ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

わたしが学校の帰り道、ワゴン車に押し込められて誘拐されたのはこれから暑くなっていく5月の終わりだった。
学校の帰り、そろそろ半袖に変えてほしい、いや、やっぱりもう、学校がなくなってずっと家の中にいられればいいと思いながら、私は一人で帰っていた。ランドセルには今日投げつけられた物のせいでどろどろの茶色いしみができていて、その中にさっきコンビニのゴミ箱に捨てるまで入っていた、買いかえてもらった後の新しい教科書には「死ね」とか「汚い」とか「うそつき」とかそういう寄せ書きが書かれていた。
よろよろ歩きながら、わたしはでも、学校を休んだら家族から心配されて、もっとひどいことになるのが分かっているから、帰って、なんともなかったよと言って、また明日学校に行く必要があるのだ。
そういう時に、横をすっと通った黒いワゴン車の扉が急に開いて、手が伸びて、わたしを中に引き込んだので、わたしはもうどうなっちゃってもいいなって思った。
別にもう、嫌なことが多すぎるし、ちょっとくらい誘拐されたところで、それがなんなんだって。で、わたしが「別に誘拐してくれてもいいです」とか言う前に、わたしの首に何かちくっとした痛みが走って、そうすると「別に」まで言ったところでにのiがながーく延びた感じがして、そのまますこんと目の前が暗くなった。

わたしがまた目を覚ました時、まるで歯医者が歯垢をとるのに使う曲がった針でがりがりと引っかかれてるような痛さが、頭の内側にあった。
頭を抱えたかったけど、どうもそれはできないみたいだった。わたしの体は縄か何かで縛られているみたいで、背中の感じだと堅すぎるベッドというか石じゃないかってところで仰向けに寝かされていて、さらに猿ぐつわがはめられているので、手を頭に当てて「頭が痛いよー!」と叫ぶこと模できないし、しんどくって目を開ける気力が沸かないのだった。だからわたしはうめいた。
「・ーっ!」
思いっきり何度も、頭の痛みが晴れるようにうめいたのだけれど、頭が痛すぎるしちょっとだるすぎて小さい声しか出なかった。
「おっ、起きたぞ」
意外なことに誰かが近くにいるみたいで、わたしはその人がどんな人なのか知りたくて、目を開けた。
そこには思ったより、わたしを見下ろしているたくさんの人がいた。10人近いその人たちはみんなまるでスター・ウォーズでシスが着ていたみたいな黒くて長い服ーー後でローブと呼ぶと知ったーーを着て、おかしな気味の悪い仮面を付けていたり、顔中に赤黒いペイントをしていた。
予想外の展開にわたしが戸惑っていると、その人たちのうち、一番前でわたしを見守っていたらしい、シスっぽい手に大きな本を持った人が、後ろを振り向いて言った。
「生け贄はこの子供でいいのか? もっとその……小さい子供の方がふさわしいんじゃないのか? ほら、後始末とか」
いけにえ? 理解できずに、わたしはその音が耳を通り抜けていくのを感じた。
「このくらいの年の方が失踪したとしても捜査の手が遅れるんですよ。小学生なんか、すぐに捜索願が出されますが、中学生の場合は家での可能性があるので、発見が遅れます。どうもこの子、いじめを受けているみたいですし。そっち方向に捜査がそれる可能性は高いでしょうから」
いけにえ? イケニエ? 生け贄……そう、生け贄……生け贄!?
わたしの頭の中で音と言葉がようやくつながる。わたしは必死でもがき始めた。さすがに死ぬところまで想定してなんかいない。
「本格的に目を覚ましたみたいだな。さっさと片を付けないと。まずは儀式だ」
シスたちはうーうー呻いて必死でもがくわたしを無視して、奇妙な言葉、お経とか呪文とかそういうなんかを唱え始めた。
わたしの耳にはなんとなく「みたせ」とか「とじよ」とかいう音が聞こえたが、それどころではない。
必死でもがき続けて、まるっきり縄は緩まず、ああ、学校でいじめられて、こんなカルト野郎たちに殺されるなんて、最低の人生だったな、という回想を始めそうになったとき、目の前が光った。
「ーーあなたがぼくのマスターですか?」
新しい声。シスたちがぶつぶつ唱えていた声とは違う、若い男の人の声。何となく頼りなさそうな声がした。
「そうですとも、我が師、エイボン様!」
シスの声。
「あ、いや、その、あなたでは」
頼りなさそうな男の声を遮って、シスは更に言う。
「あなたを召還し、そして、偉大なるつぁとぅぐあ神を大いなる眠りから覚醒させ、世界に再びつぁとぅぐあ信仰をもたらすのです!」
「あー……その」
「そのために召還の儀を接続し、続けてつぁとぅぐあ神を召還する、この方法を探求するためにどれほどの同志を集めたことか!」
「いや、ちょっと待って!? 今なんて言ったの?」
シスがどんどん早口になっていくのを遮って、エイボンとかいう頼りなさげな声ーー外国人みたいな響きなのに、すごく流暢に日本語をしゃべっていたーーが言った。
「召還の儀を接続し、続けてつぁとぅぐあ神を召還ーー」
「なんてことを!」
エイボンが言った。
ばたばたとそこら辺を走り回る音、ばさばさ手を振り回す音がした。
「ああ、もう、ダメだ! 手遅れだ!」
そのとき、ごっという音とともに、部屋の空気が変わった。わたしは小さい頃に蓋付きのゴミ箱を開けたら、中に入っていたゴミが急にものすごい悪臭を放ち始めた時のことを思い出した。あれと今の状態は、似ている。どこか、開いてはいけない場所の蓋が開いたような。でも、生ゴミよりも、たぶん、その蓋の向こうには、もっと良くない物が入っている。そうわたしは感じた。
「見ちゃいけない!」
エイボンの声がそういうのが聞こえた。と、思うと、急にわたしの周りが、分厚い霧に包まれた。霧はまるでバリアか何かのようにわたしの周りをくるんでいた。
「どうしてこんな」
シスの声がそこまでで途切れて、その後にものすごい悲鳴が起こった。そして悲鳴は、まるで音すら吸い取る何かが霧の向こうに存在するように、あっけなく消えた。ほかのシスたちが悲鳴を上げるのが聞こえた。それもすぐに消えた。

しばらくして霧が晴れると、部屋の空気は元に戻っていた。誰かがこちらに近づいてくる感じがした。
仰向けで縛られたまま固まっていると、わたしの視界の中に男の人が入ってきた。
ちょっとぽっちゃりした若い男。たぶん、成人してすぐくらいの雰囲気。変わった格好ーーつぎの当たった、何かの革でできたような分厚い、あまり着心地のよくなさそうな、長いコートを着ている格好ーーをして、腰に付けた同じ革のベルトには小さな袋と、紐で縛り付けられた緑色の分厚い本、鞘に入れられたナイフが縛り付けられていた。
「大丈夫?」
その男の人が声を出したことで、さっきまで「エイボン」と呼ばれていた人だとわたしは知った。
「可哀想に、今、縄を切るからね」
そう言って、エイボンはナイフを取り出して、わたしを縛っている縄をごしごし切り始めた。
なんで、この人はさっきのシス軍団に「師」とか呼ばれて敬語を使われていたのに、わたしを助けているの? さっきの霧も、どうもわたしを助けるために使ったものみたいだったし。
わたしは困惑する。
縛られていた私の手がようやく開放されて、とりあえず痺れていた手に血を通わせようとして、私は手を動かして、そして手の甲に目が行く。おかしな、複雑な形のタトゥーがそこにはあった。なんというか、紋章みたいな。
「あの、これ、何?」
私が最初にエイボンに聞いたのは、それだった。
「ああ、それは令呪――って、それを知らないということは……うーん、多分、ああ、そうだね。あんなおかしな、間違った儀式をしたわけだから、想定外の効果だったんだろうね」
ひとり合点されても困るのだが。
「うーん、要するに……いや、ここで話すのはあれだ。うん。とりあえず。あなたはぼくのマスターです」
マスター? 何のことなのか、わけがわからないまま、わたしはとりあえず、その言葉に頷いていた。
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