ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

 聖オブライエン教会は、わたしの家がある古堀から海の方へしばらく歩いた先にある。住宅街を抜けた先、周囲を防砂林に囲まれた場所にあるその教会は、あまりにも老朽化しているため、噂好きの学生の間では心霊スポットととして囁かれていた。
 ではなぜわたしがそんなことを知っているかというと、この教会は見た目が古いだけでしっかり神父さんがいる教会なので、面白半分に冷やかしに行ってはいけないと先生方から学級委員を通じて生徒にお達しがあったからである。わたしはそれをクラスの生徒たちに告知しただけなので、実際に教会を訪れるのはこれが初めてであった。
 夏の長い陽も、わたしの家を出てしばらくする間にとっぷりと暮れていた。本来ならば生徒が出歩いていいような時間ではないけれど、今のわたしにそんなことを気にするような感情は存在しなかった。


 円沢市古堀――わたしの家のある住宅街を抜けると、海と街を隔てる防砂林の中へと道は入ってゆく。断続的になっていた街灯は遂に途切れ、光は星明かりのみになっていた。道路こそ舗装されているものの、この道に入った瞬間、一気に街を出たのだという感覚に襲われる。
 そんな夜道を、近衛さんは振り返ることもなくすたすたと前を歩いている。長い髪が夜風を纏ってふわりと揺れ、キラキラと輝いていた。
 歩き出した頃は聖杯戦争について簡単に話してくれていたけれど、話題が途切れてからはずっと無言だ。わたしとしても彼女にどのような感情を向けたらよいのか分からなくて、口を開くようなこともなく彼女の後ろを歩くばかりだ。
 夜空は降るような星空だけれど、月はどこにも見つからない。夏のこの時間帯に月が木々に隠れて見えないだなんてことはなさそうなので、新月の日なのかもしれなかった。
 そして、わたしの横にはもう一人歩いている存在がいる。
『セイバー』と名乗った彼女とは、あれ以降一言も会話を交わしていない。
 どんな魔術を使ったのか纏っていた鎧と提げていた剣は消滅していたが、まるで絵本の騎士物語に出てきそうな鎧を纏い、黒いローブと深く被ったフードの姿は、先ほどまで歩いていた円沢の街とはあまりにも不釣り合いだった。
 そんな非現実的な彼女の存在が、先ほどまで起こっていた出来事が現実だったのだと否応にもわたしに突きつけてくる。



 お父さんの遺体は胸元の血をタオルで拭って魔術で止血すると、壊れていなかった工房のベッドに寝かせて、布団を掛けておいた。
 そして、殺されたのにも関わらずどこか安らかだった、その死に顔にハンカチで顔かけをして――――――わたしは彼を置いて家を出た。本来だったら夏の暑さを気にするところだったけれど、工房にはやはり魔術的な効果がかかっていたようで、壁が壊れても部屋の中はひんやりとしていたので問題はなかった。
 今も、お父さんはわたしの家の工房で、ぴくりとも動かず眠っていることだろう。
 ……わたしにできることはもう、それだけだった。




 いや、もう一つあるのか。



 お父さんが成し遂げたかったこの儀式――聖杯戦争を成し遂げる。
 それこそがわたしのすべきことのはずだ。
 そのためにも知らねばならない。
 わたしが巻き込まれた儀式はなんなのか。
 お父さんは、何を成し遂げたかったのか。


 ……それを成し遂げてなんになる?
 分からない。
 分からないけれど、誰かの役に立つことが正しいことだと信じて生きてきたから。
 父親の後を嗣ぐことは、わたしの正しさに反しないはず。
 今まで魔術の訓練をしてきたことと、何も変わらない。
 彼の瞳の輝きに応えるために生きてきたのだから。
 その光に報いるために応じてきたのだから。
 そうだろう? 鞠瀬日陽よ。
 わたしは、心のなかて頷いた。
 


 防砂林の中を、海と平行に歩いて数十分。ようやくたどり着いた聖オブライエン教会は、暗い闇夜の中に落ちていた。森を切り開いたというよりもそれを避けるように植樹された空間の中央に、古びた教会はぽつんと立っている。
 天井は高そうだが、恐らくは平屋だろう。三角錐に尖った屋根の先に取り付けられた十字架は、この距離でも見て分かる程度には傾いている。入り口のついている礼拝堂の壁面はあちこちの塗装が剥げ、そこからくすんだ色の木材が覗いているのが暗い中でもよく分かった。一部はペンキの剥げに止まらず、完全に虫食い穴すら空いている。
 写真で見たとおり、一見したら廃墟に見間違えられそうなほどに老朽化した建物だ。
 だが。
「ファザー・カルマート。お約束の通りお連れしました。セイバーのマスターです」
 まるで目の前の人間に話しかけるようなボリュームで近衛さんがドアに話しかけると、しかし廃墟同然だった教会のポーチに明かりが点った。
 その光の元は魔術的な炎などではなく普通の電球で、こんな建物に電気が通っていることにまず驚いた。
 しばらくして、耳障りな軋み音ととともに、木造らしき扉が開かれる。
 現れたのは、黒い法衣に身を包んだ一人の神父だった。
 おそらくは、西洋人。腰に届くほど長い髪は、しかし艶がなく真っ白だ。彫りの深い顔には柔和な笑みを浮かべているが、その顔には深く険しい皺が刻まれている。輝きの薄い灰色の瞳には、どこか優しげな影が落ちていた。身長こそ高く180は越えていそうだが、体格は厚い法衣の上からでも分かるほどに痩せぎすで、初対面なのに健康状態が心配になるほどだった。
 差し出された右手もやはり皺だらけで、その様子は老人と見て相違ないだろう。年齢としてはおそらく70は越えている。失礼なようだが、この崩れかけた教会にとても似つかわしい容姿をした男だった。
「初めまして」
 淀みのないはっきりとした発音の日本語で、神父がわたしの手を取る。
「ロベルト・カルマートです。ここの責任者を任されています」
 にこやかに挨拶するカルマート神父だが、すぐにその表情が憂いに変わる。
「――いえ、貴女にはこう自己紹介すべきですね」



「此度の聖杯戦争の監督役――見届け人の役割を仰せつかっています」



 このような場所で立ち話をするには些か長い話になりますので、と言われ、わたしたち三人は奥へと案内された。
 真っ暗な礼拝堂や薄暗い廊下を抜け、教会のバックヤードへと案内される。通り道は歩くだけで軋んだりあちこちに穴があいたりと散々たる有様だったけれど、埃一つなく綺麗に掃除されていた。なんとなく、こういう細かいことだけでカルマート神父の好感度が高くなってしまう。
 教会の応接室も、やはり老朽化が目立つながらも他の部屋と比べると小綺麗な造りだった。低めの木造テーブルが一つと、綿が潰れた大振りの一人用ソファが四つ。床のカーペットにはシミこそ多いが、やはり埃臭さのようなものはまるでない。テーブルの中央にはチェス盤のようなものが置かれていたが、それ以外に装飾品らしきものはない。入口と反対側に備え付けられた大きな窓には、教会を囲む防砂林の木々の影が大きな生き物の手のような形で映り込んでいた。
 おかけください、とカルマート神父に促され、わたしと近衛さんは席に着く。だが、その後彼がお茶を出しにと更に裏手の厨房へと引っ込んだ後も、セイバーは入り口を守るように立ったまま動かない。
「あの……セイバー……さん? は座らないんですか?」
 そう問いかけてみるが、セイバーは扉の側に立ったままだ。
「セイバー……さん?」
 二回目に話しかけて、ようやくセイバーが口を開く。
「ボクは貴女のサーヴァントです、マスター。どうか、敬語・敬称は使わずただ"セイバー"と」
 硬めの義務的な口調だった。
「また、貴女は未だ置かれた状況を理解されていないようですが、今は貴女を護ることこそがボクの役割。どうかお構いなく」
 セイバーは恭しく頭を下げ、そしてまた扉の元に立つ。よく見ればいつ着替えたのか再び鎧を纏い、腰には剣の鞘を提げていた。
 つまり彼女はわたしの護衛をしているのだというのだった。
「そういうものよ、鞠瀬さん」
 近衛さんが脇から声を出す。
「このあたりもこれから説明してもらうはずだけれど……今の彼女は『サーヴァント』ゆえに『マスター』である貴女に仕える身。警護するのは当然のことよ。それは……ほら、ランサー」
 近衛さんが誰もいないはずの背後に声をかけると、そこから瞬きする間に赤い軽装鎧の男――先ほど姿を消したランサーが現れる。
「私も同じ。マスターはサーヴァントに守ってもらうものなの」
 近衛さんが目配せすると、ランサーも無言で頷き再び姿を消す。
「そうなんですか……。分かった。よろしくね、セイバー」
 わたしもセイバーに向かって声をかけると、彼女もまた会釈をして扉の護衛に戻る。
 魔術に関わる儀式であること以外何も理解できていないわたしは、ただ馬鹿みたいに頷くことしかできなかった。



「お待たせしました」
 カルマート神父が相変わらず流暢な日本語でわたしたちに持ってきたのは透明なカップに入ったお茶だった。
 それと同時に、応接室の中にリラックス出来そうな香りが漂う。
 恐らく彼が持ってきたのはハーブティーだ。ハーブの種類までは分からないけれど、上物なのは間違いなさそうだと思った。
 いただきます、と断ってからカップを口に運ぶ。すぐにわたしの口腔を通って鼻腔を芳しい香りが満たした。まだ昼の暖かさが抜けきっていない夏の夜に飲むホットティーだけれど、そんなことを忘れてしまうほどには飲みやすい。
「――さて、どこから話しましょうかね」
 カルマート神父が席に着き、両手を組む。
 わたしは思わず身を乗り出した。
「まず改めてお教えしましょう。貴女が参加することとなった儀式ですが――」



「その名を、『聖杯戦争』といいます」



 そして、彼は語り始めた。
 あらゆる願いを叶える聖杯のこと。
 それが作られた出自のこと。
 聖杯そのものが選び出す、聖杯を掴む権利を得た者――マスターのこと。
 聖杯が作り出す一つの奇跡、過去の英霊たちの影法師――サーヴァントのこと。
 サーヴァントを従わせるために必要な紋章――令呪のこと。
 今回の聖杯戦争が五回目の聖杯戦争であること。
 ――そして。


 
 15年前の円沢市極地大地震と、それに伴う大火災。
 それは、前回の聖杯戦争の余波によって起こった可能性が高いと、彼は語った。


 
 わたしの背筋が強ばる音がした。
 物心つく前の出来事だ。わたし自身に何か大きなトラウマがあるわけではない。ただよくその朧気な記憶を元にした悪夢を見るというだけの話。この話を聞いて、もっと衝撃を受ける人もいるだろう。
 けれども、わたしだってその災害で母を失った。
 お母さんは警察官だったらしい。それを教えてくれたのはお父さんではなくて、偶然わたしの苗字を聞いた近所のおばさんだった。
 警察組織の仕組みにはあまり明るくないけれど、確か階級は巡査とかそれくらいで、特別キャリア組だったわけではないらしい。
 けれどその分だけ街に密着して慕われていたらしい彼女が、どうやって世間とほぼ関わらない魔術師であるわたしのお父さんと出会い、わたしを生んだのかはよく分からない。
 実際、わたしにお母さんのことを教えてくれたおばさんが言うにはお母さんと出会った頃の(そして今ままでも)お父さんは得体の知れない怪しい人、という認識だったらしい。
 そんな人とくっつくことを選んだお母さんが、近所の人からめちゃくちゃ反対されたとも聞いた。けれどもお母さんの覚悟は揺るがなかったそうだ。
 そしてそうやって苗字が鞠瀬に変わった後も、お母さんは警察官として街の安全を守り続けた。
 お父さんの代わりに近所付き合いもこなし、なにも変わらないことをアピールして、僅かだけれどお父さんの評判も回復させたのだとか。
 そうやって、市民たちの間で慕われる警察官であり続け――。


 
 そして、円沢市局地大地震に居合わせた。
 燃え盛る街の中、お母さんは誰よりも率先して避難指示を誘導していたらしい。
 もちろん派出所の他の警察官も粉骨砕身していたようだけれど、一番奔走していたのがわたしのお母さんだったらしい。
 それとその時にはなんとお父さんまでもが避難の呼びかけに走り回っていたのだという。
 最後に目撃された姿は、逃げ遅れた人がいないか、ボロボロになった制服も気にせず炎の中に走っていく背中だったらしい。
 そんなお母さんの話を聞いたのが、わたしが人の役に立ちたいと思った原点だった。
 遺言だった訳ではない。
 何かを託された訳でもない。
 憧れ、という感情すら何かが違う。
 言うなれば、そう――――――



 そんな死に方が、わたしにはしっくりくるようなそんな気がしたのだ。
 

 だから。
 その後に聞いた話が、わたしの心を動かすのは必然のことだった。
「残念ですが……勝利のために手段を選ばないマスターも多く存在します」
 カルマート神父は深いため息をついた。
「そして、我々は度を超さない限りそれを制止する権利を有しません」
「どうして……!」
「魔術師の世界とはそういうもの、としか言いようがありません」
 長々と話し、すっかり冷めてしまったハーブティーを彼はソーサーへ置く。そのかちゃりという音が、静まり返った部屋の中に響く。
「恐らく大災害もまた、愚かなマスターが引き起こした惨事でしょうね」
 そんな、という台詞が、ついわたしの口をついて出る。
「"度を超さない"うちに止められていれば起こらなかった事件かもしれません。けれど、残念ながらそれはもう過去のことです」
 彼は一瞬遠い、そしてとても悲しげな目をしたあと、わたしに再び視線を合わせてきた。
 力のない灰色の瞳が、けれどもわたしの心の内を見透かしているようだった。
「お話ししているうちになんとなく貴女の人となりはわかりましたので、これをお伝えしておく必要があるでしょうが――ここ数週間に円沢市内で起こっている不可解な事件。あれにも恐らくサーヴァントが関わっています」
 思わずわたしは立ち上がっていた。
 急なその動きに驚いたのか、近衛さんが身構え、更にはランサーがいるはずの空間が揺らぐをの感じた。
 けれどもわたしはそれどころではなかった。
 わたしは偶然だがサーヴァントを得た。そして、あの事件もまたサーヴァントが関わっているという。聖杯戦争自体がこの街を乱しているのであれば、今のわたしはその一人だ。
 即ち、わたしがすべきことは一つに決まっている。
 誰かを苦しませる参加者を見つけ出す。そして、それをやめさせる。――もしくは、倒す。
 話を聞いていても叶えたい願いなんて分からなかったけれど、わたしのなすべきことなら今はっきりと分かった。
「まあ、落ち着いてください」
 一方で、わたしのそんな反応も見越していたようにカルマート神父は落ち着いた様子でわたしを制してきた。
「先ほどお話ししたとおり、聖杯戦争の本質はあくまでも願いを叶えるための儀式です。街の平和を守りたい――それは立派な意志ですが、それだけで貴女は殺し合いを勝ち抜けますか?」
「勿論です」
 けれど、わたしは間髪を入れずに頷いた。
 それはもはや反射に近い反応だった。
 迷う理由などない。
 むしろ、わたしの生きたい道がようやく目の前に現れた気分だった。誰かのために生き、誰かのために戦う。それはわたしが信念として抱いている「正しい生き方」というものに何よりも近しいもの。そんな気がした。
 それと同時に、お父さんがこの戦いに加わろうとしていたことも嬉しかった。お父さんの人となりは最期まではっきりとは分からなかったけれど、それでも少なくとも不特定多数の人間の命を奪ってまで自己の願いを貫かんとする人だったとは到底思えない。
 きっと彼も、この街を守るために参戦するつもりだったはずだ。
 大災害から多くの人を救った、お母さんと同じように。
 なぜか、根拠もないのにそう思えた。
 信じられた。
「わたし、戦います。この街の誰かのために」
 わたしは、カルマート神父に胸を張ってそう言った。
 


「セイバー」
 そして、未だ扉の前に控えている自らのサーヴァントに問いかける。
「わたしはこの街を守るために戦う。あなたの願いは分からないけれど、わたしを手伝ってくれれば嬉しい」
 令呪のない右手を差し出す。元より無理をして従わせようとするつもりはなかったけれど、態度としてそれを示したかった。
 セイバーを見上げる。彼女はわたしより頭一つ以上高いから、見下ろされる形になる。
 纏った鎧は傷だらけで、腰に帯びた鞘には血を拭った跡があるけれど。
 でも、怖いとは思わなかった。
 騎士であるはずの彼女の顔は美しいけれど憂いを帯びていて、そして何よりも優しげだったから。
 彼女はきっと優しいひとなのだと、そう思えたから。
「協力して……くれる?」


 
 セイバーはわたしに跪いた。
 そして恭しくわたしの腕を取る。
 フィクションの中でしか見たことのない騎士の礼節に、わたしは面食らう。
「……セイバー?」
 そして、彼女は深々とわたしに頭を下げて、こう言ったのだ。



「それでこそ我が主に相応しい、マスター。名も無き誰かの為に尽くすことこそ騎士の使命。ボクも是非、貴女と一緒にこの街を護らせてほしい」



 そして、セイバーはわたしの右手にキスをした。
 つい、びくりとなってわたしは手を引っ込める。
 サーヴァントは英霊の影法師。過去の英雄を聖杯が魔力で再現した、奇跡だけれど生身の人間ではない存在。
 それでも、彼女の唇は柔らかかった。
 手の甲に息づかいを感じて、潤った柔らかいそれが押しつけられて、小さな音がして。
 少し、顔が熱い。


 けれども、これは違う。
 これはまだ違うだろう。
 
「あのさ、セイバー」
「なんでしょう、マスター」
 セイバーが跪いたまま応える。
 わたしはそんなセイバーの両脇に手を入れて、無言で持ち上げる。もちろん本当に鎧を着た成人女性を持ち上げられる力はわたしにあるはずがないので、セイバーが自分の力で立ってくれたことになる。
 再び彼女に見下ろされる体勢になるけれど、こっちの方がわたしにはしっくりきた。
「そんなに畏まらないでくれると嬉しいな。確かにわたしはマスターであなたは従者サーヴァントかもしれないけど、わたし、そんなに尊敬されるような人間じゃないし。居心地が悪いって言うか」
 もう一度、セイバーに右手を差し出す。
「名前、まだ教えてなかったね。わたし、鞠瀬日陽っていいます。これから一緒に頑張ろうね」
 今度こそセイバーはわたしの右手を掴んでくれた。ところどころ剣によるたこができているけれど、それでも柔らかくて優しい女性の手だ。
 うん。今のわたしたちには、キスよりも握手の方が相応しい。
「分かりました。それでは、貴女はボクの同盟者です、マスター・日陽。ですがこの騎士の所作はこの身に叩き込まれたもの。多少染み出ることもあるかもしれませんが、ご容赦を」
「ううん、無理はしなくていい。ただ、自然体で接してくれると嬉しいって、それだけだから」
「恐縮です、日陽」
「よし、契約は成立だ。よろしくね、セイバー」



 
 あの黄昏が、わたしの運命の始まりならば――。
 この握手は、わたしの戦いの始まりだった。



「こほん」


 
「ところで、ここに私とランサーもいること、忘れてないかしら」



 近衛さんの言葉に、わたしたちはびくりとなって手を離した。



 ------



 「鞠瀬日陽――やはり、鞠瀬霧治の子だったか」
 二組のマスターとサーヴァントが去った後、ロベルト・カルマートは礼拝堂で一人そう呟いた。
 否。一人ではない。
 「ロベルトよ。何か不具合でもあるのか」
 カルマートは暗がりから響く厳めしい声に、振り返るわけでもなく応える。
 「なに。昔なじみと語り合う機会が永久に失われたことを悲しんでいるだけだ」
 「ならば深くは問うまいが――」
 「案ずるな。僕の決心は決して揺るぎはしない」


 「ようやく、僕の願いが叶うのだから」

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