Ver.2.6実装


生霊の華

いにしえの時を思い起こす品。まるで数百年前に保存された生霊のごとく生気を放っている。
辰砂色の古い崖には、鮮やかな花も咲いている。
黒い血が溢れるこの時代に、わずかな穢れにも染まっていない。

千岩牢固、揺るぎない。たとえ暗色の妖魔を前にしてもである。
沈黙を貫く山民と鉄色の明月が、彼らのため静寂な陣地を築いてくれた。

「岩々と琉璃晶砂の娘よ。どうか私のために泣かないでくれ」
「天衡の影に生まれし私は、岩王の恩恵に報いるため戦う」
「四臂夜叉に命を託し、蛍光の深淵へと向かおう」
「暗く深い洞窟の影の道、浮遊する険しき岩宮の晶石」
「湧き出す深淵の汚れし流れ、山の底に伏す歪みし妖魔」
「どんな恐怖や奇異も、私の心を怯ませはしない」

夜風が千岩軍の兵士を遮り、彼に別れの言葉を言わせなかった。
忘却の証として山民の娘に残されたのは、この小さな花だけ。

「私が恐れる唯一のことは、忘れ去られることである」
「もし厄運が私を無名の地に埋めようとも、どうか私のことを忘れないでくれ」

潜光の羽

薄暗い質感を持った羽。重々しい記憶を秘めている。
ある英傑が層岩巨淵のもっとも高い崖に立ち、空を飛ぶ鷹の羽を手にしたという伝説がある。
また言い伝えによると、この偉業を成し遂げた才ある者は、仙人と肩を並べて死地に赴く資格があるそうだ。

「民衆を守り、何かを求めるため死地へ赴くのは良きことだ」
「だがよく考えてみれば、これは深き淵に潜む魚、幽谷へ堕ちる鳥のようなものである」
「己の想いは叶うが、成し遂げたことは皆に知られず、やがて忘れ去られてしまう」
「我々のような凡人は、竜巻に運ばれた羽のように、深空に散って落ちていく」
「救済も堅守も、いずれも無駄で意味のないこと」

不気味な囁きが、名を残すことのできない人々の心を静かに揺さぶる…

だが、やがて戦塵は収まった。多くの兵士が岩穴の奥深くで眠りに落ちる。
漆黒の軍勢が放つ気味の悪い咆哮も、波紋が収まるかのように静かなっていた…
たとえ人間の過ごす歳月は短くとも、大地はそのすべてを記憶していく。

陽轡の遺品

頑丈な見た目をした古代の時計。晶砂の光沢が特徴的。
伝説によると、岩王がまだ若かりし頃、太陽は大地を巡行する高車であったという。
夜空の三姉妹が災いにより殉じた時、陽手綱の車も深き谷に落ちた。
山民は皆、太陽の馬車が修復され、暗い空が再び輝きに満ちたのは良きことだと言う。
陽手綱は果てのない西回りへと戻ったが、ある欠片は永遠に残った。
山民が港町に移り住んだ後、欠片を晶砂に変え、それを目の肥えた人に売った…

「冗談はさておき、それらは根も葉もない民間の噂。軽々しく信じることはできない」
「盛露庁の商人はすでに蒙昧から脱却し、馬鹿げた過去を忘れている」
「なにせ、輝く晶砂は陶器の製作や贅沢な塗料には向かない」
「またこれも根も葉もない話だが、層岩巨淵の鉱夫によると」
「この時計とわずかな晶砂は、五百年前の千岩軍の兵士が持っていたものであるという」

光と闇が争う漆黒の深淵では、夜叉の力をもってしても抗うことが困難である。
凡人こそ明かりが必要なのだ。さすれば、人を飲み込む漆黒の鉄幕を相手に身を失うこともない。
まるで純白の月光のように、千岩軍の兵士が蛍光の砂を集めて照明として利用した。
時計は犠牲を恐れぬ人の証、人が深淵に残る時間を計算するためのものである。

契約の時

いにしえの晶砂の杯。歳月の侵食を受けてもなお、まだ色褪せてはいないようだ。
古来より辰砂色の輝きを放つ地「層岩巨淵」。
山奥の鉱夫と市井の宝石商人の間では、夜叉の伝説が今なお語り継がれている…
かつて、肩から四本の腕を生やした孤独な旅人が、天星の降った荒れ果てた地にやってきたという。
邪気を払うことのできる孤客がこの地へ来たと聞き、山奥に住む族人が大挙した。

「遠路遙々訪れし客人よ、どうか我々の酒を飲みながら、耳を傾けてほしい」
「熟成された山の酒は酸味が強く、飲みづらいかもしれない。きっと帝君が称賛した天衡山の美酒とは、比べ物にならないだろう」
「しかし、山民は天から授かりし奇石や玉を素晴らしき宝として大事にし、生計を立てるために険しい岩壁を削ってきた」
「望み通りの生活とはいかないが、帝君の優しさにより、とても快適で平穏に過ごせている」
「ただ状況は以前と異なり、天星の恩恵は漆黒の影に阻まれてしまった」
「我々は今、契約を結ぶための高尚な祭礼を用意できない。それでも、あなたに救いを求めるために参じた」

客は長老たちの訴えを黙って聞き、手にした盃に入っている苦い酒を黙って飲み干した。
そして、何の約束をすることも人々の無礼を咎めることもなく、引き留められるのを無視してそのまま東へと引き返した。

その後の話は、今はもう誰もが知っている…

山民と交わした素朴な晶砂の盃も、契約を結んだ証として残されている。

虺雷の姿

山民が夜叉のために作ったと言われる冠。古朴な見た目だが、光沢があり艶やかである。
四本の強靭な腕を持つ夜叉が、天穹の谷を訪れた。
遠方より層岩へとやって来た彼は、その地の人々から喝采を浴びた。
彼のために沢山の料理と酒が用意され、豪勢な宴が催される。
そして、彼は深淵の谷に刃を揚げ、民衆のため災いを払いに行った。
その体捌きは鬼の如く俊敏で、紫に光る眼からは獰猛な殺気を感じられた。
轟々たる雷が死の霧を払い、まるで蛇のような雷光が暗い川の波へと溶けてゆく。
星河を飲み込むかの如く、巨淵を覆いし雲が現れた。
狂風が再び吹き、辰砂が真っ暗な地を包み隠す。
岩石が響いた。山道は揺さぶられ、深き谷も大半が崩れ落ちていく。
巨淵の瓦解が大地に轟音を響かせる。そして、突然の静寂が訪れた。
濃雲は夕陽の光を凍らせ、止まりし鳥はまるで涙を流しているかのようであった――
「知っているか、北風の中で太鼓や角笛が鳴り止み、英傑が渦の中に消えていったことを」
「夜明けまで戦い抜いた夜叉の姿を見ることはできない。無意味に流れた時間を嘆き、ただ長い嘆息を漏らすしかないのだ」


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