Apocryphaっぽい聖杯戦争・外伝

Prologue

　「困ったことになったな。ロード・エルメロイ」
　「Ⅱ世だ。以前も申し上げたがⅡ世をつけていただきたい」
　「そうだった。エルメロイⅡ世よ」
　冷たく空気の凝った、まるで化石のような部屋だった。
　部屋の壁に並べられた陳列棚には神秘に携わる者でなければ、いやそのような奇跡に触れる者であっても瞠目するような物品が数多く並べられている。
　およそ地上の生物とは思えない造形の生物が入ったホルマリン漬けだの。
　綴られてから千年は経過していそうな貴重な巻物スクロールだの。
　美しい宝石と呼ぶには禍々しい光を放つ鉱石だの。
　そういった魔術的には貴重な物品が無造作に転がされているのがこの部屋の異様だった。
　部屋の主、召喚科学部長ロッコ・ベルフェバンは部屋の中央の応接用ソファーに腰掛け、微かに唸りながら腕組みをしている。
　痩身の老人でありながらこうして腰掛けて話している際も背筋は真っすぐ伸び、老いた樹木のような存在感を放っていた。
　「こちらで選定した外部の魔術師プロが襲撃されたとなれば、この度行われる聖杯大戦に関係があると見ていいでしょうな。
　　ストゥーラのアーキペラゴの手による犯行かどうかまでは現在調査中ですが………」
　対面する席に座っているのは長身長髪の男だった。
　眉間に皺を寄せ、気難しい渋面でティーカップの中で揺れる琥珀色を啜っている。
　茶というよりはほとんど薬湯のような味わいだったが、慣れた様子で口に含んだそれを嚥下していった。
　現代魔術科学部長こと、ロード・エルメロイⅡ世とはこの男のことである。
　此度の聖杯大戦において時計塔の対策チームの重要ポストを占めるこのふたりが揃って渋い顔をしているのは、とどのつまりこうした経緯だった。
　「容態はどうかね」
　「辛うじて命はとりとめたようですが当分は再起不能だそうです。聖杯大戦には間に合いそうもありません」
　「そうか。代わりを用意せねばならんが、この事態が続くようだといつまでも代わりを見繕うわけにもいかんな」
　「ええ。早急に事態を調査し対策を立てるなり、犯人を捕縛する必要がありますが………」
　そこでエルメロイⅡ世は一旦口を閉ざした。ロッコも察したように押し黙り、色付き眼鏡の弦に指で触れる。
　「『竜血の秘薬くすり』の対処に忙しいこの時期にか」
　「『竜血の秘薬』の対処に忙しいこの時期にです」
　ややあってふたりの魔術師は示し合わせたかのようにそう言い合って、またすぐさま黙り込んだ。
　聖杯大戦も時計塔にとっての一大事であったが、その聖杯大戦の開催を発布した魔術師たちから流れてきたと思しき劇薬への対応もまた難題となっていた。
　エルメロイⅡ世としても、ロッコとしても、そのために最近は忙殺されている身である。
　同じ理由で法政科もさほど頼れないとなれば、候補者潰しの犯人探しに割いている時間は殆ど無いというのが実情だった。
　「思惑通りに時計塔が引っ掻き回されているとなれば、まったく面白くないわい。
　　かといってあまり手を拱いているとワシらの責任問題にもなりかねん。窮地にこそ凶事は狙いすましてやってくるものだ」
　「賛同しますが問題点ばかり並べても建設的とは言えますまい。どうにか帳尻をつけなければ………」
　思案と苦悶に満ちるロッコ・ベルフェバンの私室。
　その部屋と廊下を結ぶ飴色をした重厚な扉の前から、何者かが静かに立ち去っていくのにエルメロイⅡ世もロッコも気づかなかったのだった。

概要

Fate/Apocryphaっぽい企画の外伝です。
聖杯大戦前夜。時計塔が選定した聖杯大戦に派遣する候補者が潰されるという事件とそれへ（勝手に）立ち向かうエルメロイ教室の物語です。
先生のピンチだからね。仕方ないよね。

Q＆A

登場人物

参加方法

特に縛りはありません。エルメロイ教室所属の魔術師たちを中心に時計塔にまつわる人物を追記していってください。
シナリオに関わるかどうか分からないけれどとりあえずリストに載せておく、なんてのもOKです。
（全員が活躍できるほど長いお話にはならないだろうしね）
襲撃者サイドに加わりたい！というのはプロットとの兼ね合いもあるので要相談になります。スレなどでこちらに声をかけてください。

エルメロイ教室

名前	得意分野やエルメロイ教室における立場など
サムナ・アトキンソン	獣性魔術。比較的良心枠で有事においては機動力担当
テア・フォン・シュターネンスタウヴ	魔術礼装のスペシャリスト。生活能力皆無のマイペース天才少女。お世話係が求められている。こと魔術礼装に関しては本当になんでもござれ。
テレオ・グリールス	ふわふわしたお姉さん。仲裁役。ヒーラー。
ヒューゴ・カルリトス・フランソイル	仲間思いの占い師。元危険人物。平時は振り回され、有事は振り回し。
ショコラトル・アイシィ・ストレームベリ	氷属性の元気っ子。時計塔の配達員。アメリカ出身。
リア・S・アルグレオン	剣術アホの子。生真面目リアクション大きいツッコミ枠。有事においては白兵戦を担当、強い。
黒野逸花	所謂ギャル。有事には斥候役や中距離からの援護を担う
トーカ=ガブリエラ･アンジェリーク･ラ=ルノアール	天才ケンカ番長のバッドガール。過去に事件を起こすこと多数。実は女の子が好きで、惚れっぽい性格。白兵戦が得意。
ディオナ・イレクト	トラブルメーカーな不幸少女。周囲を巻き込んだ騒動をよく起こすが本人はそれでも幸せだと思っている。
ニーア・オヴェリオ	エルメロイ教室の問題児のひとり。愉しい事トラブルを愛する情報通。
堂島淳	エルメロイ教室の胃痛枠。別名「Ⅱ世の秘書」。
クィンテッサ・クォリーフィード＆クェイド・クォリーフィード	姉：強者弟：弱者
ディートリーム・ライゼンシュタイン	夢を媒介とする精神干渉を行える後衛支援型魔術師。４重人格という特異体質ながらも楽しく毎日を過ごしている。
ロザニア・トゥインクルレイル／リリニア・トゥインクルレイル	鎖使いのすっとんきょう双子。元貴族でどちらもプライドが高い。
マギ	賢者の名を持つがその実態は脳筋メイド型◾◾◾◾。炭素ナイフと強化魔術による白兵戦、巨大炭素化合物の投擲による対軍攻撃。 "検索"能力の応用による索敵まで行える。平時はポンコツ有事だけ有能。
神楽坂刹那	エルメロイ教室の上級生枠。引率役だったりブレーキだったり火に油を注いだり。変人に見えてたまに常識的。コアな知識をひけらかす枠。
トゥモーイ・ディットィエルト	ヘルメットを常に被った、詠唱が異様に速いお調子者の男子生徒。しかし仮面の下は……
アズサ・ヴァッキアーレ	敵か味方か系和装の褐色男子。自称「二世のお目付け役」。法制科その他諸々とエルメロイ教室をコネクトする外交官役でもある。

その他の時計塔関係者

名前	所属や時計塔における立場など
ポーラ・ミデッサ・トリツェロニア	現代魔術科所属、『祭位フェス』。『風船爆弾ケサランパサラン』の異名を持つふわふわおばさん。
カトル・ラーズ・ガンバーランド	法政科所属の巻き込まれ気質。頻繁に問題児達に巻き込まれては愛車が爆発炎上する『問題児係プロブレム・シッター』
タイラー・エバンズ	創造科所属の非常勤講師。悩める学生たちを導き、そしてはちきれんばかりの筋肉を輝かせる『筋肉先生』
此ノ森三善	現代魔術科一般学生。エルメロイ教室所属ではないが講義を聴講することもある。

犯人

名前	動機
レーネ・ルーカス＆ローネ・ルーカス	聖杯大戦が開かれると聞き参加者として立候補をするも、時計塔側の事情から断られる。その結果暴走をしてエルメロイ教室の面々と対峙することとなるが…………

SS

簡易シナリオプロット

（生徒が一定数集まるまで保留）

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