ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。



──────201■年、日本

「やぁ、どうもどうも」
一人の男が店に入ってきた。久しぶりの客だ。
「やぁいらっしゃい。何か、お探しで?」
一応接客業をやっているが故に、一応は愛想よく挨拶をする。
まぁ、ここに来るやつなんざ大抵は変人か偏屈な連中だけだ。
そんな奴ら相手に愛想よくしても仕方ないわけだが、まぁコレは俺の癖のようなもんだ。
「ああ、ちょいとお探しの品がありましてぇ…」
入ってきた男は、へらへらとした雰囲気をしてはいるが、低い物腰で俺に頭を下げる。
なるほど、見た目の割には礼儀正しい奴と見るか、それともメッキだけとみるか…。
とりあえず、接客を続けよう。さて、ただ探してるだけか、先ほど言ったような変人偏屈の一人か?
「良いでしょう。何をお探しです?大抵のものは取り揃えていますよ?
こっちは16世紀物の掛け時計。こっちは12世紀に中国で焼かれた壺。
でこっちは…なんだったかな?5世紀の書物か。題名は───────」
「ああイヤ、そういうんじゃなくてですねぇ」
その男は、へらへらとした表情のまま手を振って否定するような仕草をした。
「? じゃあ、何をお探しで」
そう俺が聞くと、その男は口端を釣り上げて言った。
「”英霊の呼び水”を、お探しでして……………。」
────────なるほど、そういうご客人かい…。
前言撤回だ。こいつは変人でも偏屈でもない。それ以上にめんどくさい、”お得意様”の類だった。
「………………………そいつはまた、結構な物をお求めで…………。
ですが、そんな物を取り扱っているとお思いですか?一体、何処でそんな情報を?」
一応、俺はこう言う客が来た際には一回すっとぼけると決めている。確かにうちの裏の顔は、
英霊の触媒を管理し、収集し、そして横流しする『触媒屋』だ。だが、その取引相手には細心の注意を払う。
こんな特異なもんを欲しがるなんて奴は、大抵は裏の連中だ。表の連中なら時計塔の降霊科(ユリフィス)から手に入れる。
つまりこんな辺鄙なところに来るやつは、何らかの事情を持ってる奴って事だ。だからこそ、俺は注意する。
どこから俺を聞いたのか、何処から『触媒屋』の事を知ったのか、つまるところ、情報の大元を俺は知りたい。
俺は”信頼できる連中”にしか情報を流さないし、そういった連中と繋がっている連中にしか売らないからな。
「ひひっ、すっとぼけるんスかぁ?俺の名前聞いても、そう言えますかねぇ
アビエル・オリジンストーンって言えば、分かると思いますが」
「……………………………。なるほど、申し訳ない。触媒をお探しですか。
どんなものでも言って下さい、オリジンストーンの御子息よ」
ああぁー…、なるほど。オリジンストーン家と来たかぁ…。こりゃ参ったな。
お得意様の家系と来たら……………断ることぁまず出来ない。
さてどんな無理難題が飛び出すかと思ったら、その男の口走った事は想像を絶していた。

「最強の触媒を貰いましょう」

「…………………はぁ?」
「いやだから、最強。最強の英霊の触媒ですよ。あるんでしょ?」
「……………最強かどうかってのはぁ、お客さん自身で決める事でさぁ…。
俺はただその触媒がどんな英霊を呼び出すか、と言う事しか言えない。」
「あらぁ……………そうですか…………。」
その男は少し肩を落としてそう言った。
………こいつ………本気で最強だのなんだのと言ったのか………?少し夢見がちが過ぎてねぇか……?
「親の記録であったからあるかなぁーと思ったんですがねぇー………黒水晶。」
その単語が出た瞬間に、俺は反射的に一瞬ではあるが苦虫をかみつぶしたような顔をしてしまった。
「あっ!!やっぱ知ってるんスね!?持ってます!?何処にあるか分かります!?」
「い、いやぁ………………。それは、それだけはダメだ………。
あれは人間の手に負えるもんじゃない………。」
それは、ある神が落としたと言われる黒き水晶。神々の権能とやらが宿ると言われている暗黒の結晶。
この水晶を触媒にして召喚されるのは、その神々が分類されるクラス…………即ち、人理の大敵であると、
この触媒を収集している依頼主…………………、目の前に立つ男の一族の嘗ての当主に言われた。
「あの黒水晶は一欠片でも人間を滅ぼす!国を傾ける!!文字通りあんなもん災害の具現だ!!」
「良いんですかぁそんな事言ってぇ〜?俺オリジンストーンご子息サマですよぉ〜?」
「…………何とでも言え…………!!俺は触媒は売るが破滅は売らねぇ!
あんなもんを触媒に使って呼び出す英霊なんぞ………それこそ世界の終幕に他ならない!」
俺は声を震わせながら言った。まぁ俺も正直………、あの黒水晶の呼びこむ破滅を目にしなきゃこんな
オカルティックな事口走らなかったろうさ…………。どうせ目の前の男もそんな事信じず、せがんで来るだろう………。
そう思った俺であったが、目の前の男の反応は俺の思っていた物とは全く別だった。

「 ?  別に世界が終わっても、良いんじゃないですか?」

「…………………は?」
「いや、むしろ世界を滅ぼすなんて最強そのものじゃないですか!
実に凄い!!是非呼びたい!呼んで世界が滅びる様をじっくりと眺めていたい!」
「い………………イカレているのか…………?制御なんて出来ないんだぞ………?
それこそ、呼ばれた瞬間にその英霊に殺されるかも知れない。死より悍ましい目に合うかも知れない!」
「うん、それが何か?」
男はいけしゃあしゃあとした態度で、そう言い放ちやがった。
男は続ける。
「最強を呼び出した結果がどうなろうと、どうでも良いんですよ!
それが最強で、そしてそれ以外が死に絶えても!だって!最強が1人存在すればそれだけで良いんですから!
俺の生死なんて、世界の在り方なんて二の次三の次でございますよ!!」
チラリと前髪に隠れた目がその時に見えた。その眼はまぁ淀んでいやがった。
ドス黒く、ぐちゃぐちゃに濁っていて、思い出すだけで今でも吐き気がこみ上げる。
眼の前に立つ男は、文字通りのイカレポンチだった。精神異常者ともまた違う。むしろ逆だ。
こいつは、何よりもまっすぐに『最強(それ)』を求めていやがる。ただ、その手順が捻じれ狂っていやがった。
「…………………帰れ。お前に売る触媒はねぇ」
「あら残念。まぁいいや。すんませんお時間取らせちゃって。
あ、正直言うと自分家に勘当されてる身なんで、特に同行することは在りませんのでご心配なく〜」
そういうと、男は去っていった。…………全く、嵐のような奴だった。
いや、あの気味の悪さ……………悍ましさを見るに、嵐と言うより梅雨とでもいうべきか?

今まで何十人と言う魔術師に触媒を売ってきた身として一つ、あの男を分析してみた。
魔術師………………特に聖杯戦争に参加する魔術師って奴は、大なり小なり胸に何か秘めている。
そして、その胸に抱えた物を聖杯戦争によって発散し、解決し、理解し、咀嚼し、そして成長して帰って来る。
知ってる連中の中では…………ああ、黒咲ん家の嬢ちゃんとかは結構変わったな。なんかイケメンのあんちゃん侍らせてよぉ。
あとは…………柏木さん家の少年もいい面構えになってたな。まぁ…その抱えているもんで成長の度合いは変わって来る。
そんなわけで、俺は触媒の顧客の成長も見れてるわけだ。さっき挙げた2人の少年少女は俺の顧客じゃないけど、これは風の噂だ。
今までの経験と見てきた魔術師を思い出して、俺はさっきのイカレポンチを分析する。
だがどれだけ考えても、行きつく先は最悪の結果しか無かった。
「…………………いずれ、世界が滅びかねない事件でも起きなきゃあいいが………………」
俺こと織本霊次はそう1人つぶやいて、煙草に火を付けた。





───────ある死徒の証言。
「うん、まぁ………そうねぇ、アイツはホント面白いよ?オリジンストーンに連なる中でも特にね。
一緒にいて飽きないしぃ、楽しいし、あとその若さが可愛いし。」
「ただ…………ね?その探求心が怖くなる時があるのよ………。うん。
いや、ワタシ死徒だけも元人間だから?彼の感情はある程度分かってる感じよ?
でーもー……、それを差し引いてもその…………なんていうか以上って言うかぁ………。」
「前にどこかで見た事あるんだよなぁーああいうの………。なんか、死徒になりたての時に………。
アイツと全くおんなじ眼をしたさぁー………。うん、すっごい魔術師だったのよ。魔術と技術と精神の3つの意味で!」
「…………………あぁ、そうだ、思い出したわ」

「アレイスター・クロウリー。アビエルと全く同じ目をしてたわ」





────────────その男が、いつから”それ”を求め始めていたのかは分からない。
男本人もいつ頃の事であったかまでは詳しく覚えていないし、思い出す必要も無いと男自身思っていた。

男がまだ少年だった頃の話をしよう。
少年は、かの偉大なりしオリジンストーンの次期十数代目当主(の予定)として生を受けた。
始祖より続く彼岸が達成する代であることも手伝い、親は気合いを入れて少年を育てた。
しかしその努力の方向性を少々間違えた結果、彼は厳しく育てられ過ぎた。
両親が気付いたときには時既に遅く、少年は親に怯え、自由意志の無い少年時代を過ごした。

─────────6歳の頃であった。
その少年の親が、己の躾の間違いを自認し、反省していた頃の話。
しかしどれだけ反省した所で、自分を閉ざしてしまった少年の殻を切り開くのは少年自身であった。
何か、何かきっかけがあれば。少年の両親は、常にそう言った後悔と願望を抱いていた。

そんなある日、一家が本屋へと訪れた時の話であった。
その本屋は魔導書などと言った魔術師向けの本もさることながら、一般の書籍も多く売っていた。
週刊誌や通常の文庫、一般書籍、果てはゴシップ雑誌にオカルト書籍などなど…………
そんな本屋で、少年は初めて、自分を主張した。

「おかあさん、これほしい」

両親は喜んで、その本を買い与えた。他にも数種類、同じ種類の本も買った。
二人は、閉ざしていたその心を自分達に開いた少年の行動がとても嬉しかったのだ。
『これからも欲しい本があったら言いなさい。何でも買ってあげる』そう少年の両親は言った。
─────────その本は、英訳された日本の漫画雑誌であった。

その本の中で繰り広げられる世界は、まさに少年にとって革命であった。
激しい宇宙戦士たちのぶつかり合い、息を飲む海賊の船出、血で血を洗う忍者たちの抗争、恐ろしき死神たちの剣技………
全てが少年にとって、色鮮やかなりし絢爛なる世界に見えた。少年はそう言った本を次々集め、すっかり虜になってしまった。
『これ、わた死のおすすめの漫画デス。きっとアビエル君なら楽死めると思いますよ。』
そう親戚の勧めてきた日本の漫画を、今でも彼は大切に持っている。人ならざる物と人の共闘、
その物語の主軸と、息を呑むようなページの隅から隅に渡る書き込みを、彼はページが擦り切れる程読んだ。

そう言った本を読むうちに、彼は1つの日本語を知る。その言葉は『最強』。
知らない言葉だった。彼の元の言語で調べても、上手く説明が出来ない。体系化出来なかった。
だが漫画と言うものは面白く、言語に出来ない言葉でもフィーリングと描写で理解させる能力を持つ。
その結果少年は、『最強』と言う言葉を『最強』と言う意味で、その脳内に記憶した。

少年は、オリジンストーンの財力を用いて漫画を個人輸入で直接読むほどに嵌り耽った。
そして、その過程で様々な『最強』をその眼で見て、その手でめくって、そしてその脳で感じ取った。
時を止める真祖、全ての生物になる究極生命体、米軍すら恐れさせるグラップラー、九つの尾を持つ白狐、
国1つ分の命を取り込んだ死徒、倒したと思ったらその全てが幻覚だった男、死神の異名を持つスナイパー、
果ては死を想像できない故に絶対に死なない超越者、壱京の能力を持つ少女、そして宇宙の外にいる化け物と、
彼は様々な『最強』を知った。そして何より──────────そういった存在に憧れていたのだ。

やがて彼は、「世界とは最強に満ちている。俺はそう言った最強の隣に在りたい!」と思うようになる。
最強に”なる”のでは無く、”隣にいる”。それこそが彼にとって一番重要な事であった。憧れの在り方であった。
──────────そんなある日の事であった。

街中で彼がひとり歩いている時の事であった。
路地裏の陰で、一人の男が複数人の暴漢に囲まれている事態があった。
周囲の人々は、勿論関わり合いたくないのでそれを無視した。少年も、無暗矢鱈とそんな修羅場に首を突っ込むほど馬鹿では無い。
しかし、少年はこの光景にまさに見覚えがあった。それは、その日の丁度1日前に呼んだ漫画のワンシーン。
目の前に広がる光景と全く同じ情景が、その漫画の中では繰り広げられていた。そして、その続きは漫画の中なら既定路線だ。
…………主人公、もしくは正義の味方、彼の思う『最強』が駆けつけ、その暴漢達をボコボコにする…………。
そう、彼は信じていた。

しかし、それはあくまで漫画の中の世界での既定路線である。
現実の世界ではそんな事が在り得るはずも無く、誰一人として助けに入らず、通報もせず、ただ男は路地裏に引きずり込まれていった。
そして彼の脳裏には、こんな思いがよぎる。『もしかしてこの世界には、最強など存在しないのでは?』と、
それは、少年らしい突飛な考えから更に突発した、小さき子らしき馬鹿々々しい考えだった。
────────────そのまま、小さい頃の考えのままであればの話だが。

時が経ち、少年は青年となり見る漫画も変わっていった。
青年が見る漫画も、かつてのハッピーエンドに終わる漫画ばかりではなくなった。
今まで守った人々が悪魔に惨殺される終わり、ある東洋の島国が死徒に占領される終わり、
愛する2人に殺され生首だけになった少年…………など、様々な終わり方を彼は見てきた。
それでも彼は『最強』という存在への憧れを捨ててはいなかった。今だその脳裏のどこかで、最強の存在が全てを救うと考えていた。
その最強への憧れの中で、あらゆる神話の神々を調べた。その調査の深さは、時計塔の講師陣も息を呑むほどの考察であった。
……………………だが、その結果が『全神話神々最強ランキング』等と言う宗教戦争を引き起こしかねない代物だったので、
同じく書かれた『世界中の神話の共通点とか違和感とか』などと共に未発表のまま蔵書の奥深くに封印された。
後にこの論文は、2030年にあるミラクル求道者へと受け継がれるがそれは割愛しよう。

そしてその研究の最中であった。バビロニア、メソポタミアの神々を研究している時の事。
彼は不自然にある神の記述が足りないと言う事に気付いた。その神の名は『ティアマト』。バビロニアの地母神だ。
思い立ったら終着点まで一直線の彼は、そこに何が隠されてるだとか踏み込んではいけないだとか一切考えずに、
その調査を続けた。彼は無駄に完璧主義であり、全てがしっかり説明されて無いとイライラが募るタイプであったのだ。

─────────────────その結果として、彼は知ってしまった。『人類悪』を。『人理の大敵』を。
それは通常、魔術の深奥にまで踏み入れられなければ知り得ない事柄。普通ならばまず知る事の無い領域。
その深淵へと、彼は踏み込んでしまったのだ。

それを知って、彼の中に抱いてあった小さな感情は、確信へと変わった。
『最強と言う存在に、正義はいない』と。(彼のみの視点から見て)増えゆくバッドエンド、救われない人々。
そして何より、弱者を誰も助けない非情な現実と、こうして目の前に在る『人類悪』と言う事実。
それ等の要素が重なり合い、彼の中に、彼の求める最強とは正義では無いと決定づけた。

─────────────それ以降、彼はこの世の全てを無意味だと考え、ひたすら最強を追い求めた。
時計塔を追い出され、家族からはいないように扱われて、それでもなお彼は最強を追い求め続けた。
家族からは勘当されても、それでもなお………………。放蕩者となった今でも、彼は追い続けた。
その間中ずっと、彼の心は『最強』と『非正義』が結び付けられたまま、歪み続けて行くであろう。
その歪みは留まるところを知らない、止まるべき必要を知らない、そして、止めてくれる人がいなかった。
彼は未来永劫、そのフラストレーションによって歪み続け捻じ曲がり続ける心と歩み続けるのであろう。
そして、その歪みと捻じれが形を成す時には、全てが遅い。
その時とは、彼が彼の言う『最強』と出会った時、その時なのだから──────





─────────────────一1つの、有り得た可能性。

『オラァてめぇ金持ってんだろうがダボがァ!!』
路地裏に、男が殴られ骨を折られる音が響く。
路地を歩く人々は、それを見て見ぬふりをする。助ける者は誰もいない。
そしてこの少年も、手を出す事など無い。しかし、期待している物があった。
「この場に、最強と言う存在が来て彼を助けてくれる」という、実に少年らしいものだった。

………………しかし待てども待てども少年の期待する者は来ず、暴漢達が男を路地裏の更に奥へ連れ込もうとする。
『なんで?なんで来てくれないの?ひょっとして、最強なんて──────』そう少年は考え始めた。
その時であった。

「うぉっらっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああっいぃ!!」
『ふげばぁ!?』
『ほげぇっ!!』
突如として男が全速力で駆けつけ、そして路地裏へと行こうとする暴漢2人に飛び蹴りをかました。
「この俺が顕現している間ぁどんな小さな悪事も見逃さねぇぞ腐れガキどもがァ!!!
だが悪気しかないようなのでェ!?全治1週間で許してやるぜダボがぁ!!」
そう言うと駆けつけた男は二人の暴漢にお仕置き(と言う名の折檻)を始めた。
『お、おいちょっと…』
『け、警察…………』
周囲の人がその様を見てざわめき始める。それはそうである。
カツ揚げ程度ならまだ多少日常的であるし、特に騒ぐほどの物でもない。
しかしこのように、乱闘騒ぎが起こると話が別だ。通行人にも被害が及びかねない。
これは通常の判断だ。故に、誰も駆けつけた男を助けない。むしろ目障りに思う始末だ。
───────────────だがここに、例外が存在する。

「最強だ……………!最強の存在が来てくれた……………!!」

少年は眼を輝かせながらその駆けつけた男を見る。
その駆けつけた男の姿は、まさに少年の憧れた最強の存在、正義の味方に他ならなかった。
例え周囲が助けなくても、悪を粉砕し破壊し叩きのめす絶対的なヒーロー。それこそ、彼の憧れた『最強』であった。
「ふぅ、やっぱ英霊に成っても暴漢2人はちょっと辛いか。まぁ所詮人間だしいっか」
そう男が呟いて煙草に火を付けようとすると、ファンファンファンとパトカーのサイレンが響いてきた。
「やっべ!やりすぎた!!またティタニアにボコられる!」
「こっち!こっち!!」
焦る男に対し、少年は特に考える事も無く逃げ道を示した。
この男の逃走を手助けしたら怒られるかなとか、親に怒られるかなとか、そもそもこの男の方が悪人なんじゃないかとか、
そう言った事は一切考えていなかった。
「おおありがたい少年!ちょっとここいらを案内してくれ!俺ん頃と街並みが変わっててよぉ!」
「分かった!」
少年は力強くうなずくと、その男に道を案内し闘争を手助けした。


「…………少年、」
建物と建物の間、路地裏の中でもまた他の路地裏から切り離された空間。
少年が他の少年少女達と一緒に、過去隠れ家として使っていた場所で、少年と男は話す。
「何?」
「何故俺を助けた?お前から見れば俺は、突然暴漢に暴力を振るった変人にしか見えないだろうに………」
「んー…、だって」
少年は屈託のない笑顔で笑いながら、男に対して無邪気に言う。
「お兄さん、俺にとっての『最強』だったから!」
「…………………最強?」
「うん、オレ漫画が好きなんだけど、それ読んでていつも『最強』に憧れてたんだ。
やっぱりそういう奴って、ああいう不良も手加減せずにぼっこぼこにするべきだよ!
でも誰も助けなかったから………、ひょっとしたらそういう最強っていないのかなぁーって思ってたんだ
そんな時、お兄さんが現れた!だから思ったんだ!お兄さんこそ最強だって!!」
その少年のあまりにも突飛過ぎる考えを聞いて男は、最初はポカーンと口を開いて呆然としていたが、
次第に口元が緩み、やがては笑いだし、最終的には大笑いを響かせ始めた。
「はーっははははははは!!!なるほど最強と来たかぁ!!そりゃあ正解だぜ少年よぉ!」
バッ、と立ち上がり男はポーズを決めながら少年にいう。
「少年よ、英霊と言う存在を知っているか?」
「知らない」
「うむ良い返事だ。どうせそんなこったろうと思っていたし。
まぁ簡単に言うとだな、この世界には偉人英人超人怪人奇人変人その他もろもろの魂が登録される場所がある。」
「なんで?」
「話が早いな少年。理由はコレから話すんだよ。というか『どうやって』の前に『なんで』かよ
まぁいいや。その英霊と言う存在は、まぁ色々な用途に使われる。人間に使役したり、色々と。」
「うんうん」
「その中でも花形と言える仕事が!世界に言い渡された仕事をこなす『抑止の代行者』だ!
人類の存続が脅かされた時!俺達のような英霊が派遣されてこの世界を救うんだ!!」
男が総高らかに宣言すると、少年の眼はみるみる輝きだした。
「つまり正義の味方!!」
「そうだ!正義の味方だ!まぁやりたくない仕事ばっかやらされる奴もいるが……、これは置いとこう
俺が倒す対象はな?神だ!神を倒すんだ!!」
「神さま!?神さまってあの!?」
「そうだ!ティアマトだって見た事あるぞ!倒したことはないけど!」
「すっごーい!!凄い凄ーい!!ねぇねぇ!他にどんな人が英霊にいるの!?」
「いっぱいいるぞー!お前が知ってる奴なら大抵はいる!」
「ヘラクレスいる!?」
「いるいるー!」
「ギルガメッシュいる!?」
「勿論いるぞー!偉そうに踏ん反り返ってるぞ!」
「孫悟空いるー!?」
「猿の方ならいるぞ!」
「凄ーい!!英霊サイキョー!!」
「おうそうだ!英霊サイキョーウ!」
そう互いに叫び合うと、少年と男は天に拳を掲げて互いに笑い合った。

「それで、お兄さんは何のエイレーなの?」
「ん?俺はなぁー…………。」
んー、と男は少し顎を撫でながら思考した後にいう。
「まぁ別に良いか名乗っても。俺の名は、『タイタス・クロウ』。本も出ているからまぁ読んでみてくれ。
いや、少年にはちょっと早すぎるかな?本の内容は事実より滅茶苦茶面白おかしく描かれてるがな!」
「タイタス………クロウ………。」
少年が何処からかメモ帳を取り出し、一ページ目の最初にでかでかとその名前を書く。
「おぉいおいそんなにでっかく書いて良いのか?俺は他の英霊に比べりゃ三流も良い所だぜ。
他にもお前の求める『最強』は五万といるんだぜ?」
「うーん…………、でもぉ」
少年はぽりぽりと頭を少し掻きながら笑顔で言った。

「オレにとって、あの駆けつけた兄ちゃんが…………サイキョーだったから!」

「…………、そうかぁ…………。嬉しい事言ってくれるじゃあねぇかガキィ………。」
少し男は感極まった様子であった。後ろを振り向来ながら男は少年にいう。
「少年、コレから色々あるとは思うが…………、何かあったら俺を呼べ!
………神性以外なら正直苦手だが…………俺は駆けつけてやろう!」
「分かった!」
「それまでに少年!英霊召喚魔術くらいは自力で出来るようになれよ!!」
「うん!!」
「男と男の約束だぜ!!」
そう言うと男は拳を突きだした。それに応えるように少年は拳をぶつけた。
そして男はその拳の親指をグッ、と立てるとそのまま光の粒子となって消えていった。
「…………タイタス・クロウかぁ…………、」
ぽつり、と少年は呟いた。そして家に帰ってから、その名前について可能な限り調べた。
そして彼の活躍を描いた小説が数冊、そして彼をモデルにした主人公が活躍するゲームを発見し、
結果として彼の情熱は全てその作品2つに注がれていくようになる…………。


─────────────それから、10年の歳月がたち、
「フフフーン、憎〜悪〜の〜空に〜呼〜び醒〜ま〜す〜正義〜〜!」
一人の男が脚が地につかぬという具合にステップをしながらある屋敷の廊下を歩く。
その男に一人の少女が少し引きながら話す。
「お兄様、その歌……今日だけで何周目ですの?」
「いやぁテンション上がっちゃって!だって超嬉しいだもん!!今日だぜカルデアに派遣されるのぉ!!
ようやく今まで積み重ねた英霊の知識が活かされるんだ!努力が実を結ぶ事ほど嬉しい事は無ぇ!」
「それとその歌、どう関係があんだよアニキ………?」
「そりゃあ、今まで憧れた1人の英霊の歌だからな!」
「いや………、其れ確か日本のアニメの歌だったよねお兄ちゃん………。
えーっと、確かぁ………。」
「斬魔大帝デモンゲイン!!まぁコレはPS2版の機真咆吼デモンゲインの方のOPだがな?
まぁ個人的にはやっぱり原典にして頂点たる斬魔大帝の方が良いんだけど、まぁやっぱり後になるとOPの演出とか」
「ストップだクソアニキ。それ以上はヤメロマジで。俺『達』に何回聞かせやがったと思ってるオイ。」
「クソアニキは酷いなぁオリーブぅ………。」
しょぼーんと男は肩を落とす。
「そ、それはそうとお兄様。そろそろ出る時間なのでは?」
「ん?ああー、まだ時間は在るけど荷物は持っておいた方が良いかぁ」
そう言うと男は部屋に戻り、そして滅茶苦茶に巨大なリュックサックを背負って戻って来た。
「うわっ、それ全部お兄ちゃんの荷物!?」
「随分多いですわねぇ………。登山道具と言う奴ですか?」
「いや全部触媒。タイタス・クロウ・サーガでしょ?斬魔大帝デモンゲインにこれが機真咆吼デモンゲインで、
こっちがネクロ・ノミコンのフィギュアでこっちは大十文字駆郎本人のフィギュアで…………。」
「置いて行って下さい。」
「なんで!?」
「馬鹿かテメェはよぉ!?そんなもん持って登れる程カルデアは甘くねぇんだぞ!?
それにそんなアニメ関連のもんばっかもってったらそれこそオリジンストーンの恥さらしだわコノヤロウ!!」
「うるせぇー!!少しでも召喚を確実にしたいしあと絶対カルデア内で暇になるだろうからそれ対策だバカヤロウ!」
「ボクからもお願いするよお兄ちゃん………。いや、流石のボクも引くレベルだから………。」
「ワタクシからも願いますわお兄様………。今回はオリーブの方が正しいですわ……。」
「オイてめぇ今回『は』って何だオイレモン」
「ちぇーっ、分かったよコンチキショー。ソシャゲのデモンゲイン/Goで我慢するかぁー。
あ、そうそうこの前☆5のマスターセリオン引けた話したっけ?」
「それぞれ人格ごとに5回ずつ聞かされました。」
「あ、ごめん………。」
そんなやりとりを兄妹仲良くしていたら、あっという間に男の出発する時間となった。
「あ、じゃあ行ってくるわ。」
「いってらっしゃいませお兄様。」
「しくじってオリジンストーンの名前に泥塗るんじゃねぇぞ!」
「あとの事は、ボク達に任せて行って!」
「おう!」
そう言うと男は、拳を少女…………彼の妹に対して突き出した。
「?………………なんですのこれ?」
「この拳に、こう…コツンと拳をぶつけるんだよ!漫画流カッコいい別れの挨拶!」
「ほぉー!じゃあ俺がやるやる!アニキもたまにはカッコいいこと知ってるな!」
そう言うと少女は、男の拳にコツンと自分の拳をぶつけた。
「うっし、じゃあ行ってくるぜ!」
そして男はその拳の親指をグッ、と立てるとそのまま歩いて屋敷を後にした。
「頑………………、張って────ね………………!」
「おう、ディーティームもな!」


─────────数日後、カルデア

『告げる!』
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。」
「……………汝、その瞳に真実を見定める者。
我は、その真実と共に歩むもの。」
「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

バシィィィィン!!!シュバァァァァアアアアアアアアアア!!!


「よぉ!俺は人類存続の為の抑止力。アラヤの結晶だ。
名前は…そうだなぁ…、とりあえず、タイタス・クロウとでも呼んでくれ。」

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