kagemiya@ふたば

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　――人理継続保障機関フィニス・カルデア。
　その日目覚めた者たちは、皆一様に小さく首を傾げた――何やら奇妙な夢を見たような気がしたのだ。
　だが、それもほんの一時のこと。
　心の片隅に引っかかる、蝶の羽ばたきのように微かな違和感は、目覚めの喧騒の中で泡沫の如くに掻き消されてしまった。

　いつもの通り、世界を救うための戦いが始まる。

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　――西暦二〇〇〇年、中央アジアの山脈地底。

　かつてこの地にて、特異点が発生した。
　死を恐れる女の語る物語は世界を歪め、人理を危機に晒し――そして、すんでの所で崩壊は阻止され、特異点は終局を迎えることとなり世界は元の姿を取り戻した。

　――果たして、本当にそうだろうか？

「……クククッ。なあ、これでいいのか？」

　地の底の空洞に響く呟きは、恐ろしいまでの笑みを顔に浮かべた男のものだ。
　薄明りに照らされて笑うその男の名はハワード・カーター。
　かつてここアガルタの地に歪みと共に召喚され、混迷極まるアガルタの物語の中で一人生き延びたサーヴァントである。
　彼は手に一冊の本を持ち――そしてその傍らには、一匹の蝶が舞うように飛んでいる。

「クックック……さあ、見せてくれよ！　侵略者様ァ！」

　カーターは目の前の地面に本を放り投げ、その衝撃で本が開きページが捲れる。
　見るものが見ればその本の異様さに気が付いただろう――この世ならざるもの、無数の平行世界のその更に外、繋がるはずがないどこかからやってきたその気配に。

　そして蝶がひらりひらりとカーターから離れ、本の上に降り立つ。
　――その瞬間、世界から現実性が失われた。
　空間が蜃気楼のように揺らめくと、そこに一人の男――まるで夢が現実に成ったような、全身に蝶の意匠を持つ男が姿を現し――。
　足元の本を拾い上げて、たった一人の観客――歪曲の盗賊王の前で高らかに宣言する。

「――さあ、再演の時間だ！！」

　――悪夢が再び幕を開けた。

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　――再び、人理継続保障機関フィニス・カルデア。

　いつもの通りに新たなサーヴァントが召喚された――はいいのだが、それがどうにもおかしなサーヴァントだった。
　一つには、彼女が決まったクラスを持たないサーヴァントであること――そう言ったものは例外の中の更なる例外的存在、ロストと呼ばれている。
　二つ、そのサーヴァントが記憶の大半を失っていること――まあ、珍しくはあるが全くあり得ない話というわけでもない。喪失こそが存在の根幹であるロストのクラスならばなおさらだ。
　三つ――断片的な話を聞く限りでは、彼女はこの世界を含めた無数の平行世界のどこにも属さない、平行世界の更にその外――異界という他ない場所からやってきたらしいのだ。
　――これも既に前例のある話だ。一度あったことが二度起こらないと言うこともあるまい。
　いろいろと奇妙なことはあるが、しかし共に世界を護るに当たって不足も不満もない。
　首を傾げながらも、カルデアの面々は新たな仲間を歓迎した。

　――その数時間後、新たな特異点の発生が観測された。

　いや、正確には新たな特異点ではない。
　時代は二〇〇〇年、場所は中央アジアの山脈地底――かつて特異点アガルタが発生したその場所であり、その反応もアガルタのものに極めて酷似している。

　そんなバカな、ありえない、一体何が――誰もが口々にそんなことを言う中、一際大きな声が響いた。

『――やあ、諸君！』

　いや――声が響いた、と言うのは正しくない。
　なぜならそれは音ではない。

『殆どの皆様は初めまして！　極々一部の方はお久し振り！』

　二言目が響くと同時、蝶のような意匠の男が姿を現した。
　しかしそれもやはり――目に映る像ではない。

『まずは自己紹介を――私は胡蝶。かつては侵略者インベーダーと呼ばれていたサーヴァントだ――今はクラスを持たないがね。お前たちの言い方ならば、ロストと言う種類のものだ』

　目で見ているのではなく、耳で聞いているのではなく、意識に直接映し出されているかのようなその男の姿と声――それはまるで、目覚めながらにして見る白昼夢。
　胡蝶と名乗るその男は、一方的に言葉を投げかけ続ける。

『気付いているだろうけれど――アガルタの特異点が再生した。そしてこちらももうお気付きのこととは思うけど――そう、私がその犯人だ！』

　聞いている皆が混乱にざわつく中、胡蝶の話は続く――。

『私自身の力と、かつてここにあった特異点の残滓――そして今しがたそちらに呼ばれたばかりの新たなサーヴァントの力を利用させてもらうことで、アガルタの物語は再び語られる！』

　アガルタの物語――それはまさしく「物語」だった。
　御伽噺が具現化し、現実を作り替え浸食する千夜にして一夜の夢物語。

『何を言っているのか分からないって？　そうだろうね――なあに、そう難しい話ではない。特異点を観測したお前たちは必ずここにやってくるだろう。そして私と対峙する――そう、この物語が再演であり、物語の主が私である以上それは避けられない』

　――そうだ。どんな事情があれ、特異点があるのならばそれを見過ごすことは出来ない。
　そう、だからこれは――。

『だからこそ私は愛を込めて宣戦を布告しよう――そう、これは！！』

　拍手と共に、幕よ上がれ。
　素晴らしき夢よ、もう一度。
　物語よ、永遠なれ。

『再演の幕開けだ！！』

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《亜種／擬似特異点II-R　再演のアガルタ》

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　Never END.

※あんまり真に受けなくて大丈夫です

1.新宿特異点発生(原作)
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2.ウロボロスにより再度新宿が特異点化、ユング+This manが召喚される(泥)
　　↓
3.ユングからThis manが剥ぎ取られて胡蝶と融合合体し胡蝶特異点発生(泥)
　　↓
4.アガルタ特異点発生(原作)
　　↓
5.セイレム特異点発生(原作)
　　↓
6.アガルタが再度特異点化(この話)

剣豪とかの関係ない話は省略
3〜5辺りは順番前後してもいいと思う