ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

「あ、あの……そんなところで寝てたら風邪を引きますよ……」

一人の少年が、公園のベンチに寝そべって寝息を立てている男性に、恐る恐る声をかけていた。
純白な、汚れを知らない清潔な布のような少年であった。粗野などという言葉とは縁遠い、清廉潔白を絵に書いたような美しい少年だった。
大してベンチに寝ている男は、むしろ真逆。荒々しく寝息をたてながら寝入っており、周囲の視線などもろともしない粗暴さを感じさせる。
その顔には日差しを遮るためか、見た事もないような文字で書かれた分厚い装飾の本を被せており、人相は分からないままだった。

「どうしましたかマスター?」
「あ……ルーラー。なんか……凄い勢いで寝入っている人がいて……。
 何度声をかけても起きないんだ……。息はしているから、生きているとは思うんだけれど」
「ふむ……なるほど。いかがいたしましょうか……」

新たに現れた非常に美しい女性と会話して、少年は一緒にうーんと悩む。
するとそこに、ヘラヘラとした雰囲気を纏う目元を前髪で隠した青年が現れた。

「タイタスさーん、ターイタスさぁーん。
 やべぇっすよこの世界。マジでサーヴァントが当たり前っぽいです。
 ヤベェまじでヤベェ。さっきビーシュマとかいましたよ。ちょ、サイン貰ってきていいですか?
 最強集合サイン。ギルガメッシュとビーシュマとヘラクレスと……あ、やべこれアーチャーばっかじゃね?」
「? 此方の方のお知り合いでしょうか……」
「あれ……。なんでタイタスさんの周りに人が2人……。
 あ、ひょっとしてタイタスさんがなんかやらかしました?」
「うっせーなオメェ何ナチュラルに俺が悪いと決めつけてんだ」

そう悪態を付きながら、ベンチに寝ていた男がムクリと起き上がる。
不機嫌そうにその額に皺を寄せながら、その白い髪をボリボリと掻いて眠気を飛ばす。
対して睨まれた前髪で目の隠れた青年は、少し苦笑いをしながらその手に持っている缶コーヒーを寝ていた男へと渡した。

「で、眠気覚ましのコーヒーは?」
「あ。ブラックコーヒーなかったんでマックスコーヒー買ってきました」
「お前何でそれ買っちゃったの!? 真逆じゃん!! 真逆の存在じゃん!! 飲むけど」
「あのー……えっと、公園は皆のものですから、その…ベンチで睡眠をとるのは、できれば控えていただきたい…………です」
「え? あー……、あぁ……。うん、すまん。ちょっと、疲れてて……」
「この人抑止の守護者なのに子供に説教されてる。受ける」
「………ん? ひょっとしてあんた……」

無言で隣に立つ前髪を隠した青年にアームロックをかけながら、タイタスと呼ばれた男は目を開く。
勇気を出して注意をした少年ではなく、その隣。少年がルーラーと呼んだ美少女に対してその視線を向ける。

「わ、私ですか?」
「ぎ…ギブ、ギブっすタイタスさ…!」
「あんた、……そのクラス、ルーラーか?」
「? ええ、はい。こちらのヴァイス様のサーヴァントをしております。ルーラーのメアリー・スーと申します」
「……………………………………ああぁー……。やっぱ、メアリーなのね。お前」

ふんふんふん、と繰り返すこと3度。
タイタスはアームロックを解いて少し考えるような仕草になる。
そしてそれからすぐに、嬉しいような、あるいは少し納得がいかないような、そんな表情をした。

「あの……なにか?」
「いや、人違いだっただけだ。お前さんが普通にルーラーだってんなら、何でもねぇよ」
「そ、そうですか…………」
「ゲホッ、うえ……っふ。そ、そうだ……。
 こんなところで知り合ったのも何かの縁ですし、ちょっと教えてほしいことがあるんですがいいですか?」
「……教えてほしい事」
「ええ」

前髪で目の隠れた青年は姿勢を直して、ルーラーとヴァイスと呼ばれた主従を見据えて頭を下げる。

「自分らここに来たの初めてなんで、ちょっと色々教えてほしいんです」
「色々……とは、地理や名所など、でしょうか」
「あいにくですが僕らも流浪の身でして……。ここ天王寺に来てから日が浅いのです」
「いえ、そう言うわけではなくてですね」

手をひらひらと降って青年は否定の意を示す。
そうして大真面目に、かつへらへらとした態度を崩さずに、青年は堂々とその言葉を口にした。

「俺ら別世界から来たんですよ。でぇ。
 なんかーその、モザイクなんたら? みたいなのを詳しく教えてもらえますかね」
「……………………………………世界?」
「あ、俺アビエルって言います。こっちはタイタスさん。
 抑止の使者やってます。すげぇっしょ」

あまりにも包み隠さぬアビエルの言葉に、
後ろでベンチに座っているタイタスが頭を抱えて天に愚痴を溢す。

「………………少しは取り繕う事を覚えろアビエル野郎……」

その愚痴は誰の耳に届くまでもなく、ただ虚空へと溶けていった。





「…………ここ、何処?」

深夜、漆黒に染まった街を一人の女性が歩く。
女性の名は、雪二香澄。冥裏七式と呼ばれる魔術的な研究機関の一員である魔術師。
彼女はモザイク市『新潟』と呼ばれる街に在住しているのだが、彼女は今その目に映る光景に違和感を覚えていた。

「…………こんな場所、新潟にあったかな……」

そう、本来『新潟』に限らず、モザイク市というものはあらゆる建造物が継ぎ接ぎになったかのような様相を見せる。
だからこそモザイクの名を冠する。だが彼女の目に映る物は明らかにそういったモザイク市の当たり前とは異なる風景であった。

ビルが立ち並び、そして繁華街が見える。
視界の端には東京タワーらしきものも映っている。
彼女は思考する。これは明らかに、写真などで見た戦前の東京、この国の首都の様相そのものであると。

「……夢でも見てるのかな。眠れないから、外歩いてたはずなんだけど」
「夢ではない。これは現実だ」

突如として香澄の隣に人影が1つ出現する。
全てを見下し、全てを俯瞰し、そして全てに興味を抱いているような、矛盾した男であった。
男の名は両面宿儺。新生した世界、全ての人類がサーヴァントを持つモザイク市にて、香澄が得たサーヴァントである。

「……ついてきてたの?」
「マスターが死なれては、俺が自由に出来ないからな」
「……そう」
「だがそれより、見ろ。お前、随分とけったいな場所に迷い込んだものだな」

何を…………と、そう言いかけたその時だった。ふと、香澄はその目の前に視線を向ける。
するとそこには、巨大なバイクにまたがった男がいた。ただのライダーではない。その男には、首が存在しなかった。

「──────ッ!!」

一目でわかる。あれはサーヴァントだ。それもこちらに殺意を向けている危険な英霊だと。
ゾッと背筋に悪寒が走るよりも早く、彼女の隣に立っていた両面宿儺が地面を蹴って"それ"との距離を詰める。

「遊んで欲しいのか。ならば魅せてみろよ"混ざり物"」

腕を何十もの細かい腕に分裂させ、嘲笑いながら宿儺はその目の前のサーヴァントのバイクを絡めとる。
だが首なしライダーも負けじと、その拘束を振り払うためにアクセルをフルに回し、いくつもの腕を引き千切り無理やり脱出する。
そして天高く放り投げられると同時に、そのバイクを素早く回転させて地面へと華麗に着地した。

「ほぅ!! やるな! 面白い!」
「■■■■■■■………!!」
「ね、ねぇ……何なの、あれ? 首なしライダー?
 都市伝説じゃないの? そんなのまで英霊になるものなの?」
「いや、あれはおそらくは混ざり物……足りないものを足りないもので補っているだろう。
 "似ているから分かる"。だがそれはそれとして──────」

ケヒッ、と愉快気に口を吊り上げて宿儺は笑って自らのマスターに注意を促す。

「"前だけ見ていると死ぬぞ"」

その言葉で、ハッと香澄は気づく。
危機は、目の前にだけあるわけじゃないと、冥裏で学んだ多くのサーヴァントに対する理解が彼女に教えた。
この場所にいる英霊は、1体だけじゃないと。

「……上!?」

頭上に気配を感じた彼女は、すぐさまにその視線を上へと向ける。
するとそこには、無数の飛竜───ワイバーンが飛来しているのが見えた。

「えっ、ちょちょちょっ!!? 待ってここ本当に何処!?」
「はは! お前が"慌てふためく"など珍しい!! さぁどうする、切り抜けて見ろよ雪二香澄!」
「言ってる場合!? あんたもピンチでしょ助けなさい!!!」
「五月蠅いな。俺はあの首なしとの駆け引きが楽しいんだ。邪魔をするな小娘」
「な──────っ……!?」

一応マスターである自分に何を言うんだこいつは、と言う時間すら香澄には惜しかった。
ひとまず眼前の首なしライダーは宿儺が対応するのは分かったが、頭上のワイバーンは自分がどうにかするしかないというのも理解した。
自分のような弱小魔術師で、あんな怪物を相手取れるのか……そう考えていたその時、突如として頭上に飛来していたワイバーンが両断される。

「っ、新手?」
「こっちだ!」

声が響いた方を香澄は向く。
するとそこには刃を携えた女性がいた。
燃えるように紅い髪を持つ、長髪の女性であった。

「あ、ありがとうございます」
「竜を狩るのが私の役目だ。礼は良い。それよりも早く安全な場所に」
「はい。……………バーサーカー!」
「俺は良い」

ケヒッ、と笑いながら宿儺は振り向かずに言った。

「俺はもう少しこの異界を楽しむとしよう。まずはこの首なしと戯れて様子を見る。
 ここは退屈しなさそうだ。退屈しかなさそうな安寧に行きたいのなら、お前1人だけでいけ」
「……………………そう」

それだけいうと、香澄はそっぽを向いて赤髪の女性に言う。

「行きましょう」
「……良いんですか?」
「良いの。あんなバーサーカー。いても迷惑なだけだろうし」
「…………」

少しの沈黙の後に、赤髪の女性は香澄の手を引いてその場から離れていった。
そしてその場にはただ1人、狂った笑みを浮かべて高揚するバーサーカーだけが残されていた。

「ケヒ、ケヒヒヒ……。嗚呼、久々だな、この高揚。
 あの安寧秩序とした"墓標"なんぞでは決して味わえなかった感覚だ」

ニタァ、と下卑た笑みを浮かべ、宿儺はその拳を構えて、そして言う。

「この俺を楽しませろ、幻霊ども」





「ふむ……。ここが、土夏市か」

1人の男が顎を撫でながらニヤリと笑って高台から街の全容を捉えている。
時代錯誤、かつ目に痛い世界各国の軍服の混ざり合った奇怪な衣装をまとったその男は、さらに狂暴にその笑みを尖らせながら一人語る。

「なるほど……なるほど、なるほど。良い魔力が渦を巻いている……。
 そして、血……血だ。嗚呼、良い殺戮の舞台だ……1,2……7、か」

地に手を当てて男はその大地に根付く霊脈の情報を読む。
そうしてそこに存在する大きな魔力の塊、即ち「サーヴァント」の存在を知覚する。

「クク……ククク! それもモザイク市に蔓延る牙の抜かれた者らではない。
 正真正銘、人を殺すために呼ばれた7つの人類の栄光の気配だ……!! 素晴らしい!
 加えてこの風景……戦前の日本と同じではないか……ぐろぉりあす! 雄々、ぐろぉりあす!!」
「オイ」

興奮しながら笑うその男に、背後からかかる1つの声。
男が振り向くと、其処には益荒男がいた。甲冑を纏う、豪傑なる気配を纏う男であった。
その隣には打って変わって華奢なシルエット。髪でその顔を隠し、全身を紅いコートで覆った"ナニカ"がいた。
ほう……と男が一言振り向いて呟くと同時に、益荒男が一言投げかける。

「お前、悪党だな? 何してんだ」
「如何にも俺は悪党だ。そう言うお前は、何だ?
 善か、悪か、あるいは──────中立、か?」

抜き身の刃の如き殺気2つが、今宵この土夏において、衝突する。





かくして、交錯の夜が来る。
帳は落ち、語られるはずの無いあの日の夜が再び訪れる。

土着の神魔を求めし月の狂気は、何処へ向かうのか
神殺しが為に歩む抑止力は、その目に何を映すのか
泥濘の新宿は口を開き、そして格子に混ざりし新世界は鎮魂歌を奏でだす。
始めよう。あの時の続きを。あの日答えられなかった答えに、もう一度答えを出そう。


これは、答えを無くしたあの過去に、答えを打ち出す物語。


出会った意味はどうだっていい。ただ彼らは惹かれ合う。
時も、世界も、全てを超えて、彼らは今、互いにその手を取り合う。





「…………ん、んん……」
「……あ、目が覚めましたか?」

一人の青年が、目を覚ます。外見からして、17から18ほどの年齢であろうか。
青年は周囲を見渡しながら、此処がどこなのかを確認している。そんな青年に対し、その隣に座っていた少女が声をかける。
隣に少女が座っていることを認識すると同時に、青年は一言その少女に問う。

「……ここ、は……」
「あれ? 分からないんです? よっぽど深い眠りだったみたいですね……。
 ここは横浜。モザイク市『横浜』の海岸近い公園ですよ。ほら、海が見えるでしょ」
「横浜……」

そう一言だけ呟いて、青年は目の前に広がる海にその視線を向けた。
ちょうど海に向かう形で設置されていたベンチに座っている彼は、その姿勢のままに海を一望できた。
そしてそのままあることに気付く。どうも座ったまま眠っていたらしく、体の節々に痛みが残るということに。
痛みに耐えながらも青年は、その視線を海から隣に座る少女へと向けて一言問う。

「君は?」
「私? 私は慶田紗矢って言います。慶田でも紗矢でもどっちでも好きな風に呼んでください!
 いたって普通の女子高生で、基本人助けやってます! 宜しくお願いします!」
「よろしく……。 でも、なんで俺の隣に?」
「あ、えっと……気持ちよく寝ている人がいるので、なんか財布とか泥棒されたりしないように見張ってあげていた方がいいかなと……思って……。
 も、もしかして迷惑だったりしましたか!?」
「いや……そんなことないよ。だから、大丈夫」
「良かったぁ……」

ほっとしたように、紗矢はその大きく膨らんだ胸をなでおろして安心する。
そしてそのまま隣に座る青年の顔を覗き込むように目と目を合わせ、今度は彼女側が問いを投げかける。

「貴方の名前はなんていうんですか?」
「俺? ……コーダ。コーダ・ラインゴルト」
「コーダさん……珍しい名前ですね。……あれ、そういえば……コーダさんのサーヴァントは…?」
「サーヴァント……?」

コーダと名乗った青年が周囲を見渡す。
すると確かに、公園にいる無数の人々は基本的にサーヴァントを連れているのがほとんどであった。
モザイク市、世界が再編されて以降はサーヴァントを持つのが当たり前。そういう価値観がモザイク市民にはあった。
だがコーダと名乗ったその少年は確かに誰も連れていない。それが紗矢にとっては不思議な感覚であった。

「……あ、もしかして、悲しい事件とか……だったらごめんなさい」
「いや、大丈夫だよ。ちゃんといるし、多分生きていると思う。ただちょっと、はぐれただけ」
「そうなんですか? じゃあ、一緒に探しましょうか?」
「……手伝ってくれるのか?」
「もちろんです!」

そう言って紗矢はタっとベンチから飛び跳ねるように勢いをつけて立ち上がる。
そうしてパンと手を叩いて、コーダの前に手を差し伸べる。

「誰かに助けられるって事は、とても気持ちいいですから…ね」
「……ありがとう。それじゃあ、お言葉に甘えて……よろしく、紗矢ちゃん」
「はい!」

そう言って青年と少女は歩み出した。
少し歩いて、コーダもまた1つ疑問が浮かび、紗矢に対して問いかける。

「……そういえば、紗矢ちゃんのサーヴァントは?」
「あー…………、あれは、いいんです」

少し苦々しい顔をして、そっぽを向いて紗矢は頬を膨らませた。

「いつも海の方ばかり向いて、ぶつぶつ言ってるだけですから」





────────────モザイク市『横浜』 近郊外 人気のない岩礁にて


ただ波の打ち寄せる音だけが響く、モザイク市に貼られている結界よりも、さらに遠くに、それはいた。

「──────あ、いあ……」

全身を潜水服で覆い、素肌を見せぬ"それ"は、その頭部を覆ったヘルメットを通して海を見る。

「……ぐるい、──────ぐん」

ぶつり、ぽつり、と。ただ詠唱をそれは呟き続けている。

虚ろなる瞳を以て、呟き続ける。

「…………うなふ、うがふ……」

それは、ただ意味もない虚空へ溶け往く戯言か

あるいは

混ざりゆく世界を俯瞰する、虚無の詠唱か


「いあ いあ くとぅるふ ふたぐん」

「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」


to be continued...→

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