緋月は大量のデータがプリントされた用紙を置く。
そこには年代、国は違えど、アーサーが持ってきた写真とそっくりの顔立ちの男がいた。

「なんだこりゃあ、サンジェルマン伯爵かよ」
「わざと足跡残すような真似して、それでもって一流の認証阻害魔術を働かせている。
うちのつての解呪師じゃなかったら分かんなかったわ。」
「……不老不死?いや…そんなわけないか」

アーサーが顎を撫でながら推理する。
それに対し緋月ははっきりと「それは違うかも」と言った。

「名前や戸籍がどれも違うし…これはまぁいくらでも偽造できるけど。
でも写真を見ると、どれも所々顔の細かい部分が違っているの。
要はここにいる連中全員そっくりさんってとこなのかも。」
「なんだ、本人じゃねぇのかよ……。驚かせやがって」
「し…仕方ないでしょ。近似顔で検索かけたんだから…」
「だが、これほどそっくりな顔があるのが、単に偶然とは思えない」

ガタリ、とアーサーは立ち上がりながら言う。

「この男に似ている顔で、記録が残っている人物の全ての情報を依頼したい。
膨大な量になるかもしれないが、その分値は弾もう」
「分かりました。」

アーサーは立ち去ろうとするが、屋外へでる寸前に立ち止まる。
そしてユキの方へ振り向いて、真剣なまなざしで言った。

「ユキ君。かつてFFF社に世話になった故に言おう。
この事柄には、もう首を突っ込まない方が良いかもしれない」
「………そうですか。……ですがね」

対するユキは、ニヤリ…と口端を釣り上げ、
何処か楽しそうな表情で返す。

「こっちは礼装が、大事な門が盗まれてるんですぜ
ちっとは向こうに痛い目に合って欲しいもんですがね」
「………忠告はしたぞ。」

ピッ、とアーサーは紙の切れ端に何かを書き込み、ユキに投げつける。
見ると、その切れ端には何やらアドレスと番号が描かれていた。

「僕へのホットラインだ。何かその男の情報を掴んだら、
もしくはその男の組織によって危機に陥ったら、連絡してくれ」
「オーケー、しゃちょーにも言っておきますわ」
「ああ。………それにしても今日はあの美しい紫髪の女性はいなかったなぁ」
『最後の最後くらい綺麗に〆て!』

アーサーは最後にボソリと何やら意味が分からない事を呟き、
若干残念そうに肩を落としながら車に乗って帰っていった。

「そういえば……戸籍違うって言ったけど半分くらい同じ苗字だったかな」
「ん?……その、なんちゃらクリウスってやつ?」
「ええ。調べるうちに目につくから印象に残って。
えーっと、確か………。」

「マイルストーン。ストーン家の中でも一番繁栄してる分家の苗字ね」


◆  ◇  ◆


さかのぼる事、数ヵ月ほど前

───────自滅因子と言う物をご存じだろうか?
人は、いや生命は、生命だけでない。この世に在る全ての存在は、"寿命"がある。
果て無く存在し続けることなど出来やしない。そう、この地球すらも。

しかし─────、中にはそう言った寿命を、限界を超えて在り続ける物もある。
そう言った存在が生まれた時……、それを滅ぼすべく出現する"概念"が在る………。
それが自滅因子(アポトーシス)だ。

自滅因子は、発生源と真逆の在り方を持つ。しかし似通った愛を持つ。
例えるならば、それは愛するが故に滅ぼそうとする、鬼種の反転に近いだろう。
人類を憐憫したが故に人理を焼くと決めた獣のように。子を愛するが故に子を滅ぼす地母神のように……。」

「まるでお前のようだね、カール・クラフト」

一人の女性が、メスで被験者の肉体を弄りながら言う。
まるで片手間の作業の合間に談笑するかのように、軽く。

「私が?まさか。私は単なる力無き詐欺師だ。
人類を愛するなどと。ましては滅ぼすなどと。出来るはずがない」
「ふんどうだか。その信用できない語り口調。数十年前から変わりやしない」
「私のようなものの言動を、その脳裏に刻んで頂き感謝の限り……」

男は、カール・クラフトと呼ばれた男は深々と頭を下げる。
それに一切の反応をせず女性は…ドクトル・キリは話を続ける。

「それで、いくつかかしてほしいんだっけ?デミ」
「ええ、まぁ…時が来たらで良いですがね。今日は借りられるか、否かを問いにだけ……」
「んー、あとで他の大幹部とか大首領さまに聞いてからねー」

ふぅ、と一息ついてキリはメスを置く。
フードをパサリと脱いでカール・クラフトの隣に座る。

「そう言えばさ、ノンボーンの奴は?」
「ああ、彼でしたら失敗の責任を取らされ謹慎中です。
誰が課したわけではないですが、まぁ自罰の為の自主的な物です。
一説では、さらなる強大な計画、聖杯戦争を錯誤中だとか………。」
「へぇ、そりゃ頼もしい。」

キリは立ち上がってフードを被りながら言う。

「しかし聖杯戦争も随分頻発するねぇ。
ちょっと前は冬木だけだったのに。何故だい?」
「さぁ、私にはあずかり知らぬところでございます」
「ふぅん、そう言えば…解体戦争の時に君らフリーメイソン見たけど、何してたの?」
「………………。」

男は答えない。
ただ影絵の如く掴めない表情で微笑みかけるだけだ。

「沈黙は金、ってか。まぁ良いさ。深くは問わない。
私達は今後とも君たちとビジネスライクな付き合いをしたいだけだしね」
「ありがとうございます。デミサーヴァントは我らフリーメイソンが
どれだけの時を費やしても実現しなかった代物……提供してもらえるとありがたい」
「まぁ、期待しないでおいてくれよ」

そう言いながら、キリは何処かへと歩いて去っていった。
彼女が去った部屋で一人、男は低く笑い声を響かせる。

「クックック……いや貴方達は我々に必ず手を貸すことになる。
どのような形であれ……。かつて堕天使が自ずと罠にその身を落としたように…。」

ズズズ………と黒き影のような、炎のような揺らめきが彼を覆う。

「何故ならそれこそが、この閉ざされた世界の正しき在り方なのだから」

そう言うと男は、その場から跡形もなく、"消えた"。


◇  ◆  ◇


──────────────はい、おしまい。
どうだったかな?フリーメイソンの始祖たるジャック=ド・モレーの物語は。
………………え?断片的すぎて意味不明?ごもっとも!しかしそれには理由があるんだ。

何かって?"彼の物語は文字通り空っぽだからさ"。
言うなれば彼は被害者にすらなれない。最初から彼の物語はある堕天使に上書きされるためにあったんだ。
………………意味が分からない?ごめんね。でもきっと分かる時が来る。
それがいつになるかは分からないけどね。

ひょっとしたら、分かる前にこの世界(ものがたり)が打ち切られるかもだけどね…。
いや…さすがの僕も驚いているよ。まさか打ち切りにも満たない没シナリオが侵攻してくるとはね。
物語を見る側からしてみれば、こういう予想外はココロオドル展開なんだろうけど……
如何せん"こっち側"に立っている身としてはねぇ……。ちょっと危機感を覚えてる。

でも僕たちは負けないよ。
例えどんなことが起きようと楽しんで、バカやって、そしてこの世界を面白おかしくする。
S(世界を)O(大いに盛り上げる)O(O-13をよろしく)ってね、ああ!これじゃあSOSにならない!
………まぁいっか。とにかく、僕らは最後までやらせてもらうって事で……。

──────────聞いてるんだろうニャメとうさん
あんたが顕現したことは分かってるよ。実の息子なんだ。それくらい分かる。
止める?それとも僕らにベットしてくる?どちらでも歓迎するよ僕"ら"は。
最も、もはや貴方一人だけじゃあ止まらない。これは人類と僕らの生存競争だ。
抑止を巡る戦い…ガーディアンズ・オーダーは止まらない!
来るなら来てみろよ!!そして悉く否定してみるがいいさ!
オニャンコポンくそおやじ!!

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