ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。



ォォォォォォォォォォォォ…………ッ、と
ある日本の田舎町にて…………生臭い夜風が吹きすさぶ、


時は大正、浪漫溢るる近代日本の黎明真っ只中。
今宵、この日本に残りし奇譚の一つを語ろうか。



という言葉を聞いたことがあるだろうか。
日本人ならば誰もが聞いたことがあるこの言葉。
よもやこの語りを聞く貴方がたは、この鬼という物を御伽噺の中だけのものと思っちゃあいないか?
否、否、断じて…否………。鬼という物は実在する。どこにでも、何処にでも存在している。
"鬼"、それは人の恐れの象徴、恐怖の具現……。災厄、病魔、闇…人の恐れる全ては、
鬼と名をつけられそして、退治されていった…………。
つまり鬼とは、我々にとって身近なものなのだ。

ほら、君の横にも、
君をとって食おうとしている鬼がいるよ。





日が暮れる。果てしなく青かった空が赤く染まっていく。
先人たちは実に賢い物で、暮れなずむ時頃を"逢魔が時"と名付けたそうな。
昼と夜の移り変わる時刻……即ち、黄昏どき。それはまさしく"魔"と"逢う"時であった。
『お市ー!もう暗くなるから帰りなさーい!!』
『えーっ!やだー!!』
『おいおい!早く帰んねぇとぉ、鬼が出るぞぉ〜!!』
そう、脅し半分ふざけ半分の声が響く。
嗚呼…………………その言葉が嘘ならば、
子を帰らせるための方便ならばどれ程良かった事であろうか。


すっかり夜も更けた時刻、草木も眠る丑三つ時とはこのことか。
何処かで無く犬の遠吠えを聞きながら、男が二人歩いている。
「うぇ〜、ひっく!」
「あぁー…呑みすぎちまったぁよぉい〜」
どうやら相当酒を飲んでいるらしく、千鳥足でふらついている。
そんな男たちの前を、身なりの整った青年が歩く。
当時の日本人には珍しい背広を纏い、気品溢れる出で立ちであった。
─────しかし、都会であれば"もだん"であると良く思われるその服装も、
こんな偏狭な田舎町では悪目立ちするという物、青年は運悪く酔っ払い2人に絡まれてしまった。
「おいおいおいにいちゃんよぉ!金持ってそうな身なりじゃぁねぇのぉ!!」
「俺たち酒飲みすぎて金ねぇからよぉ……恵んでくんなぁ!」
しかし青年は、そんな男2人を白い目で一瞥した後に、歩を進めようとする。
「オイオイオイオイ待てよぉ兄ちゃあん!!」
「逃げれんと思ってぇんのかぁ莫ぁ迦!!」
「……………申し訳ございません。急いでおりますので」
「んなぁら金出しなぁ!!金出さねぇんなら死んでもらおうかねぇ!!」
「今にも死にそうな青白い顔しやがってェ!!ここで殺してやろうかぁ!?」
ギャハハハハハハハと男二人が下品な笑い声を響かせる。
「────────"今にも死にそうな"、"青白い顔"…………か」
ニィ、と青年の口端が上がるのを、男の片割れは見た。

それが男の片割れが見た最後の光景であった。
パァン!、と………南蛮渡来の鉄砲が弾けるような音が夜闇に響く。
それは、その酔っ払いの男の片割れの頭が、地面に堕ちたざくろのように派手に飛び散った音であった。
「……………っ!?ひっ!あ……ぎゃあああああああああああああああ!!!!」
突然の事態に、もう片方の酔っ払いは己の視覚に入ってくる情報を処理しきれず、ただ叫ぶしかできない。
無様に地面に腰を突き、汚水を股間から垂れ流しながら這いつくばって逃げようとする。
「私が死にそうに見えるか……長く生きられないように見えるか?……そうかそうか……」
カカカカカカカカカ………、と青年は笑いながら歩みを寄せる。
「こんなにも脆い人間の分際でェ!!!!!!!!!!!
よくもそのような戯けた口を聞けた物だァ!!!!!!!!!!!!!」
青年は突如として激昂する。ビリビリビリィ!!!!と周囲の空気が振動する。
それは物理的な意味でも、そして青年の発した"魔力的な意味でも"ただしく振動していた。
「────────だが、そんなお前たちに朗報だ」
そう言いながら青年は、ズブリ……と己の人差し指を男の脳髄にさす。
「あっ────────」
「そんな脆く、弱く、力も無く、空も飛べない…羽虫にも劣る貴様らに、
この私が直々に力を与えてやろう………………。」
瞬間、ゾンッッッ!!と地面に陣が描かれる。
『素に鉛と鉄……… 礎に破滅と絶望の象徴……』
「あ………あぎ……っ、ぃ!」
青年が何か呪文の如き詠唱を開始すると、男の身体がぐずぐずと崩れ落ち、
そして異形へと変貌していく。
『告げる。汝の命は我が糧に、我が災厄は汝の血肉に。』
「がっ……!!あぎ……!!」
どろどろと肉が剥がれ落ちていき、そしてその内側から、
黒き肌に爛々と輝く瞳、そして隆々の肉を持つ者が出現する。
『我は常世総てを滅ぼす者、我は常世総ての悪と成る者。』
──────その様は、まさに"鬼"と呼ぶにふさわしい存在であった。
「……………さて、新しい肉体はどうだ………」
「キ…………キアァァア…………、キ……もち…、ィィィィィィィィィィ」
「そうか………、ならば手始めに、ここら一体の人間を鏖殺にしてこい」
そういうと、青年はその場を後にした。





「お前の教えた英霊召喚術、誠に役に立つ」
『ありがたき幸せ』
「だが、私が大敵として呼ばれたからには、好きにさせてもらうぞ」
『心得ております』
「ならば去れ、二度とその悍ましい面を見せるな……、人間」
『……承知いたしました』
ある男の声と青年の声が、暗闇で響く。
そののちに、青年の背後にいくつもの気配が部屋に突如として出現する。
「来たか…………、英霊剣豪………、いや…"鬼"霊共………」
『ここに』
その揃った声を聞くと、青年は踵を返し振り向く。
「始めに言っておく。お前たちは、我が野望完遂への時間を稼ぐための道具でしかない
だが………、行動は自由だ。お前たちに埋め込んだ"一切鏖殺"の宿業に従い、人を殺すのならば」
その複数の人影の背後にいう、何十何百という夥しい数の"鬼"が湧き立つ。
「貴様らは"鬼"だ。"鬼"霊だ!英霊、幻霊、亡霊の垣根なく、すべて等しく人を殺せ!!
貴様らに埋め込んだ宿業!そして鬼種としての力!!存分に我が"破滅"の役に立てよ!!」
『御意に!』
そういうと、それぞれの人影たちは散り散りに散っていった。




今宵は下弦の月が夜に浮かぶ。
まるで、地を這う人間どもを嘲笑うかの如く、
逃げ惑え人間どもよ、今宵は鬼が殺戮を始める宴であるぞ

「違う!」
「違う!!」
「違う!!!」
男が一人、人を切っては捨てて切っては捨てている。
『う、うわああああああああ!!何だ貴様………ぎゃあああ!!』
『テメェ!気違いかぁ!?……ぐぎゃあああ!!』
「どこだぁ………!何処にいる!!我が剣は貴様にのみ向かう……!」
「宮本武蔵ィィィィィィィィィィ!!!」

──────── 一切一心 キャスター『虎虎婆地獄』・上田宗入

『な、なんだ!?突然何があった!?』
『玄さん逃げろ!賊だ!!賊の襲撃がぁぁぁあああ!!!!』
ズチャリ、と農民が背から切り裂かれて鮮血をぶちまける。
「賊程度と我ら鬼霊剣豪を間違うたぁ良い度胸だぁ!!」
男は血しぶきを紅き月の下に舞わせながら、高らかに笑い人を殺す。
「カカカカカカカカカァ!!愉快痛快ィ!理性など捨て去って正解であった!!
今宵の鮮血は我が刀剣の刃に映える映えるわァ!!!」

──────── 一切微塵 セイバー『針山地獄』・足利義輝

『逃げろぉ!!こいつら人間じゃあねぇ!!』
『おいどけぇ!俺が先に逃げんだよぉ!』
ドン、と逃げ惑う男たちが何者かにぶつかる。
『おい!!テメェ何立ち止まってやがる!!』
『お……、おい……、ここに河なんてあったか!?』
目の前には、あるはずの無い濁流が流れている。
そしてその流れは、突如として近づいたその男たちに牙を剥く。
『ッ!!お、おい!!こりゃあ河じゃぎゃあああああああああ!!!』
『い、嫌だぁ!!死にたくねぇ!!俺はまだ死にたく────』

──────── 一切流葬 モンスター『コキュートス』・瀬登太刀

『血が……!血がぁぁぁ!!』
『しっかりおし!まだ足が残っているでしょう!
生き延びてこの事を一人にでも多く伝えるんだよ!!』
「──────嗚呼、またもや、罪の無き人々の血が流れる………」
夜闇に紛れて村を抜けた子供と母親の前に、一人の女性が現れる。
『ひっ!』
『だ……誰かは知らないけど!た…助けてくれ!!
うちが………うちらの村が………!!』
「ええ……知っています………これより、向かう所です」
『そうか………良かっ──────』
ズシュ、と深々と逃げてきた女性の腹に真剣が突き刺さる。
『────────────えっ』
「殺しましょう、ええ殺しましょう。全てを亡き者に、全てを絶望に。
罪深き者を地獄に落とし、復讐としましょう」

──────── 一切復仇 アヴェンジャー『等活地獄』・初

「大丈夫。もう安心してくれ」
『うぇぇぇぇぇん!!怖かったよぉ〜!!』
逃げ遅れたのか、はたまた母親からはぐれたのか、
一人泣いていた女の子の下に少年が駆けつける。
「うん、怖かったね、でももう大丈夫だ。僕が駆けつけた。」
少年はそっと、優しく少女の頬をなで、涙をぬぐってあげる。
「だから――――――さあ、安らかにお休み」
そのまま、表情の変化は一切なく、殺気も一切なく、
少年は少女の腹にその持つ妖刀を突き刺した。
「死ぬことで、君はようやくこの地獄の如き世から解放される」

──────── 一切守護 ライダー『畜生道』・犬塚信乃

…………そして
「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!殺ず!!
全てを……全ての人間をォ!!!殺し尽ぐずゥゥゥゥゥゥ!!!!」
轟ッッッッ!と異形なる人型が刃を振るう。その一振りで何十、何百という人が輪切りにされる。
「俺ばァ゛!!!己が身を化け物に墜としてまで人を守護しだァ!!
だがどうだ!!人は次の標的を己に鞍替えした!!!怒りだ!!もう怒りしかない!!」
男は、いや………化け物は目につく全ての人間を殺し、殺し、殺し尽くす。
「ごの"童子切安納"で!!ごのオレを見捨てた貴様ら人間どもを!!!
須らく皆殺しにしてくれようぞ!!!!」

──────── 一切屠殺 アヴェンジャー『ゲヘナ』・源頼光

今、人間の歴史が書き換わる。
人類が絶望にその表情を染める、最後の47日間が幕を拓こうとしていた。





「さて………、更に人手を増やすとしようか…………」
ガリガリガリ、と青年は陣を描き、そして高らかに言う。
「さぁ!死して己の欲満たせぬ人間ども!!貴様らの不満を問おう!
崇め奉られし英霊も!力無き幻霊も!もはや名すら失った亡霊も!!
その不満を"一切鏖殺"の宿業の下に晴らせ!我々は力を欲している!!
人を憎む者よ、人を殺したい者よ、欲望を形にしたい者よ!!我が声に答えよ!!」
そう男が唱えると、男の描いた陣より大小さまざまな魂が現出する。
「当然鬼どもも例外ではない!!個としての名を遺さぬ鬼も来い!人を憎むならば鬼でなくとも構わぬ!
この酒呑童子が!!貴様らのその欲望を叶えよう!!殺せ!殺して我が野望を果たすのだぁ!!」
そして青年は己の血をその魂たちに与え、そして形を与え、"鬼"へと変貌させていく。
"鬼"となったその魂たちは、己の果たせなかった欲を果たすべく、人里に降り殺戮を開始する。
「さぁ諸君……………」
ギチチ………ッと青年は笑みを浮かべて言う。

「地獄を創るぞ」



Fate/shadow chaser-"鬼"霊剣豪 真剣勝負- 神秘必滅の血戒鬼譚

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