ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。


 目が覚めた先の景色は、薄暗い路地裏だった。
 随分と寝たはずなのに、未だ夜の色をした空。路地を隔てた先の雑踏の喧騒。
 状況が掴めない。自分は、そう――

「ここは何処だ、って顔をしてるな。
 『自分は柔らかいベッドの中で、暖かい眠りに就いたハズなんじゃないのか?』
 そんな感じか?」

 眼前に影が差した。
 顔を上げれば、トレンチコートを着た中年の男が、立ったままこちらを覗き込んでいる。

「残念だが、現実はこうだ。『地獄へようこそ』ってな。
 ……おう、聞き覚えのある顔だな。
 そうとも、周りをよく見渡してみな」

 聞き覚えのある言葉。忘れもしない、あの『新宿』で最初に聞いた『彼』の台詞。
 抱いたデジャヴに、ようやく焦点を取り戻した視界が既視感を伝えて、確固たる確信となる。

「ここは新宿。1999年、お前が修正した亜種特異点そのものだ」

「心配するな。お前のやったことが無に帰ったわけじゃない……だがしかし、即座になにもかもがなかったことになるわけじゃない。
 それはお前もよーく知ってるだろう?」

 修正されていく特異点の残滓……確かに、それは知っている。それを修正し直すのも、またカルデアでの活動の一つだった。
 ならばここは──

「ここは悪党どもの最後の寄る辺(アサイラム)、修正されていく新宿にこびりついたドス黒い染み。
 ベタな言い方をしちまえば……影新宿」

 ──影新宿。
 特異点・悪性隔絶魔境新宿が残した、最後の事件。

「理解したな? お前の仕事は、この事件を解決する事だ。
 なに、ホームズを託そうってわけじゃない。ワトソンで十二分さ。
 かの世界で一番有名な名探偵には及ばないかもしれないが、俺も格では負けていない。
 いやむしろ俺の方が上だ」

 自信有り気な顔で、男は──謎のサーヴァントは、右腕を突き出す。
 カルデアとの通信は通じない。ここが特異点の残滓だと言うのならば、彼の助けが無ければ、生き残ることは難しいだろう。

「契約成立だな。安心しな、俺は悪党だが、契約を違えるのは嫌いでね。
 それじゃ俺のコトは、……そうだな。ディティクティヴ、とでも呼んでくれ」

『悪性隔絶魔境 新宿-shadow edition-』





「あのサーヴァントが見えるか? 見えるな?
 よし、あのおっさん二人にゃ近づくなよ。二人程度なら俺でもどうにかできるが、問題は──」

「ジョニー! 例のカルデアから来たっていうマスターは何処にいるんだ!?」
「落ち着けよ。総出で探してるんだ、近いうちに見つかるはずだろ」
「そうは言ってもだな、カルデアのマスターって言や人理を救ったとんでもないヤツだろ?
 これまでも絶体絶命の状況を乗り切って来たんだ、何かミラクルを起こしても不思議じゃないぜ」
「どうせ使役するサーヴァントもいないはずなんだ、そこまで警戒したって……おっ!?」
「どうしたジョニー?」
「あれが……カルデアのマスター? 遠目の写真で見た時はどうとも思わなかったが、こうして直で見ると……
 よし、捕まえる前にあれだな、ちょっくらメイクラブを……」
「ジョニー?! 待てジョニー! ジョニイイイイイ!!!!!」

「……やべ、見つかったか。仕方ねえ、一戦したらすぐに逃げるぞ……10人集まって来る前にな!」





「不愉快極まる、ああまったく不愉快極まるよ。
 なぜかって? わからないのかね、知的好奇心の掻き立てられない、つまらないトリックの宝具を使わされている挙句、あの私のフォロワーに過ぎない麻薬中毒者の後始末をさせられている現状が、どれだけ不愉快なのかを!
 いや君の頭ではわかるはずもないな、失礼」
「ウホッ!」
「さっさと街に出て行きたまえ。そうしてカルデアのマスターを狩り出してくれ。
 まったく……探偵を推理ではなくただの人狩りに使うなど、頭脳の使い方を間違えていると言わざるを得ないな」





「ハァッ!
 と飛び出して来たるは影新宿。しかし出て来たはいいが神性の気配もないし内藤ホライゾン君もいない、これでは調子も出ない。
 っていうか本当なんで神性いないのに俺呼んだの? 探偵だから適当に呼んでない?
 頭脳労働担当は明らかに多すぎるし、船頭多くして船山に登るってこの国じゃ言うらしいし?
 つまり言いたい事としては、俺帰ってもいい? ダメかな」

「お兄ちゃん……あの人一人でぶつぶつ言ってる……」
「よしなよ。大人は色々と大変なんだからさ……」

「子供の目が痛い!!!」





「ふむ……召喚されたはよいが、悪の手助けは少々心が痛むのう……どうにかならんものか……
 のうジャアファル? ……む、そういやおらんのか。ならばお主をジャアファル二号としよう。
 ここではマスルールも呼びにくいようじゃからな、見たとこ強そうじゃし、荒事役にはちょうど良かろう」
「ご老人、儂はジャアファルなどでは……いや、しかし生前の職務として、彼ら『新宿反証同盟』に手を貸すのに気が引けるのも事実ではあるなあ。
 ここは同道するとしようかね」





「魔女はドコデスカー? ここデスカー?
 ンー……カルデアから来たとイウ魔女、中々見つかりマセンネー……」
「……しかシ、何処からか視線を感じマスネー……
 マサカ魔女!? 怖イ!」




「……魔女では無いッピ……」




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