kagemiya@ふたば

「サクヤくん、今日の分の仕事はどうするの？　………うん、分かった。じゃあ残りは私が片付けておくね」

「はい、大丈夫ですよ。私に任せてください。少し習ったことがあるので出来ると思います。いえ、お礼なんて。したくてしていることですから」

「サクヤくん、一昨日から何か変じゃない？　隠し事をしているというか、わくわくしているのに意気消沈している、みたいな………ふうん。まあ、いいけれど」

実はサクヤと同じクローンではなく、遺伝子操作という非人道的な試みによって生み出された少女。
なのでコピー元の人間というものは存在しない。この事を知っているのは無くなった義父の他にはサクナ本人以外にいない。
ちなみにサクヤと違い、魔術に関しての素養は全く無い模様。

内心はサクヤを含めた多くの周囲の人間を見下している、性格の悪い人物。
その振る舞いのほとんどが演技であり、たまにミスしてみせたりほどほどの成績を修めたり相手に優位を譲ったりするのもおおよそはわざと。
自分がある種の人造人間であることをコンプレックスに捉えておらず、むしろ好意的に考えており、全てではないがだいたいの他人は劣った人間と小馬鹿にしている。
適当な態度、適当な距離感、適当な人間関係を維持し、他者を排するのではなく和をもって有耶無耶にするのが甘い汁を吸い続けるコツという処世術は研究施設にいた時に身に着けた。
都合の悪いものはなるべく見なかったことにして穏当にちょっとずつ遠ざける、それでも無理なら片付けるのは自分の手ではなく他人の手で、と何かと邪悪。
他人のことは基本的に期待しておらず、失敗したり間違えたり誤魔化したりするのはよくあることだから鷹揚な態度でいてやるか、と裏で考えつつにこにこしているせいで逆に周りからの評価が上がる始末。

この隠している内側の性格の悪さは唯一真っ向から心を開いていた義父が亡くなったことも拍車をかけている。
人間に対してはほぼ誰にも自分自身を打ち明けないが、犬や猫といった動物には気を許し、普段の穏やかな声音とは別種の優しい声を出す。勿論、誰も見ていないし聞いていないことを前提として。
現在では心の底から信頼できる相手というのを持たないが、周囲の人間をつまらないと嘲笑う彼女には寂しさという感情は無縁のようだ。

サクヤのことは内心馬鹿にはしているものの、積極的に嫌っているわけでもなければ家族としての情が無いわけでもない。なのであからさまな異変があればさすがに本気で心配はする。
また（器用なのでほとんどそういう機会は作らないとしても）借りを返すことにサクナも拘るが、これも実はサクヤの影響によるものだったりする。

本音では喋り方や格好つけ方が痛々しいと感じて辟易としており、多くの他人と同様に馬鹿にしている。
とはいえ家族ではあるのでさすがに赤の他人よりは距離感は近いし、見下してはいても嫌ったり苦手にしているわけではない。