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 買収計画.3月23日,2849年.

 リン・ヴォイトはデスクの上に腰を落ち着けていた。マナーを気にする必要はないだろう。ここはニュー・コングロマリットの Woodland Laboratories が所有する空きビル、その空き部屋である。彼女の目の前では、ボディーガードであるフェリックス・セラートがそわそわと行ったり来たり、神経質に部屋を往復していた。

 を利くことなく、ヴァヌから離反者が到着する瞬間を彼らは待っていた。7分前には到着している予定だったが、まだ来ていない。なにかトラブルが起こったのではないかという不安を生み出すのに、この7分という時間は十分だった。デスクの上に黙って腰をかけながら、苛立ちを伴った軽快な往復をヴォイトは眺めていた。セラートの苛立ちが募っていく様子は、強くなっていく歩調から明らかに見て取れる。

「遅すぎる。気に食わんな」

「落ち着いて、フェリックス。到着したときに彼を怖がらせてほしくないわ。もしこれがなにかの罠なら、わたしたちはもうトラブってるわけね。まだそうと決まったわけではないけど」

「こりゃあ最高だな。完璧だ。この状況は愉快だろう? TRBoard のメンバーを手当たり次第に始末している。で、俺たちの待っている彼とやらが暗殺部隊と渡り合えると、お前は思ってるわけなんだろ?」

「ねえ、怒らないで。ここにくるときわたしが事前に調査をしてないと思ってる? デュー・デリジェンスって言葉しってるでしょ? ヴァヌが TR と手を組んでない限り――もし組んでたら、あんたもわたしも、残りの NC も本当にオワリだけど――そうじゃなければ TR の暗殺者と対峙することはないわ」

 フィリックスは拳銃を抜き、マガジンの確認をはじめた。彼にはまだ不安があるようだ。

「武器をホルスターにしまって。ねえ、聞いてる? あんたのせいでしくじっても、わたしは責任取らないから。後始末は自分でやってね」

「はいはい、勝手に言ってろ。言う通りにすればいいんだろ、ヴォイト」

「あーあ、なるほど! 勝手に言ってればいいわけね! あんたのこと人に紹介するとき、中身はまだマシだけどルックスは見れたもんじゃないって紹介し続けるから!」

 フィリックスは彼女を見つめて眉を顰めたが、なにも言い返さなかった。ヴォイトはただ、ささやかながらも馬鹿にするような笑みをたたえていた。

「わかった? あんたを黙らさせつつ、あんたのお望み通りにすることなんて、思っているよりもずっと簡単。でしょ?」

「鉛玉が欲しいみたいだな。撃ってやろうか。そうとしか思えない」

「顔と胸は避けてちょうだいね。これから休暇なの」

 ォイトの通信装置がノイズを発すると、そこから声が聞こえ、2人の応酬は終わりを迎えた。

「ミス・ヴォイト、あなたが提出した個人情報と合致する人物がビルへ入っていくのを確認しました。一見、武器を所持していないようにみえますが、本当にそうであるか、この距離からだと確認できません」

「ついにね」

 彼女はため息をつくと、通信装置へと手を伸ばしボタンを押し込む。

「距離はそのままを維持。わたしたちの指示から外れたことを彼がした場合、それをこっちに教えなさい」

「わかりました、ボス」

 部屋の角へと移動するよう、カリンはフェリックスに合図した。

「あんたの持ち場はそこ。お口にチャックをして、その強面が少しは優しくみえるようにしてなさい」

 角に向かって部屋を横断すると、フェリックスは微笑み、

「言う通りにすればいいんだろ、ヴォイト」

「あらー、なんて学習の速い子なのかしら!」

「次に俺を人に紹介するときは、それも付け足してくれよ」

 カリンの通信装置から、新たな状況の知らせが入る。

「彼はリフトに乗り込みました。そちらへ向かっています」

了解ラジャー・ザット

 リンはコートを整えると、エレベーターのドアへと向かって歩んでいく。彼女がドアの前に立つと同時に、ドアが開いた。エレベーターから出てきたのは、細身ながらも丈夫そうな身体をした中年の男だった。スポーツ用の丸メガネをかけており、頭髪はすべて剃ってある。

「ミス・ヴォイト、で合っていますね? 遅れたことをお詫びいたします。予想していたよりも、ずっともたついてしまいました」

「まったく問題ありませんよ、ミスター・ゴ―ナン」

 彼女はそう言うと握手を交わした。

「こちらへ、どうぞお座りください。そこにいる男はフェリックスといいます。わたしたちの安全を確かなものにすべく、彼はここにいます」

「ええ、そうすべきですとも。なにかあれば、私のことはサムと呼んでください」

 向かい合ってデスクに座ると、ゴ―ナンは答えた。

「私とともに研究をしようというお心持ちに感謝いたします、ミス・ヴォイト。しかし、新たな情報を打ち明ける前に、明白にしておきたい点があるのです」

「わかりました。それについて話合いましょう」

「まず最初に、ヴァヌ・サヴランティーからの保護が必要です。私は、彼らを裏切りました。機会さえあれば、彼らは私を始末する気でしょう。研究以外にも、NC にとって価値ある最新の情報を私は提供できます。あなた方の研究チームが見ることになるものへの理解を私が手伝えば、引き渡すデータはずっと早く役に立ちます」

 言っていることが事実であり、彼が裏切るようなことがなければ、確かにサミュエル・ゴーナンは NC の軍事研究と開発努力上におけるとてつもない資産になるだろう。もし、カリンがそれを実現させたとすれば、彼女のキャリア設計は劇的に上向きとなる。

「あなたの経歴に基づいて言うならば、あなたがおっしゃったことは、NC が手にする利益に関してかなり控えめな表現ですね。もし、わたしたちと働いても構わないとおっしゃるのであれば、わたしと研究チームの顧問として、高給な給与階級で、あなたを喜んで迎え入れます。わたしが自身に確保する以上の安全をあなたに保証することはもちろん不可能ですが、わたしに付いているのと同等の護衛を、あなたにお付けいたします」

「いいでしょう。有事の際でも、それだけの護衛がいれば十分だと思います。次に、私が提示した前払い金額について納得いただけているか、確認する必要があります」

「あー、サム。それは、この合意において障害となっている点でして。平たく申しあげればですね、あなたの要求は法外な金額です。ニュー・コングロマリットは無限の予算をもっているわけではないのです」

「この技術の真価についてご理解いただけていると思っていたのですが、違うのですか? この技術は全てを変えます。滅びたエイリアンの技術を実用化するよりも、エイリアンの種族としての文化を解読することに、VS 指導部の関心は向いています。彼らの財源と人員は、何十もの研究プロジェクトにまたがって薄く分散しています。ニュー・コングロマリットが莫大なリソースを集中的に運用すれば、実用システムの面においてサヴランティーを数か月間は上回れます。テラン共和国が相手なら数年間は有利です。上手くいけば、これは戦闘を終結へもっていくのに十分な時間となります」

「そのお話は、テクノロジーがいつか実用化されることを前提にしています。あなたがおっしゃっていることはデタラメだと考える重役たちもいます。与えてくださる情報には価値があると、わたしは確信していますが、その技術は簡単に信じられるものではありません。巻き戻すなんて、その……」

「技術がもたらす効果を誇張してはいません、ミス・ヴォイト。技術が実用化される日は避けられない。私があなた方に示しているのは、それを一番乗りで手にするチャンスです。あなたの手へ受け渡すものが持つ価値と比べたら、前払い金は雀の涙ほどにしかなりません。申し訳ないのですが、ミス・ヴォイト、NC が報酬を払いたくないのではないかと、少し心配になってきました」

「実のところを申しあげますと、あなたのデータは私たちの興味をそそるもので――それを欲しいとも思っています――しかし、肝に銘じておいて頂きたいのは、たとえ技術が説明通りのものだとしても、たとえ理解と開発のためにあなたを連れて行くとしても、実用化には計り知れない資金とリソースを捧げる必要があるという現実です。今回の買収に伴う追加のコストを考慮して、提示額の50%でしかわたしの上司は納得しません」

「それじゃあ足りません。TR がきっと私を見つけて、提示額を払う道を探してしまうはずです。そうでなくとも、ニュー・コングロマリットは崩壊します。勢いが衰えることなく暗殺が続けば、あなた方の企業の指導部は瓦解するでしょう」

「勘弁してくださいよ、ミスター・ゴーナン。あなた、TR が情報に報酬を支払うとお考えですか? 欲しいものを奪っていくだけでなく? TR へ行ったら最後、あなたの体はドブに沈められるでしょうし、もっと酷ければ、尋問室で生かされ続けて、価値がなくなるまで科学者に尋問され続けますよ」

「あなたがもつ TR への私見に賭けたわけですね。それで私の気が変わると」

「いえ、わたしが賭けるのは、あなたに対してです。提示額の60%。それを受け取って、NC の支援と保護のついた大金持ちとしてこのビルを出ましょう。そして、今まで着手されてきた人間性の観点に基づく科学的研究において最も重大になりうる仕事に取り掛かりましょう。受け取らずに去れば、あなたはダイスを振ることになります。わたしたちの取引はこれで終わりになり、NC とテラン共和国がどれほどかけ離れているか、目にするかもしれません」

 ゴーナンは席についたまま不快そうな仕草をし、メガネのブリッジを押し上げる。

「65%」

 カリンは横に大きく口を広げて笑顔を作り、机の向かいへ手を差し出す。

「成立です。サム、ようこそニュー・コングロマリットへ」

 サムはわずかなため息を残し、彼女と握手を交わした。その握手によって、張りつめていた緊張もいくらか消えたようだ。

「細々とした話で無駄にする時間はありません。時間なら、後ほどたっぷりとあります。安全な交通手段に繋がる下の階へ、フェリックスが案内します。乗り込んだら、個人情報の洗浄と新たな口座への契約金振り込みを始めましょう。また近いうちにお会いしますので、そこで取り掛かる内容について説明してください」

「ありがとう、ミス・ヴォイト。あなたも、あなたの上司も、満足しますとも」

 ェリックスが離反者を誘導しながらリフトへと歩き始めると、カリンは通信装置に手を伸ばし連絡を入れる。

「デイビス、聞こえるユー・コピー?」

「イエス、マム。なにかありましたか」

 2人の男がリフトへと乗り込む瞬間を、カリンは見届ける。フェリックスとゴーナンがドアの向こうへ消えていくと同時に、彼女は返答する。

「スナイパーを引き上げて。彼を手に入れたわ」

了解ラジャー・ザット、ボス」











訳注
原文ページ:PS2 Chronicles - Acquisition
  • Karin Voight(カリン・ヴォイト)
  • Felix Cerrato(フェリックス・セラート)
  • Samuel Gornan(サミュエル・ゴーナン)
  • Davis(デイビス)
  • Terran Republic(テラン共和国)
  • New Conglomerate(ニュー・コングロマリット)
  • Vanu Sovereignty(ヴァヌ・サヴランティー)

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