ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。



─────ある極東の神代の終わりごろ、平安京にて

「─────────。」
一人の陰陽師が、部屋に鎮座していた。
その表情は険しく、怒りとも、はたまた後悔ともとれる表情であった。
「はるあきィ、何しとんねんこんな所で」
「む、道満か…。」
部屋に鎮座していた陰陽師が声のした方を向くと、道士服の少女が入口に立っていた。
「はるあきが静かなんは珍しいなぁ。まぁ、いつもそうだとウチらは嬉しいんやが」
「ふん、少し…気がかりな事があってな。それを憂いておったのだ。」
「憂う?はるあきにそんな感情が残っとった事が一番驚きやわ」
道士服の少女はケタケタと笑った。
「ふん、貴様は楽しそうで羨ましいよ。」
「……………。あんさんホンマどないしたん?何をそんなに懸念しとんねん
ホンマはるあきらしくないで」
「お前、今日何があるのか覚えていないのか?」
陰陽師はギロリ、と少女をにらみつける。
「何ってぇ…土蜘蛛の群れを頼光らが対峙に行くことくらいしかあらへんけど…。
ひょっとしてその事か?なんや、はるあきもあの頼光(ゆうじん)を心配する事あるんやなぁ」
「いや、あの馬鹿が土蜘蛛如きに後れを取るような奴じゃあない事など分かってはいる。
それとはまた、別の事だ。」
「えー?じゃあなんやー?頭の悪いうちにも分かるように説明してーなー」
ハァ、と陰陽師は短く嘆息して説明を始めた。
「奴の所持している刀が、この我がこの手で作り上げた退魔の剣でな。
それを気がかりに思っていたのだ」
「なんや、あんさんのお手製の退魔道具なら、安心じゃないんかいな
妖怪なんぞ、一瞬でちょちょいのちょいちゃうんか?」
「いや、攻撃力の問題では無い。むしろ、”その先”こそが最大の懸念事項なのだ」
「………………………その先?」
コクリ、と陰陽師は頷いた。
「──────────────あの刀は………………。」





─────────都の外れ、山間部付近にて
5人の男たちが集う。彼らの名は、頼光四天王。都の外れに住まう『まつろわぬ者共』のなれの果て、
俗に土蜘蛛と呼ばれる大いなる化け物共を始末するべく、派遣された男たちだ。
「おうおうおう、強そうな化け物共がうじゃうじゃといやがるじゃあねぇかい。」
金髪のおかっぱ頭の大男が、ニヤリと微笑む。
「あんまり前に出るなよ金時。奴ら、相当な量がいる…先に消耗するとやられるぞ。」
「ああすまねぇ、貞光の兄貴」
「まぁ、体力の配分に気を付ければそこまで強敵でもない。なぁ頼光殿」
「──────────────────ああ、そうだな。」
眼力の強い武士が、男たちの一番背後に立つ刀を背負った男に言う、
その男は、虚ろな眼をしながらも、武士の言葉に頷き返答を返した。
「(どうしたんだ大将は…。いつも俺達と接している時とまるで様子がちげぇぜ…。)」
「(ああ、金時は見るのは初めてだったか…。頼光の大将は、化け物を殺す時は…)」
「貞光」
刀を背負った男が、前線にたつ武士に対してその虚空の眼で睨む。
「討伐を前に、無駄な会話をするべきではない。目の前の敵に集中するのだ…。」
「あ、ああ。すまねぇ大将」
「さて、どうしますか頼光サン。彼ら、まだ様子を見ているだけですが、
このままではいずれしびれを切らすかもデスよ?」
「ふむ、それもそうだな…。」
「そんなもの、決まっているではないか卜部」
ブゥン!と眼力の強い武士が刀を振り回し、意気揚々と答える。
「敵を蹴散らし、そして潰す。それが我ら頼光四天王であろう?」
「ああその通りだ綱の兄貴ィ!まずは俺達が連中を蹴散らしますんで、貞光と卜部の兄貴と大将は、先に行って下せェ!」
そういうと二人の男は、自身の得物───炎を纏いし刀と金色の鉞を構えて土蜘蛛の群れへと突っ込んでいった。
「ヤレヤレ、期待の新入りは切り込み先鋒な性格デスか」
「まぁ、綱と相性の良い性格で助かったよ。」
「──────さて、我々も行くとしようか。」
「「はいっ!」」
先ほど出た2人に続き、3人の男たちが自身の武器を手に取り群れへと走り抜けた。


「くっ!!切れば切る程に湧いてきやがるぜこいつらぁ!!」
「蜘蛛の子を散らすとは言うが…、やれやれ…これほどまでに『まつろわぬ者共』がいたとはな」
「言ってる場合か貞光!」
男たちが斬り合いながら口々に言う。
最初にこの場に彼らが集った際には、いた土蜘蛛の量は精々30と言ったところであった。
だがしかし、斬れば斬るほどに連中の数は増し、今では周囲を埋め尽くさんばかりに増えていた。
「コレは、どこかに頭領がいるとでも考えたほうがよろしいですかね?」
「────────────そうだな」
キン、と短い音と共に、長さが人の背を優に超える程の大きさの刀を男が抜刀する。
そしてそれを優々と振り、瞬く間に周囲の土蜘蛛の群れを一刀両断した。
「すっげぇ…」
「さすが、平安の都を守護せし我らが大将!」
「褒めている場合じゃないぞ綱。──────あれを見ろ」
『!!』
男が目線を空高くに向けた。
周囲の男たちも同じように空を見上げると、そこには巨大な髑髏の紋様が浮かんでいた。
「な、なんだぁありゃあ!?」
その紋様はふわふわと周囲を漂った後に、山の奥の方へと飛んでいった。
「どうやら、我々を誘っているようだな」
「────────────綱、付いてきてくれるか?」
「分かりました。御供致しましょう。」
「た、大将!俺も行くぜ!?」
「お前たちはココで土蜘蛛たちの足止めを!
このまま野放しにしていれば、都までこいつらは辿り着くであろうからな」
「分かりました」
そう言って、男と武者の2人は山の奥深くへと足を踏み入れた。


「────────────ここは…………。」
二人の踏み入った先は、古びた屋敷であった。
「山の奥に入ってから、急に化け物共が姿を顕さなくなりましたね」
「油断をするな綱。……………何か来る。」
「ッ!!」
武士が恐ろしい気配を感じ取り屋敷の外へと出た。
するとそこには、屋敷をぐるりと取り囲むような形で、大小様々な妖怪がいた。
「頼光殿…!!」
「なるほど、嵌められたか……。」
男は、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「──────────と、お前は考えるか?綱」
だが、すぐ様に男は表情を平静とした無表情へと戻す。
「……………いえ」
その言葉に応対するかのように、チキリと武士は刀を構える。
「私はこれを、『敵を一網打尽にする好機』であると考えます!」
「─────それでこそ、頼光四天王だ」
二人は互いに背を預けるように背を向け合い、武器を構えた。
「長期戦だ綱!気を引き締めていけ!!」
「言われるまでも無く!」
その言葉に反応し、周囲を取り囲んでいた化け物共が一斉に襲い掛かった。
斬ってはまた襲い掛かって来、そして燃やしては次が現れると言うキリの無い戦いであった。
───────────────この二人の死闘は、朝方まで続いたと言う。


「ハァ…!ハァ…!ハァ…!」
「やれやれ…、ようやく打ち止めか………」
二人の身体は血に塗れていた。周囲には化け物の骸が転がり散らばっている。
「行こう。金時に貞光、卜部が心配だ」
「いや、待ってください頼光殿。アレを…!」
武士が屋敷の方向を指さした。その先にいたのは、白い着物の女性であった。
女性は視線がこちらに向かった事に気付くと、ニヤリと不気味に笑った。
「──────────なるほど……。ようやく真打の登場と言う訳か」
「クスクスクスクス…………。」
女は笑いながら、ビャッ!と何か粉上の物を振り撒いた。
「ッ!目くらましか!!」
「──────────遅い。」
だがそれに負けじと男は女性に切りかかり、その右腕に傷を負わせた。
「ほう………っ!」
「よ、頼光殿!」
「まだだ…。まだこいつは、この程度では死なない」
男の表情はより険しく、そして瞳はより虚空の色へと変わる。
「クッ!クハハッ!流石…流石は平安の都を守護る男よなぁ………!!
躊躇いも無ければ、容赦情けもありゃあせぬ…!」
女性は、その右腕の傷から滴る血を舐めながら笑っていた。
その表情は恐ろしく、口は耳まで裂け眼は蜘蛛特有の複眼へと変貌していた。
「その眼………。なるほど。貴様が土蜘蛛共の親玉と言う訳か?」
「土蜘蛛だけじゃあないさ…。ここら一帯の有象無象共…。かの酒呑童子への追従を拒む連中を、
ちょいとこの手でまとめ上げてやっただけさぁ…。」
ニィィ…!と女性は…土蜘蛛は笑い、その口の奥に在る無数の牙を覗かせた。
「貴様ら…何故人間を襲い、そして喰らう!野山の獣を喰らっていれば、
我々も貴様らを殺すような真似はしない!何故都に出てまで人を襲うのだ!?」
「……………綱……。」
武士が土蜘蛛に対して必死の訴えを行った。
それは、頼光四天王の─────いや、正確にはその頭領の願いであった。
彼らは本来、化け物を殺したくはなかった。その義務と言う思考の何処か片隅に、
化け物と共存できる世界があるのではと、その男は考えていた。自分でも気づかない程に、小さな願いとして。
───────────────だが、それに対する土蜘蛛の答えは、二人に残酷な真実を突きつけた。

「はて、人を喰らう事が、そんなに悪いことなのか?」

「……………………………なんだと?」
「自身の生きる為に、生存の理由の為だけに、他者を蹴落とし、追放し、挙句は殺す!
そんな事、貴様ら大和朝廷の…いや、人間の在り方、そして本性そのものでは無いか!!
忘れたとは言わせぬぞ!!この我ら『まつろわぬ者共』へと貴様らが行った所業の数々を!!」
カッ!と土蜘蛛は目を見開き、怒りに拳を震わせた。その手のひらからは血が滲み、
そして目からは血に染まった涙を流し始めた。
「貴様らも同じ事!都の平和と言う大義の下に、化け物を殺して名誉を得る!
やっている事は我らと同じ。他者の命を踏みにじりそしてその上に生きる事よ!
見るが良い!!その血に染まった、己らの醜き姿を!!」
土蜘蛛は二人の男たちを指さす。その手には、憎しみとも、怒りとも分からぬ感情が在った。
「我らは人への、大和朝廷への復讐を誓った身!
この手で、この牙で、この爪で貴様ら都の人間全てに恐怖を味あわせてやろう!!
その糧として、まずは死ね!!頼光四天王共!!」
土蜘蛛がその左腕を振り上げた。
すると、四方八方から土蜘蛛がワラワラと数十匹出現した。
「………………………頼光殿…………。」
「…………綱よ。」
男は、腰に差した1本の名刀に手をかけながら言う。
「その刀で………私の譲り渡した『髭切』で、退路を作ることは出来るな?」
「………………はい。ここは一旦退き、態勢を立て直すべきと───────────────」
「いや。」
チキ…ッ、と男は手をかけた刀を手に取りながら言う。
「綱、君だけでも逃げてくれ。いや…何があっても、”ここから離れてくれ”」
「何を言っているです頼光殿!?ここで貴方が死なれては…………!!」
「綱っ!!!」
武士に対し、男が一喝する。
「───────────────安心してくれ。私は帰る。」
「……………………分かりました。」
そういうと武士は、その刀に炎をともし、土蜘蛛と応戦を始めた。
「くくくっ…逃げ切れるとでも思うているのか?
まだまだ多くの土蜘蛛が此処に集うと言うのになぁ…!!」
「───────────────────いいや、お前たちから逃がすわけじゃあない。」
男は手に取った刀の鞘を左手に、そして柄に右手をかける。
「”私から”彼を逃がすためだ」
「…………?…貴様、一体何を─────?」

「────────────────────抜刀、『童子切安納』──────────。」





「───────────────。」
彼が眼を覚ました時には、いや…”人として”眼を醒ました時には、周囲に生物は何一つ残っていなかった。
山一帯が化け物の死体に、肉片に、骸に埋め尽くされていた。そして、巻き込まれたと見える動物の死骸も、いくつかあった。
「く……………く、くふふ…っ」
しかし、目の前に転がっている異形─────土蜘蛛の親玉だけは、辛うじて息が在った。
「ま………さか、こんな…………隠し玉が…………ある、とは………ね…………。」
その巨躯は既に動くことは無く、腹は裂かれていた。その中には1990人もの頭蓋骨が散らばっている。
「だが……………後悔し続けろ…………。引きづり続けろ……………………!!
貴様がいくら……………大義名分の下に………………化け物を殺しても………………!
怨念は……………残り続ける…………!悔恨は……………刻まれ続ける………………!!
貴様は!永劫の後悔の下に!!その骨を埋める事とな─────────────────────────」
ズチャリ、と鈍い音がした。頼光が、その童子切安納で土蜘蛛の首を切り落とした音だ。
童子切安納に染みついた血痕が、まるで不気味な文様のように刀身に拡がり、
グジュル…グジュリと不気味な音を立てて脈を打っている。
「──────────────────────後悔、だと?」
男はただ…ただただ虚空の眼で、周囲に散らばる化け物の死骸と、自身の持つ刀を見る。
「そんなモノ、初めて化け物を殺したあの日から、こびりついて離れないよ。」
そういうと男の虚空の眼から、ポタリと一滴の雫が、刀へと落ちた。


英霊伝承異聞-源頼光

『土蜘蛛討伐-人と化物と化物殺し-』

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