ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。



―――その日、突如として「それ」は始まった。
何が起きたかなんて、誰も分からなかった。知る由もなかった。
分かることは、空が曇天に突然覆われて、黒い雨が降り注ぎ始めた事。
周りの人たちが、喉を抑えて苦しみ悶えている事。私も同じように息苦しく、立っていられない程だった。
―――そして、かろうじて見上げた空に、信じられない程に大きな翼が飛んできた事、それだけが私たちに許される情報であった。
「ぴーん、ぽーん、ぱーん、ぽーん、ですわ」
声が聞こえる。周囲からの声でも、かといってサイレンのような音声でも無い。脳に直接響くようなそんな声。
「いかがでございますの?魔術師を声高らかに名乗る愚かなる皆さま?」
その声は嬉しそうな、しかし恨めしそうな声色で言葉を続ける。
「残念ですが、アナタ方の絶滅が決定付けられました。はー、ホントに至極残念無念でございますわ」
その声は、明らかに本心から言っていないのが丸わかりと言ったような声色だった。いや、むしろ皮肉として言っているのだろうか
「これで神話から全ての歴史が書き換わる。魔術はかのグランドキャスターの物では無く、我々クロウリー家のものとなる。
アナタ方魔術師たちの死は12時間後。それまで神へのお祈りでも震えながら済ませて下さいな。
ああ、もうその神もおりませんですがね」
クスクスクスクス、と言う笑い声と共に声は途絶えた。
周囲の人たちにもその声は届いていたらしく、更にパニックになる人や泣き叫ぶ人たちが増えていた。
やはり、何が起きているのかなんて分からない。理由も、経緯も、そして今現在の状況も、何も分かった事ではない。
―――ただ、ひとつだけ分かることがある。


私たち全世界の魔術師たちは、たった12時間をもって絶望を突き付けられた。






―――7日前
「ほう、お前も聖杯戦争の参加者か。」
白いコートを着た若者が、ニヤニヤと笑いながら二人組に対して話しかける。
距離は十数m程。周囲は人っ子一人いない郊外。故に、彼が話しかけている対象は間違えようが無かった。
「ほう…っ!面白いな…何故そう感づいた?」
その二人組のうちの1人。聖書に出てくるような服装をした、目測2m近い程の身長の大男がニヤリとわらい、男の方を向いた。
「なぁに、神秘探偵としちゃあ簡単な話だ。」
白い男は、煙草に火を付けながら軽く笑い言う。
「神性だ。あんさんには神性がある。分かりやすくぷんぷん匂ってやがるぜぇ。
その度合いだと………B、いやCか?」
「クククク…、随分と余裕があるようだな…。」
大男は服をバッ!!と脱ぎ去り、上半身を露わにした。
その上半身は例えるなれば、まさに筋肉のひしめき合う集合住宅。
ギチリ、ギチリと動かずともに音を上げる”それ”は、もはや筋肉というよりは重機の精密エンジンの如き様であった。
「どう俺をサーヴァントと判断したかなどと、自分の手の内を早々に明かすとは!
自分もサーヴァントですと自己紹介をしているようなものだ!!覚悟は出来ているな!?」
「あ、あんま暴れんなよグラップラー!なんか事故起きたら後片付けは俺達なんだから」
「じゃあぁかぁしい小娘ェ!!!!」
「だから俺は男だってぇの!!」
二人組が喧嘩するように言い争う。白い男はそれを見て、堪え切れないという感じに笑いだした。
「ク、クハハ!ハハハハハハハハハ!!!」
「何がおかしいッ!?」
「いや何。お前らのやり取りが純粋に面白いなと思って笑っただけだよ。
それにしても、お前ひょっとして人間か?見たところ神の子とかそう言うのではないみたいだが…いやでも神性は確かに在る…。」
「ふん、何をごちゃごちゃと並べ立てていやがる!!」
大男は指をバキバキとならし、白き男へと歩み寄る。
「うん?そういやお前にはマスターがいねぇなぁ。お前もサーヴァントなんだろう?どこいった?」
「いぃや?俺は抑止力そのものの具現。マスターなんざ正直いらねぇんだよ。単独顕現って奴だな。まぁ俺はあんな獣とは違うが。」
「はっ!はぐれサーヴァントか!!」
大男は白い男の目の前まで来ると、両腕を思いっきり水平に広げ、臨戦態勢を作り出す。
「ならば一撃で座まで送り返してやるぜェ!!!」
「一撃で、か―――」
ニィッ、と白い男は不敵に笑った。
「神性持ち”ふぜい”が。やれるもんならやってみろってぇ話だぜ。かかってこいや」
そう、白い男が大男を煽った瞬間、大男が怒髪冠を衝く。
「やぁろうっ!!!!!!!!」
轟ッッッ!!と握り拳が白き男の顔面をめがけて飛んでくる。
それは拳と言うよりは鉛玉、いや…サイズを考えれば徹甲弾と例えても遜色は無いであろう。
だが、それでも白い男は不敵に笑っている。笑ったままコートのポケットにいれていた片腕を出し、握り拳を作る。
「神性持ちが、この神秘探偵様に敵うハズがねぇ!!!!」

―――郊外に、骨の砕ける音が響いた。




「…ふむふむ?『されど、汝その瞳を狂気に曇らせ…』…?違うなぁ…コレはヤバイ奴がでるやつか…。」
一人の少女が何やら随分とボロボロのメモ切れを片手に、チョークのような物で地面に紋様を描く。
「随分と簡単に呼び出せるのね。生贄とか必要になるのかなと思ったけど…。
それだったら諦めてる所だったわー。助かったわー。」
ふふーん、と鼻歌を歌いながら少女は描き続ける。長い赤髪と、その抜群のプロポーションを揺らしながら。
「ったく!なぁにが『時計塔で良い男を見つけて来い!』よ!ったく、男と付き合うなら自殺したほうがましよ!」
突然何かにキレたかのように彼女は表情を怒りのソレへと変える。
―――彼女の行っている行為は、ある儀式の手順であった。

かつて、彼女はふとしたきっかけで、ある単語を耳にした。
『ねぇ、―――聖杯戦争って知っている?』

―――それは、ただの”幻想”であった。
あるはずの無き物、有り得ない物、もし実在が真実だとすれば、この世の全ての法則がひっくり変えうるような、そんな物。

名は『聖杯』。ホーリーグレイル。
かの聖人の血が注がれし物、アーサー王と円卓の騎士たちの求めし物。
それは魔術師たちの求める到達点、―――”根源”へと至る為の、最も適した近道でもある。

かつて”これ”を求めて多くの魔術師たちが争った。
ある者は死に、またある者は死より苦しき闇へと堕ちて行き、そしてある者は絶望に堕ち二度と立ち上がれなかった。

―――だが、ある者は希望を見出した。進むべき道を見た。答えを得た者もいた。
そしてそんな中で、悪しき心を持つ者の手に渡らぬよう、奔走する者たちが現れ、―――そして、聖杯は消えていった。
そういった様々な事象を経て、過程を経て、ドラマを経て、聖杯と言う存在は
…常識の外に存在する魔術師たちの間ですら、半ば御伽噺のような存在となっていっていた…。

「だが私はたどり着いた。”ここ”にね!」
チョークを走らせ、誰もいない事を良い事に日頃の鬱憤を晴らすかの如く、彼女は独り言を続ける。
「(聖杯戦争…名前だけならいくつかの魔術書に登場する…。でも、その具体的な方法を記した魔術書だけは一切無かった!)」
「(絶対に在るハズなのに存在しない…。ということは結論は一つ!―――『何者かが隠蔽した』ッ!)」
「(時計塔は魔術の総本山。”儀式”ならば必ずやり方や方法を記した本の1つや2つあるかと思ってここを探したら…)」
「見事にビンゴだったってわけよ!」
チョークで紋様―――いや、陣を描き終えた彼女はチョークを放り投げ、呪文を紡ぎ出す。
その直前に、彼女は自分の血を一滴、陣に放り投げる。
『……………SET!祖に銀と鉄―――』
紡がれしその言葉は、聖杯を求めるべく必要な手順。聖杯へとたどり着く”道しるべ”。
聖杯とは、7人のサーヴァントという存在によって殺し合う事によって顕現する。
その聖杯と言う概念の中身に、英霊と言う存在の6つの魂を満たすことによって聖杯は初めて力を発揮するからだ。
―――そして、力を発揮した聖杯は、ありとあらゆる願いを叶える、万能の願望器としての姿を顕す。
「えーっと…?最後に…『抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ』っと…。良し!」
彼女が呪文の詠唱を唱え終わると、彼女の描いた陣が光輝き始める。
そしてその輝きが一気に増し、突風が吹いたと思ったら、次の瞬間には陣の中心に人が立っていた。
『―――――――――』
「……え?」
余りの呆気なさに、少女は一瞬固まる。
目の前に立っていたのは、年端もいかないような…どことなく朧気な印象が漂う平安装束の女の子であった。
「えー…っと、…貴女が、私のサーヴァン…ト?」
ふわふわと浮いているその少女は、無言で敬礼をしながらコクリとうなずいた。
「…………!!!」
その仕草に少女は、ふるふると震えてそして表情を次第に満面の笑みへと変え、往年の大怪盗三世のようにその英霊に飛びついた
「かっっっっっっっっわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!
え!?うそ!?英霊ってこんなに可愛いの!?すごい!ちょ、無理!!しんどい!!」
ほぁ〜〜…と恍惚な笑みを浮かべながら小さい童女にほおずりをする少女。
「〜〜〜!!」
それに対しその小さい童女は、少し嫌がるような表情をしながら必死で少女を離そうとする。
「いや!すっごい事だわコレ!別に聖杯要らない!これだけで私の願い叶ったわ!
もうちょっと贅沢言うならもっと年上の方が良いわね。いやでも胸は及第点?にしてもかなり大きいわね。
私よりあるんじゃないのバスト?ねぇそこんとこどうなの?」
たかいたかいの要領で少女が童女を高く持ち上げながら聞く。
童女はそれに対して、下ろしてと言わんばかりに両腕両脚をぶんばぶんばと振り回していた。
「ああ、そうだったわね。大事な事を聞くの忘れてた。」
スッ、と少女はその童女を床へと下ろす。地面に一瞬童女の足は触れるが、すぐにふわふわと浮いた。
「貴方の名前は?私は五月雨刹那。よろしくね!」
「―――」
その質問に対し、童女はたどたどしい口調で言葉を発した。
「ルー…らー、」







(お好きなマスターにご自由なエクストラクラス鯖を召喚させて下さい)







「うん、うんうん。中々いい具合に集まって来たようですわね?」
金髪の女性が満足そうな笑みを浮かべて水晶玉を眺めている。
そこには町の至る風景が写り込んでいる。そして、彼女が中心に観察するのは、招かれし7人の英霊だ。
「おーっほっほっほっほ!!ここまで順調に集まるとは!私たちの計画も全て上手く行くと考えられますわぁー!!」
女性が高笑いを上げながら、片手に持つアールグレイティーを飲み干す。
「そういうのはですねぇー。ぎりぎりまで油断しないほうが良いですぜぃ依頼者様よぉー」
部屋の奥の方から、スーツを着た男が女性の横に現れる。
「あら、いらしたんですの?」
「”百里を行くものは九十を半ばとする”…まぁ、うちの故郷の古い諺ですがね?」
「極東の古き迷信なぞ知った事ではありませんねっ!」
女性は勢いよく椅子に座り、机の上に置いてある魔導書をペラペラとめくった。
「いやぁね、古き言葉ってぇのは大事ですよぉ?昔の人の知恵ってぇのが詰まってんですからねぇ」
「黙りなさい三流以下の魔術師風情がッ!!」
ビシィッ!と女性は持っている杖のような物で勢いよく男性を差した。
「なれば私も曾祖父の言葉を借り受けこう叫びましょうっ!!
『Vi Veri Vniversum Vivus Vici(われ、真実の力によりて生きながらに万象に打ち克てり)』と!!!
真実のままに突き進みし者は、やがては万象に打ち勝つ力を得るのですッ!」
カッ!!と女性は力強く杖を地面について言い放った。
「そして、我々の進む道こそが『それ』ですっ!!私は今、曽祖父の教えの元に我が勅命(グランドオーダー)を以ってして行動している!
その勅命に記された、この地、この時代に現れる『欺瞞の聖杯』!!それを手にするべく、この地を整えてきた!
それが我らクロウリー家の生きる理由の一つ!そしてこの地に集いし7人の犠牲(マスター)の生きる理由!!!」
「…なるほど、しかし聖杯とは随分とまたでかく出たもんだ…。」
スーツの男は煙草に火を付けようとするが、女性が強い眼差しで睨んできたため渋々途中でやめる。
「前に行ったオリジンストーン家もねぇ、なんか言ってましたがねー。聖杯に魔術回路を満たすだのなんだのと」
「ああ、オリジンストーンですか。はっ!あんなものは歴史と富があるだけの名ばかり名家ですのよ?」
女性はわざとらしく肩を竦めるような仕草を取りながら鼻で嗤う。
「あれの求める物は、はっきり言って”まがい物”!!所詮は敗北と収束が約束された大敵でしかありませんわ!!」
女性は興奮を抑えきれぬかのように椅子から立ち上がり、くるりくるりと踊るように回りながら言う。
「我々の悲願は魔術王への到達!我々の彼岸は人類悪の支配!!そしてその為の”逆説”の証明!
其はすなわち人類の新たなる世界が待っている一つの特異点!!人類の新しい未来が切り拓く!人類は全てがアセンションされる!
人類悪を乗り越え、更なる段階に至る。それこそが我々クロウリー家の悲願であり到達点なのです!!」
何処ぞの三流オカルト雑誌めいた事を踊りながら女性は語る。しかし、男性はその言葉が、嘘偽りでは無いと直感している。
―――目の前の女は、今並べ立てている電波妄想を本気で執り行う気だ、と…。
「…………はぁー、今度からは仕事選ぶかぁー。」
「何かお言いになられました?」
「いーや何でもねぇーよ」
「あらそう?」
ガタリ、と椅子に腰かけてまた魔術書をパラリパラリと女性はめくりだす。
「………そいつが、法の書、ですかい」
「ええそうよ?曽祖父の残せし生きた宝具。お読みになられました?」
「いーや結構だ。魔術が使えなくなるとかなんだのと聞いたぜ?その魔術書が魔術回路を否定するだのとな
別に魔術が使えなくなるのはそこまででもねぇが、それだとこの商売道具がただの鞄になっちまう」
男が片手に持つ革製のアタッシュケースを見ながら言う。
「あらあら、随分とまた情報が捻じ曲がったようね…。」
パタン、と女性は魔術書を閉じて言葉を続ける。
「この法の書が否定をするのはあくまで十字教の教え、並びにそれに準ずる者の”常識”だけ、ですわ」
「………………、常識だぁ?」
「ええ、その通り。正しく言葉を並べ立てるなれば、読んだ者の一時的な剪定と編纂ですわね。過去と現在、そして外と内。
矛盾する螺旋が如き二つを同時に書き換えるこの法の書の原典が持つ真の意味を、あなた方はご存知では無いようですわね。
―――まぁ、それが分かった瞬間こそが、アナタ方魔術師の本当の転換期なのですけれども。」
「御高説どうも。理解できない事を理解したぜ。」
「あら、極東の魔術師は頭も極東レベルですの?」
「俺ぁそう言った小難しい話なんかより、目の前の依頼を受けて金だけ貰って帰るだけの人生が好きなんですよい。
そいじゃーな。」
男が入口から出て帰ろうとすると、その入り口を何かが塞いだ。
暗闇故に良く見えなかったため男は目を凝らしてみたが、深く後悔した。
それは肉の凝り固まった柱に目がいくつも付いた、異形の使い魔だった。
「……………!!!!」
男は瞬間、吐きそうになって口を抑えるが、すんでのところでなんとか止めた。
「ふふ、可愛いでしょう?私もなんとかそのカタチに辿り着けたの。偉大なる魔術王の創りしゲーティアの悪魔に、ね。
でも能力はまだまだ、そうやって物理的な働きしか出来ないのですわ。」
「―――どういうこった?話が違うぜ依頼人さんよぉ
依頼が済んだらすぐにさよならって契約書には書いてありませんでしたっけかねぇ…。」
「あら?魔術業界での異端中の異端とされる我々の依頼をお受けしたとなれば、とっくのとうに覚悟をお決めになったモノかと…」
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、と女性はスーツの男に近づき、杖の先端を心臓部に当ててニコリと微笑む。
「貴方は我々クロウリー家に関わったので、大願成就まで我々の一員となってもらいます。」
「…………………あー、ったくクッソ。わーったよ、しょうがねぇなー。」
スーツの男は頭をぼりぼりとかきながら渋々と座った。
「あら、意外に素直ですわね」
「こちとらトラブルには巻き込まれ慣れてんだよ。お前さん方なんざまだまだちいせぇほうだ。
神代の軍師vs蛇神様なんてバトル、見たことあるかいアンタ?」
「…なるほど、思いのほか強いメンタルをお持ちのようですわね。見直しました。
―――では、まずは我々の手駒となるサーヴァントの召喚をお願いいたしましょう!」
女性がそう言って指を鳴らすと、床が開いて下から魔法陣の描かれた床と、その上に何かが乗った机が現れた。
「まぁ、見合う報酬さえもらえればあっしは何でもしますが……それは、触媒ですかい?」
机の上に載っているのは、拳ほどの大きさの岩であった。
「ええその通りですわ。貧弱な脳みそをお持ちの東洋の魔術師でも分かるようですわね?」
「いやぁ何、知り合いにそれを専門に扱ってる変人がいるだけの話でさぁ。…しかし、コレは?」
「ふふ、知りたいですの?」
ニヤリ、と悪い笑みを浮かべながら女性は答える。
「その昔ね、頭の悪い人たちが言ったの。星が落ちてくるだの、重力が無くなるだの、惑星が侵略に来るだのと。
―――それはそんな恐怖のひとかけら。ある存在しない太陽系第12惑星の一部だと”仮定されてしまった”隕石の一部ですわ。」
「……………はぁ?」
男性が怪訝な顔をする。
「分かりませんの?まぁ、英霊と言うのは信仰によって力を得ますの。そしてその信仰を得た長さと数と規模が英霊の力となる。
そして、これは歴史上ありとあらゆる人間の抱いた、”破滅”という存在への恐怖という信仰の一部!!」
ビシッ!と女性は机の上に丁寧に置かれた拳ほどの大きさの石ころを杖でさす。
「それを呼び出すという大義を、貴方に行ってもらおうと言うことです。良くって?」
「………まぁ、別に何でも構いやせんがぁー…。一つ質問していいですかいねぇ?」
「何でしょう」
男は、苦笑いをしながら答える。その苦笑いは、女性の言う荒唐無稽な大言壮語…に対してでは無い。
「そいつぁアンタ、あっしみたいな一介の三流魔術師には、いささか制御できないレベルじゃあありませんかね?」
その荒唐無稽な大言壮語を、子rから実際に行わさせようとされている、現実に対してであった。
「何か?」
女性は、特に問題は無いと言った表情で答えた。男の頬を、冷や汗が走る。
「確かにコレは人類の敵と定められた英霊でしょう。呼べば世界がどうなるかも分かったモノではありません。
ですがそれが何だと言うのでしょうか!我々が求めているのは『7つのイレギュラーが聖杯に満ちる』こと!
その為には他の呼び出された6基の英霊を余裕で屠り去る強力なサーヴァントが必要不可欠!!
そう例え!人類全てを敵に回しても微動だにしない大敵であろうとも!!呼ぶ必要があるのです!」
ニィ、と女性は力強い表情から柔らかな慈愛の表情へと変え、そして男に言う。
「喜びなさい。オリジンストーンが数百年かかっても成し遂げていない偉業を、貴方が初めて行えるのだから
所詮連中の行おうとしていることは、我々の大いなる獣の計画の一部分にも満たないと思い知らせてやりなさい」
「はじめて…?―――つまりは、召喚して従わせた成功の実証は無いってぇことですかい」
「ええ、人類史に刻まれし大敵ですもの。まぁ、何度か召喚の記録は残っています。
十の太陽、永劫の看破、落ちてくる空、無限増殖の死徒…全てで11が確認されています。」
「おいおいそいつぁ”召喚”の記録でしょう?…………制御は、出来たんですかねぇ」
フン、と女性は短く嘆息し、眼を細めながらギンッ!と杖を男の喉元まで一気に持って行き突き立てていった。
「ごちゃごちゃ五月蠅ぇんだよさっさとやれ殺されてぇのか…!」
「―――分かったよ。やれば良いんだろ?やれば」
男は商売道具の鞄を開いて置き、そしてその召喚用の触媒を手に取った―――。
「そういやー、あんたのそのひい御爺さん、アレイスターでしたっけ?
彼も英霊となってるんでしょ?何で呼んであげないんです?」
「あら、頭の矮小なる東洋人にしては随分と機智に富んだ良い質問ですわね。
良いですわ。教えてあげましょう。これは本来は機密事項ですが、その目の付け所に免じましょう」
ニコリ、と一見無邪気な笑顔に女性の表情は変わる。そして、こう言葉を紡ぎ始めた。
「曽祖父、偉大なるアレイスタークロウリーは現在座にはおりません。
いえ、登録はされていますがね?今は別件に召喚されているため、召喚には応じれないとの事ですの。
霊基を分割して力を消耗するわけにはいきませんので…」
「………………霊基を、分割?」
「ええ、かのケルトの槍使いをご存知?彼は多数の側面を持つ英霊ですの。
ランサーはもちろん、ライダー、キャスター、バーサーカーと。しかし、多数召喚されればその分だけ能力が分割されるのが英霊なんですの。
…おっと、話が逸れましたわね。」
女性はわざとらしく口を押え、クスクスと笑う。
「なるほど、そうなるとアンタのひい爺さんは今は別の聖杯戦争に呼ばれていると?」
「いえ、聖杯戦争ではございませんわ」
その言葉に、スーツの男性はきょとんとした表情を返す。
「―――聖杯戦争じゃあない?じゃあ、なんでサーヴァントが召喚されているんですかい」
「ふふふ、やはり矮小なる東洋の島国の三流魔術師ですわね。思い通りの疑問を返してきましたわ」
クスクスクスクス、と女性は肩を震わせながら小刻みに笑う。
「我らが偉大なる曽祖父が今いる場所は、聖都イェルサーレム。
いえ……………『今』と言うのも語弊がありますわね。」
女性は先ほどまでの楽しそうな笑みから、邪悪な、しかし物事を楽しむような無邪気な笑みに表情を変えて言う。

「―――紀元前、931年、かの偉大なる魔術王の死去した時代におりますの」

「…………ちょっと待て…。そいつぁ―――」
男性の言葉を遮るように女性は言葉を続ける。
「もうコレは聖杯戦争などというチャチなるモノではありません。かといって特異点でもありません。
むしろその両方、過去と現在。内と外。そして戦争と特異点!!これは矛盾せし二つの事象の内包したモノ!!」
ばっ!!と女性は両の腕を広げて声を上げて言い放つ。
「これより魔術の歴史は我らがクロウリー家の歴史となる!!待っていろ我らを追放せし時計塔のゴミ共!!
人類の全ては!私たちの物だ!!!」



Fate/shadow Faker

〜欺瞞の聖杯戦争〜




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