最終更新:ID:qFBK3jEr4g 2024年03月07日(木) 20:52:49履歴
聖胎。それは万能の願望器に似せた魔力の結晶であり、やはり器である。与えられれば望みに応え、楔となれば人理を揺るがす。
そして、手に入れれば導となる。
「──始めましょう、私たちの物語を」
「うん。行こう、モニカ」
こうして始まりの特異点を解決した少年、ユウとそのサーヴァント、モニカ・ジャスティライトは、聖胎に触れ時空を転移する。一つの出会いと一つの別れを経験し、確かに己に積み重ね。歴史に存在せず消えていく特異点だとしても、自分たちは覚えていくと。記憶を持たないユウと、記憶喪失のモニカは、ひとまずそういう導を見つけたのだ。やはり、聖胎の導きによって。
──時間が変わる。空間が迸る。今一度、物語を始めよう。
終わらない物語は楽しいけれど、終わるからこそ物語は美しいのだから。
そう、俺も思うのだ。
※
第一特異点 人理停礎値D
A.D.1582
第六天伏魔殿 安土
蘇りし大魔縁
※
「……ここが、次の特異点?」
「そうね。多分。それ以上は、何もわからないけれど」
ユウとモニカは、そうして大地に降り立った。当然時代もわからず、場所もわからない。わかるのはただ、聖胎がこの地のどこかにあるということだけ。ひとまず周りを見渡すも、あたり一面手入れもされていない野原であり、まずは足を動かさねばなるまいか、そうモニカが嘆息したところで──。
「だーれかー! たーすーけーてー!」
──足より先に、全身が動いた。そこにあった光景は、
「ひい! イヴちゃん悪くない! ノーエネミーですってえー!」
甲高い声で逃げ惑う、「30cm ほどの背丈を大きな蝶の羽で浮かせた」少女と。
「……あっちが、敵ね」
ずしり、ずしり。まさに黄金のような重みの足音──、そう、「全身を黄金で模られた」人型が二つ、魔人兵がその少女を襲う光景であった。
その二つの異常は、ここが尋常でないと判断させるには十分。
「助けよう! モニカ!」
ユウたちにとって行動を起こすには、十二分の事態であった。
「──了解した。真名、偽装登録」
だん、と踏み込み、間合いに入り、間に立ち塞がり、更にゼロ距離まで二つの魔人兵に詰め寄り、
「……え、えと」
「自己紹介はあと。とりあえず──」
巨大な機械腕を以て、瞬く間に「妖精」の前に現れた。
「ここは、終わらせる。『偽典展開・人理の楔 』!」
その力を振るい、他者を守るために。
派手な打撃音と共にひび割れていく黄金に祝福されるのが、この特異点での最初の出会い。
「モニカ。モニカ・ジャスティライト。ユウの、彼のサーヴァントよ」
そう妖精へと自己紹介しながらも一瞥した先にある、自らのマスターの安堵した表情を見て。その瞳の奥にある、確かに芽生え育ち始めている己への信頼を見て。
(──それなら、これで正解だ)
モニカにはっきりわかったのは、そのことだけだった。
「……ランサーのサーヴァント、イヴです。えと、ありがとうございます! モニカさんも、そのマスターのユウさんも!」
この出会いがどれほどの意味を持つと、そんなことまではわからなかったのだ。
そうしてようやく、役者は揃う。
英雄譚を、始めよう。
第一特異点安土第一節 英雄譚の始まり
そして、手に入れれば導となる。
「──始めましょう、私たちの物語を」
「うん。行こう、モニカ」
こうして始まりの特異点を解決した少年、ユウとそのサーヴァント、モニカ・ジャスティライトは、聖胎に触れ時空を転移する。一つの出会いと一つの別れを経験し、確かに己に積み重ね。歴史に存在せず消えていく特異点だとしても、自分たちは覚えていくと。記憶を持たないユウと、記憶喪失のモニカは、ひとまずそういう導を見つけたのだ。やはり、聖胎の導きによって。
──時間が変わる。空間が迸る。今一度、物語を始めよう。
終わらない物語は楽しいけれど、終わるからこそ物語は美しいのだから。
そう、俺も思うのだ。
※
第一特異点 人理停礎値D
A.D.1582
第六天伏魔殿 安土
蘇りし大魔縁
※
「……ここが、次の特異点?」
「そうね。多分。それ以上は、何もわからないけれど」
ユウとモニカは、そうして大地に降り立った。当然時代もわからず、場所もわからない。わかるのはただ、聖胎がこの地のどこかにあるということだけ。ひとまず周りを見渡すも、あたり一面手入れもされていない野原であり、まずは足を動かさねばなるまいか、そうモニカが嘆息したところで──。
「だーれかー! たーすーけーてー!」
──足より先に、全身が動いた。そこにあった光景は、
「ひい! イヴちゃん悪くない! ノーエネミーですってえー!」
甲高い声で逃げ惑う、「30cm ほどの背丈を大きな蝶の羽で浮かせた」少女と。
「……あっちが、敵ね」
ずしり、ずしり。まさに黄金のような重みの足音──、そう、「全身を黄金で模られた」人型が二つ、魔人兵がその少女を襲う光景であった。
その二つの異常は、ここが尋常でないと判断させるには十分。
「助けよう! モニカ!」
ユウたちにとって行動を起こすには、十二分の事態であった。
「──了解した。真名、偽装登録」
だん、と踏み込み、間合いに入り、間に立ち塞がり、更にゼロ距離まで二つの魔人兵に詰め寄り、
「……え、えと」
「自己紹介はあと。とりあえず──」
巨大な機械腕を以て、瞬く間に「妖精」の前に現れた。
「ここは、終わらせる。『
その力を振るい、他者を守るために。
派手な打撃音と共にひび割れていく黄金に祝福されるのが、この特異点での最初の出会い。
「モニカ。モニカ・ジャスティライト。ユウの、彼のサーヴァントよ」
そう妖精へと自己紹介しながらも一瞥した先にある、自らのマスターの安堵した表情を見て。その瞳の奥にある、確かに芽生え育ち始めている己への信頼を見て。
(──それなら、これで正解だ)
モニカにはっきりわかったのは、そのことだけだった。
「……ランサーのサーヴァント、イヴです。えと、ありがとうございます! モニカさんも、そのマスターのユウさんも!」
この出会いがどれほどの意味を持つと、そんなことまではわからなかったのだ。
そうしてようやく、役者は揃う。
英雄譚を、始めよう。
第一特異点安土第一節 英雄譚の始まり
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