清泉の心

◆第1巻(清泉の心・1)

清泉町の狩人たちの誰もが知る伝説の物語、泉の精霊と名も知らない少年との出会いが綴られている。
水のような月光の下で、涙の少年は清泉に願いをかけた。
遠方の泉水に住む精霊は何気なく、静かに彼の声なき願いに耳を傾けた。

泉水の精霊は遠い記憶を覚えておらず、遠大な夢もない。彼らは混じりけのない水から生まれる顔のない天使の末裔。
だから、好奇を抱いた精霊が清泉から現れた。涙を通じて少年の心の声を聞き、精霊はすぐさまこの若くて弱い生命に興味を持つようになった。
無言の精霊は形のない手を差し伸べて、少年の額と頬に触れる。夜露のように冷たく、失われた祝福のように柔らかかった。

未曾有の感触に少年は驚いた。顔を上げると、精霊と目が合う。
「願いを叶えてくれるのか?」と少年は聞いてみた。
泉水の精霊は唐突にされた質問の意味を理解できなかった。だが彼女は声を出せない、ただ頷く。
少年は喜んでその場を去っていった。

泉水の精霊が孤独だったことを、少年は知らなかった。彼女には仲間も家族もいなかった、そして、ほとんどの知恵を失っていた。
石の隙間から泉水が湧いて池に流れ込み、さざ波に砕かれた月を見ている時だけ、彼女は思考能力を取り戻し、片言の言葉を話せるようになる。
好奇に満ちた精霊は無垢な愛と無知、そして幼稚な霊性を持ちながらこの世界を生きてきた。彼女は、ベリーを盗み食いするキツネやリスに喜び、銀河を覆う暗雲に悲しむ。

あの夜の少年に対して、彼女は複雑で未熟な感情を抱いていた。
孤独な彼女には力も知恵もなかった。彼の願いを実現することは所詮夢のような話。
しかし、彼女は願いを分かち合うことができる。彼の悩みから命をくみ取り、彼と共に分け合うことができる。

◆第2巻(清泉の心・2)

清泉町の狩人たちの誰もが知る伝説の物語、泉の精霊と名も知らない少年との出会いが綴られている。
さざ波に映った月光を見て、少年は泉水に自分の本音を話した。
彼の話から、彼女は彼の多くを知った。
そして彼女の沈黙から、彼は決意した。

泉水の精霊は理解し始めていた。この世界の美しさは月光とベリーだけではない、悲しいものは夜空を覆う暗雲だけではないと。
少年は彼女に森や町、高い壁の話をした。自分の喜び、悲しみと恐慌を分かち合った。
少年の話を聞いて、彼女はどんどんこの新しくて不完全な世界に惹かれた。

少年が自分の無力さに悩んでいる時、泉水の精霊が優しく無言のまま彼の涙を拭ってくれた。彼の涙を通じて、彼女は清泉以外の理解がまた深まった。
涙が池に溶け込み、精霊は涙を、少年に幸せな夢を見せる甘い泉水に浄化した。少年は現実世界にあった全ての痛みを忘れ、夢の中の清泉で沈黙の精霊と会う。

月光を映した池の水面に、安眠する精霊が笑顔を見せた。
露は少年の夢を潤し、少年の夢は孤独な精霊の心を潤した。
夢の世界で、泉水の精霊は少年に遥かな水の国の話をし、青い宝石のような故郷のことを話した。そして、追放者の望郷の念を歌ったり、故郷を去った心境と行く末を嘆いたりした。夢の中では、少年が沈黙の聞き手となった、彼は彼女の境遇に涙を流し、彼女の幸せを嬉しく思った。

そして、泉水の精霊は少年の記憶と夢の中で言葉を覚えていった。
そして、彼女と少年はなんでも話せる親友となっていった。

◆第3巻(清泉の心・3)

清泉町の狩人たちの誰もが知る伝説の物語、泉の精霊と名も知らない少年との出会いが綴られている。
吹いていた夜風が止み、池に映った月が丸くなり、少年は初めて精霊の声を聞いた。
人間と比べれば、精霊は生まれつき繊細で敏感な生き物。少年は思わず彼女の哀歌のような優しい声に心を奪われた。

繊細さと敏感さを持つ精霊だからこそ、少年の目から彼の隠しきれない思慕と今にも口に出しそうな誓いの言葉を感じた。

精霊は慌てた。

人間の命は強いが儚い。少年もいずれ成長し、そして歳を取る。若さと純真さが色褪せて、彼はどうやって原素の無垢な末裔と向き合うのか?歳を取った彼は、若さ故の過ちと自分を責めるのではないかと精霊は思った。

泉水の精霊は純粋で優しいが、人間の愛を分かっていない。彼女は人の奇跡を見たことがない。千年の月日を普通だと考える彼女にとって、別れは恐ろしいものだった。

人間が奇跡だと思う長年の時は、元素の精霊にとって儚く美しい一時にすぎない。
だが愛する人の衰えを阻止することは、たとえ精霊の力であってもどうにもならない。

そんな日を待ち望んでいない繊細な精霊は、口づけをして少年を止めようとした。
だが愚かにも少年は、精霊の冷たい拒絶の口づけを、自分の決心を受け入れたものだと勘違いした。

その瞬間、精霊はいつか少年から離れることを決意した。
その瞬間、少年は永遠に清泉のそばにいると誓った。

◆第4巻(清泉の心・4)

清泉町の狩人たちの誰もが知る伝説の物語、もう少年でなくなった少年と不老不死の泉の精霊が迎える苦くて切ない結末が綴られている。
時が流れ、少年は成長し、新たな仲間と共に新しい生活を過ごしていた。
精霊は若い時と変わらぬまま、彼のために静かに哀歌を歌っていた。

あの日、彼女は彼から離れた。少年のいる先へと向かわないように。
泉水の音は言葉を発さず、さざ波に砕かれた月も水面の足跡に寄り添わなくなった。
やがて唐突に、泉水の精霊は気づいた。行き先が見つかったって、幸せな一時を過ごせたって、自分は孤独なままだと。

少年ではなくなった少年が精霊の気持ちに気づかず、その孤独を自分のせいにした。
「たぶん彼女は、ただの稚拙な幻夢だったのだ」
清泉の音を聞きながら、彼はたまにそう思った。

でも、あの冷たい口づけは現実だった。彼女の長い髪にいたずらをした夜風のように、実際にあったことだ。
ふいに少年が気づいた、たくさんの仲間との出会いと別れを経験したって、たくさんの冒険をしたって、自分は孤独なままだと。

そして数年前と同じように、静かな池に少年の涙が零れ落ちて、水面に映した月を砕いた。
だがそれでも、泉水の精霊は出てこなかった。
彼女は背を向け続けた。永遠に近い命を持つ自分が少年の思慕の念を裏切るより、幼い頃の無垢な夢や遥か遠い異国からの余所者だと思われた方がましだったから。

言い伝えによると、大雨の日に池に落ちる雫の中に、精霊の涙が混じっているらしい。
老いても少年は依然として、こんな戯れ言を信じていた。
不幸なことに、自分の本心と向き合えなかった泉水の精霊にとって、これは戯れ言ではなく事実であったという。

更新履歴

赤字は変更前から消えた・変更された箇所、青字は追加や改稿された箇所。気付いた分のみ、全てのゲームデータの更新状況を記録しているわけではありません。
Ver.1.0 「清泉の心・1」〜「清泉の心・4」実装
Ver.1.1 書籍図鑑実装に伴い図鑑に格納、第1巻本文変更
Ver.1.2 第1巻本文変更
Ver.1.3〜Ver.3.4のどこか 第3巻本文変更
最終確認:Ver.4.5(掲載中テキスト)

関連項目


旧版

Ver.1.2記録

Ver.1.1記録

Ver.1.0記録



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