ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。




「ぐぇ〜………頭が痛い〜………」
一人の長い黒髪と漆黒のスーツの女性が、机に突っ伏して頭を押さえている。
「どーしたのーさーぎりん」
「あ゛ー……、こりゃ帚木さんじゃないすかー……おひさー……」
そこにひょいと季節感が錯綜したチグハグな和服美女が顔を出す。
「おうお久しぶりっ、じゃなくてー、久々に顔を見たらどうしたの?
いつもの君のクマ8割増しになってない?」
「見た目に依らずきついっすねー………まぁそうじゃないと
弦糸五十四家のナンバー2なんてやってらんねーでしょーけど」
女性は机に突っ伏したままその虚ろな目で少女を見ながら会話する。
「あははっ、二番目なのは序列だけで偉さには関係ないよ?」
「あいそーですかー………」
「ホント元気ないね……寝不足?」
「まぁそーんなトコでーすよー……。
だけどあんたを抱けば多少は回復するかもぉー!?」
ガバァ!と女性は突如として机から起き上がり飛び上がって少女にとびかかる。
「はいざーんねん」
「ぐえーっ」
そのままひょいと少女は軽い身のこなしで避ける。
黒髪の女性の方はというとそのまま地面に激突する……のを華麗に避けて立ちあがる。
「前にも言ったろー?僕(こなた)には心に決めた男がいるんだって」
「えぇー?女性同士マジ良いよぉー?男10本や20本分の快感とか
そういうレベルじゃないからぁー。ほらほら一夜だけでもぉー」
「男を本数で数える女性とはしたくないねぇー」
少女はそう言いながらプイッ、とそっぽを向く
「ちぇーっ」
「でも相談くらいなら乗るよ?
君の殺しには僕も何度か助けられたしね、
変な理由で仕事に遅れじゃ生じるようじゃ僕も困る。」
「えぇ〜、そっすかぁ〜?んもぉ〜素直じゃないなぁこなちゃんはぁ〜ぐへへへへぇ」
女性はそう下品に笑いながら少女にくねくねと身体を揺らしすり寄って来る。
「ふざけるようなら聞かないけど」
「あぁー、分かった分かったよぅ、
でも……その、ね?何か恥ずいから誰にも言わんでよ?」
「おや、君にも羞恥心なんて概念が残ってたんだね」
少女の若干嫌味がかった言葉をスルーして、女性は語り始めた。
「………………最近、さ………夢を見るんだよ」





────────ここは、泥濘に塗れし魔都、名を新宿という。
災害の坩堝と化したこの歳では、常に"なにか"が起こり続けている。
そんな都市を、その災害の"内側"より観察し続ける存在がいた……………。
「やれやれ、災害の名も無き淑女とは言え……一人の子供を前にしてはどうしようもないのか?」
少年のような風貌の存在が独り言をつぶやく。それは英霊であり、しかし英霊ではない。
言うなればそれは、『英霊の分体が宿った人間』である。だが疑似サーヴァントといった存在かと問われるとまた違う。
彼の真名は、"カール・グスタフ・ユング"。集合的無意識という概念を提唱した経歴を持つ、フロイトに並ぶ心理学者。
だが、この場における彼はそれだけではない。この泥濘の新宿では、英霊は"幻霊"と呼ばれる存在を宿すことが出来る。
幻霊………それは信仰乏しき幻想、または歴史なき偶像、英霊へと至るに格の無い存在………。それを複合させ、英霊は此処で力を得る。

そんな彼が選んだ幻霊の名は、This Manと言う。夢を渡り歩く男。ドリーム・ウォーカー。
彼はその幻霊と、己が提唱した集合的無意識の概念を併せ、この新宿中に存在する人間の無意識の中に潜み、渡り歩くという力を得た。
その能力を駆使し、彼はこの泥濘の新宿に巻き起こる事件を、人間関係を、そして変化を観察し、記録するという立ち位置に在る。
心理学者たる彼はこの場を格好のサンプルであると考え、通常の霊基たるキャスターからクラスを変えてまで、この新宿という場に
留まり、そして観察者であることを決めた。

其の名は、"泥新宿のウォッチャー"。
何処にでもいて、何処にもいない。さながら夢幻の霞の如き観察者である。

「相変わらず精が出るな君は」
「やぁ…これはこれはウォーカーではないですか。」
そんな少年に、一人の初老の男性が話しかける。男の名は、ランドルフ・カーター。
クラスはキャスターだが、名を渡航者の意を込めてウォーカーと名乗っている。
「君の趣味に口立てする気はないが、あまり続けると身を滅ぼすぞ?」
「ふふ、何を言いだすかと思えば……僕に破滅は在り得ない。」
ニヤリ、と少年は口端を釣り上げて不気味に笑う。
「僕の霊基の本体は、この新宿中の人間の集合的無意識の奥底に潜り込んでいる。
貴方が、いや貴方達がよく目にするこの少年も、僕がよく利用するリーダー格のようなものに過ぎない。
本当の僕の姿は誰も知らない。老人かもしれない。あるいは女性かもしれない!そんな僕を、一体だれが殺せると言うんです?」
「ああ、そうだね。確かに君に近づけないものは誰一人として君に接触し、殺すことは出来ないかもしれない。」
初老の男性は目をつむり、うんうんとゆっくりとうなずく。
「でしょう?」
「しかし、君に宿っている幻霊は別だ」
「………………っ」
少年はピクリ、と眉を動かす
「───────何を言いだすかと思えば……、幻霊が英霊に勝るなどという話、聞いたことがない!
支配権を譲り渡したビスマルクや竜狩りならばともかく!良いように幻霊に遊ばれるなどあのタイタスくらいな物!」
「僕の後輩を馬鹿にするのはよしてほしいかな、……いや、あいつならしょうがないか」
そういうと初老の男性はくるりと踵を返してその場を去っていった。
「警告はしたよウォッチャー、願わくば、君が英霊のまま座に帰られるよう祈っているよ。」
「良いだろう、同じ人には歩めぬ領域を往く同士の警告、しかと受け取ったよ………。」
────────────
────────
────
──

「というのが、7日前の話だ」
「ほう、カーターの旦那が訪ねてきたから何事かと思えば、あの男ですか」
所と日時が変わり、カーターはある神秘探偵の部屋を訪れていた。探偵の名はタイタス・クロウ。
この泥濘の新宿に身を置く一人の英霊にして抑止力の守護者である。
「それで、あいつに関するどんな依頼ですか?奴の万引きでも目撃しましたか?」
「依頼というか…そうだね、正確には近況ではあるんだが………」
そう語ると、暫し口を押えて男は唸っていたが、やがて初老の男はその重い口を開いた
「ウォッチャーと連絡が、ここ数日取れていない」





「夢?夢がどうしたのさユキくん」
「んな興味本位100%な顔で見ないで下さいよ………恥ずかしい」
ここは表向きは製薬会社、しかし真なる顔は多数の外に出せない多くの礼装を保有する魔術組織、
通称FFF社。ここではそんなFFF社のしゃちょー、フェリシア・F・ファーディナンドと社員加藤幸が会話していた。
「まさかゆっきーにアメリカンドリームがあったなんてお姉さんびっくりだ。
どんな夢?野球選手?パイロット?それとも画家?作曲家?」
「いやそっちの夢じゃないっすって。夢は夢でも寝る時に見る奴ですよ
ほらぁ……なんつーんすか?『寝言は寝て言え』って時の」
「あぁー、うん。そりゃあそのクマも納得だ。どうする?無給休暇取る?」
「そこは有給休暇にして下さいよ………。なんか保管庫にないっすか?
夢コントローラーとか、あと……うつつ枕とか、夢たしかめ機とか」
「ゆっきー?君うちの保管庫をドラ●もんのポケットか何かと勘違いしてない?」
「え?違うんスか?」
「あはは………」
しゃちょーが苦笑いをしながら「その話はおいといて」の仕草を取る。
「でもどんな夢?私夢診断は得意じゃないけどそういうの知ってる人にパイプはあるよ?」
「んー…………そーっすねぇー………まぁ何と言うか……………えーっと」
言葉が淀むゆっきーの顔を、しゃちょーがじぃーっと覗き込む。
「な、なんすかぁ!?」
「いやぁ、どんな夢なのかなって気になってね。
ひょっとしてあれ?言葉にしにくいクラッシュ!&エキサイティング!な夢?」
「いやそーじゃねぇーんすよぉー」
ゆっきーは少し言い淀んだが、覚悟を決めたとばかりに頷いて言い始めた。
「じゃあ何さ?」
「まぁ…………なんつーかね?見てくるんですよ。男が」





人とは、箱庭に囚われた存在であると僕は考える。
空を飛べるわけでもなければ、死ねないわけでもない。まさに限りを持つ箱庭だ。
しかし、その限りを考慮しても余りある可能性を持つ。故に人は空を飛び、病気の克服に成功した。
例え限りがあろうとも、その限界に絶望することなく、歩み続ける。それが、僕が最も美しいと思う人間の利点だ。
鳥や蝶のように飛べなくとも、人は無限に羽ばたけるのだ。

だが少し、ふと思う事があるんだ。
もし僕が…先ほど例に挙げた鳥や蝶のように羽根を持ち、自由に飛び回れたのならどうなっていただろう?
価値観は変わっていたのだろうか、それとも今と変わらず、いただ飛べるという機能だけが付随するだけなのか?
こういった思考実験もまた面白い。だが所詮、どれだけ思い悩んでも人はそれ単体では飛べない。だが飛べる以上の利点がある。
『みんな違って、みんな良い』とは、東洋の詩人の遺した言葉だ。

「さて、今日も泥濘の新宿は平和であったな」
僕は一言呟いて、持ち家へと戻る。この"平和"という言葉の意味は、外とは異なる。
ここ、泥濘の新宿に於いて最も重要視されることは、パワーバランスが保たれ続けている事だ。
言うなれば溶接していない針金細工に重りをかけ続けているようなもの。故に、その重りが増えても減っても危険なものになる。
何せここは特異点、いや特異点すらも超えた何か、異界と現世の交わる街とでも言おうか。何が起きても不思議じゃ無い。
故に僕は、そのパワーバランスが崩れないかを最重要視しこの新宿を見て回っている。この"平和"とは、
そう言った新宿の在り方が崩れていない、という意味なのだ。

…………………外の意味じゃ平和かって?そんなことは当然ない。
死人は毎日2桁は下回らず、道路や建物の補修工事は追いつかないレベルで崩壊が続く。
戦闘、小競り合い、カツアゲ、麻薬密売………、そんな穢れた汚点はしょっちゅうだ。
僕のように、多くの視点からこの町を見ていると、そんな汚点ばかりが目に付く。
しかし─────────────

「やぁ、僕に何かようかい?"人間さん"」
『…………………………………………。』
目の前にいる異様な男だけは、しょっちゅうお目にかかるような存在じゃない。
…………………なんだ…………?この男は…………!?
突き刺すような鋭い眼光、布で隠された口元、それだけで普通ではないと分かる。
いやその程度ならばこの泥濘の新宿に於いては珍しくもない。問題はその"宿す魔力"だ!
──────────────それはまるで、底の見えない漆黒の深淵を覗き込んだかのような威圧感があった。
「………………………ウォッチャーの英霊、とお見受けする。」
男は、冷たく鋭い眼光のままこの僕を見据えて口を開いた。
「ならばどうした?」
「貴様を…………我が手中に納めに来た…………。」





「男………とは?」
「だからよー!男!夢にそいつがでてくんの!
そんでもって何もしない!ただじーっと見つめてんの!怖いの!!」
ある日本のファミレスにて、二人の兄妹が話をしている。
彼らはある魔術の名家の当主とその兄なのだが、訳あって日本を放蕩してる。
「男が夢に出てそれが印象に残ってるってことはよぉー」
「もしかしてお兄ちゃん、ホモ?」
「なわけねーっしょー!!俺は生来より女の子のおっぱいと最強が大好きな男の子ですぅー!」
「お兄様、ここ公共の場なのでお静かにお願いします」
「ああごめんなさい」
シュンと縮こまって、しかし反省の様子も無く男は早口で話を進める。
「それでもう寝れないのなんのって。ただ男が見ているだけなのにめっちゃ怖いの。
もう吸い込まれそうって言うか、知らないし何処にでもいそうな顔なのに妙に印象に残るの」
「その殿方とは、一切あったことがないのですの?」
「うん」
「なんか有名人とかーそう言うのなんじゃねぇの?」
「いや全然。っつーか俺芸能界知らんし」
「それじゃ、アニメのキャラ?」
「それだったらどんだけ嬉しいか………全く、一切合切知らない人なの
それがずーっとこっち見てて───────」
『それ、アタシも体験あるよー?』
ふと、声がした方を見ると金髪ショートの女性がテーブルの脇に立っていた。
「へ?あなたも?」
「うん、なんか白髪でロン毛の男っしょー?
何もしないでこっち見てるだけの奴。アタシもみたよ?」
「マジっすか!」
「ちょっとお兄様、その女性魔術師………」
男は妹の制止も聞かず、机に備え付けのアンケート回答用のペンとナプキンを取る。
「それってそれって………いやひょっとして………」
男はそのペンで、画力がないなりに夢で見た男の顔を書いていく。
「こんな顔じゃありませんでした!?」
「あーそれそれ、この男この男ー。
それよりさ、君これからアタシとホテルにでも」
「こりゃあやばい!!小さな変化は人類悪の兆し!
きっとこの先に最強が待ってるはずだ!今すぐ調査に向かうぞディーティーム!」
そう言ってドタドタと男は支払いを大急ぎで済ませて全速力で店から駆け出して行った。
「ご………ごめんなさい、お兄様最強の話になると周りが見えなくなる特異体質なものでして……
し、失礼いたしました………………」
そう言って男の妹はペコリと頭を下げて駆け足で兄の走っていった方向へついていった。
「……………あれがオリジンストーンのねぇー、面白そうじゃない。」





「僕を手中に…………?ハッ!面白い冗談を言うねぇ………」
僕は肉弾戦で奴に応じよう…………としたが、やめた。
この肉体は一般人だ。戦う術など無いに等しい。だが…、"戦う"術がないのは向こうも同じ事。
僕の霊基の本体は、ここ新宿に生きる人々の集合的無意識そのものと一体化している、だれにも倒すことなど不可能だ。
「一体どのようにして、この僕を手中に納めようというのか?楽しみだね!」
「随分と余裕な様だな……………………。」
男はユラリ……とからだを動かし懐から何かを取り出す仕草を取る。
だが─────────
「無駄だぁ!」
ビシッ!と男の腕に蹴りが入り、男が取り出そうとした拳銃が地面に転がる。
………………なるほど、確かに人間の肉体に宿っている僕にその銃は効くだろう、だが…………
「ここにいる全ての人間を相手取ろうなどと、考えてはいないだろうねぇ魔術師?」
僕はこの新宿にいる一般人の、およそ8割の中に己の分霊を宿している。
故に、僕が収集を掛ければ非力ではあれど数は集う。魔術師一人など、そう恐れる事はない。
そして何より…………………
「魔術師…………君はこの泥濘の新宿に一石を投じる不穏分子だ…。
残念ながら、ここで消えてもらうしかないようだねぇ!」
宝具開放、僕たちは集合的無意識の下に存在している。それはここにいる全ての"存在"に等しく在る物だ。
だから、その集合的無意識を少しだけずらし、この男を新宿に在る全ての意識の外に放り出す。…………つまり、
この世界からすこしだけずれた別の次元に放り出すことも、このウォッチャーとなった僕の宝具なら可能という事だ!
「さぁ!低次元の彼方に消え去れ!!」
「クククク…………………っ」
だが、男は圧倒的に自分にとって不利な状況の中、低い声で笑った。
「何がおかしい?」
「いやぁ…な。滑稽に思えただけだよ」
ズズズ…………と男の周囲から黒いもやのようなものだ漏れだす。
「────────────ッ!!」
「これから乗っ取られるとも知らずに、勝ち誇っているお前がな………」
何だ………と疑問を感じる暇すらも無かった。気づいた時には、もう既に"終わっていた"のだ。
「ガァ………っ!?は…………っ!!」
「銃はダミーだ。貴様らの注意を逸らすためのな。
そして、俺という驚異の為にお前が複数駆けつけてくることも想定済みだった。
俺の考えた通りに動いてくれて、助かったぜ」
「なん…………っだ……!?これはぁ!?」
その黒い霧のような何かが、己の霊基に染みわたるように入り込んでくるのが分かる。
この感じは……………そうか、これならば…………端末たる"我々"が相手でも威力は在る………!
「精神感応魔術か!!」
「ほう、腐っても精神学者か。そう言った部分には詳しいんだな」
ニヤリ、………と男は目を細めて、笑っていた。
「これは俺のかつての知り合いから借り受けた魔術…名を『魂核汚染』という。
無数の悪霊の怨念と呪いを以てして貴様の魂の髄まで侵す、文字通りの汚染だ。
どうだ?生きたままその内部を犯される気分は………」
「ふん………!だが………言うほどじゃあないね………!」
自分を保て……!気を保て!このままじゃあ死ぬ…!僕が僕でなくなる!!
「この僕が………!カール・グスタフ・ユングである限り………!
このような………!汚染に……!負けは………………!!」
「──────────"ユングである限り"────だと?」
コツ、コツ、コツ、と男は近寄って来る。
「ならば、貴様がユングである証拠は何処にある?」
「ゆさぶりか………?面白い………その程度の揺さぶりで……折れるなど……」
「我らO-13の記録に残るサーヴァントの記録によると、貴様の霊基は女性だったそうだ」
────────────────────────なにを………………
「しかしお前は、姿がどうであれ男だ。いや…男だの女だのそう言った話ではない。
お前には今多数の姿がある、性格がある、肉体がある。それは幻霊に依るものだろう?ならば………………」
─────────────よせ、やめろ…………やめろ……………!やめ─────────────────────
「ならば、お前は、一体、"何だ"?」
僕は……僕は……僕は………!僕は──────────ッ!!

「ブレたな」

そう、短く声が響いた。そして男は、黒い結晶を放り投げた。
一瞬ではあったが、──────────それが気の遠くなるような時間に、感じられた。

そして、

その黒水晶が

ゆっくりと

爆ぜて


「ぎぃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


破片が、僕の霊基の、魂の、人格の、霊核の奥の、奥の、奥の、髄の奥まで、根を張って侵食した。

「正直な話だ。ユングたる貴様には興味がないんだ」
「貴様の宿す幻霊、This Manに興味があったんだ。そして調べたら、新宿に出現記録があると来た」
「そして、貴様の汚染するべく準備を重ねてきたんだよ」
記憶が消えていく。感覚が消えていく。視界が消えていく。男の言葉すらもう聞こえない。
己の内側にハリケーンが到来したかのようだ。すべてが消えていく。
「奴は協力はしないといっていたが、英霊一人をこうして墜とせただけましか」
「ともあれ、あそこまで動揺するとは思わなかったぞ、お前…ひょっとして自分が最初から分からなかったんじゃないのか?」
凄まじい痛みと、感情の波の中で、僕は己の最後の人格が途絶えていくのを感じた。
集合的無意識の奥底に潜っていた自分が、霧散していくその様が、まじまじと感じられた。
そんな中────────────そんな中、最後に僕は見た────────。


消えていく僕の姿を、一人の男が、ただ嗤いながらこっちを見ていた。





「………………………ふぅー………………………」
「目が覚めたか」
泥濘の新宿の裏道にて、一人の英霊が霊基を得て起き上がる。
「起きたか」
「やぁ…………君が僕のマスターか」
その英霊はどこか少年のように無邪気なようで、しかしどこか老人のように悍まく、
まるで覚めない悪夢のような、ちぐはぐな様相の男であった。
「いや………俺はマスターでもなんでもない。
ただ貴様を目覚めさせ、そして霊基を得るプロセスになったにすぎん」
「そうかい、でもそれでも僕が僕になる過程を演出してくれたんだ。感謝しよう」
「感謝するなら、この特異点を脱出し2017年で働いてもらおうか」
「ふっ、良いだろう。ならばここはおとなしく座に帰るとしようか」
ニヤリ、と男は口端を釣り上げて、そして薄らいでゆく。
「時が来たら、同じく黒水晶で合図を送る。その時が来たら、存分に暴れてくれ」
「良いだろう。どうやら君のおかげで、僕は………いや"僕ら"は幻霊から英霊へと昇華された」
「だろうな、ここで確定した霊基は座にも引き継がれる………そう聞いている。」
「感謝しよう、その分は君の願いにもこたえよう」
そう言い残すと、男は霞のように消えていった。
「……存分に、我らの時代で働いてもらうぞ……This Man。…………いや」


「アークエネミー、胡蝶よ」





──────────人はだれしも、夢を見る


『お前も見たか』
『ああ、僕もそいつを見た』
『ええ、私もそいつが出てきたわ』


──────────人の見る夢とは、実に美しい紋様を描く

『扉の向こうから男が』
『蝶が舞う花畑の向こうで男が』
『川の向こう側に、一人の男が』

──────────ならば、その紋様を描いているのは、何処の誰だ?

『何もしないで笑いかけてくる』
『触れもしない、話かけもしない』
『何処にでもいるような顔をしているのに』
『何故か印象に残るその男』

──────────夢とは残酷だ、描いてすぐに消えて往く

『ひょっとして』
『もしかして』
『その男は』

──────────では消えない夢とは何なのか?いや、そもそも……………

『こんな顔を』
『しているんじゃあないのか?』

──────────この世界が、夢ではないと誰が保証するのであろうか?


『『『この男だ(This man)!!!』』』


「さぁ、君たちも誘おう。
永劫に醒めない正夢(Day dream)に。」



「現(ゆめ)か幻(うつつ)かも分からない、楽園の果てに」



幻想特異点-Dream comes true-
『うつつの果てには蝶が舞う』

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