Fate/Empty Heart設定資料集
最終更新：ID:lKWRS9Igfg 2023年07月11日(火) 01:00:31履歴
解説 
もくじ
表向きの情報
『影宮聖杯戦争』
影宮市にて繰り返されてきた魔術儀式。此処で言う聖杯とは、ケルトにおける大神ダグザの釜に代表されるような「願いを叶える奇跡」であり、聖杯戦争とはそれを奪い合う闘争を指す。
ただし、相争うのは人ではなく、ある種の召喚術によって呼び出された霊体。しかもそれは単なる死霊などではなく、神話や伝説、あるいは歴史に名を残す英雄達の霊魂―――英霊である。
時計塔の魔術論では境界記録帯 と称される、“兵器化された人類史”、英霊を使い魔 として使役する。影宮聖杯戦争とは、即ち名だたる英霊による代理戦争だと言える。
ただし、相争うのは人ではなく、ある種の召喚術によって呼び出された霊体。しかもそれは単なる死霊などではなく、神話や伝説、あるいは歴史に名を残す英雄達の霊魂―――英霊である。
時計塔の魔術論では
基本的な情報
近代に入って日本が開国するまで、聖杯戦争に関する情報は西洋にはほぼ伝わっておらず、東洋における大規模魔術組織である螺旋館が幾つかの断片的な記録を残すのみである。
そこからわかることとしては、そもそもこの儀式の起源は約千年前、即ち平安期にまで遡るとされ、現代と同様「願いを叶える奇跡」を求めるためのものとして構築されたと考えられる。
当時の日本という島国は、他の地域と比較してより色濃い神秘を残していたと考えられ、それによってこうした大規模な術式の構築が可能になったと思われる。
ただし、その上でも術式自体に何か不備があったものか、最短で数十年、最長で百年以上というランダムな間隔で不定期に開催され続けてきた。
なお、当然ながら、儀式開始当時に聖杯の概念が日本に伝来していたかというと怪しく、「聖杯戦争」というのは、近代に入って来日した魔術協会や聖堂教会による別称というべきものである。
元は単に「儀式」などとして対外的には認知されており、時代を問わず神秘を知る者の間で争いが続けられてきた模様である。
また、こうした願望器の探究は歴史的に多く試みられてきたが、それが実現可能なものであったことが稀であるのは言うに及ばない。
が、この影宮聖杯戦争について言えば、複数回に渡って参加者が願いを叶えることができたと明示的に記録に残っており、その点でも極めて貴重な儀式であると言える。
一方で、戦争の勝者が願いを叶えられないまま儀式が終わったという記録もあり、願望器は本物ではあれ、万能とはいえないのではないか、とも考えられている。
加えて、英霊とは本来人間が召喚して使役できるような存在ではなく、精霊に霊的位階が近い高次霊体であるから、それを使い魔として使役可能な存在に落とし込む必要がある。
霊的な下方遷移 によって零落し、力を制限された使い魔としての英霊について、時計塔などでは、これをサーヴァントと呼称する。
こちらについては式神などと元々呼ばれていたようだが、厳密には陰陽道などにおける式神とは違った存在であるため、現代ではサーヴァントでほぼ呼称は統一されている。
そこからわかることとしては、そもそもこの儀式の起源は約千年前、即ち平安期にまで遡るとされ、現代と同様「願いを叶える奇跡」を求めるためのものとして構築されたと考えられる。
当時の日本という島国は、他の地域と比較してより色濃い神秘を残していたと考えられ、それによってこうした大規模な術式の構築が可能になったと思われる。
ただし、その上でも術式自体に何か不備があったものか、最短で数十年、最長で百年以上というランダムな間隔で不定期に開催され続けてきた。
なお、当然ながら、儀式開始当時に聖杯の概念が日本に伝来していたかというと怪しく、「聖杯戦争」というのは、近代に入って来日した魔術協会や聖堂教会による別称というべきものである。
元は単に「儀式」などとして対外的には認知されており、時代を問わず神秘を知る者の間で争いが続けられてきた模様である。
また、こうした願望器の探究は歴史的に多く試みられてきたが、それが実現可能なものであったことが稀であるのは言うに及ばない。
が、この影宮聖杯戦争について言えば、複数回に渡って参加者が願いを叶えることができたと明示的に記録に残っており、その点でも極めて貴重な儀式であると言える。
一方で、戦争の勝者が願いを叶えられないまま儀式が終わったという記録もあり、願望器は本物ではあれ、万能とはいえないのではないか、とも考えられている。
加えて、英霊とは本来人間が召喚して使役できるような存在ではなく、精霊に霊的位階が近い高次霊体であるから、それを使い魔として使役可能な存在に落とし込む必要がある。
霊的な
こちらについては式神などと元々呼ばれていたようだが、厳密には陰陽道などにおける式神とは違った存在であるため、現代ではサーヴァントでほぼ呼称は統一されている。
運営
この儀式の運営については、現地に在する古い魔道の家系二つがその実際的運営を取り仕切り、それを協会と教会が外部機関として補佐する形式を取る。
主催者は公輪家。影宮市という都市が農村であった平安期から続く家系であり、聖杯戦争を取り仕切ってきた土着の術者としての顔と、西洋式の根源を追う魔術師としての顔を併せ持つ血族。
補佐役は酒香堂家。公輪家の盟友として、それこそ千年あまり共に影宮の発展と儀式の保全に努めてきた、市内第二の古豪にして、対外的な交渉役。
公輪家は術式の具体的な制御を司り、酒香堂家は儀式を円滑に動かすための関係機関に対する働きかけ、根回しなどを担当。特に酒香堂家は、聖杯戦争の実際的運用をも担当する。
両者が影宮市内における戦闘行動の隠蔽などに力を発揮し、また戦争全体の進行に関わる通達などを関係機関に行う一方で、外部からの情報統制については、魔術協会と聖堂教会がこれに助力。
特に聖堂教会については、魔術儀式そのものへの関心の薄さと、“聖杯”という概念に関わる事項への忌避感から、中立的立場でこれを外部から監視する役割を担っている。
戦争が開始されると、教会からは「監督役」と呼ばれる要員が派遣され、敗退した者の保護や全体に共通する事項の伝達を行うことになる。
主催者は公輪家。影宮市という都市が農村であった平安期から続く家系であり、聖杯戦争を取り仕切ってきた土着の術者としての顔と、西洋式の根源を追う魔術師としての顔を併せ持つ血族。
補佐役は酒香堂家。公輪家の盟友として、それこそ千年あまり共に影宮の発展と儀式の保全に努めてきた、市内第二の古豪にして、対外的な交渉役。
公輪家は術式の具体的な制御を司り、酒香堂家は儀式を円滑に動かすための関係機関に対する働きかけ、根回しなどを担当。特に酒香堂家は、聖杯戦争の実際的運用をも担当する。
両者が影宮市内における戦闘行動の隠蔽などに力を発揮し、また戦争全体の進行に関わる通達などを関係機関に行う一方で、外部からの情報統制については、魔術協会と聖堂教会がこれに助力。
特に聖堂教会については、魔術儀式そのものへの関心の薄さと、“聖杯”という概念に関わる事項への忌避感から、中立的立場でこれを外部から監視する役割を担っている。
戦争が開始されると、教会からは「監督役」と呼ばれる要員が派遣され、敗退した者の保護や全体に共通する事項の伝達を行うことになる。
進行
英霊、即ち境界記録帯は高次霊体であり、それを召喚するには莫大な魔力を消費する。また、儀式自体も極めて大規模であり、万全の運営を期して、聖杯戦争は幾つかの段階を踏んで進行する。
第一に、魔力蓄積期。霊脈などを介して魔力を蓄積し、それによって儀式の運行に必要なリソースを確保する。この期間の長さに因って、儀式の規模が変化することになる。
具体的には、召喚されるサーヴァントの数＝それを使役する参加者の数が大きく変化し、短期間であれば数騎、百年近く蓄積されれば十騎以上が選ばれることとなる。
後者の場合ではバトルロイヤル形式にすると時間がかかりすぎるため、術式自体が参加者を二陣営に振り分けてのチーム戦を前哨戦に組み込んだことがあるという。
が、一応サーヴァントの数は七騎が標準であると定められており、実際に各儀式の記録から召喚数の平均を取るとその程度になる様子である。
第二に、英霊召喚期。儀式参加者の確定とサーヴァント召喚が実行される。基本的に、戦争への参加者は術式によってランダムに選ばれると考えられており、参加者には「令呪」と呼ばれる呪印が浮かび上がる。
これはサーヴァントとの契約の証でもあり、また高次霊体である英霊を使役するための抑止力として、三回まで絶対の命令を下すことができる特級の魔術刻印である。
この令呪の獲得を以て参加者が確定し、彼らは各々にサーヴァントを召喚。契約を結ぶことで参戦の意志表明となり、以後は戦争の開始まで備えることになる。
更に、公輪家または酒香堂家によって最初の令呪の発現が確認された時点で、運営側が一斉に隠蔽工作などの下準備に動き出し、戦争勃発後の神秘暴露を予防する措置を講じていく。
第三に、聖杯戦争期。召喚されたサーヴァントと参加者が戦いに身を投じ、願いのために戦う段階。こと此処に至り、漸く参加者同士、サーヴァント同士の正面衝突が解禁される。
開戦は監督役によって宣言され、これを以て影宮市は戦場と化し、人智を超えたサーヴァントの対決によって儀式は進行していく。
最終的には、参加者が最後の一組になった時点で、外部組織が聖杯と呼ぶ願望器が姿を現し、勝者が願望を告げることでこれを実現。儀式は終了し、サーヴァントも術式によって退去する、という流れになる。
第一に、魔力蓄積期。霊脈などを介して魔力を蓄積し、それによって儀式の運行に必要なリソースを確保する。この期間の長さに因って、儀式の規模が変化することになる。
具体的には、召喚されるサーヴァントの数＝それを使役する参加者の数が大きく変化し、短期間であれば数騎、百年近く蓄積されれば十騎以上が選ばれることとなる。
後者の場合ではバトルロイヤル形式にすると時間がかかりすぎるため、術式自体が参加者を二陣営に振り分けてのチーム戦を前哨戦に組み込んだことがあるという。
が、一応サーヴァントの数は七騎が標準であると定められており、実際に各儀式の記録から召喚数の平均を取るとその程度になる様子である。
第二に、英霊召喚期。儀式参加者の確定とサーヴァント召喚が実行される。基本的に、戦争への参加者は術式によってランダムに選ばれると考えられており、参加者には「令呪」と呼ばれる呪印が浮かび上がる。
これはサーヴァントとの契約の証でもあり、また高次霊体である英霊を使役するための抑止力として、三回まで絶対の命令を下すことができる特級の魔術刻印である。
この令呪の獲得を以て参加者が確定し、彼らは各々にサーヴァントを召喚。契約を結ぶことで参戦の意志表明となり、以後は戦争の開始まで備えることになる。
更に、公輪家または酒香堂家によって最初の令呪の発現が確認された時点で、運営側が一斉に隠蔽工作などの下準備に動き出し、戦争勃発後の神秘暴露を予防する措置を講じていく。
第三に、聖杯戦争期。召喚されたサーヴァントと参加者が戦いに身を投じ、願いのために戦う段階。こと此処に至り、漸く参加者同士、サーヴァント同士の正面衝突が解禁される。
開戦は監督役によって宣言され、これを以て影宮市は戦場と化し、人智を超えたサーヴァントの対決によって儀式は進行していく。
最終的には、参加者が最後の一組になった時点で、外部組織が聖杯と呼ぶ願望器が姿を現し、勝者が願望を告げることでこれを実現。儀式は終了し、サーヴァントも術式によって退去する、という流れになる。
『影宮聖杯戦争/裏』
「聖杯」の概念の発祥、それ自体は古い。聖餐に用いる杯という意味では福音書にその原典が既に存在し、また聖遺物としてのそれは、少なくとも7世紀には関連する記述が見られる。
翻って、そこから派生したのであろう、漁夫王の物語に端を発する奇跡を起こすモノとしての「聖杯/Holy Grail」の登場については、11〜12世紀を待つ必要がある。
だからこそ、この「儀式」に聖杯の名が付くことは有り得ない。西洋からの本格的な文化流入を受けた近代以降に生じた名前に過ぎないと、誰もが思っていた。
しかし。実際のところ、この秘儀は最初から「聖杯戦争」だったのだ。『影宮聖杯戦争』。少なくとも、公輪家も酒香堂家も、古くからそう伝えられてきたことは、事実である。
そもそも、前述の通り、ダグザの大釜を所縁とする願望器の概念は、9世紀には既に在った。それに紐づいた伝承から言葉が引用されたのだとすれば、有り得ないことではない。
では、どこから？ その知識は果たして、どこから得られたものなのか？ 否、そもそも、こうした願望器の概念が、何故極東の地で再現されたのか？
公輪家からはその伝承は失われた。酒香堂家の祖は口を閉ざした。それでも、分かることはある。その記録、或いは記憶は、未だに現存しているのだ。
翻って、そこから派生したのであろう、漁夫王の物語に端を発する奇跡を起こすモノとしての「聖杯/Holy Grail」の登場については、11〜12世紀を待つ必要がある。
だからこそ、この「儀式」に聖杯の名が付くことは有り得ない。西洋からの本格的な文化流入を受けた近代以降に生じた名前に過ぎないと、誰もが思っていた。
しかし。実際のところ、この秘儀は最初から「聖杯戦争」だったのだ。『影宮聖杯戦争』。少なくとも、公輪家も酒香堂家も、古くからそう伝えられてきたことは、事実である。
そもそも、前述の通り、ダグザの大釜を所縁とする願望器の概念は、9世紀には既に在った。それに紐づいた伝承から言葉が引用されたのだとすれば、有り得ないことではない。
では、どこから？ その知識は果たして、どこから得られたものなのか？ 否、そもそも、こうした願望器の概念が、何故極東の地で再現されたのか？
公輪家からはその伝承は失われた。酒香堂家の祖は口を閉ざした。それでも、分かることはある。その記録、或いは記憶は、未だに現存しているのだ。
疑義/実相
魔術儀式・聖杯戦争。その手段として「英霊召喚」が用いられているのは、何故か。
時計塔の記録によれば、英霊とは本来世界の側に属する精霊に近しい存在である。それを型落ちしたとはいえ使役可能な形に落とし込んでやることが、何故英霊同士の戦いなのか。
そもそも、英霊を喚起できるのであれば、そのために使用する魔力は莫大である。直接それを使えば多くの神秘が行使可能であろうものを、何故、サーヴァントを呼び出すために？
更に。そうした霊体を物質的な憑代に降ろすならばともかく、サーヴァントの肉体はエーテルである。この第五架空要素は、当然、中身 に相応しい器として定義されるものだ。
だが、英霊はそもそも魂のみを本質とするものであって、そこに本来肉体は伴わない。であるにも関わらず、そこに器としてのエーテルを与えているのは、果たして「ナニモノ」か？
ホワイダニット。／魔術師はあらゆる手段によって目的を実現可能であるが故に、「わざわざある手段を選んだ理由」については嘘がつけない。
まさに然り。英霊という高次霊体を召喚することで、初めてこの聖杯戦争という儀式、換言すれば願いを叶えるという行為は実現できるのである。
ハウダニット。／他方、そうした奇跡を実現するための具体的な手段には、実際には多くの制約が伴う。それは、時として十分な理由とも成りうるものであろう。
まさに然り。魂に相応しい器を形作る第三魔法の御業を、それを介さずして実現する手段が、確かに現代にも残っていたのである。
時計塔の記録によれば、英霊とは本来世界の側に属する精霊に近しい存在である。それを型落ちしたとはいえ使役可能な形に落とし込んでやることが、何故英霊同士の戦いなのか。
そもそも、英霊を喚起できるのであれば、そのために使用する魔力は莫大である。直接それを使えば多くの神秘が行使可能であろうものを、何故、サーヴァントを呼び出すために？
更に。そうした霊体を物質的な憑代に降ろすならばともかく、サーヴァントの肉体はエーテルである。この第五架空要素は、当然、
だが、英霊はそもそも魂のみを本質とするものであって、そこに本来肉体は伴わない。であるにも関わらず、そこに器としてのエーテルを与えているのは、果たして「ナニモノ」か？
ホワイダニット。／魔術師はあらゆる手段によって目的を実現可能であるが故に、「わざわざある手段を選んだ理由」については嘘がつけない。
まさに然り。英霊という高次霊体を召喚することで、初めてこの聖杯戦争という儀式、換言すれば願いを叶えるという行為は実現できるのである。
ハウダニット。／他方、そうした奇跡を実現するための具体的な手段には、実際には多くの制約が伴う。それは、時として十分な理由とも成りうるものであろう。
まさに然り。魂に相応しい器を形作る第三魔法の御業を、それを介さずして実現する手段が、確かに現代にも残っていたのである。
『疑似聖杯ヤオヨロズ』
影宮聖杯戦争がサーヴァントによる代理戦争の形を取るのは、サーヴァントの持つ高次霊体としての魂が、願望器の稼働に必要となるからである。
無論、物質界における魂の運用は、その前提となる魂の物質化＝第三魔法が魔術に零落していない以上、今を生きる生命体である人間には不可能である。であれば、誰がそれを求めるのか。
魂を消費することができるのは、同じ位相に存在するものだけ。つまり、人間の魂をサーヴァントが消費できるように、サーヴァントの魂を消費する、同じ位相にある何かがあるのだ。
それこそが、この聖杯戦争を成り立たせている仕組みの中枢。その銘 、称して曰く―――疑似聖杯ヤオヨロズ。
それは、「神」の依り憑く器。天と地の狭間に降る、星を模した奇跡。英霊の魂を「喰らう」、異様な容貌をした首。それが、この儀式における聖杯の形である。
聖杯戦争を運用する公輪、または酒香堂から「贄」が出される時、天から星が落ちてくる。概念的な天球に捕らえられたそれは、ごく自然な「流星」として空に消えつつ、大地にたどり着く。
これこそが疑似聖杯の本体であり、その見た目は先述の通り、単なる人間、あるいはそのようにあると規定された神仏とは大きく異なる様相を呈する、一つの首である。
首が象るのは、魔性としての鬼の如き角を有する無貌の怪異。その顔面にはただ虚ろだけがあり、何もかもを飲み込むような闇を湛えている。
その印象は、ある意味において正しい。事実、この聖杯は、喰らうのだ。
何を？
／魂を。敗北し、肉体を失ったサーヴァントの魂を、この聖杯は喰らう。そしてそれこそが、願望器の動力源になっているのである。
しつこいようだが、魂は人間にとっては資源に成りえない。存在する位相が違うが故に、魂のエネルギーを汲み出す力を人間は持たない。唯一の例外は、第三魔法の担い手のみである。
だからこそ、もし魂を消費することができるとすれば、それは同じ位相に存在するものだけ。逆説的に、サーヴァントと同様、この聖杯は高次霊体として在る何かだということになる。
そして、その具象として現世に有り得るものとは何か。人為によって喚起可能な存在では第三「魔法」を代替し得ない。かといって、精霊などの世界に属するものとしての性質が強いものでは、人の制御が及ばない。
ならば、その答えは、「神」しか有り得ない。嘗てこの世に存在し、人が曲りなりにも制御を可能とする上位存在であり、尚且つ魔法を代替しうるものは、それしか有り得ない。
即ち、疑似聖杯ヤオヨロズとは、神の首なのである。神が英霊を喰い、その力を得ることで、奇跡を引き起こす。それこそが、願望器の真相であった。
では、具体的にその神とは何か。これまで多くの願いを現に叶えてきた神の名は？
それは――――――黄幡神である。本当に？
無論、物質界における魂の運用は、その前提となる魂の物質化＝第三魔法が魔術に零落していない以上、今を生きる生命体である人間には不可能である。であれば、誰がそれを求めるのか。
魂を消費することができるのは、同じ位相に存在するものだけ。つまり、人間の魂をサーヴァントが消費できるように、サーヴァントの魂を消費する、同じ位相にある何かがあるのだ。
それこそが、この聖杯戦争を成り立たせている仕組みの中枢。その
それは、「神」の依り憑く器。天と地の狭間に降る、星を模した奇跡。英霊の魂を「喰らう」、異様な容貌をした首。それが、この儀式における聖杯の形である。
聖杯戦争を運用する公輪、または酒香堂から「贄」が出される時、天から星が落ちてくる。概念的な天球に捕らえられたそれは、ごく自然な「流星」として空に消えつつ、大地にたどり着く。
これこそが疑似聖杯の本体であり、その見た目は先述の通り、単なる人間、あるいはそのようにあると規定された神仏とは大きく異なる様相を呈する、一つの首である。
首が象るのは、魔性としての鬼の如き角を有する無貌の怪異。その顔面にはただ虚ろだけがあり、何もかもを飲み込むような闇を湛えている。
その印象は、ある意味において正しい。事実、この聖杯は、喰らうのだ。
何を？
／魂を。敗北し、肉体を失ったサーヴァントの魂を、この聖杯は喰らう。そしてそれこそが、願望器の動力源になっているのである。
しつこいようだが、魂は人間にとっては資源に成りえない。存在する位相が違うが故に、魂のエネルギーを汲み出す力を人間は持たない。唯一の例外は、第三魔法の担い手のみである。
だからこそ、もし魂を消費することができるとすれば、それは同じ位相に存在するものだけ。逆説的に、サーヴァントと同様、この聖杯は高次霊体として在る何かだということになる。
そして、その具象として現世に有り得るものとは何か。人為によって喚起可能な存在では第三「魔法」を代替し得ない。かといって、精霊などの世界に属するものとしての性質が強いものでは、人の制御が及ばない。
ならば、その答えは、「神」しか有り得ない。嘗てこの世に存在し、人が曲りなりにも制御を可能とする上位存在であり、尚且つ魔法を代替しうるものは、それしか有り得ない。
即ち、疑似聖杯ヤオヨロズとは、神の首なのである。神が英霊を喰い、その力を得ることで、奇跡を引き起こす。それこそが、願望器の真相であった。
では、具体的にその神とは何か。これまで多くの願いを現に叶えてきた神の名は？
それは――――――黄幡神である。本当に？
『黄幡神』
黄幡神とは、陰陽道において信仰される神であり、吉凶の方位を司るとされる八柱の神々、八将神を構成する神格の一つである。
元々は、インド神話に登場するラーフという神格から転じたものであり、この神は乳海攪拌神話において、神酒アムリタを盗み飲むも首を両断された結果、首だけが不死となったとされる。
また、同じくインドを発祥とする九曜占星術の文脈にあっては、アムリタを盗んだことを告発した太陽や月を喰らうことで、日食や月食を引き起こす凶星・羅睺としても知られる。
疑似聖杯ヤオヨロズなる「首」の正体とは、即ちこの黄幡神のこと。古代より天上界の物質、エーテルによって構成されると考えられる星を捕食するその権能こそは、英霊の魂を喰うに相応しいと言えよう。
しかし、ラーフが喰らったものは、身体を持たぬが故にやがて首から抜け出してしまう。蝕がやがて明けるのも、この特性があるからであると考えられてきた。
だからこそ、それを防ぐ為に、古く影宮聖杯戦争を構築した者共は、仕掛けを作った。陰陽相補うことで万物流転の理を示す陰陽魚。陰陽道におけるこの概念を転用し、ラーフの「影」を作った。
ラーフの形を模倣した、異形の首を象る礼装。天より落ちる真体と対を成す、大地に鎮まる偽体。影宮神社に祀られし神の首像、それこそが、偽装されたラーフの影なのである。
真なる黄幡神が来臨する時、首像はその姿を転じ、偽なる黄幡神と化す。二柱の神々は、最至近に存在する「星」であるお互いを捕食せんとその喉笛に食らいつきあい、結果として相手が喰らったものを延々と循環させる。
更に、それを安定させる術が加わる。古来、鼎立に事物の安定を見出してきた信仰をもとに、天なる真の黄幡神、地なる偽の黄幡神を繋ぐ、人なる巫覡を据える。
天地の狭間に境界としての人を立てることで、両者は鏡の如く照応する。その結びつきは相分かち難く強固なものとなり、斯くして、魔術的に魂の無限螺旋が確立される。
無論、神を安定させるのに、ただの人で事足りようはずがない。従って、巫覡はその身を文字通り捧げるのである。荒ぶり欲のままに喰らい合う、神々を鎮めるために。
だからこそ、聖杯戦争の開始には贄が必要なのだ。日に象る公輪家、月に象る酒香堂家が、代わる代わるその役目を担うのは、聖杯戦争を継続させる以上は、やむを得ないことであった。
ところで。そうして捧げられた贄がそのまま死してしまえば、神の制御を担うものが誰もいなくなる。しかし、実際のところ、疑似聖杯の暴走は、これまでただの一例も記録されていない。
では、その贄は、果たして如何にして、具体的に神々を制御しているのか？ 死者の念は確かに魔術的に活用可能だが、それだけで神を御せるものか？
否、それだけではない。ラーフには、首を刎ねられる以前の伝承がほぼ存在しない。少なくとも、それは広く知られているようなものではない。
そして叙上の解説に加え、黄幡神としての権能こそ持てど、その中に「願いを叶える」ものなど存在しない。ならば、ラーフは何をしているのか？ 本当にラーフが願いを叶えているのか？
それを詳らかに知るものは少ない。しかし、現代に至ろうとも、確かにそれは存在する。
元々は、インド神話に登場するラーフという神格から転じたものであり、この神は乳海攪拌神話において、神酒アムリタを盗み飲むも首を両断された結果、首だけが不死となったとされる。
また、同じくインドを発祥とする九曜占星術の文脈にあっては、アムリタを盗んだことを告発した太陽や月を喰らうことで、日食や月食を引き起こす凶星・羅睺としても知られる。
疑似聖杯ヤオヨロズなる「首」の正体とは、即ちこの黄幡神のこと。古代より天上界の物質、エーテルによって構成されると考えられる星を捕食するその権能こそは、英霊の魂を喰うに相応しいと言えよう。
しかし、ラーフが喰らったものは、身体を持たぬが故にやがて首から抜け出してしまう。蝕がやがて明けるのも、この特性があるからであると考えられてきた。
だからこそ、それを防ぐ為に、古く影宮聖杯戦争を構築した者共は、仕掛けを作った。陰陽相補うことで万物流転の理を示す陰陽魚。陰陽道におけるこの概念を転用し、ラーフの「影」を作った。
ラーフの形を模倣した、異形の首を象る礼装。天より落ちる真体と対を成す、大地に鎮まる偽体。影宮神社に祀られし神の首像、それこそが、偽装されたラーフの影なのである。
真なる黄幡神が来臨する時、首像はその姿を転じ、偽なる黄幡神と化す。二柱の神々は、最至近に存在する「星」であるお互いを捕食せんとその喉笛に食らいつきあい、結果として相手が喰らったものを延々と循環させる。
更に、それを安定させる術が加わる。古来、鼎立に事物の安定を見出してきた信仰をもとに、天なる真の黄幡神、地なる偽の黄幡神を繋ぐ、人なる巫覡を据える。
天地の狭間に境界としての人を立てることで、両者は鏡の如く照応する。その結びつきは相分かち難く強固なものとなり、斯くして、魔術的に魂の無限螺旋が確立される。
無論、神を安定させるのに、ただの人で事足りようはずがない。従って、巫覡はその身を文字通り捧げるのである。荒ぶり欲のままに喰らい合う、神々を鎮めるために。
だからこそ、聖杯戦争の開始には贄が必要なのだ。日に象る公輪家、月に象る酒香堂家が、代わる代わるその役目を担うのは、聖杯戦争を継続させる以上は、やむを得ないことであった。
ところで。そうして捧げられた贄がそのまま死してしまえば、神の制御を担うものが誰もいなくなる。しかし、実際のところ、疑似聖杯の暴走は、これまでただの一例も記録されていない。
では、その贄は、果たして如何にして、具体的に神々を制御しているのか？ 死者の念は確かに魔術的に活用可能だが、それだけで神を御せるものか？
否、それだけではない。ラーフには、首を刎ねられる以前の伝承がほぼ存在しない。少なくとも、それは広く知られているようなものではない。
そして叙上の解説に加え、黄幡神としての権能こそ持てど、その中に「願いを叶える」ものなど存在しない。ならば、ラーフは何をしているのか？ 本当にラーフが願いを叶えているのか？
それを詳らかに知るものは少ない。しかし、現代に至ろうとも、確かにそれは存在する。
公輪 家
影宮市最大の地主の一族。そして何より、聖杯戦争の場にあってはその主催を務める魔道の徒……であった。
表立っては所謂地元の名士として知られるような家系であり、実際に現代でも多くの一等地を不動産として所有するなど、経済的にもかなり裕福。
魔術家系となったのは近代に入って時計塔出身の魔術師と婚姻を結んでからだと言われ、それまでは螺旋館などにも属さない土着の拝み屋のような存在であったとされる。
儀式自体は先祖代々の倣いとして続けられてきたものであり、その委細についてこれを掌握する主導的な立場を常に取り続けていた。
しかし、前回の聖杯戦争開催時には、当事者として戦争に参加しつつも敗退。更に当主は次なる戦争開催を待たずして死去し、次代当主は幼子で、そもそも魔術を教授すらされていなかった。
このため、今回の聖杯戦争では歴史上初とも言われる「公輪家が運営に関与しない」事態が発生しており、術式に関する制御などの面で不安がやや残るものとなった。
一応、関連業務は下記の酒香堂家が可能な限り引き受けているものの、術式に関する作業についての資料が多く散逸しており、それにも限界がある模様。
なお、「運営側が戦争にも参戦している」点については、そもそも術式による参加者選抜が基本的に無作為であるという点を免罪符としている。
かつ、術式の不正動作を修正することはできても、根幹の仕様変更については現代の術者では到底解呪不能なプロテクトがかかっていることなども、それが許されている理由として挙げられる。
不可思議なことに、代々公輪家には女性しか生まれない。このため、同家は常に外部から婿を取ることで血を繋いできた。
その血統には特有の魔術回路に関する異常があるとされ、同家が今日でも権勢を保つ家系でなければ、回路の研究目当てで外部から嫁入りを求める声が多かったかもしれない。
表立っては所謂地元の名士として知られるような家系であり、実際に現代でも多くの一等地を不動産として所有するなど、経済的にもかなり裕福。
魔術家系となったのは近代に入って時計塔出身の魔術師と婚姻を結んでからだと言われ、それまでは螺旋館などにも属さない土着の拝み屋のような存在であったとされる。
儀式自体は先祖代々の倣いとして続けられてきたものであり、その委細についてこれを掌握する主導的な立場を常に取り続けていた。
しかし、前回の聖杯戦争開催時には、当事者として戦争に参加しつつも敗退。更に当主は次なる戦争開催を待たずして死去し、次代当主は幼子で、そもそも魔術を教授すらされていなかった。
このため、今回の聖杯戦争では歴史上初とも言われる「公輪家が運営に関与しない」事態が発生しており、術式に関する制御などの面で不安がやや残るものとなった。
一応、関連業務は下記の酒香堂家が可能な限り引き受けているものの、術式に関する作業についての資料が多く散逸しており、それにも限界がある模様。
なお、「運営側が戦争にも参戦している」点については、そもそも術式による参加者選抜が基本的に無作為であるという点を免罪符としている。
かつ、術式の不正動作を修正することはできても、根幹の仕様変更については現代の術者では到底解呪不能なプロテクトがかかっていることなども、それが許されている理由として挙げられる。
不可思議なことに、代々公輪家には女性しか生まれない。このため、同家は常に外部から婿を取ることで血を繋いできた。
その血統には特有の魔術回路に関する異常があるとされ、同家が今日でも権勢を保つ家系でなければ、回路の研究目当てで外部から嫁入りを求める声が多かったかもしれない。
酒香堂 家
公輪家に次ぐ地主であり、同じ祖先を持つ遠い血族。そして単に地主である以上に、かつて地元随一の資本家として名を馳せた名家でもある。
どこかのタイミングで公輪家から分家した家系ではあるが、本家・分家関係が結ばれているわけではなく、対等の親戚として関わってきた。
影宮市内でも新町方面では公輪家を凌ぐ影響力を持っており、公輪家に代わって、そちらに分拠点を置いた魔術協会・聖堂教会との外交上の折衝を一手に担ってきた。
酒香堂家の先祖は密教に由来する宿曜師であるとされ、確かに神秘に関わってはいるが、外部から魔術師を迎えたことで西洋流の魔術を受容した公輪家とは違い、それ以前の伝統的な宿曜術を扱う。
聖杯戦争においては、当主が各方面に対する根回しや隠蔽工作の手配などを担っており、また戦争の運営上重要な案件の出来時は、これに率先して対応する。
また、術式によって選定された参加者の人数計上及びサーヴァント召喚状態の確認を可能とする特殊な礼装を保有しており、これを聖堂教会の監督役に伝えることで、聖杯戦争の開始を事実上宣告する。
今回の聖杯戦争では、前回の儀式終結後に当主不在となり、術式の調整作業などを継続することができなくなった公輪家から、各種業務を引き継いでいる。
が、こうした運営は当主が一手に担う一方で、公輪家と同様血族から参加者が出ることも非常に多く、その殆どは次代の後継者である。
こちらも奇妙なことに、代々男性しか生まれず、為に当主は常に嫁をもらって婚姻を繰り返してきた。
更に魔術回路に特徴を持つことも公輪家と同じであり、同じ祖先を持つことが何かしら関与しているのではないかとも思われるが、その情報は外部に漏れていない。
どこかのタイミングで公輪家から分家した家系ではあるが、本家・分家関係が結ばれているわけではなく、対等の親戚として関わってきた。
影宮市内でも新町方面では公輪家を凌ぐ影響力を持っており、公輪家に代わって、そちらに分拠点を置いた魔術協会・聖堂教会との外交上の折衝を一手に担ってきた。
酒香堂家の先祖は密教に由来する宿曜師であるとされ、確かに神秘に関わってはいるが、外部から魔術師を迎えたことで西洋流の魔術を受容した公輪家とは違い、それ以前の伝統的な宿曜術を扱う。
聖杯戦争においては、当主が各方面に対する根回しや隠蔽工作の手配などを担っており、また戦争の運営上重要な案件の出来時は、これに率先して対応する。
また、術式によって選定された参加者の人数計上及びサーヴァント召喚状態の確認を可能とする特殊な礼装を保有しており、これを聖堂教会の監督役に伝えることで、聖杯戦争の開始を事実上宣告する。
今回の聖杯戦争では、前回の儀式終結後に当主不在となり、術式の調整作業などを継続することができなくなった公輪家から、各種業務を引き継いでいる。
が、こうした運営は当主が一手に担う一方で、公輪家と同様血族から参加者が出ることも非常に多く、その殆どは次代の後継者である。
こちらも奇妙なことに、代々男性しか生まれず、為に当主は常に嫁をもらって婚姻を繰り返してきた。
更に魔術回路に特徴を持つことも公輪家と同じであり、同じ祖先を持つことが何かしら関与しているのではないかとも思われるが、その情報は外部に漏れていない。
緒言
影宮の地に伝わりし呪われし聖杯戦争。
これを理解するためには、様々な歴史と物語を語らなければなりませぬ。
これを理解するためには、様々な歴史と物語を語らなければなりませぬ。
影宮聖杯戦争誕生物語
第一部 謎解き
第二部 はじまり
単語解説
史実関連
『壺切御剣』
藤原良房
滋岳川人
清和天皇
九曜衆関係
九曜衆
日輪
月香
火勝
水慧
木律
金華
土厳
羅暗
計霊
『疑似封神台・影宮維基』
『妖樹・聡唖』
『九曜曼荼羅・ 陰陽陣』
年表
こちらを参照のこと。スプレッドシートに記述。
nevadakagemiya
このページへのコメント
仮に７騎以上のサーヴァントが召喚される場合、真の八将神に対応する偽の八将神の枠に当て嵌められるのですか？
> 仮に７騎以上のサーヴァントが召喚される場合、真の八将神に対応する偽の八将神の枠に当て嵌められるのですか？
大本の神降ろしの儀式としては重要でしたが、現代においてはそう見立てることも出来るな…ぐらいの形骸化した要素です。
強いて言うならば陰陽道の様々な術式で成り立っている儀式であるためにそのあたりの要素が適用されると思います。
例えば作中で前回の聖杯戦争は5騎しか召喚されていないと設定されています。
この場合は火水木金土、五行五曜の見立てが適用されていたんでしょう。
倍なら十干あたりの要素が採用されるのでしょう。
ただしそういう部分を知ってるのがドクリンと銀桂だけなので参加者からの認識はまた違うはずです。
Apocryphaのように14騎規模で陣営別れた聖杯大戦であればその時代の流行りなどに合わせた陣営＋クラス名で呼ばれるでしょうが、
11騎ぐらいの中途半端な人数でサバイバル形式だとクラス被りしたサーヴァントは見た目の特徴＋クラス名とでもなるか別の冠でも付くのでしょう。