ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。







2017年末、神殺しの抑止(タイタス・クロウ)は世界から消失した。

新世界秩序を掲げる結社の強行により、繋がりかけた外なる異界。
その扉たる、アザトースと化した一人の夢見る作家を封じるとともに、その霊基を座より消失させた。
そして、遺されたアザトース…………否、異聞たるH.P.ラブクラフトは────

『バイタル急低下……! 霊基数値が下がり続けている!』
『ふざけんじゃねぇ霊核は無事なんだろう!? あいつが救った女だ! 死んでも死なせねぇぞくそったれ!!』
『落ち着き給えラバン……。だがこれは……祈る他ないだろう……』

カルデアへと運び込まれる、邪神の母胎(こんげん)の憑代となった少女。
外より飛来せし高位存在たちの扉となった彼女は、今は閉ざされたもののその霊基は瀕死に近かった。
人理の大敵と謡われたそのクラスとしての高かった霊基数値も、今は亡霊にも満たぬ風前の灯火と化している。


────なにかきこえる


そんななか彼女の意識は、薄れゆく霊格に比例するように遠ざかっていった。
海よりも深く、天の星よりも遠き、微睡の中へ沈んでゆくように、ゆっくりと、緩やかに。


────なにかがみえる


思い出されるは、彼女の過去。
想起されるは、彼女の見た夢。
泡沫の如く浮かび、そして消えてゆく、過去の幻想たち。


────これは


────ぼくの、かこ…?
☠⚐❄✋👍☜


此処に語られるは、在り得た過去にして在り得ざる異聞。
彼女は如何にして夢見る作家となったのか そして如何にして外なる神と繋がったのか
此処に真実が紐解かれ、此処に虚構は形を成す。


────なん、で


────いまさら、こんな
🏱☹☜✌💧☜


幻想と夢想に閉ざされた異聞(かこ)の幕が、今開く。

☠☜✞☜☼

────おもいだしたく、ないのに────
☝✋✞☜ 🕆🏱





『────────』
『────じゃない……』
『────でも────…』

幻影が形を成す。
ぼやけた微睡が明確な輪郭を得て、実像を映し出す。

『やだー……蛸のマリネ食べたくない! 気持ち悪いんだもん!』
『またそうやって好き嫌いして……、そんなんじゃあ大きくなれないぞ?』
『良いんですよ、この子には自由に、延び延びと大きくなって欲しいですから』

………………それは幼いころのボクの家族の姿だった。
幼いころに父を亡くしたボクは、母方の実家に預けられ、母の愛を一身に受けて育っていた。
母はボクの好きなものは何でも与えてくれたし、何より優しかった。祖父母もそんな母に呆れつつも、
父を早くに亡くしたボクに、優しく接してくれた。

経済的にも恵まれていたし、何よりも書斎にあった祖父所蔵の物語たちは、ボクに多くを与えてくれた。
サミュエル・テイラー・コールリッジの「老水夫行」、トマス・ブルフィンチの「伝説の時代」、オウィディウスの「変身物語」、
そして「千夜一夜物語」…………、祖父の持っていた物語はボクの想像力を掻き立てて、そして空想の世界にボクを誘った。

物語を読むことは、純粋に楽しかった。空想の世界は、父を亡くしたボクにつらい現実を忘れさせてくれた。
母は優しくて献身的だったけど、それでも空いた穴は塞がらない。僕にとって胸に空いた孔を埋める其れは、物語だった。
有り得ざる空想の物語を読んで、空想の世界に想像を膨らませる、それは僕にとって何よりも楽しい"遊び"だった。

『ねーぇ、お母さん』
『ん? なぁに?』
「あれ、誰ー?」

そんな子供時代を過ごしていたからだろうか。
6歳ごろの自分、つまりは今目の前に広がる光景の中心人物たる自分は、よく現実と空想の区別がつかなくなっていた。
ギリシャ神話を模倣した物語を書いては、母に見せていたのをよく覚えている。夜になれば深い眠りについて、
ナイトゴーントに攫われる夢を見ては、母に泣きついていたっけ……。

「ねぇ、だれー?」

そう、こうやって誰もいない場所を指さして、知らない誰かがいるって言って、困らせてたっけ。
その指さす先に誰もいないはずなのに。そう……誰もそこには、いないはずなのに。

「ねぇ」
      ・・・・・・・
彼方(ボク)が此方を指さして、再度問う。
母じゃない。"こちら側"を向いて、その純粋無垢な宝石のような瞳で、
認識できないはずの、在り得ないはずの此方(ボク)と目を合わせて、問う。

「貴方はだぁれ?」

────その問いと同時に、ボクは思いだした。  ・・・・
嗚呼、そうだ。この時からだった。すでにこの時から始まっていたんだ。
あの時から既にボクは、彼方(ウチ)から此方(ソト)を見つめていた。
外(ソラ)からの呼びかけに応じていたんだ。

外からの扉を叩く音は、静かで、されど酷く不作法で、
夢を通じてこちら側に語りかけていた。


立っていたあの黒きナニカは誰?


今此処に立つ、ボクは誰?

🏱☹☜✌💧☜


☠⚐❄✋👍☜





薄暗い朝焼けの中、目を覚ました。
幼かった頃のボクの宝石のような瞳が、今なお目に焼き付いて離れない。
周囲を見渡す。カレンダーには1916年と書かれている。それが自分の人生の何時頃だったか、
思い出そうとすると頭に黒い霧がかかったかのように痛くなる。右目が疼くように痛む。

…………そうだ、思いだした。アマチュア文芸家の集まりに触れて、創作を再開した頃だっけ。
ボクはあの日以来、悪夢に苛まれては空想の世界に逃げるという行為を続けていた。一時期は天文学にハマったこともあったが、
それでも創作は続けていた。千夜一夜物語に影響されて、独自のペンネームをアラビア語で綴ったときもあったが、
祖父の会社が倒産し生活が苦しくなってからは、創作から離れなくてはならなくなったのだ。

それでも、あの楽しかった日々を忘れることは出来なかったボクは、作家仲間と同人誌を作った。
やがては文章添削の仕事を引き受けるようになり、いつしかそれがボクの本業となっていたのを思い出した。
だがこの頃は、兵役検査に落ちた事や、6歳の頃から続く悪夢が再来したことも重なって、不安定になっていたような……気がする。
だけどそれでも、物語を書いている時は、空想の世界を綴っている時は、まぎれもなく楽しかったことを覚えている。

ベッドから立ち上がり、ネグリジェのままに机に向かう。
机には、錯乱したままに書いたような、冒涜的な内容のメモや手記が散乱している。
……『ニガーの創造』…か、酷い題名だ。そういえば酷く白人至上主義だった時期もあった。
思えばあれは、白人である自分が特別であることを主張したかったのかもしれない。
いや、逆か、自分が常識であることを、"普通"であると信じたかったのかもしれない。

毎夜……とは言わないけれど、夢見に出現する黒きナニカ。
外(ソラ)から語りかけてくる、幻想の扉。それで精神が不安定になり続けていた。
時には現実にすら侵食してくる、その在り得ない異常が、ボクには怖くてたまらなかったんだ。
だからこそ、自分が普通である事を、おかしいのは自分以外なんだと、信じたかったのかもしれない。
僕は逃げ続けた。空想の世界に。だって空想は現実じゃないから。空想は辛くないし、怖くない。
怖いのはいつも現実だ。不条理なのはいつも現実だった。だから僕は、偽りの世界に逃げていた。

端的に言えばボクは、そう、救われたかったんだ。

       ・・・・・・・・・・・・・
あの窓の外を、暗闇の中を歩く人々のように。


「────────────え?」


一瞬、違和感すら感じなかった。
突如として外の景色は、群衆の蠢くそれに変わっていた。
朝焼けだった空は、突如として漆黒の夜空に変わっていた。

「なん、で────────?」

その群衆たちは何かに抗議して回っているようであった。
世界中にもはや神はいない、救いはないと主張してる様が見て取れた。
そんな彼らを次々に不幸が襲っている様相が窓の外にありありと映し出されていた。

それでも彼らは声高々に叫び続ける。今世界に起きる不幸はまやかしだと。
神はいない。それでも我らは救いを求めると、口々に叫んでいる。それはまるで、
他者ではなく自分たちに言い聞かせるように、どこまでも、どこまでも歩き続けている。


────その姿はまさしく、あの日空想の世界に逃げ続けていたボク自身を見ているようであった。


その群衆は口々に、ナニカの名前を紡いでは非難していた。
■■■■は詐欺師だと、■■■■は偽りだと、■■■■は存在しないと。
────何だ、その名前は? 聞き覚えが無い。 発音も不明瞭が過ぎる。
それは何を表しているのかてんでわからない。そも、言葉なのかも理解できない。

理解できない、そのはずなのに


ボクは、その意味を、"知っている"

「……言うな……」
『────────────────hotep』
「言っちゃダメだ……」

『──────latho──────』
『───Nyarlat─────────────────』

「それ以上言うなあああああああ!!!!!」

ボクはその名前に、その言葉の意味するモノに耐えきれず、
まるで発狂するかのように叫んで制止した。

"それ"はまさしく無貌 無為 嘲笑の意味込められし変貌の神。知っている。
其れは在り得ざる空想の神のはずなのに。有り得てはいけないはずなのに……。
目の前の人々がそれを口々に唱えている。それは現実に在り得ていいはずがないのに

「なんで……これは、ボクの過去なんだろう…!?
 どうして、こんな……悪い夢みたいな……!」

聞こえる。暗黒のファラオの嘲笑が。響いている。黒衣の神父の玩弄の声が。
存在しない"それ"が形を成す。それはまるで、溶けた鉛の海に放り込まれたかのような不快感を感じさせた。
民衆が名を口にするごとに、群衆がその意味を形作るごとに、それが現実へと変化していく感触を覚えた。

「ボクの過去に"アレ"があるはずがない……いていいはずがない!!
 なのに、なのに……! なんで、なんで!!」

頭を掻き毟る。脳の奥底が全力で悲鳴を上げているのがわかった。
右目がガンガン疼いて危険信号を上げる。その名前を固定しちゃダメだ。
その意味を、此方に表してはダメだと叫んでる。

ボクは上着を羽織るのも、外履きに履き替えるのも忘れて外に飛び出す。彼らを止めるために大通りに出る。
なのに、いない、誰一人も。外は相変わらず漆黒の夜空のままだ。なのに人だけが、全て跡形もなく消え去った。

「なん……で───……!」
                       ・・・・・・・・
叫びかける。そんなはずはないと。彼らは今此処に現実にいたはずだと。
それが一瞬で消えるはずがないと。現実が変わるはずが無いと、理性が叫び続けている。

待って
待ってくれ。
現実? これは……本当に、ボクの過去に在った、風景?
それとも────

『おやおや、そんなに慌てふためいて、どうなされましたか? ンッフッフッフッフ……』

背後から声が響いた。
その声を聴いただけで、何故かその姿がありありと瞼の裏に浮かんだ。
声だけのはずなのに、その姿をボクは知っている。何故? 理由は分からない。
ただその声が、ボクが何度も夢に見た、漆黒のソレだという事が、直感で理解できた。
声なんて聞いたこともないはずなのに。それが誰なのかを僕は知っている。

「此処、に────いた……人、たち……は……、」

恐怖か、緊張か、それとも別の感情か、
過呼吸気味になってボクは背後に立つ、ソレに問う。
ソレが正しい答えを言うはずないと、本能が分かっているはずなのに。
ボクはそれでも、聞かずにはいられなかった。

『おやおや、不思議なことを聞きますねぇ』

ソレは、嗤う。嘲笑うように答える。
     ・・・・・・
『貴方は、夢の中の人々がどこに行ったかを気にするのですか?』
「ゆ────め? いいや、違う……これは────!!」

これはボクがかつて住んでいた場所だ。
これはボクがかつて生きていた記憶だ!
それが夢のはずがない。それが空想のはずがない!!

自分でもわけがわからない理論だったが、否定せずにはいられなかった。
理由もわからない。ただ、この過去を空想と言われたら、ボクという存在が揺らぐように感じた。
それは例えるならば、自分の信じ続けた神が偽りと言われた時のような。
あるいは、自分の存在そのものが空想だと言われたかのような
そんな、言葉にできない、圧倒的な不安感。

────貴方はだぁれ?────

あの時に彼方(ボク)に問われた問いが、脳内に反芻されるのを感じた。

「ボクの記憶は現実だ……。ここは…現実のはず、なんだ……」
『では逆に問いましょうか』

ソレは低く嗤った。
         ・・・・・・・・
『貴方は何を以て、空想を空想と呼ぶのですか?』
「そんな当たり前のこと────!!」

振り返る。そして激昂する。
空想が空想である理由なんて一つしかない。
それが有り得ないモノ。それ以外に空想である理由などありえる物か。

そう否定しようとしたはずなのに

なのに

どうして
     アリエナイ
どうして、空想の存在が、ボクの前に立っている?

「君は────」

声が漏れる

「誰だ────?」

分かり切っているはずなのに。知っているはずなのに。
────聞いてしまったら、もう後戻りはできないはずなのに。
ボクはその問いを口にしてしまった。

『ンッフッフッフッフ…………』

気味の悪い嗤い声が、目の前の漆黒の影から響く。

いや

その嗤い声は、
    ・・・・・
本当に、その影から聞こえたもの?


『「私(キミ)は貴方(ボク)ですよ」』


ボクの口の動きが、目の前の影と重なり合う。
ふと視線がブレ、次の瞬間、ボクはかつて住んでいた自室の鏡の前に立っていた。

「私(ボク)は影だ。貴方(ボク)の想像力から生まれたのだから」
「違う……」

ボクはボクの声を否定する。それでもボクは語りかける。

「違わない」
「キミがボクを呼んだ」
「ボクがキミを創り出した」
「根源(キミ)が外神(ボク)を定着させた」
「母胎(ボク)が神々(キミ)を創造させた」

違う、違う。違う……!!
ボクは何もしていない…! ただ、ただ思い描いただけで、
ただ空想の世界を愉しんだだけで……ボクは、ボクハ────!

「これが世界の選んだ道」
「これがキミの選んだ未来」

『根源(ボク)が創り上げた、神話体系だ』

鏡に影が文字を綴る。
千貌にして無貌なる神、Nyarlathotepと。

その言葉がこの世界に現出したその時点で、全てが遅かった。
ボクは世界を創り出した。ボクは世界を呼びよせた。ボクは、取り返しのつかない罪を犯したんだ。
空を見る。星一つない絶望の空にボクは問う。僕が今まで生きてきた現実は、本当に現実であったのかと。


☠⚐❄ 🕈☼⚐☠☝


☠⚐❄ 💧✋☠





誰なんだと問う。そして、満天の星空に目を向ける少女に視界が映る。
問いに答えるように、過去が思い出される。かつて体験した、ボクだけの人生の記憶が想起される。
これは、そう。10歳の時、母に「星が見たい」と言ったとき、望遠鏡を買ってくれたあの日の光景だ。

『あれがオリオンざでー、あれがー…えっと、おおぐまざー!』
『まぁ、ふふ。貴方は何でも知っているのね。凄いわ』
『おじーちゃんの本で見たからー!』

ああそうだ。確か祖父の書斎のギリシャ神話の本に影響されて星座を覚えたんだっけ。
それで星に興味を持って、それがいつしかボクの描く創作に影響を与えたのをよく覚えている。
そう、覚えている。あの過去の一時も、この思い出の一幕も、全て明確に覚えている。
肌に感じた感触を、目に焼き付けた光景を。

そのはずなのに
                ・・・・・・・・・
どうしてボクは、この光景をまるで他人の映像のように見ているのだろう?

『何でも知っていて、まるで✌☪✌❄☟⚐❄☟は神様みたいだねー』

母が子(ボク)を褒めそやす。
神様? 違うよ。ボクは人間だよ。ボクは生きている人間なんだ。
知らない事だってある。むしろ知らないことだらけだ。知らないことは知らないで済むはずなんだ。
だから神様なんて言わないで。

だから、ボクの名前を呼んでくれ、母さん

『違うもん! ボクだって知らないことあるもん!』
『あらそうなの? ごめんなさい』

光景の向こう側の幼子(ボク)が、まるでボクを代弁するように頬を膨らませた。
そうだよ、ボクは人間なんだ。知らない事だってある。分からないこともある。
この世界は未知で満ちていて、だからこそ不安だけれど、それだからこそ面白いんだ。

『これから見る星とか、ぜーったいにわからない星だから! 見ててよね!』

そう言って、幼児(ボク)は望遠鏡を右目で覗き込んだ。


そして、ボクと少女(ボク)の目が合った。


「────────なんで?』


声が重なる。
視線が交差する。

なんでボクは彼方(ボク)と眼が合うんだ?
なんでボクは此方(ボク)を認識しているんだ?

今眼が合ったのが女児(ボク)だというのなら、
今彼女(ボク)が目を合わせたボクは一体誰?

『知っている』

ボクの問いに答えるように彼方(ボク)の声が脳内に響く。
そんなこと言わないでくれ。知らないと、ただ一言だけ言ってくれ。
君にとってボクは未知のはずなんだろう。そうだろうそうだと言ってくれ……!!

『キミは────』
「ボクは────」
『全ての無限の中核で冒瀆の言辞を吐きちらして沸きかえる…………、
 其は最下の混沌の最後の無定形の暗影にほかならぬ────』

ブツリ、ブツリと言葉が紡がれる。違う、違うよ。ボクはそんなんじゃない。
ボクはそんな混沌なんかじゃない。ボクはボクであるし、キミはボクであるはずだ。
だってボクには生前の記憶がこうして────

『本当に?」
「ただの夢幻かもしれない』
『それはすなわち時を超越した想像もおよばぬ無明の房室で……、下劣な太鼓のくぐもった狂おしき連打と……、
 呪われたフルートのかぼそき単調な音色の只中、餓えて齧りつづけるような────』

────夢幻だとしたら、本当に、それはボクの記憶なの?

"ソレ"が見る夢は、この世界そのものであるという。
ならば、今見ている現実が、過去が、人生そのものが、"ソレ"の見る夢だとしたら?
如何なる形をも持たない無形の黒影、飢えと退屈に悶える白痴の魔王の微睡みの中、
沸騰する混沌が如き影の生み出した、夢幻こそが、ボクだったとしたら────?

「違う……違う、違う……!!」

否定する。否定する。
違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う違う違う違う違う違う!!!!!
ボクは人間だ!! ボクは人生を生きた人間だし家族もいるし親も祖父母もちゃんといた人間なんだ!!
知らない事だってあるし嫌な事だってあったしそれでも生き抜いて人生を全うに生き抜いた人間なんだ!!!

『でもそれは、ハワード・フィリップス・ラブクラフトの人生でしょう?』

声が響く。聞き覚えのある、ボク自身の声。

『それは史実に残されたラブクラフトの人生で、貴方の人生と言う保証はどこにもない』
「でもボクには……!! ボクには歩んだ人生の、き、記憶────が……!!」
『現実と空想の境目なんて誰にも保証できないハズだよ』

望遠鏡の向こう側から、彼方(ボク)が此方(ソレ)を見つめながら言う。

『それを誰よりも分かっているはずだよ、ボクならば。
 空想(ユメ)を現実(ウツツ)にしてしまったボクならば』
「やめろ……やめてくれ……」
『ねぇ? 夢を現実とする、盲目白痴の魔王さん?』
「それ以上言うなああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

右目が疼く。吐き気がこみ上げる。
全身から触手が沸騰するように湧き出て、己の在り方が決定されていく。
違う。これは、戻っているんだ。ボクがボクとしてこの世界に流出する以前の姿。
ボクはボクであったのか? それともボクがボクに触れたからボクと化したのか?
分からない。理解できない。もはや何が真実で何が虚構で何が現実で何が空想なのかすらも。
そんな混沌の渦が如き思考の濁流の中で、ボクはただ一言、その在り方(ナ)を告げた。

『あえてその名を口にした者とておらぬ、果しなき魔王────アザトース』

ああ、思いだした。そうしてその名前は此方の物と成ったんだ。
こうして世界は、一つの形成され器を得た根源の下に、彼方から此方へと来たる扉を得たんだった。

✋🕯💣 ☟☜☼☜ ❄⚐⚐


☠☜✞☜☼ ☝✋✞☜ 🕆🏱




そうして机の上で、ボクは目を覚ました。
……作業している途中で眠るなんて、とても疲れていたのだろう。
ああそうだ。疲れてでもいなくちゃあ、あんな夢は見るはずがない。

空想と現実が入れ替わるだなんて、ましてや境目が曖昧になることなんて、あるはずがない。
そうだ……。これは現実だし、あれは空想。ゴーストライターなんて仕事をしているが、自分がゴーストになっては意味がない。
頬を叩いて仕事に取り掛かる。机にはセイレム魔女裁判の資料をはじめとした仕事道具がいっぱいだ。
仕事を早く終わらせるためにも、ペンを走らせ、そして執筆した文を添削する。

【全ての無限の中核で冒瀆の言辞を吐きちらして沸きかえる】

うん、なかなか良い表現ができた。

【呪われたフルートのかぼそき単調な音色の只中、餓えて齧りつづけるような】

かなり冒涜的な文が出来ている。

【あえてその名を口にした者とておらぬ、果しなき魔王────】

…………待て

なんでボクは


今さっきまで見ていた現実(ユメ)を書いている?


「ギ……ぃあ……! ゃああああああああああ!!!!」


気付いたその瞬間に、右目に激しい痛みが走った。今までの物と比べ物にならない沸騰するかのような痛み。
それはまるで、その右眼孔から何かが飛び出ようとしているような。あるいは"宇宙そのものが封じられているような"
"有り得てはならないナニカに変わっていくような"

違う、ちがう、チガウンダ

「ああ……! う……、ぃ……!! 違う、チガウ……!」

痛みにのたうち回りながらも、ボクは否定する。
今まで見た夢が現実だとこの痛みは告げている。だからこそ否定する。
ボクが描いた物語が現実になっただと? そんなことがあり得るはずがない。有り得ていいはずが……!!

「────なんで……なんで…! なんでなんだよ……!!」

机に乱雑に散らばったメモを見る。
あれも、それも、どれも、全て知っている。物語としての知識じゃない。"現実の存在として"
太平洋の深海には魔の棲まう城があるし、宇宙の彼方には邪神共が巣食っているし、そして世界には────!!

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

とうとうボクは発狂した。
爪を立ててガリガリと頭部を掻き毟って血が噴き出て床に飛び散った。
そして飛び散った血が姿を変え、醜悪な化け物になり狂えるフルートの音を奏で始める。

「聞きたくない!! 聞きたくない聞きたくない!! やめろ!! やめろおおおおおお!!」

手で振り払ったそれは窓にへばりつく。
へばりついた窓の向こうでは、非ユークリッド幾何学的な在り得ざる物理学で描かれたが如き城がそびえたつ。
そしてその周囲に蠢くは、冒涜的な忌まわしき邪神群。それら全てが例外なく、ボクに対して首を垂れる。

「なんで……なんで、なんで……!!」

それらは在り得ざるモノたちだ。それらは存在してはいけない空想(そんざい)だ。
なのに、嗚呼、これを問うのも何回目だ。これを口にしてしまうのも何回目だ。

「知っている。まるでボク自身が世界そのもののように』
『だって彼らは、皆ボク(こんげん)が生み出したのだから」

窓に映ったボク自身が言葉を紡ぐ。

『夢が物語を生み』
「物語は現実になる」

(ありがとう)
【ありがとう】
〔ありがとう〕
≪ありがとう≫
[ありがとう]

我らをこちら側に存在(ていちゃく)させてくれて、ありがとう。

「嘘だ……嘘だ、嘘だ……! 嫌だ、嫌だ、怖い、怖い……!! 僕の夢が、世界を滅ぼすっていうのか!?」
『滅ぼさないよ? ちょっと入れ替わってもらうだけ。貴方はただ夢を見るだけでいい。それでボクたちは存在できるんだ』
「いやだ……いやだよ………。逃げ出したい……今すぐここから逃げ出したい……!」
『逃げても良いよ』

逃避が空想を生み

空想は物語を生み

そして、生み出された物語は────

「あ………ああ……!!」

『逃げ場なんて、何処にもない』

膝をつく。

同時に机から1冊の本が落ち、ページが開かれる。
描かれるはギリシャの神は一柱。その権能の名────百獣母胎。


『ハッピーバースデェ・アザトース!! 全ての空想(じゃしん)の母胎は今此処に定着した!!』


(おめでとう)
【おめでとう】
〔おめでとう〕
≪おめでとう≫
[おめでとう]


『これからはずーっと一緒だよ? お母さん?』
「いやだぁあああああああああああああああ!!!!」

ボクは子供のように泣き叫んだ。どうしてこうなったんだ? どうしてボクだけがこんな目に合うんだ?
頭皮を掻き毟って慟哭した。物語という物語を破り去って否定した。その日、1926年を最後にボクは空想をやめた。
……だが、遅かった。既にボクは人の世界の大敵となった。滅びをこちら側に、いやそれ以上の悪夢を現実とした咎人として。

『いっしょにほろびをみましょう?』



どうして


どうして


なんで


ボクだけが、こんなことに



虚しき邪神母胎(こんげん)の嘆きだけが、狂えるフルートの如く、孤独に虚空に響き続けた。


















────────────────────🕈✌✋❄




────────────────🕈☼⚐☠☝




────✡⚐🕆 ✌☼☜ ☠⚐❄ ✌☹⚐☠☜



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