最終更新:ID:oO+DtntQnw 2022年01月17日(月) 00:06:47履歴
「弱者をいたぶり、強者は叩き潰し、血と肉に酔う。それがオレだ」
「悪魔造りの竜鱗手袋」glóf,(手袋) déofles cræftum(悪魔に造られた) ond dracan fellum(竜の皮膚で)
ここでいう悪魔/悪鬼はおそらくグレンデルの母だろう。
つまりおふくろの編んだ手袋……?
グレンデルの怪力に耐える手袋であり、宝具としてはグレンデルの武器にして防具。
近接戦闘力を向上させる。
詩中ではベオウルフが故郷へ戻りヒイェラークへ報告する際に、グレンデルとの戦いを回想して言及される。
それ以前のグレンデルとの戦いの該当箇所では言及されていなかった。
グレンデルは"片方の"手袋で15人の戦士を持ち帰ることができ、ベオウルフは"両手で"30人分の具足を持ち帰ることができた。
つまり、グレンデルとベオウルフは両者ともに30人分の力を持つ、拮抗した存在とされている。
ベオウルフに肩を裂かれたのは、人間相手の油断や、初めて自分と同等の存在に出会った驚きなどによる失態であり、膂力においてベオウルフに劣っているわけではなかった。
また、ベオウルフと組み合った時はこの手袋は腰に下げていた。
特殊な言及(ベオウルフを手袋へ押し込めようとした)から手袋はポーチ/袋とも意訳されるが、
この泥では相手を侮っていたために外していた、ベオウルフの怪力に抗うために手袋を付けようとした、程度に解釈させてもらう。
デネの王フロースガールの荘厳なる城館。
勇士達の酒宴の場となり、
グレンデルの惨劇の巣となり、
ベオウルフとグレンデルの決闘場となった。
本来はフロースガールの持ち物であったが、
惨劇以降グレンデルの庭となっていた。
そして詩中の770行目においては、組み打つグレンデルとベオウルフの2人を指して「館の主(守人)」と称された。
ベオウルフとグレンデルが30人力の剛力で暴れて崩壊しなかったバトルグラウンド。(ただし椅子や家財は壊滅したと記されている)
内部では拳闘の場としての概念法則が強まり、武器や魔術は鈍く、素手や肉体は強くなる。
この館は後年、フロースガールの婿養子に入るインゲルドの一族と旧来の家臣の不和により焼失する運命にあり、
火災やマップ兵器には比較的相性が悪く破壊される可能性がある。
だが、少しでも誇りのある戦士はこうした決闘の誘いを非常に断り辛く、受けて立たずにはいられないだろう。
この親子の正体は果たして何だったのか?
魔術世界においてもいくつかの研究レポートが存在するが、母については時計塔での見解は固まりつつある。
水底を本拠とし、傍らに剣を置く人外の女。
この母はまず間違いなく、人類に剣を授ける湖の乙女───その類型、もしくは祖型に該当する精霊が汚染されて悪性へと変じたものだ。
その変質の経緯・原因についてのレポートはまだ定説が定かではない。
太古の昔から剣の担い手を待ち続け、ついに来なかったまま腐り果てたのか?
あるいは、討伐対象が侵食能力(例えばタッシリ・ナジェールの壁画にあるような)を持っていたのか?
いくらでも考えられることだ。
ところで、最近時計塔の書庫から見つかったレポートにひとつの珍奇な仮説がある。
グレンデルの誕生と関連して推察されたものだ。
確証こそ取れないが、他よりも考察材料は多いとは言えるかもしれないと、一部では注目を集めている。
グレンデルはカインの末裔と称されるが、それは大地に染み付いたあらゆる存在の怨嗟と罪を象徴的に表現したものではないか?
聖書におけるカインの逸話では、次のようなくだりがある。
「お前が何をしたのか、土の中に染み付いたお前の弟の血の声が私に叫んでいる。お前は呪われ、この地を去らねばならない。この大地が口を開け、お前の手から弟の血を飲んだゆえに」
ベーオウルフの説話は本来は北欧大系に属するため、「カインの血族」という表現もそのままではなく、原義に戻って解釈するのが順当である。
つまり、「大地に染み付いた怨嗟と罪」こそがグレンデルの父ではないだろうか?
この星の上にて、あらゆる人類、神々は相争い、血を流し、呪詛を残した。
地中に堆積した呪詛溜まりは、時には噴火のように地表に漏れることもあったであろう。
───そして件の精霊は、その被害を食い止めるために自らの身体で呪詛を受け止めたのではないか?
星の呪詛を受け止め、孕んだことで変質し、呪詛をグレンデルとして出産した。
自らの妖精領域たる湖はその結果魔性へと変じ、大地の記憶にあるあらゆる怪物を産み出す魔の沼となった。
地上に残されたグレンデルの腕を母が回収したのは、その中身が沼地以外で弾けてしまわないため。
彼女はただ魔へと堕したのではなく、不完全ながらも使命を果たしたのではなかろうか。
このロマンある珍説が真実を言い当てていたかは検証しようもない。
されど、もし真実であったのなら。
通常のサーヴァントとしての現界なら問題はないはずだが、
魔の後押しによって一定以上に再現してしまった霊基の場合、その外殻の内側には非常に危険な呪詛があるはずだ。
活動によって激しく活性化した霊基が破壊された際、周囲にどのような被害が生じるか定かではない。
また、その性質も聖杯と非常に相性が悪い可能性がある。
大地に残された怨嗟の叫びは、呪いは、ある種の願望そのものにも近しい。
恩讐を遂げんとする、願望そのものの塊だ。
聖杯にとって、「願い」として入力される恐れがある。
人々の罪を贖わせんとする、殺意・害意の具現が受胎されるかもしれない。
つくづく、聖杯戦争とは魔術師にとって不安定極まりない儀式だ。
苦し紛れ、破れかぶれの博打なぞ、待つのは根源ではなく破滅のみだ。
君達も魔術師として、くれぐれも歩む道を間違えることのないように。
(時計塔の講義録より)
【元ネタ】古英詩『ベーオウルフ』
【CLASS】バーサーカー
【マスター】
【真名】グレンデル
【性別】可変
【身長・体重】可変
【外見・容姿】変幻自在の怪物/爪牙を備える異形の少女/長大な爪を携える巨躯の怪物
【地域】北欧・デンマーク
【年代】不明(登場人物の1人、ヒイェラーク王のフリジア遠征(デイフレヴンとの戦い)はトゥールのグレゴリウスによると520年代とされるらしい)
【属性】混沌・悪
【天地人属性】地(※変身対象に合わせて属性は変化する)
【その他属性】非人型・魔性(※変身対象に合わせて属性は変化する)
【ステータス】筋力:? 耐久:? 敏捷:? 魔力:? 幸運:? 宝具:A+
※ステータスは変身対象によって変化する
【CLASS】バーサーカー
【マスター】
【真名】グレンデル
【性別】可変
【身長・体重】可変
【外見・容姿】変幻自在の怪物/爪牙を備える異形の少女/長大な爪を携える巨躯の怪物
【地域】北欧・デンマーク
【年代】不明(登場人物の1人、ヒイェラーク王のフリジア遠征(デイフレヴンとの戦い)はトゥールのグレゴリウスによると520年代とされるらしい)
【属性】混沌・悪
【天地人属性】地(※変身対象に合わせて属性は変化する)
【その他属性】非人型・魔性(※変身対象に合わせて属性は変化する)
【ステータス】筋力:? 耐久:? 敏捷:? 魔力:? 幸運:? 宝具:A+
※ステータスは変身対象によって変化する
怪力、変化、変容、記憶読取、無力の殻などの複合スキル。
湖の乙女に類する精霊の反転存在たる母と、全ての魔性の父たるカインの血の混血により産み出された固有変異種。
人の弱さにつけ込むべく記憶を読み取り、(基督教の魔性の性質)
そこから見知った姿と能力を模す。(人の精神を映す湖面と、無形の神秘たる精霊の性質)
アサシンとして呼び出された時こそ真価を発揮するスキル。
バーサーカーでも使いこなせないわけではないが、
やや真っ向勝負を好む傾向があり、「もっとも殴りやすい形態をとる」ためのスキルと化している節がある。
湖の乙女に類する精霊の反転存在たる母と、全ての魔性の父たるカインの血の混血により産み出された固有変異種。
人の弱さにつけ込むべく記憶を読み取り、(基督教の魔性の性質)
そこから見知った姿と能力を模す。(人の精神を映す湖面と、無形の神秘たる精霊の性質)
アサシンとして呼び出された時こそ真価を発揮するスキル。
バーサーカーでも使いこなせないわけではないが、
やや真っ向勝負を好む傾向があり、「もっとも殴りやすい形態をとる」ためのスキルと化している節がある。
武器による攻撃に対する強靭性。
武器に対して相性じみた絶対性を発揮し、傷付けることは難しい。
傷付けられたとしても、その血は武器を侵し損傷させ、武器耐久や与ダメージを大幅に低下させる。
これを唯一寸断できた巨人造りの古剣は、洪水以前の時代から遺された万年級の神秘であった。
その剣であっても血には耐え切れず、2度の使用で完全に刃が溶け落ちた。
武器に対して相性じみた絶対性を発揮し、傷付けることは難しい。
傷付けられたとしても、その血は武器を侵し損傷させ、武器耐久や与ダメージを大幅に低下させる。
これを唯一寸断できた巨人造りの古剣は、洪水以前の時代から遺された万年級の神秘であった。
その剣であっても血には耐え切れず、2度の使用で完全に刃が溶け落ちた。
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:変身対象によって変化(近接) 最大捕捉:15×2 |
ここでいう悪魔/悪鬼はおそらくグレンデルの母だろう。
つまりおふくろの編んだ手袋……?
グレンデルの怪力に耐える手袋であり、宝具としてはグレンデルの武器にして防具。
近接戦闘力を向上させる。
詩中ではベオウルフが故郷へ戻りヒイェラークへ報告する際に、グレンデルとの戦いを回想して言及される。
それ以前のグレンデルとの戦いの該当箇所では言及されていなかった。
グレンデルは"片方の"手袋で15人の戦士を持ち帰ることができ、ベオウルフは"両手で"30人分の具足を持ち帰ることができた。
つまり、グレンデルとベオウルフは両者ともに30人分の力を持つ、拮抗した存在とされている。
ベオウルフに肩を裂かれたのは、人間相手の油断や、初めて自分と同等の存在に出会った驚きなどによる失態であり、膂力においてベオウルフに劣っているわけではなかった。
また、ベオウルフと組み合った時はこの手袋は腰に下げていた。
特殊な言及(ベオウルフを手袋へ押し込めようとした)から手袋はポーチ/袋とも意訳されるが、
この泥では相手を侮っていたために外していた、ベオウルフの怪力に抗うために手袋を付けようとした、程度に解釈させてもらう。
ランク:A+ 種別:城砦宝具(対陣宝具) レンジ:90 最大捕捉:300 |
- 広間の出来事 荒々しき宴となった
この二人 激突する 館の守人猛りたつ
館に轟音とどろき渡る
酒宴の広間 美麗なる館
荒武者たちの業に耐え
大地に崩れ落ちぬのは 大いなる不思議
(『ベーオウルフ韻文訳』枡矢好弘訳より引用)
デネの王フロースガールの荘厳なる城館。
勇士達の酒宴の場となり、
グレンデルの惨劇の巣となり、
ベオウルフとグレンデルの決闘場となった。
本来はフロースガールの持ち物であったが、
惨劇以降グレンデルの庭となっていた。
そして詩中の770行目においては、組み打つグレンデルとベオウルフの2人を指して「館の主(守人)」と称された。
ベオウルフとグレンデルが30人力の剛力で暴れて崩壊しなかったバトルグラウンド。(ただし椅子や家財は壊滅したと記されている)
内部では拳闘の場としての概念法則が強まり、武器や魔術は鈍く、素手や肉体は強くなる。
この館は後年、フロースガールの婿養子に入るインゲルドの一族と旧来の家臣の不和により焼失する運命にあり、
火災やマップ兵器には比較的相性が悪く破壊される可能性がある。
だが、少しでも誇りのある戦士はこうした決闘の誘いを非常に断り辛く、受けて立たずにはいられないだろう。
グレンデルの肉体の中でも最も常用される武器。
ベオウルフが肩から引き裂き、ヘオロットに飾ったグレンデルの腕については以下のように記されている。
ベオウルフが肩から引き裂き、ヘオロットに飾ったグレンデルの腕については以下のように記されている。
- 奇怪な腕から伸びる指の一本ずつに生えた爪は鋼の大釘を思わせて、実に恐ろしく、見る者の胸におぞましさを呼び起こさずにはいなかった。
吊されたグレンデルの腕を目にした人々は皆一様に、古今のいかなる名剣とてこの腕に傷一つ付けられまいと語り合った。*1
古英詩『ベーオウルフ』に現れる「アーグレーカ(凄まじき者)」の1人。
*2
作中にて「アーグレーカ」と呼ばれるのはベオウルフ、竜殺しのシイェムンド、グレンデル、グレンデルの母、火竜といった超常的強者たちである。
グレンデルは牡鹿館の戦士達を12年間毎晩血祭りにあげるが、ベオウルフによって腕を千切られ遁走。
最期は住処にて回復しきらず臥しているところを巨人造りの古剣で首を断たれる。
詩中においてその姿の形容は一定せず、巨人、怪物、悪霊、鬼など様々に称される。
ベオウルフにとっては自身と同列のものと見なせたらしく、グレンデルについて「武器を好まぬと聞き及ぶ」ことを理由に「それがし素手で仇と争い」たいとフロースガールに希望していた。*3
*2
作中にて「アーグレーカ」と呼ばれるのはベオウルフ、竜殺しのシイェムンド、グレンデル、グレンデルの母、火竜といった超常的強者たちである。
グレンデルは牡鹿館の戦士達を12年間毎晩血祭りにあげるが、ベオウルフによって腕を千切られ遁走。
最期は住処にて回復しきらず臥しているところを巨人造りの古剣で首を断たれる。
詩中においてその姿の形容は一定せず、巨人、怪物、悪霊、鬼など様々に称される。
ベオウルフにとっては自身と同列のものと見なせたらしく、グレンデルについて「武器を好まぬと聞き及ぶ」ことを理由に「それがし素手で仇と争い」たいとフロースガールに希望していた。*3
獰猛、残忍、傲岸不遜。負けず嫌い。
人類とは異なる魔の流儀に準じようとする魔種。
……特異点におけるベオウルフとの戦いの記憶を引きずっており、
化かすより力で叩きのめすのを好む傾向に寄っている。
特技:丸呑み、模倣、乱闘
好きなもの:暴力、嗜虐、血肉、悲鳴
嫌いなもの:服従、平穏、喧騒
天敵:ベオウルフ
願い:自分らしく暴れ貪る/ベオウルフとの再戦
【一人称】オレ【二人称】おまえ/てめぇ【三人称】人間/あいつ
人類とは異なる魔の流儀に準じようとする魔種。
……特異点におけるベオウルフとの戦いの記憶を引きずっており、
化かすより力で叩きのめすのを好む傾向に寄っている。
特技:丸呑み、模倣、乱闘
好きなもの:暴力、嗜虐、血肉、悲鳴
嫌いなもの:服従、平穏、喧騒
天敵:ベオウルフ
願い:自分らしく暴れ貪る/ベオウルフとの再戦
【一人称】オレ【二人称】おまえ/てめぇ【三人称】人間/あいつ
宝具ロール(合同キャンペーン第三回螺旋堕天奈落参加時
- ベオウルフ(原作)
- 「今度こそは喰ってやるぞ! 勘違いするな、てめぇの誘いに乗ったんじゃあない」
- ベオウルフ【老】
- 「ははは! 似合わねえ!」
- イデス・アーグレークウィフ
- グレンデルの母にして師にして、守護精霊。
- フロースガール
- グレンデルの被害に12年間悩まされたデネの王。
詩中ではやがて未来で甥のフローズルフ(フロールヴ・クラキ)に裏切られて無残に死ぬことが示唆されている。
- フロールヴ・クラキ
- フロースガールの甥フローズルフと同一人物とされる。グレンデル逃亡後のフロースガールの酒宴に参加していた。
グレンデルと直接面識があったかは定かでない。
- ホンドシオーホ
- ベオウルフの連れた14人の部下*4の1人。
ベオウルフらとともに寝所で寝たふりをして待ち構えていたが、グレンデルになすすべもなく喰われた。
天魔聖杯戦争においてサーヴァントとして召喚される。
親和性の高い聖杯の魔からの影響を強く受けたためか、バーサーカーとして召喚された直後にアヴェンジャーの特質も追加されている。
通常の召喚よりも、基底下の本質に近づいている気配、さらなる凶悪性の萌芽が見受けられる。
親和性の高い聖杯の魔からの影響を強く受けたためか、バーサーカーとして召喚された直後にアヴェンジャーの特質も追加されている。
通常の召喚よりも、基底下の本質に近づいている気配、さらなる凶悪性の萌芽が見受けられる。
怪物として暴れ回ろうとする乱暴な側面と、人に化けて精神を読み取り付け入ろうとする狡猾な一面がある。
両立しているというよりは、気まぐれに選択される。
ある意味では双方とも本質は同じとも言える。
前者では自らが暴れ回り、後者では人を暴れ回らせようと煽り立てるのである。
なので、その非戦闘能力の数々は巧妙に騙すというよりは相手の欲望を暴き出すことへと費やされる。
暴虐と我欲を至上とし、それを理解できない者へは共感を求め煽り、理解する者へは自分の方が上だと知らしめようとする。
両立しているというよりは、気まぐれに選択される。
ある意味では双方とも本質は同じとも言える。
前者では自らが暴れ回り、後者では人を暴れ回らせようと煽り立てるのである。
なので、その非戦闘能力の数々は巧妙に騙すというよりは相手の欲望を暴き出すことへと費やされる。
暴虐と我欲を至上とし、それを理解できない者へは共感を求め煽り、理解する者へは自分の方が上だと知らしめようとする。
カインの末裔という肩書きが象徴しているように、大地に染み付いた呪詛・怨嗟の吹き溜まりが精霊の中で受肉したものであり、
本人の思想・生涯とは別に、生まれつき肉体に復讐の念が刻まれている。
本人が強く想起しなくても、無意識に怨みの攻撃ボーナスが肉体攻撃へ乗る。
また、周囲から敵意を向けられやすく、その敵意も怨みの力へと変換される。
本人の思想・生涯とは別に、生まれつき肉体に復讐の念が刻まれている。
本人が強く想起しなくても、無意識に怨みの攻撃ボーナスが肉体攻撃へ乗る。
また、周囲から敵意を向けられやすく、その敵意も怨みの力へと変換される。
ランク:EX 種別:対人 レンジ:_ 最大捕捉:_ |
残虐を働くは、地獄の魔物 *5。
その恐ろしき悪霊 *6、グレンデルと名付けられている。
悪名高く辺境を彷徨う者であり、沼地を支配せり。怪異の血族 *7の住まう湿地を砦とする、不運を齎す*8者。
それは彼がカインの血族 である故に、創造主から放逐されているからだった。
アベルを殺害した罪のために、永遠の主は彼を人界から追放なされた。
そこから、あらゆる全ての筆舌に尽くし難い子孫達の系譜は発したのだ。巨鬼 *9と魔性 *10、加えて怪物 *11達、そして巨人 *12達もそうであった。
彼らは長き時を神と戦い、神より報いを受けたのだ。
───『ベーオウルフ』101〜114行から訳出
この親子の正体は果たして何だったのか?
魔術世界においてもいくつかの研究レポートが存在するが、母については時計塔での見解は固まりつつある。
水底を本拠とし、傍らに剣を置く人外の女。
この母はまず間違いなく、人類に剣を授ける湖の乙女───その類型、もしくは祖型に該当する精霊が汚染されて悪性へと変じたものだ。
その変質の経緯・原因についてのレポートはまだ定説が定かではない。
太古の昔から剣の担い手を待ち続け、ついに来なかったまま腐り果てたのか?
あるいは、討伐対象が侵食能力(例えばタッシリ・ナジェールの壁画にあるような)を持っていたのか?
いくらでも考えられることだ。
ところで、最近時計塔の書庫から見つかったレポートにひとつの珍奇な仮説がある。
グレンデルの誕生と関連して推察されたものだ。
確証こそ取れないが、他よりも考察材料は多いとは言えるかもしれないと、一部では注目を集めている。
グレンデルはカインの末裔と称されるが、それは大地に染み付いたあらゆる存在の怨嗟と罪を象徴的に表現したものではないか?
聖書におけるカインの逸話では、次のようなくだりがある。
「お前が何をしたのか、土の中に染み付いたお前の弟の血の声が私に叫んでいる。お前は呪われ、この地を去らねばならない。この大地が口を開け、お前の手から弟の血を飲んだゆえに」
ベーオウルフの説話は本来は北欧大系に属するため、「カインの血族」という表現もそのままではなく、原義に戻って解釈するのが順当である。
つまり、「大地に染み付いた怨嗟と罪」こそがグレンデルの父ではないだろうか?
この星の上にて、あらゆる人類、神々は相争い、血を流し、呪詛を残した。
地中に堆積した呪詛溜まりは、時には噴火のように地表に漏れることもあったであろう。
───そして件の精霊は、その被害を食い止めるために自らの身体で呪詛を受け止めたのではないか?
星の呪詛を受け止め、孕んだことで変質し、呪詛をグレンデルとして出産した。
自らの妖精領域たる湖はその結果魔性へと変じ、大地の記憶にあるあらゆる怪物を産み出す魔の沼となった。
地上に残されたグレンデルの腕を母が回収したのは、その中身が沼地以外で弾けてしまわないため。
彼女はただ魔へと堕したのではなく、不完全ながらも使命を果たしたのではなかろうか。
このロマンある珍説が真実を言い当てていたかは検証しようもない。
されど、もし真実であったのなら。
通常のサーヴァントとしての現界なら問題はないはずだが、
魔の後押しによって一定以上に再現してしまった霊基の場合、その外殻の内側には非常に危険な呪詛があるはずだ。
活動によって激しく活性化した霊基が破壊された際、周囲にどのような被害が生じるか定かではない。
また、その性質も聖杯と非常に相性が悪い可能性がある。
大地に残された怨嗟の叫びは、呪いは、ある種の願望そのものにも近しい。
恩讐を遂げんとする、願望そのものの塊だ。
聖杯にとって、「願い」として入力される恐れがある。
人々の罪を贖わせんとする、殺意・害意の具現が受胎されるかもしれない。
つくづく、聖杯戦争とは魔術師にとって不安定極まりない儀式だ。
苦し紛れ、破れかぶれの博打なぞ、待つのは根源ではなく破滅のみだ。
君達も魔術師として、くれぐれも歩む道を間違えることのないように。
(時計塔の講義録より)
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