ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

"私はかつて最も偉大な王とともに戦った。それは私の人生の中で最も幸福な時であった。だが我々はホルダランドから、羊毛を被った女怪フラグズの如く忌まわしい最後の航海へ出た"


"その時トールは、私に裏切り者となり幾多の苦痛を被るように命じた。我が名は呪わしき名として世に響き渡ることが定められたのだ"


"樹の上の神々へとヴィーカルを捧げるよう命じられ、私は槍で王の心臓を突き刺した。私にこのような苦痛をもたらしたのはこの行為が初めてである"


"ホルダランドの人々は私を忌み、私は目的もなく彷徨うこととなった。我が王を失った私には、金も詩も悲しみを満たすだけだった"


"スウェーデンまで渡り歩き、ウプサラのユングリング族の王のもとへ流れ着いた。一族の家臣たちからどれほどぞんざいに扱われていたか、私はいつまでも覚えているだろう"


━━━スタルカズ自身の詠んだ詩『ヴィーカルの欠片』とされる韻文(ガウトレクのサガより)

基本情報

【元ネタ】北欧神話『ガウトレクのサガ』『ゲスタ・ダノールム』その他多数(『ユングリンガサガ』『古き諸王のサガ断片』『ベーオウルフ』『ノルナゲストの話』など)
【CLASS】ランサー/バーサーク・ランサー
【マスター】
【真名】スタルカズ・ガムリ
 Starkaðr gamli Stórvirksson(ストールヴィルクの息子、"老"スタルカズ)
【表記揺れ】スタルカド(ル)、スタルカズル、スタルカズ・イン・ガムリ
【異綴】スタルカテルスStarcatherus(ラテン語)
【性別】男
【身長・体重】234〜cm・172〜kg(第三宝具中は増大する)
【肌色】老白【髪色】灰【瞳色】黄土
【外見・容姿】古い鎧とみすぼらしい衣服に身を包む巨体の老人。
【地域】北欧
【年代】不明
【属性】秩序・善/混沌・悪
【天地人属性】地
【その他属性】人型・(巨人)・(魔性)(第三宝具中は追加される)
【ステータス】筋力:A++ 耐久:EX 敏捷:B 魔力:C 幸運:A- 宝具:A

【クラス別スキル】

対魔力:A+++

大神オーディンと雷神トール、最大級の神格二柱にかけられた祝福と呪いにより、生半可な魔術、呪い、精神干渉などによる上書きを受け付けない。
ただし両神、およびその代行者による神力ならば対魔力を半減して突破可能。*1

騎乗:E-

乗騎、および乗り物の操作適性は十分だが、その巨体に合う乗騎がほとんどなく、十全に操れないことが多い。
運転は可能だが操作中の戦闘はペナルティを受け、乗騎の性能も重量により低下する。
生前は自らの足で立つことを誇りとして騎乗を拒否したことがあるが、死後である今はそこまでは拒否しない。

狂化(真):E〜B(C)

バーサーカーの原典、北欧の狂戦士ベルセルク本来の狂化技能。
戦闘時に狂化を発動し、制御することができる。
戦闘中、EからBランクまでの範囲で上下する。
括弧()内のランクはこの狂化制御スキル自体の練度を表し、Cランクなら1ターンに1ランク上下できる。

狂化(偽):EX

人外の血の目覚めによる本能の暴走素質。
オーディンが人に伝授した狂化を制御する技とは相反する、禁忌に近い裏の狂戦士の業である。
スタルカズの場合、戦闘中の熱狂、第二宝具の反動による反転、第三宝具発動による血の覚醒などが発動の契機となりうる。
ステータスがランクアップする代わりに、長くこの状態が続くほどに判断能力が薄らぎ、最終的には敵味方の判断もつかなくなる。

狂化:D

バーサーカークラスの召喚儀式により付与された狂化の呪い。
身体が強化された代わりに精神負荷を受けるが、もともとの自制心の強さから精神的影響はほとんどない。

【保有スキル】

天性の巨躯:A+

怪力頑健天性の肉体などの複合スキル。
生まれながらに恵まれた巨体を持ち、巨人の転生とも疑われた。

双神の禍福:EX

トールからの呪い、オーディンからの加護が合わさった特殊複合スキル。
複数の強力な効果を持つが、その効果を受けるにはペナルティを伴う。
必勝の運命補正を発動するには必ず敵から負傷を受ける必要があり、
高速で詩を編むが、詠んだ詩を覚えておくことができず、
武装強化を発動するには国主や領主、地主ではない必要があり、
黄金律のように金銭に困らないが、その金銭で購入したものは彼にとって良い結果をもたらさず、
高貴なものや戦士に対して働くカリスマや交渉補正を得るが、その分庶民や農民からは嫌われやすい不利な補正を受ける。

ゲーム的には、被クリティカル率と被クリティカルダメージが上昇するデメリットを受ける代わりに様々なバフが発動。
同時に高速詩吟により大量のNPを得るが、得たNP分は2T後に消失する(消失効果は宝具発動でリセット)。

矛盾精神(忠/叛):B+

スタルカズは主君を愛する忠義の戦士として知られると同時に、不義を為して手にかけた裏切り者としても知られる。
報酬を必要とせず、奉仕と厳格さの両面で主君とその一族へ忠誠を示すが、その対象のうち少なくとも2人を安易な取引から手にかけた。
普段は秩序・善だが、時折ランダムに混沌・悪の属性へと反転する。

反転衝動:_

人外との混血が発現する現象。
ヒトとしての理性や道徳を、人外としての理性や道徳が飲み込もうとする根源的な欲求。
スタルカズの場合は他のスキルへ昇華されている。

【宝具】

大神宣言・蕾の収穫レイルスプロティ・グングニス

Reyrsproti Gungnis
ランク:B+ 種別:対人・大神宝具 レンジ:1-2(近接)/3-5(投射) 最大捕捉:1×8
養父のオーディンから託された、義兄弟、親友にして主君たるヴィーカルを捧げるための神槍に由来する宝具。
悪風を受けて船が足止めされた際、予言でオーディンが軍勢から生贄を求めていると分かり、皆でくじを引いて生贄を決めることとなった。
くじの答えはヴィーカル王その人であり、安全を確認した偽りの模擬儀式による代行で済ませると話し合われた。
その軍勢の中には実はオーディンが同行しており、養子のスタルカズへ供儀のための段取りを教授し、安全な芽吹いた茎レイルスプロティにしか見えない槍を与えた。
安全な偽の絞首台に見えたものは、「汝をオーディンに捧げる」との言葉とともに本物へと正体を表し、ヴィーカルはオーディンのように槍を刺されて木に吊り上げられてヴァルハラへと送られた。

手にした茎が槍に変化した逸話に由来し、宝具としては手にした草木やその繊維を神槍グングニルへと瞬時に変えることができる。
分配されたものとはいえその神威は本物であり、ほとんどの守りや加護を打ち破って攻撃を貫通、命中させることができる。

大神天寿・三命戦樹スリャー・マンスアルドル

þrjá mannsaldr
ランク:A 種別:対人(自身)宝具 レンジ:_ 最大捕捉:_
大神オーディンから授かった3人分の命が宝具となったもの。
人間がもとから持つ1つ+追加の2つ。
霊核が崩壊するなどして死亡した瞬間、命のストックを消費して即座に全回復する。通常なら合計2回蘇ることになる。
大量に魔力を充填すれば、ストックを回復することも一応可能。
トールからの呪いとも一体のものであり、一度蘇るごとに裏切りなどの不名誉行為へ繋がる反転衝動を起こす。

巨人顕現・八手怪痕ヨトゥンクムル・アータハンダ

jötunkuml átta handa
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:_ 最大捕捉:_
本来はバーサーカー時限定の宝具。
あるベルセルクは口論詩でこう揶揄した……「その怪物のような傷痕ヨトゥンクムルは、北方の鎚たるフロールリジトールに引きちぎられた八本の手の痕跡に違いない」「貴様は巨人の生まれ変わりだ」と。
真名を解放する、あるいは狂化の度合いが深まると発動。
背中の6つの痣から巨人の腕が突き出し、もともとの腕と合わせて八本腕となる。
かつてトールと戦った祖父、巨人スタルカズ・アールドレングルへの先祖返りであり、腕が増えるのみならず身体能力や硬度、魔力も向上する。
効果中、一時的に巨人・魔性の特性を得る。

第一宝具との併用により、一度に8本のグングニルを操ることが可能。

【Weapon】

『矢束』

かつて自分が使ったもののみでなく、かつて自身に刺さったものも含む、古き戦場の矢の数々。
そのまま投げて使うこともできるが、主に第一宝具発現のための触媒となる。

【解説】

北欧最大の英雄の1人。老スタルカズスタルカズ・ガムリ
同名の八腕巨人スタルカズ・アールドレングルの孫。
3人分の寿命と、祖父の巨人から受け継いだ人外の膂力、神に愛されし詩才を持ち、幾多のサガに現れる老兵。
武勇譚と共に、多くの罪を犯したことでも知られる。

様々な諸王に仕えたが、その忠義は運命により捻じ曲げられ、果たされることはなかった。
その人生の全ては戦いと戦傷に彩られ、悔恨と憤怒と共にある。
その一方で、彼が説く誉れの評価は高く、古英詩『ベーオウルフ』にすら彼がインギャルド王を諫める演説が引用されている。


北欧の英雄の多くは出会ったノルン(多くは戦乙女やトロールなど人外の女傑)から運命を与えられるが、スタルカズにとってのノルンは雷神トールと大神オーディンであった。
その出生からトールに呪われ、その宿命ゆえにオーディンから祝福される。

オーディンからは3人分の寿命を、トールからはその人生ひとつごとに禍々しき不名誉行為を為す呪いを授かる。
最初に為した不名誉行為は、義兄弟にして親友でもある主君ヴィーカルの殺害であった。
オーディンの授けた、一見安全な茎に見える槍に貫かれたまま、ヴィーカルは樹の上に吊り下げられた。

流浪の身となったスタルカズは、不名誉をそそぐために、奉仕する対象となる王を探し続けた。

スウェーデンのユングリング族にも一時期仕えたが、最も長く仕えたのはデンマークのスキョルドゥング族であった。
数代に渡って、スキョルドゥング族のフロージ王の子孫何人かに奉仕し、その老兵の名声は誉れ高く伝えられるようになる。

しかし、その終止符もやがて訪れる。
フロージの末裔の1人、勇敢なるアーリ王は慢心からか支配地とその領主に暴虐をもって振る舞い、殺されるべき悪逆の王となった。
領主たちに説得されてスタルカズはアーリを浴場で殺したが、後に残ったのは強烈な後悔であった。
依頼した領主たちを殺して回り、その後は自分を殺してくれる者を探してさまよった。
そこで見つけたのが、殺して回った領主たちの1人フレニの息子ハゼル。
アーリを殺した報酬金を支払って、ハゼルに自分を斬首させた。

他に失われた物語にあるのでなければ、これで三度の不名誉行為は果たされたのだろう。
すなわち、一度目はヴィーカルを裏切り、二度目はアーリを裏切り、三度目は自分を裏切ったのだ。



血筋と出生

(ガウトレクのサガ、ヘルヴォルとヘイズレクのサガ)
祖父は八本腕の巨人、アラの勇士スタルカズスタルカズ・アールドレングル*2*3
スタルカズ・アールドレングルはオグン・アールヴァスプレンギ*4を妻としていたが、半妖のヘルグリームヘルグリーム・ハールヴトロールに奪われる。
巨人スタルカズは4本の剣でヘルグリームを殺したが、オグンはすでにヘルグリームの息子エイグリーム*5を産んでおり、自害してしまう。
巨人スタルカズは次に、アールヴヘイムのアールヴ王の娘アールヴヒルドを見初めて攫う。
アールヴ王はトール神に娘の奪還を願った。
トールは巨人スタルカズの6本の腕を背中からちぎり取って殺す。
しかしアールヴヒルドはすでにスタルカズの息子ストールヴィルクを妊娠しており、産むことを選んだ。

ストールヴィルクは黒髪で背が高く、見栄えのよい男へと育つ。
彼はアグザ(アグデル)の王ハラルドに仕え、スルマ島を領地として分け与えられる。
ハロガランドのフレキ伯の娘ウンを略奪し妻として、スタルカズという息子も産まれた。
ある夜ウンの兄弟フョリとフューリが襲撃し、姉妹ウンごと家と農場を焼き払った。
襲撃者たちは、運良くストールヴィルクが生き延びている可能性を考えると扉を開けてウンを助けに行く危険を冒したくなかったのだ。
襲撃者の船は嵐に遭い、スタズ沖の岩礁で溺死してしまった。

ストールヴィルクの息子スタルカズは、父親が殺された時はまだ幼く、ハラルド王は彼を宮廷で育てた。

ヴィーカルとの出会い

(ガウトレクのサガ、ゲスタ・ダノールム)
ホルダランドのヘルショーヴ王はある夜突然裏切り、ハラルド王を殺してその息子ヴィーカルを人質にとった。
ヘルショーヴ王はハラルドの国を征服し、重要人物たちの息子を次々と略奪し、貢物を納めさせた。

ヘルショーヴ王の軍勢には、馬毛のグラニフロスハールスグラニと呼ばれる人物がいた。
彼は当時3歳のスタルカズをフェンフリング島に連れ帰り、9年育てた。

育ったヴィーカルはヘルショーヴ王への反乱のために動き、義兄弟スタルカズのもとへ向かった。
12歳になったスタルカズはすでに並外れた巨漢となって、火のそばで灰を被って寝ていた。
ヴィーカルはスタルカズを起こすと、その成長に驚いて親指で身体の長さを測り、服と武器を与えた。
すでにスタルカズには髭が生えていた。

2人は船で巡り兵を集めた。
やっとのことで12人しか集まらなかったが、その全員が勇猛な戦士であった。
9人の「ヘルブランドの息子達」(セルクヴィル、グレティル、ヒルディグリム、エルプ、ウールヴ、アーン、スクーマ、フローイ、フロッティ)と、
スタズの北からやってきた3人(ステュル、ステインソール、老戦士白斑のグンノールヴグンノールヴ・ブレシ*6

ヘルショーヴ王の城には70人の兵がいたが、ヴィーカル達は1人も欠けることなく打ち破った。
ヴィーカルたちは奪った船で土地を巡って、すぐさまアグデルとイェーレンの領土を取り戻し、さらにホルダランドとハルダンゲル、ヘルショーヴ王が支配していた他の地域も手に入れた。

ヴィーカルは強力な指導者となり、毎年夏にはヴァイキング遠征に行くようになった。
ある時ヴェーニル(ヴェーネルン)に到着すると、キエフ(ロシア)国の東のシーサル王*7との戦いになった。
スタルカズはシーサル王の剣で盾を裂かれ、頭に2つ、鎖骨、両の脇腹に傷を受けたが、反撃でシーサル王にも脇腹、膝下、足首を傷付け、他の兵士ごと腹部全体を断ち切った。
多くの死傷者が出たが、キエフ軍の残存兵力を撃退し、国に帰ることができた。

ある時ヘルショーヴ王の兄弟のゲイルショーヴ王が復讐を計画して大軍を編成したと聞き、ヴィーカルも全戦力を召集して進軍した。
17日間休むことなく戦い続け、とうとうゲイルショーヴを倒してウップランドを征服した。
隣のもう1人の兄弟フリズショーヴ王がたまたま不在だったので、テレマルクも征服した。

ヴィーカルはアグデルに戻り妻を得て、2人の息子を得た。
年長はハラルド、年下はネリと名付けた。

フリズショーヴ王は2人の兄弟が殺されたことを知り、ウップランドをすぐさま取り戻すと、ヴィーカルに対し貢物を寄越すかさもなくば我々の軍と出会うか選べと要求した。
両軍の激突に際して、スウェーデンのネルケを治める鋭い眼のオーラヴオーラヴ・スキュグニ王がヴィーカルに加勢した。
最前線にはスタルカズが立ち、羽織るものもないままに敵軍を掻き分けるようにして侵攻。
フリズショーヴ王はヴィーカル軍の猛攻を前に降参し命乞いした。

ヴィーカルはこれらの領土を息子に分配した。ハラルドはテレマルクの王となり、ネリは伯(ヤール)となりウップランドを与えられた。

ヴィーカル王は多くの優れた勇士を従えたが、その中で最も強く、最も愛されたのはスタルカズであった。
ヴィーカルは彼に多くの贈り物をしたが、その中のひとつは3マルクの重さの金の腕輪である。
スタルカズはそのお返しに、父から受け継いだスルマ島をヴィーカルに贈った。
スタルカズは15年間、ヴィーカルと共にいた。

ヴィーカルの死と、スタルカズの運命の夜

(ガウトレクのサガ、ゲスタ・ダノールム)
ヴィーカルはヴァイキング航の最中に悪風に遭い、小島に留まらざるをえなくなった。
風がいつ好転するか予言すると、オーディンが生贄を欲していることが分かった。
全員でくじを引くと、何度引いても結果はヴィーカル王となった。

その真夜中、養父のフロスハールスグラニがスタルカズを起こし、他の島へ連れ出した。
森の中を歩くと、集会場があり、11人が椅子に座っていた。
フロスハールスグラニが12番目の椅子に座ると、全員が彼をオーディンと呼び挨拶した。
グラニは、これからの審判がスタルカズの運命を決めるのだと告げた。

トールは話し出した。
「スタルカズの父の母であるアールヴヒルドは、息子を産むための父としてアース神トールアーサソールではなく犬のような巨人を選んだ。故にスタルカズは息子も娘も得られず、彼の血筋は終わると定める」

オーディンは返した「私は彼が3度の人生(≒3人分の寿命)を生きると定める」

トールは返した「彼はその人生のたびにニージングスヴェルク禍々しき行いを犯すだろう」*8

オーディン「常に最高の武器と衣を持つと定める」

トール「土地も領土も持つことができぬと定める」

オーディン「彼に大金を与えよう」

トール「彼は決して満足することはないと定める」

オーディン「彼に勝利と名声を与えよう」

トール「全ての戦いで彼は激しく傷付くだろう」

オーディン「私は彼に詩才を与えた。彼は話すのと同じ速さで詩を詠むことができる」

トール「彼は自分が詠んだ詩を記憶しておくことができない」

オーディン「彼のために、彼は高貴な者たちの中で最高とみなされると定める」

トール「彼は全ての民から憎まれるだろう」

審判の神々はここで言われたこと全てが実現されることを誓い、集会を解散した。
フロスハールスグラニ「儂の育ての息子よ、儂がお前に与えた援助に対して、十分に報いてくれないか」
「そうしよう」
「ならばヴィーカル王を儂の所へ送ってくれ。どうすればいいか方法を教えてやろう」
スタルカズが同意すると、グラニは彼に芽吹いた茎レイルスプロティ*9のように見える槍を手渡した。

明朝、スタルカズの提案通りに模擬的な生贄の儀式を行うことで全員が同意した。
近くに松の木があり、その近くには背の高い切り株があった。
松の木の葉の中からは、地面のすぐ上まで細長い枝が伸びていた。
ちょうど朝食のために子牛の内臓が取り除かれていたので、スタルカズは腸をもらい、細い枝に結び付けた。
「絞首台の準備が整いました、陛下」
「危険ではないようです。こちらへ来てください、首に縄をかけてあげましょう」
「この仕掛けが見た目以上に危険でなければ、俺に害を及ぼすことはないが、もしそうでない場合は、運命が決めることだ」とヴィーカル王はこぼした。

王が切り株に登ると、スタルカズは首に縄をかけて下に降りる。
芽吹いた茎を王に当てがうと「汝をオーディンに捧げる」と唱えた。
枝を手放すと、芽吹いた茎は槍となって王を貫き、子牛の内臓は強靭な縄となり、枝が跳ね上がり王の身体は松の木の葉の中へと消え、王はそこで亡くなった。
以来、その場所はヴィーカルの小島群ヴィーカルスホールマルと呼ばれている。

この出来事から彼はホルダランドを追放され、スウェーデンのウプサラの王エイリーク*10とアルレク兄弟のもとに滞在した。
アルレクから身の上を聞かれた際、彼はヴィーカルの欠片ヴィーカルスバールクル*11という詩を詠んだ。
そのためにヴィーカルの死の様はこうして残っているのである。

漂泊

(ガウトレクのサガ、ゲスタ・ダノールム)
ヴィーカルを亡くしてから、スタルカズは様々な地の王のもとを転々とした。
最初はスウェーデンのウプサラのユングリング族ユングリンガの王エイリーク(エイレクとも)とアルレクの兄弟のもとに滞在したとされる。
(『ゲスタ・ダノールム』ではウプサラに行ったのは2番目で、その前にデンマークのヴァイキング"べモン(Bemonus)"*12と同行し、ロシア人を略奪したこともあったとされる)

ウプサラにいる間、12人のベルセルク(名前が判明しているのは2人の兄弟ウールヴとオートリュグ)も傭兵としてそこにいて、スタルカズをからかったという。
ベルセルクたちはスタルカズを、巨人の生まれ変わりであり、凶事を為すものだと侮辱した。

「彼らは私に"ヘルグリーム殺しヘルグリームスバニ*13の姿が見える"と言っている。
"その怪物のような傷痕は、北方の鎚たるフロールリジ*14に引きちぎられた八本の手の痕跡に違いない"
"醜い顎、長い鼻、曲がりくねった枝(のような腕)、狼の灰毛のような髪、ざらざらした首、でこぼこの皮"と、私を見て彼らは嘲笑った」

スタルカズはエイリークから授けられた船でヴァイキング遠征に出ていたが、『ゲスタ・ダノールム』によるとウプサラの魔術儀式(女神フレイヤに由来する)の破廉恥さと肌が合わずに、長くは居付けなかったという。(7年間)

ウプサラのアルレク王はある日兄弟のエイリーク王に手綱で殴られて死に*15、エイリーク王単独の治世がしばらく続いたというが、その治世は『フロールヴ・ガウトレクスソンのサガ』(ウプサラのエイリーク王の娘ソルンビョルグが登場する)で語られる。

ウプサラを去ってから、デンマークのスキョルドゥング族スキョルドゥンガに仕えるまでのスタルカズの履歴は『ゲスタ・ダノールム』のみに見える。
・前述のヴァイキングの長べモン(Bemonus)のもとではロシアとの戦いに参加。敵の撒いたカルトロップ(西洋まきびし)を下駄のような履物で打ち破る。
・デンマークのハキ王のもとでアイルランドのフグレイク(Hugletus)王との戦いに参加。面妖な呪術に苦戦した。
・スラブのヴィン(Winus)王子のもとで東方の部族と戦う。眼で見ただけで剣をなまくらにする魔眼を持つヴィシン(Wisinnus)を、刀身を革で隠すことで打ち破る。

スキョルドゥング族スキョルドゥンガに仕える

(ゲスタ・ダノールム、ベーオウルフ)
老スタルカズは、デンマークのスキョルドゥング族スキョルドゥンガの大王、平和なるフロージフロージ・ミキラーティに仕え、その子孫たちにも様々な助力、忠言をしたことで名高い。
(フロージは同名の人物が多く、原典資料でも混乱が見られるが、このフロージはダン・ミキラーティの息子と思われる)
スキョルドゥング族は、オーディンの子孫スキョルドと女神ゲフィオンを祖とする一族。→https://en.wikipedia.org/wiki/Scylding
(『ベーオウルフ』ではシュルディング*16として知られるが、属する当代の人物はヘアゾベアルドと一部入れ替わっている?)

ある時は金目当てにフロージ王に決闘を申し込んだサクソン人の勇士ハマ(Hama)に対し、フロージの代理として戦い、ハマの拳に一旦悶絶するも、起き上がって反撃で切り捨てたという。

フロージ王はサクソン人のスヴェルティング(Swertingus)*17に裏切られて殺された*18、あるいは兄弟(息子とも)のハールヴダン*19の息子達*20に殺されたとされる*21
(『ベーオウルフ』では、ヘアゾベアルド族のフローダ王がシュルディング族の何者か*22に殺されたとされる)

フロージの息子インギャルド(Ingellus)*23が父の殺害者の娘*24と結婚した上に飽食、怠惰、放蕩三昧の限りを尽くしたがために、スタルカズは先王への不義理に怒って出奔し、スウェーデンのハールヴダン(Haldanus)*25王のもとへと移る。

インギャルドの妹ヘルガが下賤な鍛冶屋と不義の密通をしている、という噂がスタルカズの耳に入ると、彼はみすぼらしい老人に変装して密通の現場を押さえ、鍛冶屋の性器を粉砕しヘルガを平手打ちして説教した。

ヘルガを嫁に求めてきた旅人ヘルギ(Helgo)*26と出会い、スタルカズは助力することにする。
そのため、嫁争奪戦のライバルとなったアンガンテュール(Angaterus)とその兄弟を合わせた9人組を相手に、代理決闘した。
全員を倒したが、スタルカズの負傷もひどいものだった。
その姿を見かけて手当てを申し出る通行人がいたが、子持ちの下女に対しては乳を待っている子供のもとへ帰ったほうがよいだろうと断り、次に通りがかった高貴な生まれの農夫の手当てを受けてからスウェーデンに帰還した。

スタルカズが仕えていたスウェーデンのハールヴダン王は敵に殺され、その息子シヴァルド(Syward)へ王位を継がせると、スタルカズは肩に大量の木炭を持ち上げてデンマークへ向かった。
見かけた人々からなぜそのような不思議な荷物を運んでいるのか問われると「インギャルドの鈍い頭を木炭の火で(剣を鍛えるように)鋭く鍛え直してやるためだ」と答えた。

インギャルドが父の仇も討たずに宴会を続けていると、スタルカズが現れた。
この、インギャルドへの忠言のくだりは『ベーオウルフ』にも老兵の言葉として精彩に描かれている。
以前の習わし通りの席にずかずかと座り込んだスタルカズ。
やってきた王妃(仇の娘)が彼の継ぎ接ぎと汚れだらけの姿を見ると、格好でしか人を見計らうことができぬ王妃は罵倒して席から離れるように言った。
スタルカズは驚異的な自制心で沈黙のままに席を立ち、宴席の壁隅へとしりぞいた。
しかし、彼が壁に寄りかかっただけで、梁は大きく揺れ、家財の多くが崩れ落ちた。
インギャルドは狩りから帰ると、その男の眉間の厳しさを見てすぐにスタルカズと気付いた。
戦いで硬質化した手、正面に残された戦傷、燃え上がる眼光。
インギャルドは妻を叱り、自分が侮辱した相手をなだめて歓待するように命じる。
妻は一転して、最もおべっかの上手い女将となった。

インギャルドは親しみを込めてスタルカズが酒宴を長く楽しめるように接待したが、スタルカズの怒りを鎮める役には立たなかった。
彼は節制を好み、食事の過不足を嫌う。戦の後でもないのに度を過ぎた飽食など、戦士の誇りに相応しくないものだった。
彼は豪華な馳走を拒み、農民のような食事を所望した。
チュートン人風の豪奢な贅沢よりも、粗野な戦士の生き方こそが、彼の誉れだったのだ。
ましてや、先王フロージの仇たちと共に囲む宴席など、彼の怒りを掻き立てるだけだった。

スタルカズはインギャルドを諌める。
「戦わぬ若人は老いた戦士に膝を折るものだ。老人まで経た年月を尊ぶように。
人が勇敢である時、誰もその老齢を非難するべきではない。
年老いた者の髪が白くなっても、その勇気は変わらず、時の経過とて、その強い心を弱めるまでには至らない。
私は不快な客人に追い払われた。
彼は外見は繕っていても、その悪徳が身を汚している。
彼は腹の奴隷であるかのように、毎日飽食にうつつを抜かしている。
フロージの仲間だった頃、私は戦士たちと共に大広間の高席に座し、王子たちよりも最初に箸をつけることを許されていた。
今は高貴な頃とは逆に、壁隅に追いやられ、水中に潜む魚のように、落ち着ける場所を探さねばならぬ。
以前の時代には整えられた長椅子に座っていた私が、今や大広間の集まりから追い払われる有様。
あるいは、扉を背にして帰っていたかもしれない。もし壁が私の脇腹を遮らなければ、またもし天井の梁が私が飛ぶのを遮らなければ(帰っていただろう)。
私は客人として迎えられず、宮廷の者達の嘲笑に晒され、罵倒に晒された。
私は本来世間に疎い身だが、どんな報せが噂として広まっているか、どんな出来事が起きているか、国の秩序はどうなっているか、お前の国で今一体何が起きているのかは、喜んで知りたいところだ。
罪に埋もれたインギャルドよ、なぜ父君の仇を討つことを躊躇うのか?
汝は正しき王を殺したことを些事と考えるのか?
怠け者のお前は何故、売女よりも女々しく、ご馳走を食べることばかり考えているのか?
殺された父の仇を討つことは、汝にとって小事なのか?
おおフロージ、最後に貴方と別れた時、私は知っていたのだ。最強の王である貴方は、敵の剣で必ず死ぬだろうと。
この地を長く旅しているうちに、警告の呻きが聞こえてきた。貴方と二度と会うことはできないと。
私は愚かだ。
私は遠く離れた地で、最果ての民を助けていた。
まさにその時、裏切り者の客人が王の喉を狙っていたというのに!
そうでなければ(近くにいたなら)、私は主君の仇を取るか、彼と運命を共にして、彼と同じところに倒れ、喜んで我が王の後を追っていたはずなのに。
私はご馳走のために来たのではない。
私はその罪を懲らしめるために来たのだ。
かの王は私を下座に寄越すことはなく、最も高い上座に座らせるのが常であった。
スウェーデンからはるばる来て、広い土地を旅したが、愛するフロージの息子を見つけた喜びさえあれば、報われると思っていた。
勇者を探していたら、大喰らいの王に行き着いた。
腹と悪徳の奴隷め、(サクソンの)汚らわしい快楽が、貴様の好むものを変えてしまったのか。
かつてハールヴダンが言ったという警句の通りだ。「良き父から愚かな息子が生まれる」と。
たとえ後継者が堕落していようと、私は偉大なるフロージの遺産を略奪したり、余所者に譲り渡したりはしたくない」

王妃はその剣幕に恐れをなし、
インギャルドの愚鈍な妻は老人の怒りを鎮めるには贈り物が最適と考え、自分の頭飾りを老人の膝へ置いた。*27
賢明なスタルカズにはこれは侮辱と映った。戦士を女の装いで飾るなどとは!*28
彼は頭飾りを投げ返す。
王妃はさらに音楽や道化師の芸でなだめようとしたが、王妃の一族が殺した先王フロージへの敬愛と悲哀が、スタルカズの魂から離れることなどなかった。

「勇敢な男は、可愛らしいだけの装飾などで飾り立てない。
戦いに臨む男の髪を、金の輪で束ねるのは間違っている。
この贈り物は、贅沢を愛するお前の夫にくれてやればよい。
そうでなければこの指が震えて、燭台や焼けた肉をひっくり返してしまう。
(中略)*29
乳の脂肪を舐める者よ、
男の魂を持て。
フロージを思い出せ。
父の仇を討て。
気高さ無き臆病な心はここに滅び去る。
(中略)*30
亡くした親を身代金に取り替えたり、父を滅ぼした見返りに敵から物を要求するなど、誰が耐えられようか。
どれだけ強い後継者や優秀な息子なら、このような恥ずかしい取引をした者と肩を並べて、戦士として胸を張れるのだろうか。
貴様がそのような体たらくだから、詩人が王の栄誉を歌い、長の勝利を語る時、私は恥ずかしくなって顔をマントに隠し、気を病んでしまうのだ。
お前の戦利品には、記録するに値する物は何もない。
フロージの後継者は、名誉ある者たちに名を連ねることはない。
お前は仇の血を引く敵を褒め称え、パンと温かいスープで復讐するというのか。
(中略)
見よ、暴君スヴェルティングの子達が、お前の後にデンマークの遺産を手にするだろう。
お前が、宝石を散りばめて金の衣装で飾った花嫁にうつつを抜かしている間、我々はお前の悪行を嘆き、恥をかかせたことへの憤怒に燃え上がる。
(中略)
昔ながらのやり方を思い出そう。
フロージよ、貴方を殺した者が正当に罰されるのを見ることができれば、これ以上の幸せはないだろう」

この演説は功を奏し、インギャルドの胸に復讐の炎を呼び起こした。
彼は食卓を囲んでいたスヴェルティングの息子たちに剣を振るい、喉を切り裂いた。
インギャルドは仇の娘との婚姻を解消し送り返した。

この演説と恩讐を、『ベーオウルフ』の語り手も、『ゲスタ・ダノールム』の書き手も肯定的に記している。
悪徳と怠惰に堕ちた君主を、正道へと再起させたのだと、キリスト教徒である書き手までもが喝采する。
このエピソードにより、王佐の忠臣としてスタルカズの名声は広まったようだ。

勇敢なるアーリアーリ・フレークニに仕える

(ユングリンガサガ、ゲスタ・ダノールム)
その後、スタルカズは勇敢なるアーリアーリ・フレークニ*31に仕えたとされる。
アーリ王もまた、フロージ王の縁者の1人であり、スキョルドゥング族の末裔のようだ。
フロージ王の息子の1人フリズレイヴの息子がアーリである。*32

ブラーヴェリルの戦い

(古き諸王のサガ断片、ゲスタ・ダノールム)
ある時、多くの英雄が集う大合戦が起こった。
それこそ、ハラルド・ヒルディトン戦歯のハラルド(通称ハラルド戦歯王)の最期の戦となる「ブラーヴェリルの戦い」である。

150歳の高齢となった戦歯王は老齢により視力も失い、歩くこともできなくなり、領地の秩序は崩壊し略奪されるようになり、部下たちは彼は十分に生きてきたので、もう亡くなって跡を他者に譲ったほうが国のためになると考えた。
風呂場で窒息させられそうになった戦歯王は抵抗し、十分に生きてきたがせめて戦場で死にたいと訴えた。
そうして、戦歯王は信頼する甥もしくは婿養子である輪のシグルズシグルズ・フリング(通称フリング王)に戦争を申し込んだ。

両軍は他国からの援軍も豊富に呼び寄せ、戦歯王の最期を盛大に飾ることになった。
フリング王が招聘した中で最も重要な戦力こそが、老スタルカズを連れた勇敢なるアーリ王であった。
多くの勇士が集まる中でも、スタルカズは最前線に立っていたという。

戦歯王が目が見えないために、腹心の知恵者ブルーニに敵の陣容を聞くと、全て猪の鼻先陣スヴィンフィルキング(楔型陣形)であると答えた。
この陣形は私とオーディンしか知らないはずだ、と戦歯王は衝撃を受け、オーディンが自分の勝利を望んでいないことを悟った。

スタルカズは数多くの勇士を殺し、敵大将の1人盾乙女ヴィスマ*33が旗を持つ左手も斬り落としたものの、スタルカズ自身も(いつものことだが)肺が飛び出し頭蓋が裂けて右手の指を1本失うほどの深傷を受けた。

戦歯王は足腰が立たないながらも、戦車の上で膝立ちになり両手の短剣で多くの兵士を屠ったが、腹心のブルーニに棍棒で殴られて落馬して戦の決着となった。*34
『古き諸王のサガ断片』では触れられないが、『ゲスタ・ダノールム』ではブルーニの正体はオーディンだったとされる。

ファーヴニル殺しのシグルズとの戦い

(ノルナゲストの話)
『ノルナゲストの話』のみに見えるエピソード。
300年を生きたというノルナゲストがオーラヴ王(オーラヴ・トリュグヴァッソン)に語った過去語りのひとつ。
ギューキ王のもとに身を寄せたファーヴニル殺しのシグルズシグルズ・ファーヴニスバニ(FGOのシグルド)が、輪のシグルズシグルズ・フリングの配下としてギューキ王軍に挑戦した「ガンダールヴの息子達」とスタルカズとの戦争に参加する、という内容。

(ブラーヴェリルの戦いなどが、特定の情報源を複数の作家が取材したものらしいのに対して)スタルカズがアーリ王ではなく、ブラーヴェリルの戦いでの総大将シグルズ・フリングの手勢であるかのように扱われている誤認識があることなどから、前述のブラーヴェリルの戦いのエピソードを元に独自にイメージを膨らませた、元ネタの無い独自創作の気配が濃いエピソードと言える。
(「シグルズ」と「ガンダールヴの息子達」の戦いは、より後の時代を舞台にした『ハールヴダン黒王のサガ』で鹿のシグルズシグルズ・ヒョルト*35と「ガンダールヴの息子達」の戦いとして見られる。『ノルナゲストの話』の著者が人名の一致から混同した可能性もあるかもしれない)

シグルズとの戦いで飛んできたスタルカズの歯を、ノルナゲストは記念に持ち帰ったという。
歯の重さは7オンス(約200g)。りんご1個分程度?

アーリ王の堕落と殺害

(ゲスタ・ダノールム、ユングリンガサガ)
ブラーヴェリルの戦いに勝利したフリング王は、デンマークの多くを盾乙女ヘイズ*36の統治地域として配分し、デンマークの一部スコーネ県だけを他から切り離しアーリ王の統治地域とした。
しかし、盾乙女ヘイズ女王の統治下のひとつジーランド県の男達は、女の下になるなど我慢ならぬとアーリに訴えた。
アーリはヘイズ女王を呼び出すと、戦いではなく脅しによってヘイズ女王の領地を奪い取った。
だがアーリ王は残虐行為に走り、あまりにも非道な王だったために、女王の支配をかつて拒んだ者たちは以前の自分達の望みを悔い改める羽目になった。

アーリの配下の十二人の将は、アーリ王の暴虐にうんざりして殺害計画を企てた。
十二人の将の中で名前が分かるのは、フレニ(Lennius)、アティル(Atylo)、ソット(Thoccus)、ヴィズネ(Withnus)である。
彼らは自分達の力と知恵ではアーリを倒せないと考え、スタルカズを説得して、風呂場を狙わせた。

スタルカズは入浴中のアーリのもとへ押し入ったが、王の眼光と目が合うと恐怖に震えて一歩も進めなくなった。*37
多くの勇士を打ち破ってきた戦士が、無防備な裸の男の視線に耐えられなかったのである。
アーリ王は自分の眼光の力をよく知っていたため、自ら顔を覆い隠し、スタルカズにもっと近寄って用件を伝えるようにと頼んだ。
スタルカズは剣を抜いて喉に突き刺し、報酬として120マルクの金貨を得た。

スタルカズは自分の行為をひどく恥じて後悔し、涙をこらえられなかった。
罪を償うためにと、自分を説得した十二の将のうち何人かを殺して回り、自らの殺人への復讐の真似事をした。

デンマークの王位はアーリの息子オムンド(Omundus)が継いだ。

『ユングリンガサガ』では、当時のスウェーデンの王老アウンアウン・ガムリはデンマークの王アーリに侵攻されて領地を失っていたが、アーリがスタルカズに殺された時に王へと復帰したと記される。
アウン老王はオーディンに息子を9人捧げることで寿命を100年以上伸ばしたが、最後の1人を捧げることは部下の反逆によって叶わなかった。

スタルカズの死

(ゲスタ・ダノールム)
スタルカズは年老いて疲れ果て、病や老いに殺されるより前に、誉れある生まれの者に殺されて死にたいと考えていた。
(戦士が病で死ぬことは、とても恥ずかしいことだと考えられていた)
アーリを殺した報酬の金を、自分の処刑人を買う代金に使うために首から下げ、
2本の剣を差し、2本の杖で力無く歩いていた。

それを見た庶民の1人が、老人に2本の剣は勿体ないから1本くれないかと嘲笑って頼んだ。
スタルカズは同意を期待させるように近づくと、引き抜いた剣で斬り捨てた。

これを見かけたのが、かつてスタルカズに主君アーリの殺害を依頼し、そして自らの行為を悔いたスタルカズに殺された十二の将の1人フレニの息子、ハゼル(Hatherus)であった。
ハゼルは犬で猟をしていたが猟を諦め、部下の2人に馬で突撃して老人を脅かすように指示した。
突撃して老人をかすめるようにすれ違おうとした2人だったが、スタルカズの2本の杖により2人とも命を落とした。
ハゼルはその光景に恐怖しながらも近づき、剣と馬車を交換しないかと尋ねた。
スタルカズは目がよく見えず、ハゼルのことが誰なのか分からなかった。
自分を侮辱した不埒な者が罰せられなかったことはない、と返答すると、怒りの大きさを伝えるために詩を歌った。

「帰らざる水が水路を流れるように、年が経つにつれ、人の命は流れていく。
老いは眼と脚を痛め付け、戦士の言葉と魂を奪い、緩慢に名声を穢し、名誉ある功績を消し去っていく。
(中略)
視力が弱くなり、声も胸も衰えてきた私は、年老いた年齢の力を痛感してきている。
今、この身体は身軽さを失い、弱った手足を杖で支えている。
目が見えない私は、2本の杖で足を導き、棒が示す短い道筋を辿り、目よりも棒の導きを信じている。
誰も私の頼みを引き受ける者などいないし、
老兵を楽にしてやるのに相応しい者もいない。
ただし、もしハゼルのやつがここにいて、傷付いた友を助けてくれるのなら別なのだが。
ハゼルは一度でも敬愛に値すると思った相手になら誰であろうと、
その者に対し、いつまでも熱心に接してくれる。
彼は自らの意志を貫き通し、
昔の絆が断ち切られることを恐れられる男だ。
戦の功績にも相応の報酬で報い、勇気を育ませることができる男だ。
(後略)」

ハゼルも詩で返答した。
「汝はどこから来たのか?
デンマークの中でも最も優れた吟遊詩人であろう汝は、どこへ行こうとしているのか?
汝の大いなる力の栄光は色褪せて失われ、
(中略)
今の貴殿には、剣を売り、
乗り心地の良い馬車を買うか、
元気な馬を買うか、
軽い馬車を買う方がよい。
足腰の弱った老人をを運ぶには、騎獣のほうが適している。
もし汝が役に立たない鋼を売らないのなら、汝の剣は奪われ、汝を殺すだろう」

スタルカズ
「哀れな者よ、汝の口は、
善良な者の耳に相応しくない無意味な言葉を撒き散らすだけだな。
なぜそのような贈り物を求めるのか。
私はこの足で歩き、剣を捨てて見知らぬ人の助けを買うようなことはしない。
(後略)」

口論詩ではスタルカズが一方的だったものの、相手の若者こそが探していたハゼルだったことを知ると態度は一転する。

「ハゼルよ、私は汝の父フレニを奪った。
私へ復讐してくれるよう頼む。
死にたがりの老いぼれを討ってくれ。
復讐の鋼で我が喉を狙うのだ。
私の魂は、臆病者の手で滅びることを拒み、高貴な殺し手に下されることを選ぶからだ。
公明正大に、人は定められた終末に先んじて選ぶことができる。
定めから逃れることはできなくとも、その前に終わらせることは叶うのだ。
新しい樹を育てなければならない。
古い樹は切り倒さなければならない。
彼(死?)は自然の奏でる調べであり、
滅びゆくものは滅ぼし、持ち堪えられないものは打ち砕く。
死は求められている時に、そして終末が愛されている時にもたらされるのが最良だ。
生は疲れるものだ。
年嵩に苦しむ惨めな人生を長引かせてはならない」

そう言って、スタルカズは金を渡した。
ハゼルはというと、父の仇討ちを果たすことよりも、金を望んでいたために頼みを引き受けた。
スタルカズは剣を渡し、その剣の下に首をあてがった。
「臆さずに斬れ。女々しく振るってはならない。
そして私を殺した時に、
もし死体が倒れきる前に頭と胴体の間へと飛び込むことができれば、お前は武器に対して耐える*38ことができるようになるだろう」
彼が言ったことが本当だったのか、それとも巨体で押し潰して道連れにするための嘘だったのかは分からない。
なぜなら、ハゼルは彼を信用できず、飛び込むことはなかったからだ。
切り落とされた首は大地に噛み付いたという。
まかり間違えば自分を押し潰していたであろう巨体だが、ハゼルは死体をそのままにはしておけず、Rølungと呼ばれる草原に埋めさせた。



【人物・性格】

老練・朴訥な武人。
だが、戦闘の中では徐々に獰猛な気性を明らかにする。

イメージカラー:煤汚れ
特技:アドリブ
好きなもの:誉れ、無骨、古風
嫌いなもの:軟派、軟弱、流行り物
天敵:ヴィーカル、トール
願い:贖罪の機会

【一人称】私【二人称】お前/貴様/貴殿/若造/(呼び捨て)【三人称】やつ/戦士/あれ/〇〇なる者/あの者/あの方

セリフ



【因縁キャラ】

(キャラ名)


【コメント】

やたらめったら散らばっているスタルカズ伝説を統合するのは、北欧神話ファンの1人としての夢のひとつでした。
機械翻訳と辞書の力を借りて、ここになんとかそれを形にすることができました。(誤訳、誤読はあるとは思います)

以下にこの場を借りて謝辞を

ロシア泥の人
北欧神話に突然出てきたキエフ・ロシアについて解説・見解をくださいました

サンウッド偽典戦争主催者
同主催者の年末合同セッション企画に協力する代わりに期限を伸ばしていただいていました

サンウッド偽典戦争参加者の方々
我慢強くお待ちいただいたおかげで書くことができました

ベイカーくんはもうちょっと待って

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