ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

蟲這市聖杯戦争アフター』



蟲這市で起こった聖杯戦争より、二月ほどの時が経過した。

此処蟲這市も、聖杯の力で復興した街並みはすっかり日常風景へと戻り、人々もまたあの惨事などなかったかのように過ごしていた。

そんなある日のこと。
街の教会に一通の手紙が届いた。

「おや。…ルフ、君宛てに手紙だよ」

「私に、ですか?」
「ワン?」

すっかり慣れた手付きで教会の掃除をしていた盲目の少女に、優しげな初老の神父がを便りを伝える。
その言葉への返事は、彼女とその親友が同時に返した。


「あぁ。いつものようなファンレター…ではないようだ」

「…?何でしょう…?」
「クゥン?」

「…とりあえず、読み上げてもいいかね?それとも、私ではなく女性の方がいいかな?なら別の者を呼ぶが」

「いいえ、お願いします神父様」
「ワン」

「それでは…」

神父が丁寧に封のされた封筒を開けると、可愛らしいデザインの便箋が現れた。

「おや、女性からのようだね」

「……もしかして」
「ワン?」

「えーっと…如何お過ごしでしょうか…いつぞやの三人です……いつぞやの?」

「…あ、やはり…!…はい。恩人のような、友人のような方たちです」
「ワォン」

「なるほど。……この度、お疲れ会と題してみんなでそちらに遊びに行こうと思いますので、よければ空いている日程を教えてください、一緒に行きませんか……だ、そうだよ」


「え、と…その方たちには、その件で大きな御恩があるのですが……私も、行っていいのでしょうか…?」
「クゥン…」

「誘われているなら行けばいいじゃないか。近日中に大きな祭日もない事だし、私も構わないよ」

「ですが…」
「クゥ…」

「…うん、とりあえず空いている日を書いて送っておくとしよう」

「神父様!?」
「ワン!?」

「私としてはこういう機会も良いと思っているしね。少々強硬手段に出るとしよう、ははは」

「いえ…その………はい。分かりました…」
「クゥン……」


間もなく神父の手で返信が書き上げれられ、その日の内にポストへの投函がなされた。


そしてその日の夜には…ルフの内にも、それを楽しみにする心が生まれつつあった。

「……」
「クゥ?」

「うん、大丈夫。…いい人たちだから、ルールゥにも会わせてあげたいって思ってたんだ」
「ワンワン!」



「(──まだ、あの罪の意識は私の中から消えていない)」

「(でも、彼女達がまた私をすくい上げてくれようとするなら)」

「(…その手に掴まることくらい、許されるのかもしれない)」


・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


三日後。
早速届いた返信を、神父が再び読み上げる。

「明日来る、ってさ」

「急ですね!?」
「ワォン!?」

「えーっと、私服は十分だったね。あぁそうだ、化粧とかするかい?確か前任のが色々あったよ?それとお小遣い…は自費で平気かな?あとは…」

「なんだか神父様の方が楽しそうじゃありませんか…?」
「クゥン…?」

「そりゃあ、この一月見てきた君の中で、今の君は一番…いや、二番には楽しそうだからね」


「───そう、でしょうか」
「───クゥン」

実際、この一月の間には友人の来訪や大きなコンサートもなかったのは確かであった。
恐らく神父が二番、と言い直したのは、親友との再会のことを言っていたのだろう。


「ならば折角だし、全力で応援するのが私の役目だろう?」

「…ありがとう、ございます」
「ワンワン!」

「どういたしまして。では、準備に早いうちに取りかかってしまおうか。今日は備えて早く寝ないといけないしね」

「はい!」
「ワン!」


この後てきぱきと軽い支度を整えた彼女は、夜の七時には就寝した。

……二時に起きた。
すぐ寝直した。


・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


翌朝。
六時に起きた彼女は神父たちの手解きで軽く身なりを整えた後、朝食を採った。
その後暫し着せかえ人形にされたりもしたが、七時半頃にはひとしきりの準備を終えることができたのだった。

「えと…自分では分からないのですが、どうでしょうか…?」
「ワンワン!!」

「うむ、可愛らしいですな」
「いやー神父様意外とセンスありますね」
「おや意外とは心外ですな、…まぁ、素材が良いのですよ素材が」

神父が彼女の私服から選んだ青と白を基調にして少々胸を強調しつつ清楚なイメージに纏められた服装に、教会の女性陣に手掛けられた薄めのメークが絶妙な調和を生み出している。

「…で、集合…というか彼女達がこちらに来るのが、九時頃だったかな?」

「はい…。…それまでの一時間は、また掃除でも…」
「ワン」

「「いやいやいやいや」」
「折角おめかししたのにそんな事させられませんよ」
「そうですね…。…あぁ、緊張をほぐすならば…ね?」

そう言って神父が指差したのは、ピアノであった。

「…です、ね。では……」
「ワン」


…浮かれた自分の心のままに弾くピアノ。
時折鳴き声の合いの手が入るその音色は、何処かいつもの演奏よりも熱が籠もってしまって。

いつまでも、指が滞りなく踊り続けた。


・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

「……ふぅ」
「…ワン!」


パチパチパチパチパチパチパチパチ


ルフが長い演奏を終えると、周囲から大量の拍手が鳴り響いた。

「……えっ、えっ?」
「ワンワン!」

彼女は戸惑った。
…拍手を送る手の音は、確実に教会にいた人数より多い。
と、いうことはつまり…。


「いやぁ、何度聞いてもいいものですねぇー…」

「そーだねぇー…」

「なんだか今回は雰囲気も違っていい感じでしたッスねー…」

「…皆さん…!私、つい夢中で…」
「ワンワン!ワンワン!」

「ノンノン!今がぴったり九時ですので遅刻はナッシン!それよか問題だったのはこっちですしねぇー!」

「「ごめん(ねー)(なさいッス)」」

「ほんとこいつら私が電話してなかったらどうなっていたことか!」

「…ふふふっ」
「ワッホホ」

「…さて、では!お疲れ様会に出発しましょうか!」

「はい!…神父様、行って来ます」
「ワォン!」

「あぁ、行ってらっしゃい」

ア、ツカマルッスカ
イイエワタシハコノコガイレバ ワンワン
アカトシロノツエハー?
ダイジョウブデス ワンワン
カワイイネー
デショウ!?コノコハルールゥッテイッテデスネ… クゥーン

…ソレジャレッツゴーデスヨー
オー! ワン!


「……本当に、彼女らがルフ君を救ってくれてよかった」
「大袈裟ですよ神父様ー」
「…ふふ、そうですね」


・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


「そういえば、今回は誰が主催を?」
「クゥン?」

教会から商店街へと向かう道すがら、ルフは三人に尋ねた。

「あー、それがなんとびっくり、このアラサーなんですよ」

「誰がアラサーッスか見た目詐欺のくせに!」

「えー、28才って言い逃れできないよねー?」

「…がふっ…ッス」

「…平さんが?」
「ワン?」

「あぁ、えぇ、まぁ。その、折角知り合った関係でスし、繋げて行きたいかなぁ…と思ってッスね」

「わたしもねー、ルフちゃんともういいちどあいたかったんだー」

「私にも断る理由はなかったですからね。…忙しくはあるんですケド」

「なるほど…そうなのですね」
「ワン、ワン」

「…それにッス。ちょっと、ルフさんの事も気になってましたから」

「…私の…?」
「ワン?」

「…あの日、私達にピアノを弾いてくれた時。『お礼』って言ってたじゃないッスか」

「…!」
「…!」

「と、いう事は…恐らく、あの時あった事は覚えてるッスよね。あぁいや、単なる確認なんスよ?ただ隠して話すのも難しいッスから」

「……私は…あんなものを…!」
「ワン…」

「いやそれがね?案外大事(おおごと)でもないのですよ」

「むしろアレが召喚されてて良かったというか」

「そうなのー」

「……え?」
「……ワン?」

「アイツは人を食いはしましたッスけど、それはたんに食っただけなんス。だから、ルフちゃんや街の人達もこうして元に戻ってこれたんスよ」

「魂喰いで魔力に変換されてたら一巻の終わりだったんだけど…空腹を満たすだけのアレだからこそ、こういう結果になったってわけ」

「えーっとねー…だから、けっかオーライなんだってー」

「…ですが、私は…!」
「クゥン…」

「それにまあ個人的な話するとアタシとアサシンはノーダメですし」

「私らのサーヴァントは死にかけたけど!?」

「そうだよー」

「それに皆死ぬ程度の覚悟はしてきてるッス。だから少なくとも、アタシらに何か負い目を感じる必要もないッスから」

「ですが…街の方々には…」
「…ワン」

「そこでー」

「これッス!」

「丁度付きましたね」

「…?」
「ワンワン!」

「ここー、さいきんできたお店なんだけどー」

「えっとッスね、『UMA一つ目巨人グッズ』とかそういう店ッス」

「…つまるところ例のアイツの目撃情報が曲解されて、気付けば街興しの材料になってるんですよ」

「……は」
「……ワ」

「既にストラップやマスコット、巨人クッキーに巨人焼きまで…」

「まぁシャッター商店街ならではのすがりつきの速さッスねー」

「いがいとかわいいねー」

「…とまぁ、こんなワケでッス」

「今回は何事も、万事綺麗にハッピーエンドな訳なのですよ」

「そうなのー。こんかいはねー、ここを見せてあげてねー?みんなではげましてあげよーってねー」

「……皆さん…!」
「ワンワン!」


「…これでもう、大丈夫ッスか?」

「…はい。……大きな罪を犯したことに違いはありませんが、それでも。…もし、私のした事が、何かここの約に立っていたならば…と思ったら、なんだか………少しだけ、楽になれた気がします」
「ワン!」

「よーし、それじゃあー」

「とりあえず最初は、ここで色々買いましょー!」

「あ、選ぶ時は説明するッスね」

「はい、お願いします、皆さん!」
「ワンワン!」


真新しい自動ドアに、四人と一匹が吸い込まれてゆく。
彼女達の、そしてこの街の未来への一歩は、まだ踏み出されたばかりである。


              END less
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