魁っ！クロマ泥(ディ)高校
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nevadakagemiya 2017年03月19日(日) 01:36:34履歴
『魁っ！クロマ泥(ディ)高校』
────────────前略、黒咲恵梨佳様
晴れて、僕オデュッセウスはクロマ泥（ディ）高校へと入学できました。
一日も早くこの新しい生活に慣れて、皆と仲良くしていきたいと思ってます。
──────────────────ただ…、
見慣れない不良（ひと）達に囲まれて、いささか戸惑っております…。
………悪そうな人たちばかりです。
緊張して、鉛筆を持つ手もブルブルとバイブレーションしておりま──────
──────ッ！！鉛筆を落としてしまったァァァァァアアアアア！！！
………が、意外な事に隣の席のバーサーカーが拾ってくれた。
シルクハットに燕尾服を身に着け、スティックをついているバーサーカーだった。
鷲鼻が目立つ肥満気味の男性だけど、なんだ…不良の中にも良い人っているんじゃないｋ──────
『バキッ！ボリッ…！ボリッ…！ボリッ…！ゴクン…っ』
……………く…………ッッッ！！食った……………っ！？
さ……流石は悪で有名なクロマ泥高校…！！通っている学生もただ物じゃない…！！
……………。なんとなく、本当になんとなくの感情だけど、アカイアの軍師としての興味本位で、
バラバラバラと持っている鉛筆を全部床に落としてみた。悪気はない。ただちょっと興味があるだけだ。
「………………………」
少しバーサーカーは迷ったみたいだけど、落ちた鉛筆を勢いよくワシ掴みにすると、その全てにがぶりとかぶりついた。
や…………………………………やるじゃないか………………。
面白くなってきたので、同じようにドサドサと筆箱の中から定規やらコンパスやらも落としてみる。
「…………………………………………………………！！」
流石にビビるか？と思ったが、驚くべきことに冷や汗をたらしながらバーサーカーはぼりぼりと文房具を喰らった！！
や……やはりここはタダの不良校では無い！いや、なんかワルとかそう言うの関係ない気がするけど…！
バーサーカーが何やら顔を青くして腹を抑えて廊下へ走っていったけど気にしないでおこう。
………どうしてこうなってしまったのか？
思えば２年前、中学２年生の事であった……。ボクは戦わない軍師だといじめられていた。
だがしかし、そんなボクを助けてくれたのが、かの大英雄アキレウスであった。
その出会いもあって、僕らは親友となった。共に助け合い、そして笑い合った。
────────────そんなある日の事であった………。
「え？アキレウス、進学しないのかい？」
「ああ、バーサーカーの霊基じゃどうも頭が動かなくてよ。高校なんて、行っても意味ねぇよ」
そいつはそう言って、寂しそうに笑った。
「確かに今は高校に行かずとも進路はある。でも、君は『もっと学生生活をしたい』って言ったじゃないか！」
「いや、そうだけどよぉ…。俺の学力じゃあ、入れる高校もないぜ？」
「クロマ泥高校がある！あそこならば引き算さえできれば入れる！」
クロマ泥（ディ）高校………それは有名なワルの総本山たるヤンキー高校。
ヤンキー率は生徒の１００％だの１２０％だの目指せ１０００％だの言われている。
「クロマ泥高校…？ふざけんな！あんな馬鹿学校イケるかよ！」
「いいや、大切なのは本人のやる気だ。やる気さえあれば何処でだって勉強は出来る。」
「きれいごとを…！お前は頭が良いからそんな事を言えるんだろう！」
「いいや、ボクは本気さ。なんなら、ボクもクロマ泥高校を受けてやろうじゃないか」
そうして色々とあって、ボクは彼と一緒に県内最下位偏差値を保持するクロマ泥高校へと願書を出した。
「おい…、良いのかお前…お前程の頭なら時計塔すら目指せるのに…」
「良いんだ、キミと一緒ならどこだって楽しいし、そして何処ででも勉強できる。それを証明して見せるさ」
「オデュッセウス………！！お前…！良い奴だなぁ……！！」
彼は笑いながらも、眼に涙を浮かべていた。
「一緒に、この学園を変えていこう！」
「ああ！」
そういって、僕らは手を取り合って受験に臨んだ。
そう、アイツとの出会いがこの学校へとボクを運んだんだ………。
──────────────────だが、一つだけ誤算があったんだ。
アキレウスがこの高校を落ちてしまったことだ………！！
…アイツ、そこまで狂化かかってたのか…。
◆
不良というものは、週３の割合で「俺も昔はワルだった」自慢大会を開始する。
更に入学当初という、互いの強さの把握と自分のカースト設定において重要な今の時期と言う事もあり、
ここクロマ泥高校では週８のペースで「俺も昔はワルだった」自慢大会が開かれていた。
「俺のいた裏新宿中はワルの巣窟でなぁ、しょっちゅう人攫いがあった。そんでもって同級生の雷帝と手を組み、
攫われるたびに攫った奴らを２人でボコボコにして奪り還してきた……。着いたあだ名が、奪還屋（ゲットバッカーズ）！！」
「マジかよ…！おめぇがあの裏中のゲットバッカーズか！」
「はっ！俺もかつては名の通ったワルだったぜ？
俺は昔は一匹狼だったが、覇道連合と手を組んで俺の手でかの暴走族、チームブラッグ・ロッジを落とした。
あのマスター・セリオンの首を落としたのはこの俺だ。着いたあだ名が！『神秘殺しのタイタス・クロウ』！」
「何だとォ！？てめぇがあのアーカム中のネクロロリコンだっていうのか！？」
「ちょっと待て、なんだそのあだ名？俺知らねぇんだけど……。ねぇちょっと！？」
「ふーっっはっはっはっはっはぁ！貴様ら程度の逸話では、この俺のやらかした奇人逸話には敵わんなぁ！！」
「な、なんだぁおめぇは！？」
「俺は盗んだスコップをもって走り出し、夜中の墓を掘り暴く毎日であった…。
死体の解剖や盗掘など日常茶飯事…。葬儀屋を騙って死体を盗んだ日もあった…！」
「な……！！なんつーワルだ！」
「ワルっつーか、奇人っつーかぁ…」
「ふふっ、もっと讃えるが良い。この医学を２０００年進めたこの星の開拓者ジョン・ハンターを！」
「────────────で、お前のあだ名は？」
「え？………………いや、あだ名は特にない。」
「じゃあだめだ…。」
「ちょ！待て待て待てェイ！あだ名程度どうでも良いだろう！？」
「いやあだ名は重要だぞ。真名をばれにくくするのにも重要だし…まぁ、また今度と言う事で…」
「今度っていつだよ！？」
そんな取り留めも無い会話が盛り上がっていたが、その矛先はクラスでも大人しいボクの元へと来た。
「おいオデュ！お前にも中学ん頃あだ名あっただろう！？『アカイア軍師』とか、『イタケー仮面』とか！」
なるほどあだ名か。それならボク固有の素晴らしい物があるぜ。
「中学の頃は『愛妻家だけど浮気する奴』と呼ばれていました！」
「それあだ名じゃねぇよ！！ってか誇らしげに語るな！！」
「おめー、なんか中学ン時悪い事した時あんのか？」
悪い事、悪い事ねぇ…。特に無いかもしれないなぁ。
「した事は無いですねぇ。真面目に生きてきましたから…。」
────────────でも、
「でも、こんな僕でも一度だけ悪い事をした事があるんですよ」
そう、今まで真面目に生きてきた僕ではあるが、１度だけ悪い事をした。
「ふん、お前の悪事なんて、どうせピンポンダッシュ程度だろう？」
「いやぁ、あれは────────────────────────」
あれは今から２年ほど前、中学２年生の夏頃だったかな。
ボクのアカイア中と、トロイア中が抗争を起こした時の話だ。
まぁ紆余曲折があって、ぐだぐだになって攻撃の手が緩んだ時があってねぇ………………
「………まさか、隙を突いてボコボコにしたとかじゃねぇよなぁ！？」
「流石にそんな卑怯者みたいな真似はしないよぉ」
「そ、そうだよな…。んなことしたらトロイア中の連中がいくらなんでも可哀想すぎ─────────」
「ただ木馬を作ってその中にみんな隠れさせて、トロイア中を中から滅ぼしただけだよ」
『やっぱおめぇ相当ワルだよ！！！！！！！！！！』
みんなが声をそろえて言った。全くボクの何処がワルだって言うんだ。失礼な。
◆
────────────前略、黒咲恵梨佳様
クロマ泥（ディ）高校へとボクが入学して、早２ヶ月が過ぎました。いかがお過ごしでしょうか？
相変わらず、ボクはこの高校の雰囲気に馴染めません。
しかし、この世界には「高校デビュー」と言う存在があると聞きました。
これさえあれば、不良じゃない英霊でも不良として再スタート出来るらしいです。
東の方の坂田金時と言う英霊がこれによる再スタートを切ることが出来たと聞きました。
という訳で、早速試してみたいなと思います。
『レッスン�機Ω�た目を怖くしよう』
不良というものは見た目が重要です。そしてその中でも重要なのは髪型です。
リーゼントなどにするのも良いですが、ここは敢えて金髪で攻めましょう。
スキンヘッドも迫力が増してよろしいですが、童顔だと野球少年っぽくなってしまいます、か…………。
じゃあちょっと薬で髪を金髪に脱色してみよう。さて薬を洗面台で使って十数分………。
─────────薬が強すぎて真っ白になってしまった…。
しまった、これじゃあキルケーみたいじゃないか…。（前中学の彼女。１年付き合ってた。）
『レッスン�供ι�装に気を付けよう』
だらしない恰好をしておきましょう。ホックは必ず外しておきましょう。
中にワイシャツを着ないで、柄のシャツかTシャツを着てください。着なくてもいいです………、ねぇ…なるほど。
着ないのはマズいだろうな…。ボク以外男ヤンキー９５割というワルのオリンピック状態の高校だ。
何かあったら女のボクはひとたまりもない…。一応黒ランで男と偽っているが、バレたら『やめて！乱暴する気でしょう！』オチが待っている…。
途中を飛ばして『レッスン�此Χ�そうな連中とつるみましょう』
歩く際はなるべくゆっくりと、威圧感を出しながら歩きましょう。
そして強そうな連中とつるんで歩きましょう。周囲の強さであなたも強そうに見えるはずです、か…。
なるほどこれは確かに言えるかも知れない。アルゴー中のイアソンとか確かにそんな感じだった。
社会に出てからもコレは訳に立つかも知れない…。
『ここまで来たら高校デビューまであと一歩。では最後のレッスンです』
ほう、とうとう最後のレッスンまで来たか…。さて、一体最後にはどんなレッスンが待っているんだ？
『以上の事を高校入学以前に済ませて置いて下さい』
────────────────先に言えよ………。
◆
「そろそろうちのクラスの最強の英霊を決めようぜ！」
誰かがそう言った。その言葉はすぐ様にクラス中に広まった。
「あらかじめデータをあつめ、３人までピックアップした！入って来てくれ！」
そう言って、段の上にランスロット・オルタとジョン失地王とボク、オデュッセウスが上がる。
────────────────ちょっと待って。
「なんでボクまで候補に挙がっているの」
「こっちの台詞だぁ！さっさと下がらねぇとぶっ転がすぞ！」
いや、ボクとしてもこんな野蛮な争い事には参加したくないし一刻も早く早退したい所なんだけど…。
「オデュを推薦したのは、俺だ。」
そう手を挙げたのは、後ろにいた闇道澪印ちゃんであった。
「澪印！？何故！？」
「俺らはずっとワルの世界の中で生きてきた。だが、そのせいでもうワルな連中には慣れちまった。
だが、こう言う普通の奴には何か凄みと言うものを感じねぇか？ライオンの群れの中に一匹いる兎みたいなよ！」
「な…なるほど、確かにそう言われるとスゲェかもしれない」
あれ？なんか話が妙な方向に拡がって無いかなぁ
「つまりだ！俺はお前の中に潜む悪魔が見てぇんだよ…！」
「い、意味が分かんないんだけど…。」
意味が分かんなかったけど、彼女が顔を近づけた拍子で彼女の胸がたゆんと僕にぶつかったから許した。
その後、『一体どういう英霊が最強なのか』という話になって、最終的に『どんな攻撃を前にしても生き残る英霊』
と言う話に落ち着いた。その結果、上級生のニビル君の宝具から逃げ切ったモノが最強と言う事になった。
────────ランスロットは被虐体質の生で集中砲火を喰らって、ジョンは出落ちした。
その結果、なぜかボクの不戦勝として………。ボクが、このクラスでの最強英霊となってしまった。
『頼むぜ軍師！』
『期待しているぜアカイアの軍師ィ！』
気付いたらなんか変な期待受けているし…………。心配だなぁ………………………。
◆
────────俺の名は、キニチ・ハナーブ・パカル1世。クロマ泥高校の裏番を、１年にして仕切っている漢。
英霊としての知名度、古さ…それらを買われたのかもしれない。３年生すら、俺に一目置いている。
………………だが、そんな俺でも１つだけ大きな弱点がある。それは────────
────────────乗り物に、非常に酔いやすいと言う事だ…………。
そして現在、不幸なる事に俺達クロマ泥高校１年は日光へ向けて旅行している。
旅行と言えば欠かせないのが乗り物により長距離移動！くっ！！辛くなってきやがった！！
俺は今、バスの最後部の座席にて喉の奥からせりあがりそうになっている吐き気を我慢していた…………。
『お、おい…パカルさんすげぇ表情をしているぜ…』
『随分と機嫌が悪いと見れる…。ありゃまた奥さん３人と何かあったな…』
ちげぇよ！そんな事１つもねぇよ！！ってか何で俺の奥さんが３人もいる事になってるの！？
１人は少なくとも完全な追っかけだし！勘違いだからそこんとこ間違えんなよお前ら！！
────────と、言いたいところだが、口を開くと吐瀉物が噴出しかねないので黙っている。
「繰〜り返〜す〜世界、何度〜手を〜伸ば〜したら〜儚〜い涙は〜黒〜い、心溶かすの〜っと、
あぁ、旅行は楽しいなぁ。ん？後ろの方がなんか席が空いている。こりゃいいや、すーわろっと」
…………………………何で俺のすぐ隣に座る……………………ッッッ！！？
馬鹿野郎！！吐きそうになってるのがばれるだろうが！離れろ！………とは言えない！口を開くと…！！
「あ、どうもー。ボク２組のオデュッセウスと言います。どうぞ以後よろしくお願いしますー。」
おう、よろしく………なんて言えるか！ぺこりと会釈しただけでも吐きそうなんだよこっちは！！
そんな事を考えていたら、バスの運転手が地獄の一丁目の入り口を告げた。
『間もなくー、イロハ坂に入りますー。大変揺れますのでーご注意くださいー』
い……………いろは坂…………！！
俺は今までありとあらゆる聖杯戦争を物怖じせずに勝ち抜いてきた。だが！
いろは坂だけはマズい。名前を聞くだけでも背筋が凍りそうになってきやがるぜ！
「おや？大丈夫かい？顔色が悪いようだけど…どこか具合でも悪いのかい？」
オデュッセウスとやらが、俺に心配の言葉をかけてくれている。それは良い。非常に良い。
だが、──────────────
「ねぇ大丈夫かい？(ﾕｻﾕｻ)顔色が悪いぞ？(ﾕｯｻﾕｯｻ)」
揺らすな！！グワングワン揺するな！！酔いが数十倍になって襲ってくるだろうが！！
そして更にタイミングが悪い事にいろは坂のカーブと重なって振動が数倍になって襲ってくる。
ウゥップ…！！ちょ！勘弁してくれ！！俺が悪かった！何でもする！許してくれ！！マジで！
「あ、あれ？ひょっとしてパカルさん…”アレ”ですかね？」
き、気付いてくれたか！そうだよ乗り物酔いだよ！！分かったなら早く立ち去ってくれ！
あ、持っているなら酔い止めとかなんかくれればそれでも良い。流石は軍師とあだ名される男
洞察力はただ物じゃないなコイツ…。
「いやぁ申し訳ない、気付けなくて───────」
「お腹が空いていたんですね。ボクのお弁当で良かったら、どうぞお食べ下さい」
「………………………。」
うぉ〜〜〜〜！！！食ってやる！食ってやろうじゃねぇか！！
俺は偉大なるパレンケの王だぁ！これくらいの試練乗り越えられずに無辜の怪物やっていけるかって話だこのやろー！！
────────────────────────────
─────────────────────
──────────────
───────
───
……
…
『パカル、バスん中でぶっ倒れたらしいぞ』
『マジで！？』
「さぁ、みんなで日光を満喫しよう！ボク初めてなんだよねぇー」
◆
─────────────クロマ泥（ディ）高校には、魔物が住むと言われている。
いや、魔物と言っても七十二の目がいっぱいついた柱とか第六架空要素とかでは無い。断じて違う。
「おはようございま───────…………誰もいないし………。」
ボクの努力は虚しく、学園の風紀は荒廃の一途を辿っていった。これではアキレウスとの約束を果たせない………。
「うぃーっす」
僕に遅れて、闇道澪印ちゃんが眠そうな顔をしながらドアを開いて教室に入って来る。
「澪印ちゃん遅刻だよ。もうとっくに１０時過ぎじゃあないか」
「うっせぇなー…。誰も彼もが遅刻してるんだから俺一人が守っても意味ねぇじゃねぇかよー…」
「確かにこの調子じゃどれだけ注意しても意味がない！だけど、僕は諦めずにこの学園を平和にして見せよう！」
「………………そいつぁ無理な話だぜ、オデュッセウスさんよぉ」
ニィ、と闇道澪印ちゃんは楽しそうに笑みを浮かべた。
「何故？一体何が原因だと言うんだい？」
「１年３組にとんでも無い奴がいるんだよ。アイツがいる限り、この学校はワルの聖杯戦争状態だ」
「とんでもない奴……………！？」
興味を持ち、ボクは３組のクラスへと向かった。「行けば分かる」と言われたが…一体どんな奴だと言うんだ？
扉を勢いよく開き、３組へと足を踏み入れる。…………周囲のごろつき共が、僕に向かってガンを着けるが、
正直ボクのクラスの連中に比べればへでも無い。フッ、と軽く笑ってやったら、相手は背筋に寒気が走ったように震えた。
────────────────時間の無駄だ。返ろう。どうやらここに『そいつ』はいないようだな。
恐らく、闇道澪印ちゃんが何か勘違いでもしたのだろう。そう思いながらガラリと扉を開いたら、
侍じみた出で立ちをした、木刀と真剣を腰に差した男がいた！
こ………………こいつかぁ〜〜〜〜ッ！！！
間違いない！この男だ！！………………だが、一つだけ気にかかる事がある！
─────────この男…………、本当に高校生なのか………………………？
「は…………はじめまして。２組の…、オデュッセウスと申します」
「──────────────────。」
「あ、あの……………お名前は…………？」
「──────────────────。」
「は、はろー、ないすみーちゅー」
「──────────────────。」
………………………………………………………………喋れよ！！！
よ、よっぽど自分の事を喋りたくないのであろうか…？それとも、日本語が通じないのか？
とりあえず、色々と分からない事しかない為一旦教室へと変える事にした。
「─────────で、どうだった？」
「いや、もうお手上げだ。あれ多分ステータス見るにバーサーカーだよねぇ？」
「うん、多分。二刀流でバーサーカーと来た。相当の攻撃力と見るぜ………。」
「なぁ、なんでこのジョン・ハンターがこんな集まりに収集されているんだ？なぁ」
「とりあえず、この対策会議にて彼にニックネームを着けたいと思う………。」
「聞けよ！！」
そう、ニックネーム。名前を定めると言う事は、言い換えるならば『コイツに狙いを定めた』と言う事を表す。
「ほう…、名前か。なんだ？」
「………………………ムサシでどうだろうか」
「ムサシ………。ふむ、なんか女見てぇな名前だけど、それで良いだろう。」
二刀流で、しかも日本風の剣士みたいな風貌だったら、こう着けるしかないからね。
さぁムサシよ、こちらの３人は準備万端だ！どんな手段でも良い…かかって来い！
「いやだから何でおれまで巻き込まれているんだ！？」
◆
─────────────クロマ泥（ディ）高校には、獣が住むと言われている。
いや、獣と言っても人類悪顕現だとか憐憫の獣だとかプライミッツ・マーダーとかでは無い。断じて違う。
「おはようございま───────…………誰もいないし………。」
ボクの努力は虚しく、学園の風紀は堕落の一途を辿っていった。これではアキレウスとの約束を果たせない………。
「うぃーっす」
僕に遅れて、闇道澪印ちゃんが眠そうな顔をしながらドアを開いて教室に入って来る。
「澪印ちゃん遅刻だよ。もうとっくに昼過ぎじゃあないか」
「うっせぇなー…。誰も彼もが遅刻してるんだから俺一人が守っても意味ねぇじゃねぇかよー…」
「確かにこの調子じゃどれだけ注意しても意味がない！だけど、僕は諦めずにこの学園を平和にして見せよう！」
「………………そいつぁ無理な話だぜ、オデュッセウスさんよぉ」
ニィ、と闇道澪印ちゃんは楽しそうに笑みを浮かべた。
「何故？一体何が原因だと言うんだい？」
「１年４組にとんでも無い奴がいるんだよ。アイツがいる限り、この学校はワルの悪性隔絶魔境状態だ」
「とんでもない奴……………！？」
興味を持ち、ボクは４組のクラスへと向かった。「行けば分かる」と言われたが…一体どんな奴だと言うんだ？
「────────────って、なんで澪印ちゃんまで一緒にいるの？」
「いや、今回は俺も話に聞いただけでどんな奴かは分かんねぇからちょっと見てみてぇなと思って」
「まぁ、ここでウダウダ言っても始まらない。早速この扉を開こうではないか。」
いつの間にかついてきていたジョン・ハンターが勢いよく扉を開いた。
…………って、なんかコイツ…前回は嫌がってたのに今回は嫌にノリノリだなぁ。
開かれた扉の向こうには、熊がいた。
─────────いや、比喩表現じゃない。クマ。マジで熊。そのまんまクマが椅子に座っていた。
「ほら」
いや、ホラじゃねぇよ澪印ちゃん。その前に教室にクマがいる事に驚こうよ。
「ま……………まぁ、この世には科学では解決できない事が多いし…」
「科学とかそう言う問題じゃないと俺は思うぞ…。」
むぅ、それもそうだジョン・ハンター。
「だが、日本中のワルが集まるクロマ泥（ディ）高校だが、あれほどのワルが来るとはな」
「あれワルって言うのか？というか人間なのか！？」
「ジョン君。君の焦りは最もだ。だが、流石にクマが高校に入れるはずがない。
きっと彼は人間なんだ。ほらいるだろう？１クラスに一人はクマっぽいやつ」
「ああ〜いるいる。ブタゴリラとか呼ばれるタイプの奴ねぇ〜いるいる〜」
「いねぇよ！！」
まぁとりあえず観察を繰り返してみたが、とくに人を食うような様子は無く、人畜無害に小アイアスを食べているだけだから
特に気にかけずに放っておくことにした。一日１小アイアスで済むと言うのなら安い物だ。
「ちょ、ちょっと待つでやんす！あっし何でこんな役ｎ─────（ﾎﾞﾘﾎﾞﾘﾎﾞﾘﾎﾞﾘｭﾊﾟｷｯ」
◆
─────────────安倍晴明、推定１０００歳オーバー。日本出身男性。
平安に生を受けし陰陽師。日本中の高校の数々をその陰陽術によって支配してきた！
その理由はその強力な能力によって、数々の学校の理事長（キャスター）を支配するその精神掌握術にある！
陰陽術×精神掌握術！これほど恐ろしい組み合わせがあったであろうか！彼は、その類稀なる手腕で１８校を支配してきた！
「ここがクロマ泥高校ですか…晴明様には似合わない、小さな所ですね！」
「ふはははははははははははははははははははは！！！！！！！！！！！
小さい！！！！！！！！！！！！！矮小！！！！！！！！！！！！！！！
この程度！！！！！！！！！！！！！！！すぐ様！！！！！！！！！！！
支配してくれよう！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「晴明様に楯突く奴がいたら！速攻退学にしてやりましょうよ！」
「ふん！！！！！！！！！！！！！！！！！！我が直接！！！！！！！！！！！！！！
手を！！！！！！！！下すまでも！！！！！！！！！！！！無い！！！！！！！！！！」
意気揚々と身長２ｍを優に超える男が、ガラリと教室の扉を開いた。
しかし、そこに立っていたのは同じく身長２ｍに迫る筋骨隆々の日本の侍じみた男であった！
──────────────────────────（ﾋﾟｼｬ）
「ど…………どうしました晴明様？顔色が悪いですよ？」
「ふ、ふははははははははははは！！！！いや、何あれ…………？
なんか今、放浪者（バガボンド）みたいな剣士と言うか狂戦士と言うか何かが…その…。」
「ま、まぁこの学校はワルで有名ですからね…。ヤバイ奴の１人やふたり…」
「明らかに！！！！！！！！！！！！！ワルとか！！！！！！！！！！！！
そういう！！！！！！！！！！次元じゃ！！！！！！！無い！！！！！！！」
「は、はぁ…………。で、でもビビる事は在りませんよ晴明様！何かあったら退学に出来ますもん！」
「う……うむ！！！！！！！！！！！！！それも！！！！！！！そうか！！！！！！！！
だが！！！！！！！！！！今度は！！！！！！！！貴様にも見てもらう！！！！！！！！」
そう言うと、大男とその横に立つ小さな式神は勢いよくガラリと扉を開けた。するとそこには！
「んもー！武蔵何でボクの席に座ってるんだよー！(ﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁ)」
「つーかお前のクラス向こうだろ！なんでこっち来てんだよ(ﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁﾍﾟﾁ)」
黒髪の少女二人に延々とﾍﾟﾁﾍﾟﾁされている先ほどの男の姿が在った。
「…………………………どう思う？アレ？」
「どう…………と言われましても……………。
何と言うか、若干狂化した頼光サマに似てなくもないですけど。性格は大人しい感じでしょうか？」
「ああ………。我も今本気で驚いている所だ。」
「ま、まぁ何があっても、彼を退学にしちゃえばそれで済む話じゃないですか！気にすることないですよぉ！」
「いや………でも、退学にして逆恨みとかされないかなぁ………？」
晴明が頭を抱えて廊下にしゃがみ込む。
「（意外に心配性だなこの人…。）そ、それに………。
あの人まず退学にしてすごすご去るんですかね？」
「うん、なんというか。退学にしても平然と登校してきそうな感じがある。
…………って、それじゃあ手の打ちようがないじゃあないか！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「お、落ち着いて下さい晴明様！！い、いくら奴が化け物じみたサーヴァントでも、所詮は人間です！
そう思えば、恐れる事なんて何一つ有りませんよ！」
「う、うむ！！！！！！！！！！！そうだな！！！！！！！！！！
たまには良い事をいうな！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！我が式神よ！！！！！！！！！！！！！！
そう！！！！！！！！！！！！我が能力があれば！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！
人間であれば！！！！！！！！！！！！！！！！！取るに足ら─────────────────────────」
ガララ…………と扉を開けて出て来たのは、一頭のクマであった。
そのクマは、ノッシノッシと廊下を歩みながら、加えた小アイアスをもしゃもしゃとほおばっていた。
「「……………………………………………………………。」」
小さな式神と大きな陰陽師は、二人眼を合わせる。
「人ですらねぇ〜〜！！」
「もしもし母上？ちょっと動物を操る陰陽術教えてほしいんだけど…分かったよいなりは買って帰るから…。」
◆
─────────────クロマ泥（ディ）高校には、………………………なんでも住むと言われている。
「おはようございま───────…………誰もいないし………。」
ボクの努力は虚しく、学園の風紀は没落の一途を辿っていった。これではアキレウスとの約束を果たせない………。
「うぃーっす」
僕に遅れて、闇道澪印ちゃんが眠そうな顔をしながらドアを開いて教室に入って来る。
「澪印ちゃん遅刻だよ。もうとっくに放課後じゃあないか」
「うっせぇなー…。誰も彼もが遅刻してるんだから俺一人が守っても意味ねぇじゃねぇかよー…」
「確かにこの調子じゃどれだけ注意しても意味がない！だけど、僕は諦めずにこの学園を平和にして見せよう！」
「………………そいつぁ無理な話だぜ、オデュッセウスさんよぉ」
ニィ、と闇道澪印ちゃんは楽しそうに笑みを浮かべた。
「何故？一体何が原因だと言うんだい？」
「１年５組にとんでも無い奴がいるんだよ。アイツがいる限り、この学校はワルの裏のサクラ迷宮状態だ」
「とんでもない奴……………！？って、毎回言ってるよね君…………。もう良いよ武蔵だのクマだの…。」
「今回ばっかりは本当に凄いからな。あんなワルは見たことがねぇ」
「えぇー…、武蔵に熊ときて…何？次はティラノサウルスとか言うんでしょ？パンチ弱いよもう…」
「ふっ、お前のその発想はそんな物か？まぁ、見てみろって」
ガラリ、と澪印ちゃんが扉を開いた。その奥には────────────
椅子に座って煙草をふかしている、一人の明らかに機械の少女がいた。
──────────────────き、機械……………！？
「どう思う？」
いや、どうじゃないだろ。と言うか……、どうと聞かれてもなぁ…………！
『おいツァーリーボンバー！！大変だ！』
「「（つ…………………ツァーリーボンバー……………！？）」」
げ…………原爆じゃあないか…！いや、水爆だったかな……………！？
「(ｷｭｲｲｨﾝ)どうしました？」
『昨日うちのハンニバルがローマ高のスキピオと揉めたらしい！
そしたら…２年のヘリオガバリスが…………！！！』
「ヘリオガバリス………なるほど、ローマ一とすらいわれた問題児ですか(ｷｭｲｲｨﾝ)」
『どうすんだ！？アイツが出てくるとなれば俺らも黙っちゃいられねぇ！！』
『よぅし！！こっちも兵隊率いてブッコミかけるぞぉ！！』
「(ｷｭｲｲｨﾝ)待ってください(ｷｭｲｲｨﾝ)」
スッ、とその機械の少女が立ち上がった。
「ヘリオガバリスさんも可愛い後輩をあの爺さんにボコられたらそりゃあ出てきますでしょう(ｷｭｲｲｨﾝ)
でも、(ｷｭｲｲｨﾝ)私たちと正面切って聖杯戦争を起こす気はないと思われます(ｷｭｲｲｨﾝ)(ｷｭｲｲｨﾝ)
先に手を出したのはハンニバルさんでしょう？(ｷｭｲｲｨﾝ)ローマ高に私は友達がいます。
その友達を通じて(ｷｭｲｲｨﾝ)、詫びを淹れれば済む話です(ｷｭｲｲｨﾝ)」
『おい！！じゃあウチが芋引くってぇのかァ！？』
芋引くっていうのは、まぁヤンキー用語…なのかも知れない。詳しくはグランドディティクティブのグーグル先生に聞いてね。
「(ｷｭｲｲｨﾝ)心配しないで下さい。(ｷｭｲｲｨﾝ)クロマ泥高校の名は汚しません。
私一人がただ、(ｷｭｲｲｨﾝ)芋を引いたと言う事にしておきます。ご安心を(ｷｭｲｲｨﾝ)」
『な…なんでそんな汚れ役を買うんだよ…お前、ホントは実力あるのに………。』
『ほんっと、ツァーリーボンバーは頼りになるうちのヘッドだな』
「よ、よして下さい…。照れてしまいます……。(ｷｭｲｲｨﾝ)(ｷｭｲｲｨﾝ)」
た…………頼りにされている…………！？
なんだこの信頼感……！並のカリスマじゃないぞ…！
「馬鹿！！(ｷｭｲｲｨﾝ)」
バッ！！と突然轟音が響いた。彼女のクラスメイトが１人彼女に殴られる音だ。
「アレほど生活費を削る課金はやめなさいと言ったでしょう！！！」
『ご…ごめんよツァーリーボンバー…。俺、どうしても沖田が欲しくて………！』
「別にあなたが破産しようが、私は知った事ではありません…。しかし…アナタが破産したら、
貴方のお母さんがどうお思いになるか！考えているのですか！？」
『うぅ…ごめんよ…ごめんよツァーリーボンバー…！』
『ツァーリーボンバーは誰よりも、お前を心配してくれているんだ』
い…………良い事言ってる…………………！！まるで慈愛の女神のようだ……！！
多分アレ霊基バーサーカーだよね…なんであんな良い人なの！？武蔵ちょっと見習えよ！
『やっぱ俺たちのリーダーはツァーリーボンバー以外に考えらんねぇな』
『ああ、やっぱすげぇぜ…ツァーリーボンバー！』
「よ、良して下さい(ﾍﾞｺﾝﾍﾞｺﾝ)」
あ…………………油指しているよ……！関節に油指してるよ……………！！
やっぱ機械だよねアレ？凄く信頼されているし良い人だけど機械だよねぇ！？
『なぁ………ツァーリー、俺ちょっとお前見てて思ったんだけどさ、言っていいかな？』
ん？
「なんでしょう？(ｷｭｲｲｨﾝ)」
『多分、コレはクラス全員が同じことを思っている。いや、お前自身も気付いているかも知れない。
でも………ちょっと、言いにくくてよぉ』
ついにか！遂に言うのか！？
「なんです？水臭いですねぇ…。」
『じゃ、じゃあはっきりと言わせてもらうぜ』
「良いですよ(ｷｭｲｲｨﾝ)。どんなことを言われても、私は貴方達を家族(ファミリー)と思っておりますので」
ふぁ…ファミリー…………！いや、それはどうでも良い！早く！早く突っ込んでくれ！！
『じゃあ、言うけどよ────────────────────────────』
『──────────────お前、第二ボタン取れてるぜ』
「え？あ…ほんとですね」
「「（そーじゃねぇーだろぉー！！！）」」
澪印ちゃんとボクの思考が、この時完全にシンパシーした。
だが結局、彼女が一体何者なのかは正体はつかめなかった。
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