帝君遊塵記

◆第1巻(帝君遊塵記・一)

璃月のファンタジー小説。岩王帝君が凡人の姿になり、人間の世界を旅したことを描写する小説。本当であれ嘘であれ、物語は世界の宝物と過去の夢と共に商業の港に集まる。
璃月は天下の宝物が集まる場所、宝物があるなら、自然にそれを弁える人がいる。

「希古居」の初代店主玟瑰がこうした特別なコレクターであった。

緋雲の丘に建てられた「希古居」にしょっちゅうお客が訪れた。この店は夜になると営業を開始し、訪れる客人も見る目があるベテランであった。

フォンテーヌの精密な時計も、スメールの香も、モンドの旧貴族の壺も、若しくは、仙人が掛けた椅子、岩王帝君が使った玉石の杯、風神がしくじって割れた酒瓶も……すべて店の中に用意していた。

夜、一人の貴公子が足を止めて、店の陳列物を細かく鑑賞した。

彼は山岩のような厳かな長衣を着ていて、その目は金珀のように光った。

ただ者ではないと、玟瑰は一目で判断をつけた。

「ようこそ、お気に入りの品があったらいつでも声をかけてくださいな。」
店主の優しい声が夜の閑静を破った。
「あ…おお、悪い。」
貴公子は気まずそうに笑った。

「私はこの精巧な偽物にしか興味ない。」

彼が目にしたのは一枚の欠けた古い玉札であった。

月の光が比較的に完全な面を照らし、絮の形をした玉瑕の影を照らし出した。破損した表面と整えてないへりは玉札の悲運を物語っていた。

「偽物……?どうして?」
客の嫌がらせに慣れた玟瑰であったが、面から諷刺されるのはやはり腹が立つ。

それにこの骨董はある冒険者がアビスの深境から命を張って発掘して、彼女のほぼ全財産を使って無理に買ったものであった。これが本当に偽物というのならば、玟瑰の資産だけじゃなく、「希古居」の名誉にも大きく関わることになる。

そこで彼女はこの玉札を目前の客人に売ることに決めた。

「もうちょっと、詳しく言ってくれます?」

――――――――

「知っての通り、二千五百年前のテイワット大陸では災厄が頻発して、魔神が混戦し、大陸全境が混乱に陥った。当時まだ七国はなかったが、人間は自分たちの集落と都市を持っていた。
「長い時間で名前を忘れた魔神も、かつて己の民に記念され、崇拝され、愛されていた。だから先祖たちは海辺の真珠で、山奥の玉で、草地の石で、地中の塩で各自の神を彫刻した。
「この玉札がその時代の産物である。岩王帝君を崇拝するある部族からきた……まあ、その時に岩王帝君はまだ岩王帝君と呼ばれていないかもしれない。
「あの時に岩王帝君はまだ七国の共通貨幣モラを作っていない。だから部族は金石を媒介にして、岩王の肖像を価値安定の保証にした。」
「見ての通り、人間の知恵は岩王の手配を越えていたんだ。」

貴公子は話を中断し、思いに落ちた。
銀色の月光で、彼の身は少し小さく見えてきた。

「この種の玉札は極めて少ないし、山奥で発見されたりする。それに人間の手で作られて、一枚一枚が唯一無二だから…その価値は極めて貴重になる。
「惜しいのは、貴店の玉札は近代の模倣品だ。おそらくは貴方の父親の代で作られたものだね。
「『瑕なき玉はない』はないと業界は言う。この玉は瑕が少ないから、逆に先祖時代のものに見えない。
「それに、先祖時代の遺物で肖像が女性になっている状況もめったにない。」

貴公子は玉札を持ち上げ、月光を借りてもっと細かくみた。
「無数の言い伝えが流れているが、岩王帝君が女性に変化した事実を記載した典籍はない…」

貴公子は一目若そうに見えるが、老学者の風格をしていた。

「お客様は知らないでしょう…」
玟瑰は微笑んで、ずる賢い狐のように獲物を挑発した。
「私の話も聞いてもらえるかしら。」

店主は目を細め、客に話しを始めた。

◆第2巻(帝君遊塵記・二)

璃月のファンタジー小説。岩王帝君が凡人の姿になり、人間の世界を旅したことを描写する小説。数々の宝物が眠っている山の中で、有形の表象と無形の嘘がはっきりと分けられる。
諸神がまだ大地を歩む頃、今日万人の敬意を受ける岩王帝君もその一人であった。
平民の間で岩王帝君は冷静で慈悲なき神であった。公正で、無情で、岩のように堅苦しい。
それでも、岩神の法律で公平な取引ができて、安全に生活ができる人々は彼を尊敬し、信じた。岩神も同じくその信仰心から己の力を強化してきた。

しかし、たとえ神でも、人間の信仰と疑いを左右することはできなかった。
公正の守護神であっても、その規約を一人一人の心に刻むことはできなかった。

明蘊町にとある軽薄な玉匠がいた。毎回依頼を受けると玉匠はあらゆる方法を考えて、最終日までにその依頼を完了させた。

注文が猛獣を従える狩人の肖像であれば、完成品は逃げ回るイノシシであった。
もし、問い合わせがきたら、彼はこう答えた。
「猛獣を征服する狩人は顔を出さずとも、その気配で獣を怖気づかせる。」

注文が地位が高い人の玉彫であれば、完成品は華麗な権座であった。
もし、問い合わせがきたら、彼はこう答えた。
「身分や地位が高くても百年の命、長く残るのは権座のほうだ。」

こうして、玉匠は明蘊町で「変人」と呼ばれ始めた。豊かな璃月港には、富裕層たちが自分の変わった趣味を満足するため、わざと玉匠のところで注文をした。

――――――

ある日の夜、一人の女が玉匠を訪ねてきた。
彼女は長い黒服を纏っていた。琉璃色の月の下で、その目は金珀のように光った。
玉匠はその日に彼女と初めて出会うが、不思議にも話が合った。彼女は明蘊町にある鉱脈の位置をすべて知っていて、鉱物の話をまるで我が子のように熟知していた。
しかし彼女はめったに風習や人との付き合い方を話さない。
人の道理がわからないのか、それともただ話したくないのか。如何にして、彼女がただ者ではないことははっきり分かる。
玉匠は思った。

「岩王の肖像が彫ってある玉札が欲しいです。」
門を出る前に、女は話し出した。
「けれど、想像によって岩の神を彫ってはいけない。その目にしたものを参考にして、岩王の肖像を彫ってほしいです。
「じゃなければ、私は一モラも払いません。」

こうして、二人は三日の期限を約束した。

初日、玉匠は友達と宴会を開き、すべての依頼を拒絶した。

次の日、玉匠は山を登って玉を探しに行き、すべての訪問を拒絶した。

最終日、玉匠はようやく家に引きこもって作業を始めた。

琉璃色の月が再び空を照らす時に、目が金珀のような女が玉匠を訪ねてきた。
玉匠は得意作を取り出した――
玉で作られた神札に彫刻されたのは美しい女性であった。

女は理解できなかった。
すると、玉匠は説明した。
「初日に、俺は博学な人を尋ねて、岩王の理が動く方法を理解した。これは骨である。」
「次の日に、俺は山中へ行き岩を観察して、元素の成長を傾聴した。これは血肉である。」
「最終日、俺は目を隠し、心のまま玉を彫っていった。これこそ魂である。」

すると、玉匠は気まずそうに笑った。
「俺にもどうしてこうなったのかわからない。」

女は玉の彫刻を見つめて話した。
「おもしろいですね。別の物語を思い出しました……」

彼女は石珀色の目を開け、口を開いた。

◆第3巻(帝君遊塵記・三)

璃月のファンタジー小説。岩王帝君が凡人の姿になり、人間の世界を旅したことを描写する小説。ルールや公平の固いイメージもファンタジー世界で和らぐ。
璃月は天下の宝物が集まる場所、宝物があるなら、自然にそれを弁える人がいる。それは璃月港が最も繁盛した時の話であった。
今のように、それは商人と船長の時代であった。ビジネスの場と海の中で巨獣と力を競う時代であった。

そして、その時代にも、広大な埠頭には数え切れないほどの船員と労働者がいた。
言い伝えによれば岩王帝君はたまに貴人に扮するだけでなく、一般人にも扮装して採掘人や漁師の間を歩き回った。

当時の璃月の埠頭には人柄が悪く厳しい漁船の船主がいた。彼は毎度気に入らないことがあれば、勝手に労働者たちを叱って、時には給料を引いた。

ある日、船主は一人の少年に出会った。
少年は船主が雇った新しい労働者、褐衣に頭巾をして他の労働者と変わりなかった。そして彼の肌色と表情は自分が軽策荘からきた山の民であることを示した。その顔には岩の輪郭が刻まれていた。

少年は山の民らしく不器用だった。もっと腹が立つのは、魚介類を分ける時、彼はわざとべとべとして触手のある魚介類を避けた。

「いちいち選びやがって、お前はお金持ちの坊ちゃんか!」
船主はこうして彼の給料を押さえた。

これまでの少年は船主に叱られても何も言わず、いつもの通りに行動した。
しかしある日、少年は船主に聞いた。
「人には皆好きなことと嫌いなことがあるけど、どうしてわざわざその嫌いなことをするんですか?」

頑固頭な弟子に言われてびっくりした船主は少年の頭を殴った。
「世の掟がそうなんだ!誰もが好きな仕事だけすると、永遠にやり遂げられない!」

「これは岩王帝君が決めた規約じゃないと思うけど…」

「余計な言葉だ!」

「こうしましょう、僕からのいい物語があります。」
少年の目は夕日の中で光る金石のようだった。

「物語ができる?」
目前の頑固頭に物語ができると聞いて、船主は興味を持ち始めた。
「してみたら…おい、手の動きは止めるなよ!」

少年は笑った。
「では、玉札の物語をしますね…」

こうして、少年の物語で船主は時間の流れも、上前をはねた労働者の給料がこっそりと取られていることも忘れてしまった。

◆第4巻(帝君遊塵記・四)

璃月のファンタジー小説。岩王帝君が凡人の姿になり、人間の世界を旅したことを描写する小説。世界の宝物を知り尽くす人は一言で嘘を見抜く。
それは、世間のあらゆる宝が璃月港に集まる時代のことであった。
ある日の夜に、「希古居」の店主玟瑰は無名の貴公子と遺物を研究しながら話を交わしていた。
彼らが議論をしていたのは一通の玉札であった。

知っての通り、璃月で古代玉器を偽造するのはわりと簡単なことである。精美な贋作は少し値が張るが、商人たちにとってはまだ受け入れられる範囲である。
難しいのは精美な物語をつくることである。

山奥を歩き回る玉職人や怪しげな漁師の少年のように、正しい道を離れた者の物語は人を引き寄せる力を持っていた。
岩王帝君は規則と契約を立てたが、人間にそれを守るようには説かなかった。彼は規則と契約は目的を果たすための手段でしかないことをよく知っていた。真の調和は一人一人の覚醒と選択にある。

厳しい漁船のオーナーはこれを分かってない。だから労働者に怯えられて愚弄される。

人間も、骨董も同じく、本当にその価値を決めるのは、希少性でも技術レベルでもなく、「物」に隠された「物語」である。

完璧主義の貴公子はこの話に納得できないまま、玉札が偽物であるとその価値を低く評価した。

しかし、「希古居」にある無数の珍宝をすべて貴公子の基準ではかると、おそらく残るものは一つもないだろう。

例えば、海の恋人が船長のために流した涙でできた永遠の真珠と、凡人の王様が亡くなった妻のために彫った彫刻に、自分の魂を封印した物もそうである。

これは消えゆく物語であるとともに、骨董の殻で隠された蠢く伝説である。

「おもしろい物語だ、この偽物は買っておくよ。」
貴公子は少し頷いた。金石のような目には笑いが宿っていた。

「私の物語を聞いてもまだ、これが偽物だと言うの?」
軽くため息をつく玟瑰。

「当然、」
貴公子は思わず微笑んだ、店に入ってから見せた一番の笑顔である。

「君の物語と一緒さ。玉札が古代貨幣って言うのも、こっちの戯言だよ。」

更新履歴

赤字は変更前から消えた・変更された箇所、青字は追加や改稿された箇所。気付いた分のみ、全てのゲームデータの更新状況を記録しているわけではありません。
Ver.1.0 「帝君遊塵記・一」〜「帝君遊塵記・四」実装
Ver.1.1 書籍図鑑実装に伴い図鑑に格納、第1巻〜第4巻本文変更(β版への先祖返りの可能性あり)
Ver.1.2 第1巻本文変更
Ver.1.3〜Ver.3.4のどこか 第1巻〜第4巻本文変更
最終確認:Ver.4.5(掲載中テキスト)
※Ver.1.1以降は翻訳が怪しいため、Ver.1.0版が一番読みやすいです

旧版

Ver.1.2記録

Ver.1.1記録

Ver.1.0記録



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