kagemiya@ふたば

これは転移魔術の類ではない。
これは自分が現在地点に『いる』世界と『いない』世界を。目指す地点に自分が『いない』世界と『いる』世界を同時に切り取って入れ替えているのである。
つまり『第二魔法』と呼ばれるそれに近しいもの。
そして、生前の彼女が窮地に陥った際には無意識にそれを脱する平行世界を引き寄せていた規格外の幸運の正体。
セイバーが生前「好きな場所にワープする魔術だ」と思い込んでいた為それ以外の使い方が出来ず、サーヴァントの身では真実を知ったとしてもその先へは至れない。
生前に起きていた無意識による平行世界の引き寄せも発生しない。（それでも幸運のランク自体は高いのだが）
彼女にとって「自由に好きな所に行ける不思議な力」で充分なのだから。

座リニンさん（これ宝具にしたらヤベーかもしれないからスキルにして制限掛けとくか）

そのハッピーエンドは、その平行世界の文明が魔術によって繁栄していたが為。
魔術に依存し切り、魔術以外による文明の発展を怠り、魔術のみによって極端に栄えてしまったが為に、中世の終わりにマナと言う資源の枯渇によって文明が崩壊した世界の……剪定された世界への、ささやかな手向けの花。

迂闊に撃破したり、特に撃破しなくてもコックピットからとんでもないビームが飛んでくるぞ　　〜ある喪失帯の酒場にて、戦場帰りの傭兵達の言葉より〜

何の因果か奇妙な運命さだめか、それともはたまた抑止力の要らぬお節介か。
剪定された世界において勇者と呼ばれ、座に実用一割サンプル二割監視七割で登録された某騎士王の可能性の姿は、アナトリアにて確認された。それも、よりにもよって特級騎士である。
階位は第七位。特級でありながら「こっちの方がかっこいいですし！」と操縦型魔剣「勇者號オーバギュ」を駆り、搭載火器とコックピットからのビームで敵を討つ異色の特級騎士……否、自称・勇者。
……実際問題、例のビームを出す聖剣が特級騎士としての証である装備型魔剣に相当する物なのだが、コレと聖剣の組み合わせを表に出せる筈も無かった。

タンス漁りは自重しているが、その猪突猛進っぷりはアナトリアでも健在。魔王死すべし魔王討つべしと喪失帯を股にかけ、西へ東へ飛び回るトラブルメーカーっぷりを発揮している特級騎士きっての問題児。
問題児ではあるものの外征騎士としての腕っぷしは折り紙付きで、その霊基と勇者魂に染みついた正義の心は喪失帯であろうとも健在。
彼女が特級騎士となる切っ掛けでもある一件……外征騎士やミレトス達が「不可能だ」と見捨てる決断をしたアルケア奥地からの救出任務を単身受理し、持ち前の実力と勇者ド根性と悪運と幸運で成し遂げた事からも、それは伺える。
彼女が問題児と呼ばれる所以は、それの勢いが強すぎて時々斜め上の方向にカッ飛んでいってしまう為。（具体例：彼女がお土産として持ち帰り、今や城下町の広場の名物オブジェとなっている岩盤セイレイ拓）
けれども、そんな事はお構い無しにと言わんばかりに今日も今日とて内海そらのどこかでビームと名乗りが鳴り響くであった。

「勇者 兼 特級騎士アルトリア、見参！！」