398SS
最終更新：
nevadakagemiya 2022年01月29日(土) 19:43:45履歴
なにここ 
2102アバターまとめ
| 名前 | クオリアアカウント名 | アバターの外見 | HNの由来・意味 |
| 水無月サクヤ | KIBA-Admiral | 豪華そうな服来た黒狼の獣人 ↓DNA鑑定によると鱗画聖永と一致したらしいぞ。彼が犯人だな！ | 牙の提督 |
| 枢木楡 | Bean Sidhe | 胸盛ったエルフ ねえこの項目書いたの誰？ 笑わせないで欲しいんだけれど。何が胸盛ってるよ。些かも変わらないわ。 私も鬼ではないから今のうちに名乗り出るなら応じた対応をとってあげる。発言者をヒキガエルにするとか。その程度よ。 さあ名乗り出なさい。でないと全員に同じ呪いをかけるわ。さあ早く。さあ。 | |
| 白神竜胆 | |||
| 冨楽唯 | Creole | 赤い眼光の黒騎士 基本ゲームで使ってるキャラのレプリカだな 他のゲームだと黒玉ナメクジとか。アレ性能頭おかしかったから… | クレオール言語 |
| 『マレフィキウム』 | そのまま | ||
| ブリュンヒルト・マントイフェル | |||
| 雨堂爾苑 | |||
| 白上アオ | |||
| 水無月サクナ | 箱型テレビの異形頭 | ||
| 『サボり魔』 | A＠Uranus | そのまま。日本製アバターはリュージョン非対応でねー | |
| 創守シン | 919 | 黒色のゴーレム 右肩に919の番号、背中には十字架 | |
| 夢川愛架音 | ReD-Court | 狼ヘッド！ 首が据わってないから。たまに視界が非ぬ方へと。およよ… | 怪人赤コート？ ていう都市伝説 |
SS(2102年の聖杯戦争)
運命の出会い
2102年の聖杯戦争シナリオ 序章前半より
前回までのあらすじ
水無月サクヤは電子世界クオリアで行われる推しのバンドのLIVEへ向かう途中、
近道をした所、血まみれの黒い魔女に出会ってしまう。
彼女から絶対に破壊してほしいと十字の形をしたプログラムデータを渡される。
だが、その後のLIVEの熱狂で、そんなことはすっかり忘れてしまっていた。
しばらくして、親父の墓参りを終えた後、プログラムのことを思い出す。
破壊する前にこれがなんなのか興味が出た水無月サクヤは迂闊にも開こうとする。
すると、彼は意識を失ってしまい、目覚めるとそこは見知らぬ街だった。
多分こんな感じ
なんだここは？
あのプログラムを動かした時、クオリアへログインするのと同じ感覚があった。
だがここはクオリアのスタートに設定しているホームエリアではない。
クオリア上に存在しているのかもしれないが。
周囲を見渡せば、古い作りの家が立ち並ぶ。まるで歴史物のドラマか映画の世界だ。
今が夜なことを考えるとリアルの時間と連動もしているだろう。
それに僕の体もアバターではなく現実のもののようだ。
どうやら服や小物も現実と同じものが再現されている。内ポケットに手鏡もある。
確認すると僕の顔も現実と同じだ。
ただ僕がいつも隠し持って学園がテロリストに占拠されたときのための妄想を捗らせ、
遅刻した時無理やり校門を抜けて入るための2100年モデルのワイヤーガンは動かなかった。
どうやらある程度は持ち込めるが、こういう機械的な便利アイテムは禁止みたいだな。
インプラントデバイスの機能も一切使えない。
……あれ？ そうなるとログアウトもできないのではないか？
察するにあのプログラムはこの新作VR体感型ゲームへのログイン用だったんだろう。
このエリアは開発中でテスト用。
セキュリティのために特定の場所でしかログアウト不可能という辺りだろう。
とりあえず、状況把握は出来た。
この世界を探索してみよう。チュートリアルに出会うかもしれない。
そんな感じで探索しているうちに僕は躓いて転んだ。すげぇリアルな痛みが来る。
「痛い…心が痛い…こうして僕は泣いてしまうのであった」
いや誰も居ないところで遊んでも仕方ないな…。恥ずかしくなってきた。
でもなんか右手、すごい痛い。手の甲にうっすらアザみたいなの出来てる。
クオリア上でここまで再現できるのか。
このゲーム、正式サービス開始したらウケるのは間違いないな。
それにしてもさっきから人に出会わない。今何時だろうか。
街灯が当たりを照らしているからそこまで暗く感じないが…。
やはりアクセサリーとしても腕時計は買っておくべきか。
そうこうして見知らぬ土地を歩いているうちに美術館にたどり着いてしまった。
看板を見ると、土夏私立美術館「土夏アートの森」と書いてある。
こういうところってなんかいいアイテムありそう。
閉園時間のようだが、なぜか隙間が開いている。
なんとも好奇心を抱かせるではないか。
隙間から恐る恐る中を見渡してみれば、思ったとおり不可思議なものをみた。
モンスター。
ゴーストとかそういうタイプ。物理攻撃無効ついてそうな透けてる奴ら。
それを蹴散らす槍を持った人がうっすらと月明かりに照らされて見えた。
なんだか子供がボソボソしゃべる声も上の方から聞こえてる気がする。
その途端、上の方からなんかが飛んで来て、槍の人が居る所が爆発した。
あ、これやばそう。
クオリアなら死ぬことはないだろうが痛い思いはしたくない。
当然、見なかったことにして回れ右をして逃げだす。
巻き込まれたら終わりのやつだ。
分かれ道。右の通路へ迷わず行く。
僕はこういうとき利き手のほうに行くことにしている。
「おいガキ、そっちは死ぬぞ。こっちだ」
後ろから誰かの掛け声がする。
振り向いたら、見知らぬ男が居た。僕よりちょっと背が高い。
腕を掴まれて、左の脇道へ引き込まれる。
直後、右の脇道の家が吹き飛んだ。
あの謎ボムの流れ弾が飛んできたらしい。
もし、もしも振り向かずに向こうに行っていたら……
「ここまで離れてまだあぶねぇってホ〜ントやんなっちゃう。
何が偵察だ！ 俺様がやることじゃねぇだろ！
おい、もちっと逃げたほうがいいぞ。走れガキ」
「あ、はい！」
そして、僕はその男と一緒に息が切れるまで走った。
こんなに走ったのいつ以来だ？ ダッシュボード使わせろ。
だが、黒髪に青メッシュを入れた男のほうはこれだけ走ったというのに息を切らしていない。
大人って凄い。
「ここまでくりゃ流石に大丈夫だろうよ」
「あの…助けてくれてありがとうございます。この恩は必ず返す…」
「いいんだよ。お前みたいなガキにそこまで求めてねぇ。
ただ……お前みたいなのを救う優しさを見せる心もイケメンな俺様の活躍をしっかり心に刻んでほしい！
家族や友達に話し、結婚相手にも伝えろ！ 『まぁなんて素敵な人なの！ あなたの恩人ね！』
そしてお前はこの出来事を胸に、俺様のような英雄を見習い政治家や社長を目指し権力を得て、
感謝の証としてこの街にすごいでかい俺様の像を立てる！
それを見た人々は名も知らぬ少年を危険を犯して助けるなんて感動的な逸話に涙し俺様を崇める！
そして俺様の名声はお前の未来永劫子々孫々に受け継がれ新たな神話となる！
世界に俺様を主人公とした創作が溢れかえる！
ただそれだけでいいんだぜ」
なんだこいつ。
やっぱクオリアは変な人がよくいる。
「……えっと、さっきのあいつらはなんなんだ？ 巻き込まれたらゲームオーバーだったのか？」
「まぁそういうことだ。あんな化け物どもと俺様を一緒にするなってんだよな…。呼ばれたからには来てやるがよ」
この男の人もこのゲームの参加者…なんだろうか？
「ここは一体何なんです？ クオリアなんですよね？」
「――――クオリアかァ…。*1隠しエリアみたいなもんだそうだ。
そこで化け物共がバトルロイヤルやってるのさ。おいお前、名前は？」
「アカウント名でいいでしょう？ 本名は流石に言えませんよ」
「いいじゃねぇか、どうせここじゃ素顔だろ」
それもそうか。
「……ミカズキタクヤだ」
だが、こんな変な人に本名教えたくない。アカウント名もだ。だったら偽名しかない。
確かスパイ映画で偽名は一文字変える程度が自然に反応できるって言ってたのを思い出した。
子音を一致させるのがいいらしい。
「じゃあタクヤくん、頼みがあるんだがなァ。
ちょいと向こうの角見てくれねぇか？ 俺様はあっち」
まぁそれぐらいなら。
指示された方向に歩きだす。確かにまだ安全といいきるには速いか。
「……ああ、もう1つ頼みがある。死んでくれ、8人目 」
突然背中で風の音がして、衝撃が僕の体を押し出した。
きっとトラックに衝突されたらこんな感じ。
地面に叩きつけられる。痛い。痛いとかじゃない。そういう痛さを超える痛み。
ひゅー…ひゅー…
何だこの音。僕の喉から出てる音か。
「ああ？ まだ息があんのか？ 俺様、人殺し向いてなさすぎだろ」
なんで？ なにかに撃たれた？ あの男はサイコパスだったのか？
もしかして本当に死んじゃう？
いいから逃げろ。逃げろ。逃げろ。逃げろ。
頭にめぐる考えはそれだけ。
なのに体は動かない。痛みしか伝えてこない。
それもどこが痛いのかよくわからなくなってきた。
普段からもっと鍛えておけば違ったのだろうか。
運動部に所属していれば違っただろうか。
「仕方ないからこれからお前の頭をこの杖で潰す。
んー、だが、俺様そういうことするの初めてだからなァ。
まぁ、この俺様に初めて頭を潰された人間となれるなら栄誉だろ。
誇りをもって逝ってくれ」
ゆっくりと、僕の後ろから一歩ずつ奴が近寄ってくる音が聞こえる。
こんなところで死ぬのか？
僕は誰にも、何も返せていないというのに。
「嫌だ……」
「そうだろうな。嫌だよなァ。なぜ死ななきゃならないんだ？
わかるわかる。突然過ぎて理不尽だよなァ。
まぁ、お前は一切合切な〜んにも悪くはねぇんだろう。
ただちょいと運命が狂って巻き込まれただけのガキなんだろう。
そいつを一言で結論付けりゃ……『不運』だっただけだ。
……だが人の生き死にって結局そんなもんだぜ？」
『不運』か。なら仕方ないのかな。
親父だって『不運』な事故には勝てなかったんだ。
親父が死んだ日もこんな蒸し暑い日だった。
おしゃべりな死神は、わざわざうつ伏せになってる僕の目の前まで来た。
これから殺されるのがきちんと見えるように、だろうか。悪趣味なやつだ。
「お前は一体何者だったんだろうな……？
じゃあな。せいぜいあの世で俺様の凄さを広めてくれっよっとぉ！」
男は、両手で持った杖を、力任せに大ぶりで振り下ろす。
まるで畑を耕す農夫のようだ。
僕は時間が止まったかのように、すごくゆっくりとそれを認識している。
これから僕は死ぬ。『不運』にも僕は死ぬ。
頭の狂った男に頭を潰されて僕は死ぬ。
水無月サクヤ享年16歳。
何も成すこともなく、何も残せず、死にゆく子供。
冷静にただ現実を眺める僕の頭。
それに対して僕の心に湧いてきたのは……
――――怒りだ。
なぜ僕が死ななくちゃならない？ なぜ僕はそれをただ受け入れようとしている？
こんなものが現実であるものか！ だったらさぁ！
死ぬべきなのは目の前の頭のおかしい奴だろう！！ 死ねよ！！ 死ねったら！
助けてくれたと思ったら！ わけのわからない勝手なこと言って殺そうとしてくる！
なんなんだよお前！ 善良に生きてきた僕みたいな学生じゃなくて！
お前のようなサイコパスが死んでしまえよ今すぐに！！
いいや殺してやる！！ 殺してやるぞ！！ クソダセェ青メッシュが！
僕は力を望む！！ 奴の喉元に突き立てる牙を！！
この理不尽を！ この運命を！ 牙を持って噛み殺してやる！！
それまで、意地でも、絶対に、
「死んでたまるものかよぉぉぉぉぉ！！」
怒りは言霊となり、何かが自分の中で弾けた。
そして内側から出た光の本流が押しだされる。
右手に痛みが走る。目の前になにかが形作られ生まれていく。あれは剣？
振り下ろされた杖は見えないなにかに阻まれる。
「あぎゃぴー！？」
そのなにかに蹴り飛ばされ、男が転がっていく。
少女だ。鎧に身を包んだブロンドの長い髪の少女が僕の前に立っていた。
その光景に、僕は心を奪われた。
「なんて…美しい剣 」
思わず口から出ていた言葉。だが僕はすぐに違和感を覚える。
彼女はなにも持っていないのだ。確かに光の中で剣を持つ誰かが見えたのに。
少女に見惚れて止まっていた時間は、あの男の声で動き出した。
「な、なんだお前は！ いきなり現れて俺様の邪魔をしやがって！ てめぇのクラスは！？」
「セイバー」
「せ、せ、せ、セイバーだとぉ！？ おいおいセイバーはもう居るだろうがァ！？ エクストラクラスじゃねぇのかよ！？」
男は少女に杖を向け、そこから光をまとった弾丸を発射する。
僕を背中から襲ったのはあれか。
だが、少女は意にも返さず進んでいく。
いかなる原理かは知らないが、光弾は、少女に触れる前にかき消えてしまうのだ。
「対魔力ってやつか！ ズルくないか！？ これが英霊同士の戦いってやつかよ！」
少女はこの一瞬で男の眼前にたどり着いていた。
すでに間合いに入ったのだと分かった。
「嫌なもんだなァ、自分の詰みも計算できちまう頭ってのも」
男は観念したようにうなだれ両手を上げる。
セイバーと名乗った少女は、見えない剣で切り伏せる。
すると男は、消滅した。
死体も残らず消えたのだろうか？
「た、倒した……？」
「いえ、霊核を壊した手応えがありません。おそらく令呪で転移されました」
僕の言葉に少女が答えた。
令呪…？ ゲームで言う魔法とか奥義みたいなものだろうか。
「申し遅れました。貴方が、私のマスターですか？」
「マスター…？」
右手に浮かんでいるこの印がそうなのだろうか。
「たぶん…そう……なるのだろうな？」
「契約、承認─────サーヴァント、セイバー。
今は仮初の関係ではありますが、これより貴方の剣となりましょう。
……立てますか？」
少女に抱えられ、立ち上がる。少し、男として情けなさを感じる。
痛みはひどいが、なんとか体は動かせる。
「一体なんなんだ。僕は本当に死ぬところだったのか？ そんなわけないよな？
何が起きてるんだ！ 僕は何に巻き込まれたのだ！？ サーヴァントってなんなんだ！？ 誰か説明してくれよ！！」
だが、僕の口は彼女の手で塞がれる。
「黙ってくださいマスター。また誰かが来ました」
「あら、もう気づいていたのね。とりあえずこんばんわ───水無月くん」
その女性を、僕は学園で見かけたことがある。
話したことはないが、名前ぐらいは知っている。
「……枢木…楡？」
（ここでTV版はEDテーマが流れる）
NEXT
「冷静に考えてみればここもクオリアの一部なんだろうし命の危険なんてなかったのではないか？」
「───そして、この仮想都市《TSUCHIKA》で行われる聖杯戦争の監督役の人間でもある」
「…ブッ潰せ！！ バーサーカー！！」
水無月サクヤは電子世界クオリアで行われる推しのバンドのLIVEへ向かう途中、
近道をした所、血まみれの黒い魔女に出会ってしまう。
彼女から絶対に破壊してほしいと十字の形をしたプログラムデータを渡される。
だが、その後のLIVEの熱狂で、そんなことはすっかり忘れてしまっていた。
しばらくして、親父の墓参りを終えた後、プログラムのことを思い出す。
破壊する前にこれがなんなのか興味が出た水無月サクヤは迂闊にも開こうとする。
すると、彼は意識を失ってしまい、目覚めるとそこは見知らぬ街だった。
多分こんな感じ
なんだここは？
あのプログラムを動かした時、クオリアへログインするのと同じ感覚があった。
だがここはクオリアのスタートに設定しているホームエリアではない。
クオリア上に存在しているのかもしれないが。
周囲を見渡せば、古い作りの家が立ち並ぶ。まるで歴史物のドラマか映画の世界だ。
今が夜なことを考えるとリアルの時間と連動もしているだろう。
それに僕の体もアバターではなく現実のもののようだ。
どうやら服や小物も現実と同じものが再現されている。内ポケットに手鏡もある。
確認すると僕の顔も現実と同じだ。
ただ僕がいつも隠し持って学園がテロリストに占拠されたときのための妄想を捗らせ、
遅刻した時無理やり校門を抜けて入るための2100年モデルのワイヤーガンは動かなかった。
どうやらある程度は持ち込めるが、こういう機械的な便利アイテムは禁止みたいだな。
インプラントデバイスの機能も一切使えない。
……あれ？ そうなるとログアウトもできないのではないか？
察するにあのプログラムはこの新作VR体感型ゲームへのログイン用だったんだろう。
このエリアは開発中でテスト用。
セキュリティのために特定の場所でしかログアウト不可能という辺りだろう。
とりあえず、状況把握は出来た。
この世界を探索してみよう。チュートリアルに出会うかもしれない。
そんな感じで探索しているうちに僕は躓いて転んだ。すげぇリアルな痛みが来る。
「痛い…心が痛い…こうして僕は泣いてしまうのであった」
いや誰も居ないところで遊んでも仕方ないな…。恥ずかしくなってきた。
でもなんか右手、すごい痛い。手の甲にうっすらアザみたいなの出来てる。
クオリア上でここまで再現できるのか。
このゲーム、正式サービス開始したらウケるのは間違いないな。
それにしてもさっきから人に出会わない。今何時だろうか。
街灯が当たりを照らしているからそこまで暗く感じないが…。
やはりアクセサリーとしても腕時計は買っておくべきか。
そうこうして見知らぬ土地を歩いているうちに美術館にたどり着いてしまった。
看板を見ると、土夏私立美術館「土夏アートの森」と書いてある。
こういうところってなんかいいアイテムありそう。
閉園時間のようだが、なぜか隙間が開いている。
なんとも好奇心を抱かせるではないか。
隙間から恐る恐る中を見渡してみれば、思ったとおり不可思議なものをみた。
モンスター。
ゴーストとかそういうタイプ。物理攻撃無効ついてそうな透けてる奴ら。
それを蹴散らす槍を持った人がうっすらと月明かりに照らされて見えた。
なんだか子供がボソボソしゃべる声も上の方から聞こえてる気がする。
その途端、上の方からなんかが飛んで来て、槍の人が居る所が爆発した。
あ、これやばそう。
クオリアなら死ぬことはないだろうが痛い思いはしたくない。
当然、見なかったことにして回れ右をして逃げだす。
巻き込まれたら終わりのやつだ。
分かれ道。右の通路へ迷わず行く。
僕はこういうとき利き手のほうに行くことにしている。
「おいガキ、そっちは死ぬぞ。こっちだ」
後ろから誰かの掛け声がする。
振り向いたら、見知らぬ男が居た。僕よりちょっと背が高い。
腕を掴まれて、左の脇道へ引き込まれる。
直後、右の脇道の家が吹き飛んだ。
あの謎ボムの流れ弾が飛んできたらしい。
もし、もしも振り向かずに向こうに行っていたら……
「ここまで離れてまだあぶねぇってホ〜ントやんなっちゃう。
何が偵察だ！ 俺様がやることじゃねぇだろ！
おい、もちっと逃げたほうがいいぞ。走れガキ」
「あ、はい！」
そして、僕はその男と一緒に息が切れるまで走った。
こんなに走ったのいつ以来だ？ ダッシュボード使わせろ。
だが、黒髪に青メッシュを入れた男のほうはこれだけ走ったというのに息を切らしていない。
大人って凄い。
「ここまでくりゃ流石に大丈夫だろうよ」
「あの…助けてくれてありがとうございます。この恩は必ず返す…」
「いいんだよ。お前みたいなガキにそこまで求めてねぇ。
ただ……お前みたいなのを救う優しさを見せる心もイケメンな俺様の活躍をしっかり心に刻んでほしい！
家族や友達に話し、結婚相手にも伝えろ！ 『まぁなんて素敵な人なの！ あなたの恩人ね！』
そしてお前はこの出来事を胸に、俺様のような英雄を見習い政治家や社長を目指し権力を得て、
感謝の証としてこの街にすごいでかい俺様の像を立てる！
それを見た人々は名も知らぬ少年を危険を犯して助けるなんて感動的な逸話に涙し俺様を崇める！
そして俺様の名声はお前の未来永劫子々孫々に受け継がれ新たな神話となる！
世界に俺様を主人公とした創作が溢れかえる！
ただそれだけでいいんだぜ」
なんだこいつ。
やっぱクオリアは変な人がよくいる。
「……えっと、さっきのあいつらはなんなんだ？ 巻き込まれたらゲームオーバーだったのか？」
「まぁそういうことだ。あんな化け物どもと俺様を一緒にするなってんだよな…。呼ばれたからには来てやるがよ」
この男の人もこのゲームの参加者…なんだろうか？
「ここは一体何なんです？ クオリアなんですよね？」
「――――クオリアかァ…。*1隠しエリアみたいなもんだそうだ。
そこで化け物共がバトルロイヤルやってるのさ。おいお前、名前は？」
「アカウント名でいいでしょう？ 本名は流石に言えませんよ」
「いいじゃねぇか、どうせここじゃ素顔だろ」
それもそうか。
「……ミカズキタクヤだ」
だが、こんな変な人に本名教えたくない。アカウント名もだ。だったら偽名しかない。
確かスパイ映画で偽名は一文字変える程度が自然に反応できるって言ってたのを思い出した。
子音を一致させるのがいいらしい。
「じゃあタクヤくん、頼みがあるんだがなァ。
ちょいと向こうの角見てくれねぇか？ 俺様はあっち」
まぁそれぐらいなら。
指示された方向に歩きだす。確かにまだ安全といいきるには速いか。
「……ああ、もう1つ頼みがある。死んでくれ、
突然背中で風の音がして、衝撃が僕の体を押し出した。
きっとトラックに衝突されたらこんな感じ。
地面に叩きつけられる。痛い。痛いとかじゃない。そういう痛さを超える痛み。
ひゅー…ひゅー…
何だこの音。僕の喉から出てる音か。
「ああ？ まだ息があんのか？ 俺様、人殺し向いてなさすぎだろ」
なんで？ なにかに撃たれた？ あの男はサイコパスだったのか？
もしかして本当に死んじゃう？
いいから逃げろ。逃げろ。逃げろ。逃げろ。
頭にめぐる考えはそれだけ。
なのに体は動かない。痛みしか伝えてこない。
それもどこが痛いのかよくわからなくなってきた。
普段からもっと鍛えておけば違ったのだろうか。
運動部に所属していれば違っただろうか。
「仕方ないからこれからお前の頭をこの杖で潰す。
んー、だが、俺様そういうことするの初めてだからなァ。
まぁ、この俺様に初めて頭を潰された人間となれるなら栄誉だろ。
誇りをもって逝ってくれ」
ゆっくりと、僕の後ろから一歩ずつ奴が近寄ってくる音が聞こえる。
こんなところで死ぬのか？
僕は誰にも、何も返せていないというのに。
「嫌だ……」
「そうだろうな。嫌だよなァ。なぜ死ななきゃならないんだ？
わかるわかる。突然過ぎて理不尽だよなァ。
まぁ、お前は一切合切な〜んにも悪くはねぇんだろう。
ただちょいと運命が狂って巻き込まれただけのガキなんだろう。
そいつを一言で結論付けりゃ……『不運』だっただけだ。
……だが人の生き死にって結局そんなもんだぜ？」
『不運』か。なら仕方ないのかな。
親父だって『不運』な事故には勝てなかったんだ。
親父が死んだ日もこんな蒸し暑い日だった。
おしゃべりな死神は、わざわざうつ伏せになってる僕の目の前まで来た。
これから殺されるのがきちんと見えるように、だろうか。悪趣味なやつだ。
「お前は一体何者だったんだろうな……？
じゃあな。せいぜいあの世で俺様の凄さを広めてくれっよっとぉ！」
男は、両手で持った杖を、力任せに大ぶりで振り下ろす。
まるで畑を耕す農夫のようだ。
僕は時間が止まったかのように、すごくゆっくりとそれを認識している。
これから僕は死ぬ。『不運』にも僕は死ぬ。
頭の狂った男に頭を潰されて僕は死ぬ。
水無月サクヤ享年16歳。
何も成すこともなく、何も残せず、死にゆく子供。
冷静にただ現実を眺める僕の頭。
それに対して僕の心に湧いてきたのは……
――――怒りだ。
なぜ僕が死ななくちゃならない？ なぜ僕はそれをただ受け入れようとしている？
こんなものが現実であるものか！ だったらさぁ！
死ぬべきなのは目の前の頭のおかしい奴だろう！！ 死ねよ！！ 死ねったら！
助けてくれたと思ったら！ わけのわからない勝手なこと言って殺そうとしてくる！
なんなんだよお前！ 善良に生きてきた僕みたいな学生じゃなくて！
お前のようなサイコパスが死んでしまえよ今すぐに！！
いいや殺してやる！！ 殺してやるぞ！！ クソダセェ青メッシュが！
僕は力を望む！！ 奴の喉元に突き立てる牙を！！
この理不尽を！ この運命を！ 牙を持って噛み殺してやる！！
それまで、意地でも、絶対に、
「死んでたまるものかよぉぉぉぉぉ！！」
怒りは言霊となり、何かが自分の中で弾けた。
そして内側から出た光の本流が押しだされる。
右手に痛みが走る。目の前になにかが形作られ生まれていく。あれは剣？
振り下ろされた杖は見えないなにかに阻まれる。
「あぎゃぴー！？」
そのなにかに蹴り飛ばされ、男が転がっていく。
少女だ。鎧に身を包んだブロンドの長い髪の少女が僕の前に立っていた。
その光景に、僕は心を奪われた。
「なんて…美しい
思わず口から出ていた言葉。だが僕はすぐに違和感を覚える。
彼女はなにも持っていないのだ。確かに光の中で剣を持つ誰かが見えたのに。
少女に見惚れて止まっていた時間は、あの男の声で動き出した。
「な、なんだお前は！ いきなり現れて俺様の邪魔をしやがって！ てめぇのクラスは！？」
「セイバー」
「せ、せ、せ、セイバーだとぉ！？ おいおいセイバーはもう居るだろうがァ！？ エクストラクラスじゃねぇのかよ！？」
男は少女に杖を向け、そこから光をまとった弾丸を発射する。
僕を背中から襲ったのはあれか。
だが、少女は意にも返さず進んでいく。
いかなる原理かは知らないが、光弾は、少女に触れる前にかき消えてしまうのだ。
「対魔力ってやつか！ ズルくないか！？ これが英霊同士の戦いってやつかよ！」
少女はこの一瞬で男の眼前にたどり着いていた。
すでに間合いに入ったのだと分かった。
「嫌なもんだなァ、自分の詰みも計算できちまう頭ってのも」
男は観念したようにうなだれ両手を上げる。
セイバーと名乗った少女は、見えない剣で切り伏せる。
すると男は、消滅した。
死体も残らず消えたのだろうか？
「た、倒した……？」
「いえ、霊核を壊した手応えがありません。おそらく令呪で転移されました」
僕の言葉に少女が答えた。
令呪…？ ゲームで言う魔法とか奥義みたいなものだろうか。
「申し遅れました。貴方が、私のマスターですか？」
「マスター…？」
右手に浮かんでいるこの印がそうなのだろうか。
「たぶん…そう……なるのだろうな？」
「契約、承認─────サーヴァント、セイバー。
今は仮初の関係ではありますが、これより貴方の剣となりましょう。
……立てますか？」
少女に抱えられ、立ち上がる。少し、男として情けなさを感じる。
痛みはひどいが、なんとか体は動かせる。
「一体なんなんだ。僕は本当に死ぬところだったのか？ そんなわけないよな？
何が起きてるんだ！ 僕は何に巻き込まれたのだ！？ サーヴァントってなんなんだ！？ 誰か説明してくれよ！！」
だが、僕の口は彼女の手で塞がれる。
「黙ってくださいマスター。また誰かが来ました」
「あら、もう気づいていたのね。とりあえずこんばんわ───水無月くん」
その女性を、僕は学園で見かけたことがある。
話したことはないが、名前ぐらいは知っている。
「……枢木…楡？」
（ここでTV版はEDテーマが流れる）
NEXT
「冷静に考えてみればここもクオリアの一部なんだろうし命の危険なんてなかったのではないか？」
「───そして、この仮想都市《TSUCHIKA》で行われる聖杯戦争の監督役の人間でもある」
「…ブッ潰せ！！ バーサーカー！！」
告白
2102年の聖杯戦争シナリオ 9章より
イメージミュージック：Aqua Timez-千の夜をこえて
イメージミュージック：Aqua Timez-千の夜をこえて
「……確認するぞ鱗画聖永。僕のセイバー にもう僕の声は届かないのだな？」
「そうだ。もはやお前が何をしようと無駄だ」
「それを聞けて安心したよ。僕はこれからとても馬鹿なことをする。とても正気じゃない。
彼女に聴こえていたら、こんなことを言う勇気は僕にはない！」
そして彼は、勢いよく息を吸う。決意を持って空気を取り込み、そして解き放った。
「セイバー！！好きだあああああああああああああああああああ！！
忘れもしない7月7日、あの運命の夜！
ひと目見たときからずっと君に夢中だ！きっとこれって恋をしたってことなんだ！
そうだとも！正直に言ってやろう！僕は君に恋しているのだ。愛しているのだ。この気持を抑えることなど、神であろうとできるものか！
剣を振るい戦う時の可憐な君の姿を美しいと思う。ロールケーキを頬張る可愛い君を愛おしいと思う。
君の一挙手一投足全てが僕の頭脳を刺激する。君に着せたいコーディネートがずっと浮かんでくる。
気づけばずっと君の喜ぶ顔を思い浮かべてる。
この2週間僕の頭は君でいっぱいなんだ。君が居なくなるなんて考えられないんだ。
唯との戦いで君を失うと思った時、僕の体が動いていた。
僕は君のためであっても、すべてを失っても良いなんて考えられる人間じゃないんだ。
妹だって大事だし夢も叶えてないしまだまだ死にたくなんてない平凡で弱い人間だ。
でもあの時、僕は動いていたのだ。動いていたのだ。だったら！そうなんだろう！？
これが君を愛してるってことなのだ！僕はおかしくなったのだ！
今だってそうだ！！こんなことを口走るなんて、あの時みたく友達を失うと思うとできなかった！
セイバーは友達を知りたいと言ったね。僕はそれに答えようと良き友達であろうとしたのだ。
こんな僕にはそれ以上の関係なんて背負いきれるものじゃない。怖くて想像だってできやしなかった。
だが僕はもう我慢できない！君と友達以上になりたいんだ！恋人以上にだって！！
君と一緒にもっともっと色んな思い出を増やしていきたい！僕のことだってもっと知ってほしい！
良いところだって！ダメなところだって！好きなとこも嫌なとこも君には全て知ってほしい！
だから、先に謝っておくよ。僕は惚れっぽい人間らしい。流されやすいし影響だってされやすい自覚はある。
これだけ思っている君と一緒に居ても、可愛い女の子を見たらときめくことだってあるだろう。
そんな時、君にはほんのちょっとでもいいから嫉妬して欲しいんだ！君のヤキモチだって僕のものにしたい！
わがままだって言ってくれてかまわない。それでも僕は君のすべてが欲しいんです！！
僕の世界は破けてしまって、そこには君が開けた孔があります。この孔を埋められるのは君しかいません。
誰かを傷つけてでも君の笑顔が手に入るなら、死後地獄にだって行ってやります！
君が振り向いてくれるなら、どんな酷い裁きにあっても構いません。
だから、悪魔と契約してでも、どんなことになろうとも、君を奪います。そして抱きしめてみせます！！
抱きしめるだけで終わらせません。キスをします！
キスのあとは、君と歓びを分かち合えることならなんだってやってあげます！
これが僕の嘘偽りない気持ちなのです。
これから宣言通り、君を奪いに行きます。
何も言わないでいいです。何も答えずとも構いません。ただ奪われてくれることだけが僕の望みです。
もう一度、そしてこれからずっと、僕のセイバーとなってください」
「そうだ。もはやお前が何をしようと無駄だ」
「それを聞けて安心したよ。僕はこれからとても馬鹿なことをする。とても正気じゃない。
彼女に聴こえていたら、こんなことを言う勇気は僕にはない！」
そして彼は、勢いよく息を吸う。決意を持って空気を取り込み、そして解き放った。
「セイバー！！好きだあああああああああああああああああああ！！
忘れもしない7月7日、あの運命の夜！
ひと目見たときからずっと君に夢中だ！きっとこれって恋をしたってことなんだ！
そうだとも！正直に言ってやろう！僕は君に恋しているのだ。愛しているのだ。この気持を抑えることなど、神であろうとできるものか！
剣を振るい戦う時の可憐な君の姿を美しいと思う。ロールケーキを頬張る可愛い君を愛おしいと思う。
君の一挙手一投足全てが僕の頭脳を刺激する。君に着せたいコーディネートがずっと浮かんでくる。
気づけばずっと君の喜ぶ顔を思い浮かべてる。
この2週間僕の頭は君でいっぱいなんだ。君が居なくなるなんて考えられないんだ。
唯との戦いで君を失うと思った時、僕の体が動いていた。
僕は君のためであっても、すべてを失っても良いなんて考えられる人間じゃないんだ。
妹だって大事だし夢も叶えてないしまだまだ死にたくなんてない平凡で弱い人間だ。
でもあの時、僕は動いていたのだ。動いていたのだ。だったら！そうなんだろう！？
これが君を愛してるってことなのだ！僕はおかしくなったのだ！
今だってそうだ！！こんなことを口走るなんて、あの時みたく友達を失うと思うとできなかった！
セイバーは友達を知りたいと言ったね。僕はそれに答えようと良き友達であろうとしたのだ。
こんな僕にはそれ以上の関係なんて背負いきれるものじゃない。怖くて想像だってできやしなかった。
だが僕はもう我慢できない！君と友達以上になりたいんだ！恋人以上にだって！！
君と一緒にもっともっと色んな思い出を増やしていきたい！僕のことだってもっと知ってほしい！
良いところだって！ダメなところだって！好きなとこも嫌なとこも君には全て知ってほしい！
だから、先に謝っておくよ。僕は惚れっぽい人間らしい。流されやすいし影響だってされやすい自覚はある。
これだけ思っている君と一緒に居ても、可愛い女の子を見たらときめくことだってあるだろう。
そんな時、君にはほんのちょっとでもいいから嫉妬して欲しいんだ！君のヤキモチだって僕のものにしたい！
わがままだって言ってくれてかまわない。それでも僕は君のすべてが欲しいんです！！
僕の世界は破けてしまって、そこには君が開けた孔があります。この孔を埋められるのは君しかいません。
誰かを傷つけてでも君の笑顔が手に入るなら、死後地獄にだって行ってやります！
君が振り向いてくれるなら、どんな酷い裁きにあっても構いません。
だから、悪魔と契約してでも、どんなことになろうとも、君を奪います。そして抱きしめてみせます！！
抱きしめるだけで終わらせません。キスをします！
キスのあとは、君と歓びを分かち合えることならなんだってやってあげます！
これが僕の嘘偽りない気持ちなのです。
これから宣言通り、君を奪いに行きます。
何も言わないでいいです。何も答えずとも構いません。ただ奪われてくれることだけが僕の望みです。
もう一度、そしてこれからずっと、僕のセイバーとなってください」
「なぁシン…突然美少女アバターにされたいと思ったことはないか」
「……何を言っている？」
「僕にはあるのだ！そういう思いが！！いつものログインから突然謎の美少女アバターに！
もちろんログアウトとか不具合報告とかそういうのはできないのだ！
何かに巻き込まれたのかとこの状況を不安に思いながらも非日常的出来事に心を踊らせこれが自分かと思うほどの美しさに女らしい立ち振舞を心がけるようになってしまう！」
「ハァ……それで？」
「男どもを手玉に取り貢がせる女になったら誰でもやりたい夢の生活をしていたのに謎の組織に見つかってしまう！
彼らは僕を何者かと勘違いしているようだ！
スゴイハッキング能力を持つ彼らの前に絶世の美少女である僕は捕まってしまう！
ああこれから僕はどうなってしまうの？
だがそこに飛び込んできた謎の騎士！悪漢共を斬り捨てる！彼は一体何者なのだろうか！？」
「もういいか？知ってると思うが次数学のテストだぞ遅れるなよサクヤ」
「それは早く言ってくれたまえよ！あの先生はちょっとした遅刻でもうるさすぎる！
待ってくれシン僕を置いていかないでくれ〜」
「……何を言っている？」
「僕にはあるのだ！そういう思いが！！いつものログインから突然謎の美少女アバターに！
もちろんログアウトとか不具合報告とかそういうのはできないのだ！
何かに巻き込まれたのかとこの状況を不安に思いながらも非日常的出来事に心を踊らせこれが自分かと思うほどの美しさに女らしい立ち振舞を心がけるようになってしまう！」
「ハァ……それで？」
「男どもを手玉に取り貢がせる女になったら誰でもやりたい夢の生活をしていたのに謎の組織に見つかってしまう！
彼らは僕を何者かと勘違いしているようだ！
スゴイハッキング能力を持つ彼らの前に絶世の美少女である僕は捕まってしまう！
ああこれから僕はどうなってしまうの？
だがそこに飛び込んできた謎の騎士！悪漢共を斬り捨てる！彼は一体何者なのだろうか！？」
「もういいか？知ってると思うが次数学のテストだぞ遅れるなよサクヤ」
「それは早く言ってくれたまえよ！あの先生はちょっとした遅刻でもうるさすぎる！
待ってくれシン僕を置いていかないでくれ〜」
スレに投げられた雑多なSSまとめ
本当に雑多
昨晩あんなことがあったらずぅーっと考えるわよ！ちん○んのこと！
仕方ないじゃない！挿絵とか写真とか映像とかそういうので見たことはあっても生ちん○んは初めてだったんだもの！
しかもそれが私の中に挿入ってたんだもの！全部！だから延々考えてたわよちん○んのこと！
何ならあの後で思い出してしたわ！「うわっ、全然届いてたところまで届かないじゃないこんなのじゃ…」って思ったわよ！
今日君と初めて顔を合わせた時も「ここにあの大きいのが収まって…」と想像してついちらっと股間を見たりしたわよ！
はあ！？『そこまで聞いてない』ですって！？そうよ！もう破れかぶれよ！投げやりよ！
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！も゛う゛ひ゛と゛い゛き゛に゛こ゛ろ゛せ゛え゛え゛え゛え゛え゛！
…ぐすんぐすん。どうしてこんなことに…私もう全然普通じゃない…こんな子じゃなかったはずなのに…。
全部君が悪いのよ君が…どう責任取ってくれるのよ…。
…『努力する』？…もう。何をどう努力する気なのよ。まったく…。
（だいたい原文ママ）
ほら可愛さ綺麗さ可憐さでは間違いなくセイバーの方が上だし。私胸ないし。胸平らだし。平野が広がってるし
何言わせるのよぶっ飛ばすわよこの野郎。とにかくセイバーに言われるのは惨めというか情けないというか
知らぬは本人ばかりなり、ということですね。
いいですかニレ、貴女はこと体型や美貌の話になると自傷と自嘲ばかりですがそんなことはありません。
まずその顔。貴女は私の方が上と言いますけど、私からすればニレのほうが数十倍も綺麗だと思います。
私はサーヴァントであり精霊、初めから綺麗に作られたモノ。美しくあって当然のものなのです。
ですがニレは違います。ニレは生きている。
全てが変わりゆく時の流れの中で、努力し保たれる美しさには、私にはない躍動感が宿るのです。
また胸が小ささを卑下することはありません。ニレも知るようにサクヤは小さい胸も愛せます。
そして何より、自分からは言わないものの実は一番気にしてるであろうその脚です！
メリハリのある体型から生まれるくびれ、そして脚線美はヴィーナスの女神もかくやというもの。
お尻からふともも、ひざ、ふくらはぎから流れていき、踵で曲がって指先に届く、そのライン。
それこそがニレの一番の強み、ニレの聖剣なのです。
いいですか、何度でも言いますがニレは可愛いのです。
もっと自信を持ってください。……貴女には苦悶の表情や涙ではなく、笑顔こそが似合うのですから。
ちょっ…え゛え゛え゛え゛え゛！？だ、だって今まだ21時…！
どういうこと！？まさか聖杯戦争のルール変更…！？
…あっ…時計…止まってた…今22時…21時じゃない…。
なんで…？どうしてこう致命的なタイミングで時計が死んでるの…？馬鹿なの…？
まっ、まままま待って！？私この格好で戦えっていうの！？すっぽんぽんで！？全裸で！？
服！服はどこ！？なにかあるでしょうこの無人の家にだって！
せっせと一晩かけて私の工房化したこの家にだって！何かあるはずでしょ！？
せめて羽織るものくらい！なにかあるでしょ！？…あれっ。
…あっ…水無月、クン…どうしてこんなところに…いるの…カナ？
どうして…こんなところに都合よく…ログインしてるの…カナ？
昨日同じところでログアウトしたから？ううんそういう都合の悪い情報は聞かない。聞こえない。私の理解の範疇外にスロー。よし着陸完了。
だからその可能\性を考慮しなかった私の落ち度は存在しない。その通りのはずよね。
うん。殺す。君をぶっ殺して私も死ぬ。アーチャー。戦闘準備よ。水無月くんのセイバーもろとも決着をつけるときが来たわ。
何よアーチャー！私の命令通り動きなさいよぉ！
どういうこと！？まさか聖杯戦争のルール変更…！？
…あっ…時計…止まってた…今22時…21時じゃない…。
なんで…？どうしてこう致命的なタイミングで時計が死んでるの…？馬鹿なの…？
まっ、まままま待って！？私この格好で戦えっていうの！？すっぽんぽんで！？全裸で！？
服！服はどこ！？なにかあるでしょうこの無人の家にだって！
せっせと一晩かけて私の工房化したこの家にだって！何かあるはずでしょ！？
せめて羽織るものくらい！なにかあるでしょ！？…あれっ。
…あっ…水無月、クン…どうしてこんなところに…いるの…カナ？
どうして…こんなところに都合よく…ログインしてるの…カナ？
昨日同じところでログアウトしたから？ううんそういう都合の悪い情報は聞かない。聞こえない。私の理解の範疇外にスロー。よし着陸完了。
だからその可能\性を考慮しなかった私の落ち度は存在しない。その通りのはずよね。
うん。殺す。君をぶっ殺して私も死ぬ。アーチャー。戦闘準備よ。水無月くんのセイバーもろとも決着をつけるときが来たわ。
何よアーチャー！私の命令通り動きなさいよぉ！
何よあなたたち！寄ってたかって私のことをやれギャグキャラだのやれ藤原竜也変換ツールで喋りそうだの…！
私ヒロインなのよ！？凄くシリアスな過去だって背負ってるし！
水無月くんと反目しあいながら自分の内面と見つめ合って信条を捨てずとも少しだけ前向きに歩いていく未来だってあるのよ！
それをコメディ担当みたいな扱いをして…！少しは恥ってものを感じないのかしら！？
まったく困ったものね。はいレス完了っと。これで少しは落ち着くでしょう。
それにしても…ふーん…ここが水無月くんの部屋…彼らしく服で一杯ね。
…。……。………。よし見つけた。
隠し方が甘いのよね。本人は巧妙に隠したつもりなんでしょうけれど私にはお見通しよ。
これ見よがしにベッドの上に置いておこうっと。蒼白になる水無月くんの顔を思うと気分もすっきりするわ。
………。ちょっとだけ…。ﾍﾟﾗｯ。ﾁﾗｯ。
ふ、ふーん。このくらい黒魔術じゃ基礎で習う内容ね。全くつまらない…。
…うわっ。そんなことまでするの。うわ、うわ…そ、そっちに挿れちゃうの！？うわー…。
ふーん…ふーん…うわ、えぐっ…うわー…ﾍﾟﾗｯ…ﾍﾟﾗｯ。
───え？何してるの、って？これは、その。
こ、こういうのは秘することこそが社会通念であり、また魔術的にも神秘の源になるわ。
それを私が勝手に暴いたこと？私は魔術師だからいいのよ。
それに別に私は水無月くんがこういうものを持っていること自体を否定するつもりはありません。
彼だって年頃の男の子だもの。性に興味を持つのは当然でしょう？
それはそれとして、彼が些か健常ではない趣味趣向を持っているかどうか確認するのは彼との関係を見直す切っ掛けとして重要よ。
ほら見なさいセイバー。ここをこうして…こうよ。
こんなアブノーマルな趣向を主とした本を持っているというのは彼との付き合い方を考え直す必要がある。そういうこと。
なに？気にしない？水無月くんがどういう趣味であろうと信頼は揺るがない？
ぐぬぬ。そういうところずるいわよねあなた…。いえなんでも。
ともかく片っ端からチェックする必要があるわ。セイバーあなたも付き合いなさい。
これなんて物理的に入るかどうか怪しいじゃないの。水無月くんは女の子をどうしたいというのかしら。
さあセイバー！次の本よ！…ワクワクなんてしてないからっ！
（甘い…甘いぞ枢木楡！！部屋にあるのはいわば撒き餌！
本当に見られたくないヤバい物は電子化してデータとして
クオリア上の秘密エリアに隠してある…！！
なんかそういうの見れそうなのが投稿された気がするがいくらなんでもアレを見ることなど……）
いいえニレ、貴女が興奮していることは我が王が女性である以上に明らかです。
それになぜ否定するのでしょう。性に興味を持つのは年頃の男性だけの特権ではありません。
好きな人の期待に応えたい、好きな人の好みを把握したいというのは恋する乙女として真っ当です。
そもそもサクヤに変態的な趣味嗜好があったとしても、ニレは彼を嫌いにはなりませんよね？
それよりも、彼について知るのならむしろ電子データを洗うべきかと。
サクヤは普段から現実よりもクオリアでの活動の比率が高いですし、本命はそちらだと思います。精霊もそうだそうだと囁いています。
という訳でいざ開帳。……これは、すごいですね。
わ、わわ私は興奮しているわけじゃ…これはあくまで！その！
恋してとか！な、ななななんでそんなこと言うかなぁ！…まあ、猟奇的なのなんてむしろこちら側の範疇だし？気にしないのは、そうだけど…。
けれどあなたの言う通りねセイバー。本命はやはり《クオリア》上。
だいたい水無月くん、私がハッカーとしても一流なの忘れているんじゃないかしら。
ちょちょいのちょい。はいセキュリティ突破。ふんふん、これが水無月くんの個人的なエリア…。
隠しているのはだいたいこのあたりだと思うのよね…。…よし！ガッチャ！
…セイバー。ひょっとしたらあなたが正解だったかもしれない。
タイトルからしてもう嫌な気配が漂ってる。私たちは深淵に触れる前に引き返すべきだったのかも。
でももう遅いのよ。冥府の門は潜ってしまったの。ここからはオルフェウスよろしく振り返られないわ。
いざ！開けゴマ！
うわっ…これ…うわっ…。ごめんいろいろ発言を訂正。
ちょっと人間性を疑うというか…。水無月くんと私たちを同じ人間としてカウントしたくなくなるというか…。
いやでもこういうのが好きなら…でも…うわー。セイバー、こういうのイケる？…そうよねぇ。
私ヒロインなのよ！？凄くシリアスな過去だって背負ってるし！
水無月くんと反目しあいながら自分の内面と見つめ合って信条を捨てずとも少しだけ前向きに歩いていく未来だってあるのよ！
それをコメディ担当みたいな扱いをして…！少しは恥ってものを感じないのかしら！？
まったく困ったものね。はいレス完了っと。これで少しは落ち着くでしょう。
それにしても…ふーん…ここが水無月くんの部屋…彼らしく服で一杯ね。
…。……。………。よし見つけた。
隠し方が甘いのよね。本人は巧妙に隠したつもりなんでしょうけれど私にはお見通しよ。
これ見よがしにベッドの上に置いておこうっと。蒼白になる水無月くんの顔を思うと気分もすっきりするわ。
………。ちょっとだけ…。ﾍﾟﾗｯ。ﾁﾗｯ。
ふ、ふーん。このくらい黒魔術じゃ基礎で習う内容ね。全くつまらない…。
…うわっ。そんなことまでするの。うわ、うわ…そ、そっちに挿れちゃうの！？うわー…。
ふーん…ふーん…うわ、えぐっ…うわー…ﾍﾟﾗｯ…ﾍﾟﾗｯ。
───え？何してるの、って？これは、その。
セイバー「気になるのなら堂々と読めばよいのでは？」何を言っているのセイバー。少しは恥じらいを持ったらどうかしら。
こ、こういうのは秘することこそが社会通念であり、また魔術的にも神秘の源になるわ。
それを私が勝手に暴いたこと？私は魔術師だからいいのよ。
それに別に私は水無月くんがこういうものを持っていること自体を否定するつもりはありません。
彼だって年頃の男の子だもの。性に興味を持つのは当然でしょう？
それはそれとして、彼が些か健常ではない趣味趣向を持っているかどうか確認するのは彼との関係を見直す切っ掛けとして重要よ。
ほら見なさいセイバー。ここをこうして…こうよ。
こんなアブノーマルな趣向を主とした本を持っているというのは彼との付き合い方を考え直す必要がある。そういうこと。
なに？気にしない？水無月くんがどういう趣味であろうと信頼は揺るがない？
ぐぬぬ。そういうところずるいわよねあなた…。いえなんでも。
ともかく片っ端からチェックする必要があるわ。セイバーあなたも付き合いなさい。
これなんて物理的に入るかどうか怪しいじゃないの。水無月くんは女の子をどうしたいというのかしら。
さあセイバー！次の本よ！…ワクワクなんてしてないからっ！
（甘い…甘いぞ枢木楡！！部屋にあるのはいわば撒き餌！
本当に見られたくないヤバい物は電子化してデータとして
クオリア上の秘密エリアに隠してある…！！
なんかそういうの見れそうなのが投稿された気がするがいくらなんでもアレを見ることなど……）
いいえニレ、貴女が興奮していることは我が王が女性である以上に明らかです。
それになぜ否定するのでしょう。性に興味を持つのは年頃の男性だけの特権ではありません。
好きな人の期待に応えたい、好きな人の好みを把握したいというのは恋する乙女として真っ当です。
そもそもサクヤに変態的な趣味嗜好があったとしても、ニレは彼を嫌いにはなりませんよね？
それよりも、彼について知るのならむしろ電子データを洗うべきかと。
サクヤは普段から現実よりもクオリアでの活動の比率が高いですし、本命はそちらだと思います。精霊もそうだそうだと囁いています。
という訳でいざ開帳。……これは、すごいですね。
わ、わわ私は興奮しているわけじゃ…これはあくまで！その！
恋してとか！な、ななななんでそんなこと言うかなぁ！…まあ、猟奇的なのなんてむしろこちら側の範疇だし？気にしないのは、そうだけど…。
けれどあなたの言う通りねセイバー。本命はやはり《クオリア》上。
だいたい水無月くん、私がハッカーとしても一流なの忘れているんじゃないかしら。
ちょちょいのちょい。はいセキュリティ突破。ふんふん、これが水無月くんの個人的なエリア…。
隠しているのはだいたいこのあたりだと思うのよね…。…よし！ガッチャ！
…セイバー。ひょっとしたらあなたが正解だったかもしれない。
タイトルからしてもう嫌な気配が漂ってる。私たちは深淵に触れる前に引き返すべきだったのかも。
でももう遅いのよ。冥府の門は潜ってしまったの。ここからはオルフェウスよろしく振り返られないわ。
いざ！開けゴマ！
うわっ…これ…うわっ…。ごめんいろいろ発言を訂正。
ちょっと人間性を疑うというか…。水無月くんと私たちを同じ人間としてカウントしたくなくなるというか…。
いやでもこういうのが好きなら…でも…うわー。セイバー、こういうのイケる？…そうよねぇ。
ねえ。教えて？どういう発想になったら水着でバニーガールって発想ができるの？馬鹿なの？ねえ馬鹿なの？
それでどうしてそれをよりにもよって私に着せようと思いついたの？ちゃんと脳細胞のデフラグしてる？
アメリカンスリーブの襟付きトップスのビキニで？上下黒でウサギ耳のヘアバンドも黒で？はーい可愛いうさぎちゃんでーすって？
死んでよ。いやむしろ殺してよ。私のスタイルでこんなの着てもただの公開処刑じゃないの。
せめてパッドを用意しようとかそういう情けはないの。いやそんな情け貰っても困るけれど。怒るけれど。投矢放るけど。
し、しかもこれ…なんか妙にお尻を強調するような…私お尻は大きいのに…。くぅ…。
ハッ！？み、見るなぁ！？まじまじと見るなぁ！？ぶっ殺すわよ！！
かくなる上は道連れを増やすまでよ。アーチャー！…いない！逃げたなアイツ！
一番辱めたいヤツがいないならセイバーよ。ちょっと心苦しいけれどこの際心を鬼にするわ。あなたにも私と同じ目に…。
───もう着てるし！！
なんなら割と似合ってるし！！可愛いし！！めっちゃ可愛いし！！
ん゛に゛ゅ゛う゛う゛う゛う゛！゛！゛！゛納得いかなぁぁぁぁぁぁいい！！
お褒めいただきありがとうございます、ニレ。けれど貴女も十分似合っていますよ。
前々から思っていましたが、ニレはどうも自分への自信が足りていません。
このままではニレはサクヤに告白しようにも何も言えないただの木偶の坊になってしまいます。
もっと持ち味を活かすべきです。例えばそう、ニレが気にしているその桃のような臀部。
サクヤは一見服しか見てませんといった態度ですが知っての通り彼も立派な思春期の青年。
ニレも気づいているかもしれませんが、時折貴女の臀部に目がいっているのは事実です。
そうです。貴女が弱みと思っているのは強みなのです。
せっかくの機会ですし、一度サクヤにアプローチしましょう。自信をつけるには実践あるのみです。
バニーガールですし、カジノテーブルに乗ってお尻の弾力を見せつけるシチュエーションが有効かと。
……どうしてここまでしてくれるの、ですか？
親友が困っているなら助けたいと思うのは当然です。これはサクヤとニレ、二人から学んだことですよ。
それでどうしてそれをよりにもよって私に着せようと思いついたの？ちゃんと脳細胞のデフラグしてる？
アメリカンスリーブの襟付きトップスのビキニで？上下黒でウサギ耳のヘアバンドも黒で？はーい可愛いうさぎちゃんでーすって？
死んでよ。いやむしろ殺してよ。私のスタイルでこんなの着てもただの公開処刑じゃないの。
せめてパッドを用意しようとかそういう情けはないの。いやそんな情け貰っても困るけれど。怒るけれど。投矢放るけど。
し、しかもこれ…なんか妙にお尻を強調するような…私お尻は大きいのに…。くぅ…。
ハッ！？み、見るなぁ！？まじまじと見るなぁ！？ぶっ殺すわよ！！
かくなる上は道連れを増やすまでよ。アーチャー！…いない！逃げたなアイツ！
一番辱めたいヤツがいないならセイバーよ。ちょっと心苦しいけれどこの際心を鬼にするわ。あなたにも私と同じ目に…。
───もう着てるし！！
なんなら割と似合ってるし！！可愛いし！！めっちゃ可愛いし！！
ん゛に゛ゅ゛う゛う゛う゛う゛！゛！゛！゛納得いかなぁぁぁぁぁぁいい！！
お褒めいただきありがとうございます、ニレ。けれど貴女も十分似合っていますよ。
前々から思っていましたが、ニレはどうも自分への自信が足りていません。
このままではニレはサクヤに告白しようにも何も言えないただの木偶の坊になってしまいます。
もっと持ち味を活かすべきです。例えばそう、ニレが気にしているその桃のような臀部。
サクヤは一見服しか見てませんといった態度ですが知っての通り彼も立派な思春期の青年。
ニレも気づいているかもしれませんが、時折貴女の臀部に目がいっているのは事実です。
そうです。貴女が弱みと思っているのは強みなのです。
せっかくの機会ですし、一度サクヤにアプローチしましょう。自信をつけるには実践あるのみです。
バニーガールですし、カジノテーブルに乗ってお尻の弾力を見せつけるシチュエーションが有効かと。
……どうしてここまでしてくれるの、ですか？
親友が困っているなら助けたいと思うのは当然です。これはサクヤとニレ、二人から学んだことですよ。
水無月サクヤが白神竜胆を前にして何やら相好を崩している。
昼間の《TSUCHIKA》において存在する喫茶店の窓からその様子を睨みつけながら楡は言った。
「まったくイヤになるわね、女の子を前にしてデレデレしちゃって。だらしないのなんの。
あの白神の子が気になるという意見に押し切られたのは確かにこちらだけれど。…？セイバー、どうしたの？」
カップに角砂糖を放り込んでぐるぐる掻き混ぜながらふたりの様子を観察していた楡はきょとんとした顔で対面に座るセイバーを見た。
ちなみに彼女のサーヴァントであるアーチャーとは当然のように別行動である。
「ニレ…これは…言葉に尽くしがたいですが、凄いです。何なのでしょう」
「何ってパフェでしょ。100年以上前から存在してる化石みたいな食べ物よ。ここの店は100年前らしくクラッシックなスタイルね」
「そうなのですか。まるで雪雲をそのまま食べられるようにしたような…なんと美しい…」
目をきらきらと輝かせながら、そびえ立つスイーツの巨峰を見上げるセイバー。
机に頬杖を突き、つまらなさそうにしていた楡はそこでようやく微笑んだ。
「気が済むまで食べたら？咎めないわよ。金ならあるし」
…金ならあるし、と言ってしまったことを、今更楡は後悔していた。
自分の目の前に積み重る、空になった容器の山。今また一つ増えた。
そしてその奥で、色とりどりの果物が添えられた鮮やかなパフェを綺麗に、丁寧に、そして吸い込むように食していくセイバーを見て、うわぁ、と思わず声が漏れてしまう。
その惨状を見て、しかし楡が彼女を止めないのには訳があった。
とにかく食べ方が綺麗なのだ。大食い選手のようにバクバク食べるのではなく、急ぐことなく一口ひとくち味わって食べている。
空の容器に食べ残しの生クリームが少しもないことからもそれは伺える。そして何より、
「─────♡」
この、食べるたびに浮かべる、幸せそうな表情。
店内が一段階明るくなったと錯覚するほどの満面の笑みを見て、セイバーの至福の時を終わらせられるほど、楡は冷徹な女ではないのだ。
昼間の《TSUCHIKA》において存在する喫茶店の窓からその様子を睨みつけながら楡は言った。
「まったくイヤになるわね、女の子を前にしてデレデレしちゃって。だらしないのなんの。
あの白神の子が気になるという意見に押し切られたのは確かにこちらだけれど。…？セイバー、どうしたの？」
カップに角砂糖を放り込んでぐるぐる掻き混ぜながらふたりの様子を観察していた楡はきょとんとした顔で対面に座るセイバーを見た。
ちなみに彼女のサーヴァントであるアーチャーとは当然のように別行動である。
「ニレ…これは…言葉に尽くしがたいですが、凄いです。何なのでしょう」
「何ってパフェでしょ。100年以上前から存在してる化石みたいな食べ物よ。ここの店は100年前らしくクラッシックなスタイルね」
「そうなのですか。まるで雪雲をそのまま食べられるようにしたような…なんと美しい…」
目をきらきらと輝かせながら、そびえ立つスイーツの巨峰を見上げるセイバー。
机に頬杖を突き、つまらなさそうにしていた楡はそこでようやく微笑んだ。
「気が済むまで食べたら？咎めないわよ。金ならあるし」
…金ならあるし、と言ってしまったことを、今更楡は後悔していた。
自分の目の前に積み重る、空になった容器の山。今また一つ増えた。
そしてその奥で、色とりどりの果物が添えられた鮮やかなパフェを綺麗に、丁寧に、そして吸い込むように食していくセイバーを見て、うわぁ、と思わず声が漏れてしまう。
その惨状を見て、しかし楡が彼女を止めないのには訳があった。
とにかく食べ方が綺麗なのだ。大食い選手のようにバクバク食べるのではなく、急ぐことなく一口ひとくち味わって食べている。
空の容器に食べ残しの生クリームが少しもないことからもそれは伺える。そして何より、
「─────♡」
この、食べるたびに浮かべる、幸せそうな表情。
店内が一段階明るくなったと錯覚するほどの満面の笑みを見て、セイバーの至福の時を終わらせられるほど、楡は冷徹な女ではないのだ。
凄かったな。楡はぼーっと授業用の巨大な仮想モニターを見つめながらそう思った。
昨晩のアレは物凄い経験だった。これまでの人生経験がいっぺんにかき混ぜられるような。
そんなことがあってはいろいろなものが頭に入らず、聖杯戦争のことはもちろんこうして受けている授業内容さえあまりよく耳に入らない。ずっと悶々としていた。
「枢木。ここを答えてみろ」
「はい」
教壇の上の教師に指名され、自分の机上に展開されている仮想モニターにすらすらと数式を綴っていく。
この3xというのはどのような意味があっただろう。なにかこういやらしい意味があったはず。いやなかったかも。
そうしてみるとこの数式の記号のひとつひとつが意味深に思えてくる。まったくこの世界は発情している。けしからんことだ。まともなのは私だけか。
楡は成績優良生である。大盤の仮想モニターに転写された楡の解答が正解であることを教師も一瞥しただけで信頼をもって頷いた。
数学の授業が続いていく。聖杯戦争の凄烈とは無縁の世界。
再びぼーっと大きなモニターを眺めながら思った。
水無月くんはともかく、セイバーが思った以上に積極的で扇情的だったな。やれやれ困ったサーヴァントだ。
凄い体験でした。セイバーは眼下に広がる仮想の街並みを眺めながらそう思った。
昨晩、セイバーはサクヤとニレと三人で、という非常にアンモラルな初体験を遂げた。
初めて味わうにはあまりにも刺激的すぎる快感で、今こうして思い返すだけで顔と胸が熱くなる。
「…これが、人を愛する、という気持ちなのでしょうか」
初めての人の営み。それをサクヤとニレと共に経験できたことが、とても嬉しい。
二人のことを想うほどに、心拍が激しくなる。けれど苦しくはなく、むしろ心地よくさえ感じる。
…けれど、それを愛だと断言するには何かが足りないと、心のどこかで思いもするのだ。
だからまだ、この感情に名前を付けるのはやめておこう。
急ぐ必要はない。聖杯戦争は未だ中盤、二人と交流する機会はもう少しだけ残っているから。
サクヤが来るのを待ち続ける。聖杯戦争の合間の穏やかな時間。
ぼーっと街並みを眺めながら、あの日の後、眠る二人の穏やかな寝顔を思い出した。
…聖杯戦争が終われば、二人と別れることになる。
いつかその日が訪れた時、自分はそれを受け入れられるだろうか。そう、ふと思った。
昨晩のアレは物凄い経験だった。これまでの人生経験がいっぺんにかき混ぜられるような。
そんなことがあってはいろいろなものが頭に入らず、聖杯戦争のことはもちろんこうして受けている授業内容さえあまりよく耳に入らない。ずっと悶々としていた。
「枢木。ここを答えてみろ」
「はい」
教壇の上の教師に指名され、自分の机上に展開されている仮想モニターにすらすらと数式を綴っていく。
この3xというのはどのような意味があっただろう。なにかこういやらしい意味があったはず。いやなかったかも。
そうしてみるとこの数式の記号のひとつひとつが意味深に思えてくる。まったくこの世界は発情している。けしからんことだ。まともなのは私だけか。
楡は成績優良生である。大盤の仮想モニターに転写された楡の解答が正解であることを教師も一瞥しただけで信頼をもって頷いた。
数学の授業が続いていく。聖杯戦争の凄烈とは無縁の世界。
再びぼーっと大きなモニターを眺めながら思った。
水無月くんはともかく、セイバーが思った以上に積極的で扇情的だったな。やれやれ困ったサーヴァントだ。
凄い体験でした。セイバーは眼下に広がる仮想の街並みを眺めながらそう思った。
昨晩、セイバーはサクヤとニレと三人で、という非常にアンモラルな初体験を遂げた。
初めて味わうにはあまりにも刺激的すぎる快感で、今こうして思い返すだけで顔と胸が熱くなる。
「…これが、人を愛する、という気持ちなのでしょうか」
初めての人の営み。それをサクヤとニレと共に経験できたことが、とても嬉しい。
二人のことを想うほどに、心拍が激しくなる。けれど苦しくはなく、むしろ心地よくさえ感じる。
…けれど、それを愛だと断言するには何かが足りないと、心のどこかで思いもするのだ。
だからまだ、この感情に名前を付けるのはやめておこう。
急ぐ必要はない。聖杯戦争は未だ中盤、二人と交流する機会はもう少しだけ残っているから。
サクヤが来るのを待ち続ける。聖杯戦争の合間の穏やかな時間。
ぼーっと街並みを眺めながら、あの日の後、眠る二人の穏やかな寝顔を思い出した。
…聖杯戦争が終われば、二人と別れることになる。
いつかその日が訪れた時、自分はそれを受け入れられるだろうか。そう、ふと思った。
ババァはこんなにイケメンなのに今朝のスレ落ち際のくるるるるはさぁ何よ！そうよずっと考えてたわよちん○んのこと！
昨晩あんなことがあったらずぅーっと考えるわよ！ちん○んのこと！
仕方ないじゃない！挿絵とか写真とか映像とかそういうので見たことはあっても生ちん○んは初めてだったんだもの！
しかもそれが私の中に挿入ってたんだもの！全部！だから延々考えてたわよちん○んのこと！
何ならあの後で思い出してしたわ！「うわっ、全然届いてたところまで届かないじゃないこんなのじゃ…」って思ったわよ！
今日君と初めて顔を合わせた時も「ここにあの大きいのが収まって…」と想像してついちらっと股間を見たりしたわよ！
はあ！？『そこまで聞いてない』ですって！？そうよ！もう破れかぶれよ！投げやりよ！
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！も゛う゛ひ゛と゛い゛き゛に゛こ゛ろ゛せ゛え゛え゛え゛え゛え゛！
…ぐすんぐすん。どうしてこんなことに…私もう全然普通じゃない…こんな子じゃなかったはずなのに…。
全部君が悪いのよ君が…どう責任取ってくれるのよ…。
…『努力する』？…もう。何をどう努力する気なのよ。まったく…。
（だいたい原文ママ）
過去の記憶───夢の中で響く音がやかましい。
しくしく。幼い少女の泣きじゃくる声。それを掻き消して余りある、大人の男が吠える声。
男がひとり。大柄だが酷く痩せている。というよりはおそらくは肌の色などからして病体だった。
その肉体から失われた生気の分だけ狂気を詰め込んだような餓狼の顔で幼子を叱責している。
幼子はまだあまりにも幼かった。5つか、6つか。
あの嫌味なマスターをうんと幼くしたような姿の少女がしゃっくりをあげながら大粒の涙をぽろぽろ零している。
魔術の不出来を罵る男に対して幼子はしきりに謝っていた。
ごめんなさい。ごめんなさい、お父様。上手くできなくてごめんなさい。ちゃんとやれなくてごめんなさい。
…死期近いが故に狂える父とその狂気に翻弄される子。本当に気色悪い光景だ。
アーチャーは早くこの夢が覚めることを願い何気なくその妖精眼で幼子を見て、そして今度こそ吐き気がした。
そこに父に対する憎悪の感情の色は欠片さえ無かった。
ただ自らの未熟を嘆いている。ただ期待に応えられない自分を責めている。
───嗚呼。そんなふうに全ては余が悪かったと背負い込むような人間に、心当たりがある───。
しくしく。幼い少女の泣きじゃくる声。それを掻き消して余りある、大人の男が吠える声。
男がひとり。大柄だが酷く痩せている。というよりはおそらくは肌の色などからして病体だった。
その肉体から失われた生気の分だけ狂気を詰め込んだような餓狼の顔で幼子を叱責している。
幼子はまだあまりにも幼かった。5つか、6つか。
あの嫌味なマスターをうんと幼くしたような姿の少女がしゃっくりをあげながら大粒の涙をぽろぽろ零している。
魔術の不出来を罵る男に対して幼子はしきりに謝っていた。
ごめんなさい。ごめんなさい、お父様。上手くできなくてごめんなさい。ちゃんとやれなくてごめんなさい。
…死期近いが故に狂える父とその狂気に翻弄される子。本当に気色悪い光景だ。
アーチャーは早くこの夢が覚めることを願い何気なくその妖精眼で幼子を見て、そして今度こそ吐き気がした。
そこに父に対する憎悪の感情の色は欠片さえ無かった。
ただ自らの未熟を嘆いている。ただ期待に応えられない自分を責めている。
───嗚呼。そんなふうに全ては余が悪かったと背負い込むような人間に、心当たりがある───。
レトルトの弁当容器がたっぷりゴミ箱に詰まっているのでは、という予想はしていた。
この部屋には調理器具の類が一切見当たらない。レンジさえ、だ。普段から料理はしていないのだろう。
だからこその予想だったのだが、現実は軽々とそんな空想を超えてきた。
「…」
絶句。思わず閉口する。
ゴミ箱の7割ほどを埋めていたのはただひたすらに包装ばかりだ。
栄養を添加したふすまを固めてブロック状に成形したような、日本ならどこでも売ってる栄養食品である。
後はパック詰めのゲル状食品の捨て殻と無糖ガムの包装。合間から突き出ている銀紙は錠剤を梱包していたもの。
惣菜パンの包み紙さえ捨てられていない。枢木楡の日々の食生活の様子をゴミ箱は雄弁に語っていた。
「おま、これ、おま」
「水無月くん？何やってるの？悪いけどうちに来たからってお茶出したりなんてしないわよ。さっさとこっちに来て」
白いパーテーションで細かく区切られた部屋の奥から枢木の声がする。
すごい。米もパンも食わず30秒で食べ切れる栄養食品だけで生きている人間を初めて見た。というか見たくなかった。
最近の栄養食品の性能は高いというが…それにしても…むごい…。
空中に立ち昇っているホログラムのモニターに作業が進行中であるという事を示すバックログがいくつも展開されていた。
ローデスクの前にちょこんと座り、打鍵の感触が伝わるクラッシックなタイプのキーボードを枢木は叩いている。
その手を止めないまま、モニターの青白い光に照らされる枢木は器用に片手で栄養食品の包装を剥いて齧った。
「なあ、やっぱりもう少しまともなものを食べたほうがいいんじゃないのか？」
「まだ言ってるの？健康の維持に必要な栄養は摂れてるんだから問題ないわ。
別にあなたにまで強要はしないから、お腹減ったなら外で何か買ってくるなり食べてくるなりしなさい。もう少し時間がかかるから」
ぴしゃりと切り捨てられては是非もない。
枢木の後ろで作業の様子を見ていた僕は食料調達のために座布団から立ち上がった。
部屋を出る前に一度振り返る。パーテーションで狭苦しく区切られた、生活スペースというより小さな事務所みたいな部屋。
そこには生活における愉しみの香りがまるでしない。趣味だとか好みだとか、全く想起させることがない。
代わりに鼻先を擽ったのは焦げ臭さ。枢木の魔術師としての執念が焼き付いた香りだった。
この部屋には調理器具の類が一切見当たらない。レンジさえ、だ。普段から料理はしていないのだろう。
だからこその予想だったのだが、現実は軽々とそんな空想を超えてきた。
「…」
絶句。思わず閉口する。
ゴミ箱の7割ほどを埋めていたのはただひたすらに包装ばかりだ。
栄養を添加したふすまを固めてブロック状に成形したような、日本ならどこでも売ってる栄養食品である。
後はパック詰めのゲル状食品の捨て殻と無糖ガムの包装。合間から突き出ている銀紙は錠剤を梱包していたもの。
惣菜パンの包み紙さえ捨てられていない。枢木楡の日々の食生活の様子をゴミ箱は雄弁に語っていた。
「おま、これ、おま」
「水無月くん？何やってるの？悪いけどうちに来たからってお茶出したりなんてしないわよ。さっさとこっちに来て」
白いパーテーションで細かく区切られた部屋の奥から枢木の声がする。
すごい。米もパンも食わず30秒で食べ切れる栄養食品だけで生きている人間を初めて見た。というか見たくなかった。
最近の栄養食品の性能は高いというが…それにしても…むごい…。
空中に立ち昇っているホログラムのモニターに作業が進行中であるという事を示すバックログがいくつも展開されていた。
ローデスクの前にちょこんと座り、打鍵の感触が伝わるクラッシックなタイプのキーボードを枢木は叩いている。
その手を止めないまま、モニターの青白い光に照らされる枢木は器用に片手で栄養食品の包装を剥いて齧った。
「なあ、やっぱりもう少しまともなものを食べたほうがいいんじゃないのか？」
「まだ言ってるの？健康の維持に必要な栄養は摂れてるんだから問題ないわ。
別にあなたにまで強要はしないから、お腹減ったなら外で何か買ってくるなり食べてくるなりしなさい。もう少し時間がかかるから」
ぴしゃりと切り捨てられては是非もない。
枢木の後ろで作業の様子を見ていた僕は食料調達のために座布団から立ち上がった。
部屋を出る前に一度振り返る。パーテーションで狭苦しく区切られた、生活スペースというより小さな事務所みたいな部屋。
そこには生活における愉しみの香りがまるでしない。趣味だとか好みだとか、全く想起させることがない。
代わりに鼻先を擽ったのは焦げ臭さ。枢木の魔術師としての執念が焼き付いた香りだった。
来るのは何度目かになる枢木の自室の電子錠を開ける。
中に踏み入ると部屋は薄暗かった。カーテンが窓にかかっているせいだろう。
物音ひとつしない。ひとまず玄関先で靴を脱ぎ捨てて奥へと上がる。
まるで無人であるかのようにパーテーションで区切られた部屋の中には気配がなかった。枢木がいる時は始終つけっ放しになっているモニターの光もない。
留守ではないはずだ。玄関には靴があった。パーテーションの中をひとつひとつ確かめていくと…。
「…」
いた。畳の上に敷かれたシーツの上に。
声をかけようとしたが躊躇われた。呼吸と共に穏やかに上下する肩。枢木が眠っているのは明らかだったからだ。
髪も結んでおらず投げっぱなし。横臥の姿勢で丸まっているとまるで胎児の格好のようだ。
ぱっと見で目に入る衣服はパーカー以外になく、下は太腿のかなり上の方から一番下までその白い脚が顕になっていた。
小柄な体格にしては肉感的な腿。繊細な細工めいた膝。柔らかそうな脹脛。どこか扇情的な裸足。
なにより普段から凛とした顔つきの枢木の寝顔はひとまわり幼くなったようにあどけない。
ごくりと唾を飲む。いやにその音が部屋の空気を強く震わせたような気がした。
中に踏み入ると部屋は薄暗かった。カーテンが窓にかかっているせいだろう。
物音ひとつしない。ひとまず玄関先で靴を脱ぎ捨てて奥へと上がる。
まるで無人であるかのようにパーテーションで区切られた部屋の中には気配がなかった。枢木がいる時は始終つけっ放しになっているモニターの光もない。
留守ではないはずだ。玄関には靴があった。パーテーションの中をひとつひとつ確かめていくと…。
「…」
いた。畳の上に敷かれたシーツの上に。
声をかけようとしたが躊躇われた。呼吸と共に穏やかに上下する肩。枢木が眠っているのは明らかだったからだ。
髪も結んでおらず投げっぱなし。横臥の姿勢で丸まっているとまるで胎児の格好のようだ。
ぱっと見で目に入る衣服はパーカー以外になく、下は太腿のかなり上の方から一番下までその白い脚が顕になっていた。
小柄な体格にしては肉感的な腿。繊細な細工めいた膝。柔らかそうな脹脛。どこか扇情的な裸足。
なにより普段から凛とした顔つきの枢木の寝顔はひとまわり幼くなったようにあどけない。
ごくりと唾を飲む。いやにその音が部屋の空気を強く震わせたような気がした。
電子の海に漂うこの虚構の街にも雨は降るのか。そんな奇妙な感慨にセイバーは包まれる。
夜明け前の窓の外は水桶をひっくり返したかのような土砂降りだ。
薄っすら積もった埃が乱暴に払われたソファに座ったまま、闇の中で静かに時間が流れるのに身を任せていた。
アーチャーは今頃この建物の屋根の上で息を潜めていることだろう。
クラス由来のその鷹の目で周囲を警戒しているはずだ。今晩はログアウトの時間まで休息を取ることを選択した彼らを守るために。
サクヤはセイバーの傍らでぐっすりと眠っていた。寝付きがいいのか消灯から5分もしない内に寝入っていた。
どうあれ、安堵であるのは望ましいことだ。
規則正しい寝息を耳にしてひとまずよしとしたセイバーはついと視線を部屋の隅へと走らせる。
その床には木片が突き立っていた。ドルイドの司祭たちにとっての聖なる木。ヤドリギを加工して作られた矢だ。
四方に刺さったその木片たちはそれぞれが発した魔力の帯を複雑に絡ませ合い、この埃っぽい部屋に結界を形成せしめている。
かなりの腕前だ。セイバーが生きていた頃でさえこうまで卓越したドルイドはその気になって探さないと見つからないだろう。
当然ながら、魔術に関してずぶの素人であるサクヤにこんな芸当は不可能だ。
セイバーはサクヤがいるのとは反対側に置かれたソファに目を移した。
小柄な少女が蹲るように横たわって眠っている。…こちらは寝付いたのはつい先程だ。
ずっと黙ってはいたがセイバーには気配だけで察しが付いた。休みましょうと言い出したのは彼女だったのに本人は眠れなかったらしい。
今に限ったことではない。アーチャーのマスターは絶えずぴりぴりとこちらの様子を伺い注意深く観察している。
なし崩しの共闘関係にあるとはいえ、いつかは敵になる相手に対してはひとつの正しい判断なのだろう。
結界があるとはいえ、いつ敵襲があってもいいように臨戦態勢のまま視線を虚空へ戻しかけたセイバーの耳にそれは届いた。
「…───なさい───」
視線を楡の方へ。か細い囁き声は明らかに彼女のものだった。
最初は起きたのかと思ったが、違う。覚醒したような素振りはない。ならば今のは寝言か。
「…ごめんなさい…」
「…」
セイバーはゆっくりと座っていたソファから立ち上がった。
古びた絨毯を踏みしめ、物音立てぬよう楡の側へと近づく。真上からその寝顔を見下ろした。
寝汗が酷い。まるで水を被ったかのよう。苦悶の表情で衣類をぐっしょりと濡らしている。うなされているのは明らかだ。
「ごめんなさい…のうのうと生きていてごめんなさい…愚図でごめんなさい…」
楡はしきりに誰かへ謝っていた。
起こすべきかと伸ばしかけた手を止め、セイバーはついそれを観察してしまった。…騎士としては不徳であったろう。
「頑張ります…いっぱい頑張ります…みんなを無かったことにしないように、頑張ります。
失ったものを無意味にしないために、一生懸命頑張ります…大丈夫です…頑張りますから…」
掠れ声は常人には消えこないほど小さく、故にサーヴァントであるセイバーだからこそ全て聞き取れた。
「報いるために、頑張ります。何も取り零さないために、頑張ります。終わらせないために、頑張ります。
私は何もいりません。あなたたちのために、頑張ります。頑張ります…ごめんなさい、頑張ります…」
起こすために伸ばしかけた手をセイバーはその額の汗を拭うために伸ばした。
篭手を霧散させその指で冷たい雫をそっと取り除く。
道具の心に何かがちくりと突き立った。セイバーは首を傾げたがその正体はよく分からなかった。
夜明け前の窓の外は水桶をひっくり返したかのような土砂降りだ。
薄っすら積もった埃が乱暴に払われたソファに座ったまま、闇の中で静かに時間が流れるのに身を任せていた。
アーチャーは今頃この建物の屋根の上で息を潜めていることだろう。
クラス由来のその鷹の目で周囲を警戒しているはずだ。今晩はログアウトの時間まで休息を取ることを選択した彼らを守るために。
サクヤはセイバーの傍らでぐっすりと眠っていた。寝付きがいいのか消灯から5分もしない内に寝入っていた。
どうあれ、安堵であるのは望ましいことだ。
規則正しい寝息を耳にしてひとまずよしとしたセイバーはついと視線を部屋の隅へと走らせる。
その床には木片が突き立っていた。ドルイドの司祭たちにとっての聖なる木。ヤドリギを加工して作られた矢だ。
四方に刺さったその木片たちはそれぞれが発した魔力の帯を複雑に絡ませ合い、この埃っぽい部屋に結界を形成せしめている。
かなりの腕前だ。セイバーが生きていた頃でさえこうまで卓越したドルイドはその気になって探さないと見つからないだろう。
当然ながら、魔術に関してずぶの素人であるサクヤにこんな芸当は不可能だ。
セイバーはサクヤがいるのとは反対側に置かれたソファに目を移した。
小柄な少女が蹲るように横たわって眠っている。…こちらは寝付いたのはつい先程だ。
ずっと黙ってはいたがセイバーには気配だけで察しが付いた。休みましょうと言い出したのは彼女だったのに本人は眠れなかったらしい。
今に限ったことではない。アーチャーのマスターは絶えずぴりぴりとこちらの様子を伺い注意深く観察している。
なし崩しの共闘関係にあるとはいえ、いつかは敵になる相手に対してはひとつの正しい判断なのだろう。
結界があるとはいえ、いつ敵襲があってもいいように臨戦態勢のまま視線を虚空へ戻しかけたセイバーの耳にそれは届いた。
「…───なさい───」
視線を楡の方へ。か細い囁き声は明らかに彼女のものだった。
最初は起きたのかと思ったが、違う。覚醒したような素振りはない。ならば今のは寝言か。
「…ごめんなさい…」
「…」
セイバーはゆっくりと座っていたソファから立ち上がった。
古びた絨毯を踏みしめ、物音立てぬよう楡の側へと近づく。真上からその寝顔を見下ろした。
寝汗が酷い。まるで水を被ったかのよう。苦悶の表情で衣類をぐっしょりと濡らしている。うなされているのは明らかだ。
「ごめんなさい…のうのうと生きていてごめんなさい…愚図でごめんなさい…」
楡はしきりに誰かへ謝っていた。
起こすべきかと伸ばしかけた手を止め、セイバーはついそれを観察してしまった。…騎士としては不徳であったろう。
「頑張ります…いっぱい頑張ります…みんなを無かったことにしないように、頑張ります。
失ったものを無意味にしないために、一生懸命頑張ります…大丈夫です…頑張りますから…」
掠れ声は常人には消えこないほど小さく、故にサーヴァントであるセイバーだからこそ全て聞き取れた。
「報いるために、頑張ります。何も取り零さないために、頑張ります。終わらせないために、頑張ります。
私は何もいりません。あなたたちのために、頑張ります。頑張ります…ごめんなさい、頑張ります…」
起こすために伸ばしかけた手をセイバーはその額の汗を拭うために伸ばした。
篭手を霧散させその指で冷たい雫をそっと取り除く。
道具の心に何かがちくりと突き立った。セイバーは首を傾げたがその正体はよく分からなかった。
「もう行くのか？唯も来てるんだからゆっくりしていけばいいだろうに」
玄関から出ていく制服姿の背中を呼び止める。
纏わりつく陽光が鬱陶しそうな素振りで枢木は振り返った。半袖の開襟シャツにプリーツスカート。
ただでさえ元の素材がいいのに伏木学園の趣味の良い制服と夏の日差しが加わると青春の彩りを感じる。
スカートから伸びた細すぎず太すぎない白い脚が視線を吸い寄せる磁力を放っていた。
「話すべきことは話し終えたでしょう。なら帰るわ」
「うん、いつも通りの素っ気なさありがとう。そういえば学校でもいつもひとりだな。寂しくないのか？」
「…水無月くん」
不機嫌そうな枢木。眉の端がきゅっと軽くつり上がった。
「冨楽くんが君とどういう仲だろうと彼も聖杯戦争の参加者だし私もその魔術師のひとりなの。
悪いけれど私はそこまで易く気を許せない。
…いい？アサシンのマスターに限らずこの聖杯戦争に全てを賭しているという魔術師は必ずまだいるわ。
彼と和解したからといって浮かれてないで気を引き締めたほうがいいんじゃない」
ぴしゃりと言い放ち枢木は暑気満ちる道を歩いていく。
急に心へ冷水を注がれたような気分だった。
玄関から出ていく制服姿の背中を呼び止める。
纏わりつく陽光が鬱陶しそうな素振りで枢木は振り返った。半袖の開襟シャツにプリーツスカート。
ただでさえ元の素材がいいのに伏木学園の趣味の良い制服と夏の日差しが加わると青春の彩りを感じる。
スカートから伸びた細すぎず太すぎない白い脚が視線を吸い寄せる磁力を放っていた。
「話すべきことは話し終えたでしょう。なら帰るわ」
「うん、いつも通りの素っ気なさありがとう。そういえば学校でもいつもひとりだな。寂しくないのか？」
「…水無月くん」
不機嫌そうな枢木。眉の端がきゅっと軽くつり上がった。
「冨楽くんが君とどういう仲だろうと彼も聖杯戦争の参加者だし私もその魔術師のひとりなの。
悪いけれど私はそこまで易く気を許せない。
…いい？アサシンのマスターに限らずこの聖杯戦争に全てを賭しているという魔術師は必ずまだいるわ。
彼と和解したからといって浮かれてないで気を引き締めたほうがいいんじゃない」
ぴしゃりと言い放ち枢木は暑気満ちる道を歩いていく。
急に心へ冷水を注がれたような気分だった。
見ている間に枢木はサンダルを脱ぎ捨て、裸足で砂浜へと降りて行ってしまった。
「おいおい」
「いいじゃないの。こんな立派な砂浜、私たちの時代じゃ珍しいでしょ？人工ビーチらしいけどね」
そう言って足裏の感覚を楽しむように枢木がくすくす笑う。『デートなんだから楽しむのが義務』と宣言した通り、それは今まで見たこともないくらい邪気のない笑顔だった。
砂浜を突っ切り、波打ち際で爪先に波を引っ掛けてはしゃいでいる。白い生脚と飛び散る水飛沫がどちらも眩しい。
「可憐ですね」
「ああ…え？ああ、そうだな？…セイバー？」
「ニレはいつも顰めっ面ばかり浮かべていますが、勿体のないことです。
温かな日差しと輝かんばかりの海、寄せる波と遊ぶ乙女。私の生きた時代からは妥当な表現が見つけられませんが、素敵な光景だと思います」
相変わらずセイバーの言葉には飾り気がなく騎士の実直さに満ちている。ただその時は、
「ああ。確かにそうなんだろうな」
ひらひら回る枢木を見ていると素直にそう感じられた。
「セイバーもこっち来なさいよー！」
「…呼ばれてしまいました。では少し行ってきます」
くすりと微笑んだセイバーが波打ち際へと歩いて行った。
「ねえ、水無月くん……ちょっと、こっちに来てくれる？」
何とも言えない表情で枢木が僕を手招きする。
……もしかして、そういうことなのだろうか。と、淡い期待を抱きつつ向かった先には。
セイバーが、砂浜に埋まっていた。
砂浜に埋まると言われると、寝そべった上に砂を被せて体を作ったりとか想像するだろうがそうじゃない。
垂直に埋まっている。引き抜いてほしそうに両手を上にぴしっと上げて、無言で埋まっている。
「……」
召喚したばかりの頃を思い出す無表情でこっちを見てくる。
圧を感じたので、両腕を掴んでなるべくセイバーに負担がかからないよう上に引っこ抜く。
すぽっ。
「おお、選定の剣を引き抜くとは。貴方こそブリテンを救う王の資格を持つ者なのですね」
─────空気が、凍った。
後ろにいる枢木も表情は見えないが、きっと今の僕と同じ顔をしている。
「二人ともどうしたのですか？ 私なりに考えた円卓ジョークならぬ聖剣ジョークだったのですが」
何とも言えない空気が漂う浜辺に、ウミネコの鳴き声が空しく響いていた。
「おいおい」
「いいじゃないの。こんな立派な砂浜、私たちの時代じゃ珍しいでしょ？人工ビーチらしいけどね」
そう言って足裏の感覚を楽しむように枢木がくすくす笑う。『デートなんだから楽しむのが義務』と宣言した通り、それは今まで見たこともないくらい邪気のない笑顔だった。
砂浜を突っ切り、波打ち際で爪先に波を引っ掛けてはしゃいでいる。白い生脚と飛び散る水飛沫がどちらも眩しい。
「可憐ですね」
「ああ…え？ああ、そうだな？…セイバー？」
「ニレはいつも顰めっ面ばかり浮かべていますが、勿体のないことです。
温かな日差しと輝かんばかりの海、寄せる波と遊ぶ乙女。私の生きた時代からは妥当な表現が見つけられませんが、素敵な光景だと思います」
相変わらずセイバーの言葉には飾り気がなく騎士の実直さに満ちている。ただその時は、
「ああ。確かにそうなんだろうな」
ひらひら回る枢木を見ていると素直にそう感じられた。
「セイバーもこっち来なさいよー！」
「…呼ばれてしまいました。では少し行ってきます」
くすりと微笑んだセイバーが波打ち際へと歩いて行った。
「ねえ、水無月くん……ちょっと、こっちに来てくれる？」
何とも言えない表情で枢木が僕を手招きする。
……もしかして、そういうことなのだろうか。と、淡い期待を抱きつつ向かった先には。
セイバーが、砂浜に埋まっていた。
砂浜に埋まると言われると、寝そべった上に砂を被せて体を作ったりとか想像するだろうがそうじゃない。
垂直に埋まっている。引き抜いてほしそうに両手を上にぴしっと上げて、無言で埋まっている。
「……」
召喚したばかりの頃を思い出す無表情でこっちを見てくる。
圧を感じたので、両腕を掴んでなるべくセイバーに負担がかからないよう上に引っこ抜く。
すぽっ。
「おお、選定の剣を引き抜くとは。貴方こそブリテンを救う王の資格を持つ者なのですね」
─────空気が、凍った。
後ろにいる枢木も表情は見えないが、きっと今の僕と同じ顔をしている。
「二人ともどうしたのですか？ 私なりに考えた円卓ジョークならぬ聖剣ジョークだったのですが」
何とも言えない空気が漂う浜辺に、ウミネコの鳴き声が空しく響いていた。
「ライダー、そこから離れなッ」
「あ？何言ってんだ婆さん。全員の動きなんざ把握済みだ。俺様たちを狙うやつなんざ」
そこでライダーの顔色が変わった。敏いサーヴァントだった。
マスターの指摘ひとつで高みの見物を決め込んでいたこの8人目狩りの戦術的弱点に至ったのだ。
遮二無二飛び退る。直後、ビルの屋上に轟音が響いた。
それは屋上のコンクリートを破砕して階下へと突き抜けた鏃の音。曲射によって真上から放たれた凶撃だった。
轟きはひとつに非ず。動きを読んでいるように立て続けに耳を劈く音の中、ライダーは自身のマスターを抱えて隣のビルへと飛び立った。
「───あぁら、残念無念。不意を打ったのですけれど逃げられてしまったわ。アーチャー、手を抜いた？」
ビルの屋上は風が強い。立ち込めた土煙もすぐさま夜風に流されていく。
「冗談。そこのマスターが気づいていなければ当たっていたわ。あなたの隠蔽が下手なだけでしょう、マスター」
…先程までライダーたちが立っていたビルの屋上。
煤塵の中からひとつ背の低いビルへと映った彼らを縁から見つめたのはそこにいるはずのない主従だった。
老骨には堪えるねぇ、とぼそりと呟いたブリュンヒルトは敵意と獰猛でらんらんと輝く笑みを浮かべた小娘へ嗄声を上げる。
「そうかい。お嬢ちゃん、ドルイドの末裔か。ここら一体を自分の“森”にしたね？」
「ご明察ですわ、お婆様。実際に木々がなくとも備えあればこの通り。英霊さえ欺く深緑の鮮やか、ご堪能いただけましたかしら？」
楡がブリュンヒルトに応じている間に傍らの弓兵が矢を番える。
油断せずその鏃の切っ先から目を離さぬまま、ライダーは己のマスターへ忙しなく問いかけた。
「どういうわけだ婆さん。ヤツはこことは反対側で戦っていたはずだ。まさかこの俺様が騙されたってのか？」
「その通りだよ。だが無理もない。ありゃこの聖杯戦争でもピカイチさね。
ここがあの子の“森”になってるなら、そりゃあんた風に言えば今の私らは動きの取れないペルシャの船さ」
「…はぁん。クソが。俺様を出し抜こうなんざクソ以下のクソだ。
この偉大なる俺様をだぞ？舐めやがって。是非とも吠え面拝みてぇところだが…。
婆さん分かってるだろうな。札の切りどころだぞ。認めたくねぇが、この距離でアーチャーの矢から素直には逃げられねぇ」
面白くなさそうにライダーが唸る。
苛立ちこそあるがそこは狡知で鳴らしたサーヴァントだった。出し惜しみをするな、分水嶺だと訴えかける。
分かっているよ、というのを身じろぎだけで答えたブリュンヒルトはそのための僅かな時間稼ぎのために再び問いかけた。
「そういうことかい。早い者勝ちの8人目狩り。嬢ちゃんたちにとっては横っ腹を突き刺す猟場なんだね」
「そういうことです。なので、ここで狩られてくださいませお婆様。
水無月くんが悪目立ちしてくれてとても助かったわ。彼が踊ってくれればくれるほどこちらはやりやすいもの。
で、狩りをするなら一番弱くて仕留めやすそうなところから撃ち抜いていくのは定石でしょう？」
「やれやれ…戦いは嫌なんだがねぇ」
「生憎と、私は戦うための戦場があればつい心が踊りますの。根っからのファイターのようなのです。…アーチャー！」
鋭い叫びと共に矢が放たれる。ブリュンヒルトはライダーと目を合わせる間もなく撤退すべきという意識を共有した。
魔力を伴った矢が夜暗を切り裂いて隣のビルへと撃ち下ろされる。
実に魔術師の下した命令らしい冷酷な掃討にブリュンヒルトはぐっと歯を食いしばった。
「あ？何言ってんだ婆さん。全員の動きなんざ把握済みだ。俺様たちを狙うやつなんざ」
そこでライダーの顔色が変わった。敏いサーヴァントだった。
マスターの指摘ひとつで高みの見物を決め込んでいたこの8人目狩りの戦術的弱点に至ったのだ。
遮二無二飛び退る。直後、ビルの屋上に轟音が響いた。
それは屋上のコンクリートを破砕して階下へと突き抜けた鏃の音。曲射によって真上から放たれた凶撃だった。
轟きはひとつに非ず。動きを読んでいるように立て続けに耳を劈く音の中、ライダーは自身のマスターを抱えて隣のビルへと飛び立った。
「───あぁら、残念無念。不意を打ったのですけれど逃げられてしまったわ。アーチャー、手を抜いた？」
ビルの屋上は風が強い。立ち込めた土煙もすぐさま夜風に流されていく。
「冗談。そこのマスターが気づいていなければ当たっていたわ。あなたの隠蔽が下手なだけでしょう、マスター」
…先程までライダーたちが立っていたビルの屋上。
煤塵の中からひとつ背の低いビルへと映った彼らを縁から見つめたのはそこにいるはずのない主従だった。
老骨には堪えるねぇ、とぼそりと呟いたブリュンヒルトは敵意と獰猛でらんらんと輝く笑みを浮かべた小娘へ嗄声を上げる。
「そうかい。お嬢ちゃん、ドルイドの末裔か。ここら一体を自分の“森”にしたね？」
「ご明察ですわ、お婆様。実際に木々がなくとも備えあればこの通り。英霊さえ欺く深緑の鮮やか、ご堪能いただけましたかしら？」
楡がブリュンヒルトに応じている間に傍らの弓兵が矢を番える。
油断せずその鏃の切っ先から目を離さぬまま、ライダーは己のマスターへ忙しなく問いかけた。
「どういうわけだ婆さん。ヤツはこことは反対側で戦っていたはずだ。まさかこの俺様が騙されたってのか？」
「その通りだよ。だが無理もない。ありゃこの聖杯戦争でもピカイチさね。
ここがあの子の“森”になってるなら、そりゃあんた風に言えば今の私らは動きの取れないペルシャの船さ」
「…はぁん。クソが。俺様を出し抜こうなんざクソ以下のクソだ。
この偉大なる俺様をだぞ？舐めやがって。是非とも吠え面拝みてぇところだが…。
婆さん分かってるだろうな。札の切りどころだぞ。認めたくねぇが、この距離でアーチャーの矢から素直には逃げられねぇ」
面白くなさそうにライダーが唸る。
苛立ちこそあるがそこは狡知で鳴らしたサーヴァントだった。出し惜しみをするな、分水嶺だと訴えかける。
分かっているよ、というのを身じろぎだけで答えたブリュンヒルトはそのための僅かな時間稼ぎのために再び問いかけた。
「そういうことかい。早い者勝ちの8人目狩り。嬢ちゃんたちにとっては横っ腹を突き刺す猟場なんだね」
「そういうことです。なので、ここで狩られてくださいませお婆様。
水無月くんが悪目立ちしてくれてとても助かったわ。彼が踊ってくれればくれるほどこちらはやりやすいもの。
で、狩りをするなら一番弱くて仕留めやすそうなところから撃ち抜いていくのは定石でしょう？」
「やれやれ…戦いは嫌なんだがねぇ」
「生憎と、私は戦うための戦場があればつい心が踊りますの。根っからのファイターのようなのです。…アーチャー！」
鋭い叫びと共に矢が放たれる。ブリュンヒルトはライダーと目を合わせる間もなく撤退すべきという意識を共有した。
魔力を伴った矢が夜暗を切り裂いて隣のビルへと撃ち下ろされる。
実に魔術師の下した命令らしい冷酷な掃討にブリュンヒルトはぐっと歯を食いしばった。
話し合いを終えて洋館を出た楡に付き添っていたアーチャーが急に早足で前に出た。
「───？アーチャー、何を───」
行動の不可解さを問おうとした楡が口をつむぐ。そこにはアーチャーがそうするだけの相手がいた。
手入れが怠り、伸び放題枯れ放題になった庭園を静かに見つめる影がそこにはあった。
「…アーチャーと、アーチャーのマスターか」
冷えつつある鍛えたばかりの鉄のような、薄暗い赤色の蓬髪。白蝋のような肌。赤金に輝く瞳。
唇が紡いだ言葉はあくまで涼やかで、故にこそ空気を打つ威厳が伴っている。
冨楽唯のセイバー。真名をホグニ・ハールヴダナルソン。北欧神話にその人ありという雄。
この聖杯戦争において格のみを競うとすれば、おそらく彼女をおいて右に出る英霊はいまい。
だからこそ。現状は共同戦線であるからこそ、アーチャーが彼女に発する警戒はそのまま敬意へと繋がっていた。
「話し合いは済んだのか」
「…ええ。粗方。この聖杯戦争がどう転ぶかも、《ALPHA》というものに対しても。
詳しいことはあなたのマスターに聞きなさい。少なくとも私は合意した。後はあなたたち次第よ。
アーチャー。行きましょう」
「…ええ」
並んで洋館の敷地を跨いでいこうとする。その背中へとセイバーは言葉を投げつけた。
「覚悟は済んでいるのか」
主従の歩みが止まる。正確には止まった楡の脚にアーチャーが付き合った形だ。
小さく横顔だけ振り向いた楡の視線をセイバーは揺るぎない静謐さで受け止めた。
「我が真名を知ったなら、そしてお前ほどの若くも優れたドルイドならば、我が身にあったことを知っていよう。
私もヘジンも、例え相手が友であろうと戦うと覚悟を持って戦士となった。
私たちにとって勇ましく戦うことこそ誉れであり、死後ヴァルハラへと導かれれば、次は肩を並べて戦うことができた。
私にとって、そして恐らくヘジンにとって、あのヒャズニングの戦いに至る経緯に悔いはあっても、戦うこと自体に恐怖も嘆きもなかったのだ。
だが此れよりの戦いは違う。あれは獣でしかない。神の与えし獣ならぬ人の裡より発した獣だ。
討つべきものでしかない。討ったところで誉れなどない。
己も、己以外も。失えば後悔と嘆きは運命によって雪がれるものではなく、死してなおお前を苛み続け、それを晴らす術は無いだろう。
それでも、お前は───」
「だとしても、戦うわ」
セイバーと楡の霊子サイズは天と地ほどの差だ。蟻と巨像というのも烏滸がましい。
だとしても楡はきっとセイバーを睨みつけた。セイバーも応えた。アーチャーはただ静かに見守った。
「覚悟なら何万回もしてきた。そういう生き方しか選ばなかったから。だから今だってしてる。
けどね、あなたと私は違うわセイバー。私はあなたみたいに思い切りよくなければ諦めやすくもない。覚悟の形だって違う。
この聖杯戦争は無意味だったか知れない。聖杯なんて得られない。
代わりに何もかも台無しにする獣が生まれただけ。そんなまがい物で、どうしようもない戦いで、私たちはその後始末をするだけなのかもしれない。
───知ったこっちゃないわ。戦うための舞台が整えられている。まだ私は戦える。
それで良かったのよ。ただ私はそれで良かったの。覚悟そのものに意味なんて必要なかったのよ」
「───そうか」
多くを知り、多くを見送ったセイバーは珍しく微かに微笑む。本当に珍しく。
「愚かだな」
「ええ。本当に。でも、あなたもね」
小さく頷いたセイバーを一瞥して楡たちは去っていく。少しの間だけ、セイバーは見えなくなったその背中を目で追った。
「───？アーチャー、何を───」
行動の不可解さを問おうとした楡が口をつむぐ。そこにはアーチャーがそうするだけの相手がいた。
手入れが怠り、伸び放題枯れ放題になった庭園を静かに見つめる影がそこにはあった。
「…アーチャーと、アーチャーのマスターか」
冷えつつある鍛えたばかりの鉄のような、薄暗い赤色の蓬髪。白蝋のような肌。赤金に輝く瞳。
唇が紡いだ言葉はあくまで涼やかで、故にこそ空気を打つ威厳が伴っている。
冨楽唯のセイバー。真名をホグニ・ハールヴダナルソン。北欧神話にその人ありという雄。
この聖杯戦争において格のみを競うとすれば、おそらく彼女をおいて右に出る英霊はいまい。
だからこそ。現状は共同戦線であるからこそ、アーチャーが彼女に発する警戒はそのまま敬意へと繋がっていた。
「話し合いは済んだのか」
「…ええ。粗方。この聖杯戦争がどう転ぶかも、《ALPHA》というものに対しても。
詳しいことはあなたのマスターに聞きなさい。少なくとも私は合意した。後はあなたたち次第よ。
アーチャー。行きましょう」
「…ええ」
並んで洋館の敷地を跨いでいこうとする。その背中へとセイバーは言葉を投げつけた。
「覚悟は済んでいるのか」
主従の歩みが止まる。正確には止まった楡の脚にアーチャーが付き合った形だ。
小さく横顔だけ振り向いた楡の視線をセイバーは揺るぎない静謐さで受け止めた。
「我が真名を知ったなら、そしてお前ほどの若くも優れたドルイドならば、我が身にあったことを知っていよう。
私もヘジンも、例え相手が友であろうと戦うと覚悟を持って戦士となった。
私たちにとって勇ましく戦うことこそ誉れであり、死後ヴァルハラへと導かれれば、次は肩を並べて戦うことができた。
私にとって、そして恐らくヘジンにとって、あのヒャズニングの戦いに至る経緯に悔いはあっても、戦うこと自体に恐怖も嘆きもなかったのだ。
だが此れよりの戦いは違う。あれは獣でしかない。神の与えし獣ならぬ人の裡より発した獣だ。
討つべきものでしかない。討ったところで誉れなどない。
己も、己以外も。失えば後悔と嘆きは運命によって雪がれるものではなく、死してなおお前を苛み続け、それを晴らす術は無いだろう。
それでも、お前は───」
「だとしても、戦うわ」
セイバーと楡の霊子サイズは天と地ほどの差だ。蟻と巨像というのも烏滸がましい。
だとしても楡はきっとセイバーを睨みつけた。セイバーも応えた。アーチャーはただ静かに見守った。
「覚悟なら何万回もしてきた。そういう生き方しか選ばなかったから。だから今だってしてる。
けどね、あなたと私は違うわセイバー。私はあなたみたいに思い切りよくなければ諦めやすくもない。覚悟の形だって違う。
この聖杯戦争は無意味だったか知れない。聖杯なんて得られない。
代わりに何もかも台無しにする獣が生まれただけ。そんなまがい物で、どうしようもない戦いで、私たちはその後始末をするだけなのかもしれない。
───知ったこっちゃないわ。戦うための舞台が整えられている。まだ私は戦える。
それで良かったのよ。ただ私はそれで良かったの。覚悟そのものに意味なんて必要なかったのよ」
「───そうか」
多くを知り、多くを見送ったセイバーは珍しく微かに微笑む。本当に珍しく。
「愚かだな」
「ええ。本当に。でも、あなたもね」
小さく頷いたセイバーを一瞥して楡たちは去っていく。少しの間だけ、セイバーは見えなくなったその背中を目で追った。
言葉に困る。それはとても言葉に困る光景だ。
脱いだのだ。それ自体は理由を導くに難しい行為ではない。
体操着を脱いだ。ただそれだけのこと。最近よく会話をすることになった枢木楡がそうしたというだけなのだ。
問題はこの教室に枢木はひとりで、偶然から扉を開けた僕もひとりで、そしてその瞬間枢木の上半身の全てが顕になっていたというだけのことだ。
恐るべきことだ。こうして目の当たりになった貧しい胸。
22世紀の年頃の娘としてはあまりにも貧弱、あまりにも息苦しい、やせ衰えた胸。
だがそうして貧することが必ずしも弱点と成り得ようか？そうだ、見よ。
たまたまそのタイミングによりがばりと露出された枢木楡の小さな胸。
しかしその乳輪や乳首は慎ましやかながらも相応の自己主張を遂げている。
乳首にしても乳輪にしても、どちらも貞淑を気取っている。小さい。サイズ相応にとても小さい。
だがそれがいい。身の丈相応というのは素晴らしいことだ。それはすなわちバランスが取れているということなのだから。
僕は柄にもなく感動した。感動したので素直に答えた。
「水無月くん。死んで？」
「勿論だ枢木。いつでもいいぞごぺっ」
僕は死んだ。
脱いだのだ。それ自体は理由を導くに難しい行為ではない。
体操着を脱いだ。ただそれだけのこと。最近よく会話をすることになった枢木楡がそうしたというだけなのだ。
問題はこの教室に枢木はひとりで、偶然から扉を開けた僕もひとりで、そしてその瞬間枢木の上半身の全てが顕になっていたというだけのことだ。
恐るべきことだ。こうして目の当たりになった貧しい胸。
22世紀の年頃の娘としてはあまりにも貧弱、あまりにも息苦しい、やせ衰えた胸。
だがそうして貧することが必ずしも弱点と成り得ようか？そうだ、見よ。
たまたまそのタイミングによりがばりと露出された枢木楡の小さな胸。
しかしその乳輪や乳首は慎ましやかながらも相応の自己主張を遂げている。
乳首にしても乳輪にしても、どちらも貞淑を気取っている。小さい。サイズ相応にとても小さい。
だがそれがいい。身の丈相応というのは素晴らしいことだ。それはすなわちバランスが取れているということなのだから。
僕は柄にもなく感動した。感動したので素直に答えた。
「水無月くん。死んで？」
「勿論だ枢木。いつでもいいぞごぺっ」
僕は死んだ。
真っ白に染まった空間が開けて色づいていく。そんな印象だ。
《クオリア》のログインとも違う《TSUCHIKA》へのアクセス。電脳世界に渡るというより異世界を訪れているような感覚。
慣れないな、と心の何処かで思いながら楡は自分の状態を確認した。
所持品に問題なし。拠点からのスタート。委細に問題はない。自分のサーヴァントの気配もちょうど真後ろだ。
「…よし。アーチャー。それじゃ早いとこ水無月くんたちと合流を…何よその顔」
振り返った楡はアーチャーが変な顔をしているのを見て怪訝そうに眉を寄せた。
いつもに皮肉げで冷ややかな表情ではない。何かこう、居た堪れないものを見たような。
あー…と、珍しく言葉を濁してからアーチャーは言った。
「マスター。先に言っておくけれど私は咎めないわ。弄らない方が貴女は堪えるでしょうし」
「はい？いきなり何を言っているのよ。わけわからないことを」
「お盛んなのはいいけれど程々にしておきなさいな」
一応指摘しておくけれどこんな生々しいこと言いたくなかったなぁ、とでも言いたげだった。
何を言ってと口にしかけた楡はきゅっと喉に言葉を詰まらせる。警鐘が鳴り響く。ワーニン、ワーニン。
アーチャー。妖精眼。ログイン直前まで自分がしていたこと。意味深な台詞。
導き出されるのは───水が即座に煮立ったかのように、一瞬で楡の顔が真っ赤に染まった。
「あ…！あ…！あ゛、アーチャーっ！違っ、こ、これはっ、そのっ！」
「いいから。説明しなくていいから。むしろされたら困るわ。どう返事したらいいか分からないもの」
「違くてっ！違うのっ、全然違うっ！ばかっ、ばかぁっ！何でそんなことまで見抜くのよぉ！」
「見抜くんじゃなくて見えるのよ。嫌でもね。…本当に嫌だったわ、今回は」
へっ、と疲れたような半笑いを腕組みしたアーチャーが浮かべた。
楡はといえば面白いことになっていた。赤くなったり青くなったり、アーチャーに掴みかかろうとしてやめたり。
ドラマチックにその場へ膝を付き、突っ伏して震える様はだいぶ笑えたがそろそろ誰かが止めなければなとアーチャーは思った。
「もういいから。そろそろ今晩の話を始めない？」
「何がもういいのよぉ！あ゛あ゛あ゛あ゛！私を殺せえ゛え゛え゛え゛！」
びたんびたんと陸に上がった魚のように跳ねる楡。
ついアーチャーは失敗したなと呟いた。───カメラを買っておけばよかった。
《クオリア》のログインとも違う《TSUCHIKA》へのアクセス。電脳世界に渡るというより異世界を訪れているような感覚。
慣れないな、と心の何処かで思いながら楡は自分の状態を確認した。
所持品に問題なし。拠点からのスタート。委細に問題はない。自分のサーヴァントの気配もちょうど真後ろだ。
「…よし。アーチャー。それじゃ早いとこ水無月くんたちと合流を…何よその顔」
振り返った楡はアーチャーが変な顔をしているのを見て怪訝そうに眉を寄せた。
いつもに皮肉げで冷ややかな表情ではない。何かこう、居た堪れないものを見たような。
あー…と、珍しく言葉を濁してからアーチャーは言った。
「マスター。先に言っておくけれど私は咎めないわ。弄らない方が貴女は堪えるでしょうし」
「はい？いきなり何を言っているのよ。わけわからないことを」
「お盛んなのはいいけれど程々にしておきなさいな」
一応指摘しておくけれどこんな生々しいこと言いたくなかったなぁ、とでも言いたげだった。
何を言ってと口にしかけた楡はきゅっと喉に言葉を詰まらせる。警鐘が鳴り響く。ワーニン、ワーニン。
アーチャー。妖精眼。ログイン直前まで自分がしていたこと。意味深な台詞。
導き出されるのは───水が即座に煮立ったかのように、一瞬で楡の顔が真っ赤に染まった。
「あ…！あ…！あ゛、アーチャーっ！違っ、こ、これはっ、そのっ！」
「いいから。説明しなくていいから。むしろされたら困るわ。どう返事したらいいか分からないもの」
「違くてっ！違うのっ、全然違うっ！ばかっ、ばかぁっ！何でそんなことまで見抜くのよぉ！」
「見抜くんじゃなくて見えるのよ。嫌でもね。…本当に嫌だったわ、今回は」
へっ、と疲れたような半笑いを腕組みしたアーチャーが浮かべた。
楡はといえば面白いことになっていた。赤くなったり青くなったり、アーチャーに掴みかかろうとしてやめたり。
ドラマチックにその場へ膝を付き、突っ伏して震える様はだいぶ笑えたがそろそろ誰かが止めなければなとアーチャーは思った。
「もういいから。そろそろ今晩の話を始めない？」
「何がもういいのよぉ！あ゛あ゛あ゛あ゛！私を殺せえ゛え゛え゛え゛！」
びたんびたんと陸に上がった魚のように跳ねる楡。
ついアーチャーは失敗したなと呟いた。───カメラを買っておけばよかった。
そんな風に夜のことを考えながら廊下を歩いていると、ある一点に人集りがあった。
心当たりはある。壁一面に貼られたシート型の巨大モニターがあるあたりだ。
普段は学園の連絡事項や部活動の募集広告などが展開されているが、今の時期に限っては違う。
期末考査の結果の張り出しが行われているのだ。上位に入った者の名が列挙してある。
この学園の《クオリア》からでも閲覧できるのだが、こういうのは実際に赴いて確かめたくなるものらしい。
まあ、僕には興味も関係もない話だ。もともと成績不良者には縁のないランキングである。
そういえばそんなテストも受けたな、結果は散々だったけれど。その程度の認識だ。
素通りしようとしつつ横目で何気なくモニターを伺った僕は、それを見た途端思わず「うぇ」と口の中で呟いていた。
総合18位に見覚えのある名前があった。伏木第一種学園はマンモス校だ。一学年の人数はゆうに300人を超える。
その中の18位となると十分に上澄みの範疇だ。
つい足を止めていた僕の背中にその総合18位の声が突き刺さった。
「何をぼーっとしてるのよ、水無月くん」
「枢木か…お前、真面目に勉強している側の人間だったんだな…」
「は？いきなり何よ。…ああ、そういうこと」
怪訝そうな顔をした枢木が人集りの方を見て頷いた。
あまり自慢げな様子ではない彼女は、何でも無いことのようにとんでもないことを言った。
「別にさして勉強してないわよ。恥をかきたくはないから直前に軽く要点を押さえるくらいはしたけど」
「し、知っているぞ。それは隠れて勉強をしているやつの台詞だ」
「本当よ。こんなことに掛けてる時間なんて無いもの。
だいたい期末考査の問題なんて軽く捻ってある程度だし、普段の授業聞いていればできるでしょ？」
当然のことのように枢木が言う。
最近濃い付き合いをしているせいで忘れていた。枢木はそういえば頭の出来が違う方の人間だった。
奇妙に打ちひしがれた気持ちでいる僕へ枢木は追い打ちを放ってきた。
「で、水無月くんはどうだったの？」
「いや〜…それは…人には向き不向きがあってだな…」
口籠っていると枢木がいやらしく微笑んだ。人を甚振って愉悦を見出す時の悪い笑顔だ。
「ま、殺し合いやってる最中に補修なんてことにならないようにね。もしそうなっても助けてあげないから」
ひらひらと後ろ手を振って去っていく。おのれ。凄い敗北感だ。
心当たりはある。壁一面に貼られたシート型の巨大モニターがあるあたりだ。
普段は学園の連絡事項や部活動の募集広告などが展開されているが、今の時期に限っては違う。
期末考査の結果の張り出しが行われているのだ。上位に入った者の名が列挙してある。
この学園の《クオリア》からでも閲覧できるのだが、こういうのは実際に赴いて確かめたくなるものらしい。
まあ、僕には興味も関係もない話だ。もともと成績不良者には縁のないランキングである。
そういえばそんなテストも受けたな、結果は散々だったけれど。その程度の認識だ。
素通りしようとしつつ横目で何気なくモニターを伺った僕は、それを見た途端思わず「うぇ」と口の中で呟いていた。
総合18位に見覚えのある名前があった。伏木第一種学園はマンモス校だ。一学年の人数はゆうに300人を超える。
その中の18位となると十分に上澄みの範疇だ。
つい足を止めていた僕の背中にその総合18位の声が突き刺さった。
「何をぼーっとしてるのよ、水無月くん」
「枢木か…お前、真面目に勉強している側の人間だったんだな…」
「は？いきなり何よ。…ああ、そういうこと」
怪訝そうな顔をした枢木が人集りの方を見て頷いた。
あまり自慢げな様子ではない彼女は、何でも無いことのようにとんでもないことを言った。
「別にさして勉強してないわよ。恥をかきたくはないから直前に軽く要点を押さえるくらいはしたけど」
「し、知っているぞ。それは隠れて勉強をしているやつの台詞だ」
「本当よ。こんなことに掛けてる時間なんて無いもの。
だいたい期末考査の問題なんて軽く捻ってある程度だし、普段の授業聞いていればできるでしょ？」
当然のことのように枢木が言う。
最近濃い付き合いをしているせいで忘れていた。枢木はそういえば頭の出来が違う方の人間だった。
奇妙に打ちひしがれた気持ちでいる僕へ枢木は追い打ちを放ってきた。
「で、水無月くんはどうだったの？」
「いや〜…それは…人には向き不向きがあってだな…」
口籠っていると枢木がいやらしく微笑んだ。人を甚振って愉悦を見出す時の悪い笑顔だ。
「ま、殺し合いやってる最中に補修なんてことにならないようにね。もしそうなっても助けてあげないから」
ひらひらと後ろ手を振って去っていく。おのれ。凄い敗北感だ。
「なあ枢木」
僕は長机に腰掛けている枢木へ小声で話しかけた。じろりと睨まれたのでメモ帳の端を千切って文字を書き込む。
壇上ではロード・エルメロイ�契い箸�いう講師が静粛に授業を進めていた。
『一番前の席にいる子。だいぶ奇天烈なファッションだがあれは魔術の関係でああいう格好をしているのか？』
すいと滑らせて目の前に置かれたメモを一瞥した枢木はしばらく返事を無視していた。
やがて課題を答える段になってさらさらと答えを書き示すと続け様に返答を書いている。
『らしいわよ。ああいうのここじゃよくあることだからいちいち奇異の目向けないで。恥ずかしいから』
枢木らしい辛辣な返事である。でも気持ちはわかってほしい。
あんなふうに科学先端技術バリバリ、仮想展開モニターをびかびか光らせた学生がいれば気になってしまうのだ。
再び授業が再開し、やたら目立つあの学生を見ながら僕はメモの切れ端を再び滑らせた。
『この後、授業がないならロンドンを巡らないか。セイバーも誘ってさ』
ちらりと目を通した枢木はふんと鼻息をついた後、囁くように言った。
「セイバー呼んでおきなさい」
少し頬が赤らんでいたのを僕は見逃さなかった。
「…これが我らがブリテンの未来の料理、ですか」
油でギトギトしたフィッシュ＆チップスを昏い目で見つめながらセイバーは呟いた。
そんなに、と呟きかけたのは僕。
だから言ったじゃないの、という表情で泥濘んだ視線を向けていたのが枢木である。
新聞紙に包まれた白身魚の油揚げは既に油が滲み出ていて嫌な予感がしたのは確かだ。
「ひどい話よね。英国の飯は不味いなんて散々言われ続けたのにまさか悪化するなんて一世紀前の人たちは思いもしなかったでしょう」
「セイバー。気にするな。誰だって不味い飯を残す権利はある。僕にだってある。セイバーにだってあるんだ。だから無理しなくていい」
とうとう枢木は口の中に押し込んだ揚げ物をビールで流し込んでいた。あの、未成年…。
そしてセイバーの表情はと言えば筆舌に尽くしがたい。
自国の料理文化、その進化と退廃、悲しき時代を目の前の揚げ物を通して感じ取っている顔だった。
あまりに虚しくなって僕は言った。
「お茶菓子は、かなり美味しいらしいぞ？」
「…サクヤ。それを聞いてとても安心しました」
そう言ってセイバーはフィッシュ＆チップスを頬張った。目に涙が浮かんでいる気がした。
僕は長机に腰掛けている枢木へ小声で話しかけた。じろりと睨まれたのでメモ帳の端を千切って文字を書き込む。
壇上ではロード・エルメロイ�契い箸�いう講師が静粛に授業を進めていた。
『一番前の席にいる子。だいぶ奇天烈なファッションだがあれは魔術の関係でああいう格好をしているのか？』
すいと滑らせて目の前に置かれたメモを一瞥した枢木はしばらく返事を無視していた。
やがて課題を答える段になってさらさらと答えを書き示すと続け様に返答を書いている。
『らしいわよ。ああいうのここじゃよくあることだからいちいち奇異の目向けないで。恥ずかしいから』
枢木らしい辛辣な返事である。でも気持ちはわかってほしい。
あんなふうに科学先端技術バリバリ、仮想展開モニターをびかびか光らせた学生がいれば気になってしまうのだ。
再び授業が再開し、やたら目立つあの学生を見ながら僕はメモの切れ端を再び滑らせた。
『この後、授業がないならロンドンを巡らないか。セイバーも誘ってさ』
ちらりと目を通した枢木はふんと鼻息をついた後、囁くように言った。
「セイバー呼んでおきなさい」
少し頬が赤らんでいたのを僕は見逃さなかった。
「…これが我らがブリテンの未来の料理、ですか」
油でギトギトしたフィッシュ＆チップスを昏い目で見つめながらセイバーは呟いた。
そんなに、と呟きかけたのは僕。
だから言ったじゃないの、という表情で泥濘んだ視線を向けていたのが枢木である。
新聞紙に包まれた白身魚の油揚げは既に油が滲み出ていて嫌な予感がしたのは確かだ。
「ひどい話よね。英国の飯は不味いなんて散々言われ続けたのにまさか悪化するなんて一世紀前の人たちは思いもしなかったでしょう」
「セイバー。気にするな。誰だって不味い飯を残す権利はある。僕にだってある。セイバーにだってあるんだ。だから無理しなくていい」
とうとう枢木は口の中に押し込んだ揚げ物をビールで流し込んでいた。あの、未成年…。
そしてセイバーの表情はと言えば筆舌に尽くしがたい。
自国の料理文化、その進化と退廃、悲しき時代を目の前の揚げ物を通して感じ取っている顔だった。
あまりに虚しくなって僕は言った。
「お茶菓子は、かなり美味しいらしいぞ？」
「…サクヤ。それを聞いてとても安心しました」
そう言ってセイバーはフィッシュ＆チップスを頬張った。目に涙が浮かんでいる気がした。
生憎と君憧れの秘密結社なんて存在しないわよ水無月くん
2102年においても高級紳士服のメッカなのは間違いないけれどね
時計塔のロードはサヴィル・ロウを贔屓にしてるから…気になるならお好きにどうぞ？
さてセイバー、水無月くんは放っておいて私たちはお茶屋さんをめぐりましょうか
こと甘いものに関してはこの国は偏執的よ？
2102年においても高級紳士服のメッカなのは間違いないけれどね
時計塔のロードはサヴィル・ロウを贔屓にしてるから…気になるならお好きにどうぞ？
さてセイバー、水無月くんは放っておいて私たちはお茶屋さんをめぐりましょうか
こと甘いものに関してはこの国は偏執的よ？
「…なあ」
「な゛に゛よ゛」
「大丈夫ですサクヤ。ニレはこうしてちゃんと保護していますので」
神妙に頷くセイバー。そして楡はその背中にしがみつくようにして隠れていた。
そのくせ視線だけはセイバーの影からちらりちらりと画面に送っているのである。
ホラーとは五感の刺激が命だ。その意味では《クオリア》上のゲームでは今やっているゲーム以上の恐怖感を感じさせるゲームは山ほどある。
だというのに、楡は僕がひとまず勧めたこのレトロゲーの時点でこの怖がりようだった。
「意外だなぁ。枢木がこういうの駄目って」
「べ…別に駄目ってことはないのよ。でも考えてみて水無月くん。
現実において呪詛の類は殺すか殺されるか。ある意味ではとてもシンプルなゲームで怖がったりしている余裕なんて無いわ。
でもこれはその…徹底して怖がらせるためにできてるじゃない。死は二の次。怖がらせることが前提。
そういうのは…ちょっと…慣れないというか」
「あ。横の窓からいきなり死者の群れが」
「ぎゃああああああああっ！来てる！ゾンビ来てる！」
背後からホールドを食らったセイバーがやんわりと楡を組み伏せる。僕はその間にゾンビを撃った。
「な゛に゛よ゛」
「大丈夫ですサクヤ。ニレはこうしてちゃんと保護していますので」
神妙に頷くセイバー。そして楡はその背中にしがみつくようにして隠れていた。
そのくせ視線だけはセイバーの影からちらりちらりと画面に送っているのである。
ホラーとは五感の刺激が命だ。その意味では《クオリア》上のゲームでは今やっているゲーム以上の恐怖感を感じさせるゲームは山ほどある。
だというのに、楡は僕がひとまず勧めたこのレトロゲーの時点でこの怖がりようだった。
「意外だなぁ。枢木がこういうの駄目って」
「べ…別に駄目ってことはないのよ。でも考えてみて水無月くん。
現実において呪詛の類は殺すか殺されるか。ある意味ではとてもシンプルなゲームで怖がったりしている余裕なんて無いわ。
でもこれはその…徹底して怖がらせるためにできてるじゃない。死は二の次。怖がらせることが前提。
そういうのは…ちょっと…慣れないというか」
「あ。横の窓からいきなり死者の群れが」
「ぎゃああああああああっ！来てる！ゾンビ来てる！」
背後からホールドを食らったセイバーがやんわりと楡を組み伏せる。僕はその間にゾンビを撃った。
果たして自分から志願したことではあったが。
師事するべき相手を間違えたか、と戸惑う程度には、課される課題は厳しいものだった。
『いい。あなたの属性は水。自然学によれば冷であり湿。形なきモノこそあなたの真髄。
同時に潤すことで壊れやすいものを壊れにくくさせるのがあなたの本質。
アイドル業なんて私からすればあなたにとって天職だったでしょうね。これだけ強い水の属性を得ているのだから』
というようにアイツが褒めたのは最初だけ。後はひたすら鬼教官だった。
「ほら。集中が落ちてきてるわよ。しゃんとしなさいな」
「うぐぐ…」
《クオリア》の電脳空間の一角でアタシはたった一粒の水滴を自在に操ることに全神経を集中させている。
簡単に見えて恐るべき困難を課した女のアバターはぐったりと壁に背を付けてアタシの修行の様子を見ていた。
さすがにアタシでも強くは出られない───師は電脳世界ですらまともに手足が動かせないのだ。
「はいやり直し。…でも、さっきよりは長続きしたわね。多少は成長したんじゃない」
「何だと…ホントか！？」
だから不意に与えられる甘い言葉に飛びつくアタシもちょろいもんだという自覚はある。
師事するべき相手を間違えたか、と戸惑う程度には、課される課題は厳しいものだった。
『いい。あなたの属性は水。自然学によれば冷であり湿。形なきモノこそあなたの真髄。
同時に潤すことで壊れやすいものを壊れにくくさせるのがあなたの本質。
アイドル業なんて私からすればあなたにとって天職だったでしょうね。これだけ強い水の属性を得ているのだから』
というようにアイツが褒めたのは最初だけ。後はひたすら鬼教官だった。
「ほら。集中が落ちてきてるわよ。しゃんとしなさいな」
「うぐぐ…」
《クオリア》の電脳空間の一角でアタシはたった一粒の水滴を自在に操ることに全神経を集中させている。
簡単に見えて恐るべき困難を課した女のアバターはぐったりと壁に背を付けてアタシの修行の様子を見ていた。
さすがにアタシでも強くは出られない───師は電脳世界ですらまともに手足が動かせないのだ。
「はいやり直し。…でも、さっきよりは長続きしたわね。多少は成長したんじゃない」
「何だと…ホントか！？」
だから不意に与えられる甘い言葉に飛びつくアタシもちょろいもんだという自覚はある。
「───あーあ。現実の処女、結局君にあげちゃった。温存するつもりだったのにな」
「…僕で悪かったな。どうせ枢木にとっては不釣り合いなんだろうさ」
「そうよ？なんせ由緒正しい枢木の令嬢ですもの、私。最初から生まれで水無月くんと釣り合うわけないじゃない」
なんて言うのは僕の横で裸のまま不敵に微笑む枢木だった。
ちょっと癪に障る。さっきまで僕にやり込められてきゃんきゃん鳴いてたくせにこの態度だ。
でも同時に、どれだけ追い詰められようと根っこを失わないしぶとさこそが枢木のような気がして満足してしまう自分がいた。
そんなふうにいつでも負けん気と熱情を帯びた彼女だというのに、猫が擦り寄るように僕の方へと身を寄せて身体を擦りつけてくる。
そのギャップに心臓が高鳴らなかったかといえば、嘘になる。
「でもいいわ。水無月くんなら許してあげる。私の大事なものを奪ったことを後悔する権利をあげる。
移植した魔術刻印を安定化させる作業…以上のこと、しちゃったもんね。
…ねえ。水無月くん」
同じ枕を共有したまま、躙り寄ってきた枢木はこう言った。
蕩けるように。氷細工から雫が滴り落ちるように。
「続き、しない？」
「…僕で悪かったな。どうせ枢木にとっては不釣り合いなんだろうさ」
「そうよ？なんせ由緒正しい枢木の令嬢ですもの、私。最初から生まれで水無月くんと釣り合うわけないじゃない」
なんて言うのは僕の横で裸のまま不敵に微笑む枢木だった。
ちょっと癪に障る。さっきまで僕にやり込められてきゃんきゃん鳴いてたくせにこの態度だ。
でも同時に、どれだけ追い詰められようと根っこを失わないしぶとさこそが枢木のような気がして満足してしまう自分がいた。
そんなふうにいつでも負けん気と熱情を帯びた彼女だというのに、猫が擦り寄るように僕の方へと身を寄せて身体を擦りつけてくる。
そのギャップに心臓が高鳴らなかったかといえば、嘘になる。
「でもいいわ。水無月くんなら許してあげる。私の大事なものを奪ったことを後悔する権利をあげる。
移植した魔術刻印を安定化させる作業…以上のこと、しちゃったもんね。
…ねえ。水無月くん」
同じ枕を共有したまま、躙り寄ってきた枢木はこう言った。
蕩けるように。氷細工から雫が滴り落ちるように。
「続き、しない？」
「お昼に喫茶店？いいわよ」
なんて枢木が返事するものだからつい様子を伺ってしまった。
相変わらずこの寒空だというのに下半身は気合入った格好だった。ミニスカートからは白い脚が伸びている。
ブーツこそ膝のあたりまであるものの、太腿は涼しげ通り越して寒そうだ。上はジャケットを着込んでそれなりに暖かそうなのに。
それでも枢木がそういう装いをしているとこの格好しかないという気持ちになるから美人は得という話。
「なによ」
「いや。枢木のことだから昼食なんてファストフードで腹が膨れればいいとか言うと思ったのだ。
言っておくがレトロなスタイルのやつだぞ？チェーンじゃない本格的な店だ」
「分かってるわよ。水無月くんのお勧めなんでしょ。なんでも形から入りたがるあなたらしいわ、そういう店押さえてるのって」
「褒められてるのか貶されているのか」
「褒めてるのよ。いいことじゃない。今日びレトロな喫茶店なんて逆に新鮮だわ」
枢木はジャケットのポケットに手を突っ込んだままてきぱきと歩き出した。
変わらないものなんて何もないように枢木も変わった。前はこんな余分を嫌悪さえする尖りぶりだったのに今ではすっかり丸くなったものだ。
何かが変わった自覚を持てていないのは僕だけだ。
あの狂騒に満ちた電脳世界での聖杯戦争が終わった後も落ち着いた日々からは程遠く、滅茶苦茶になった《TSUCHIKA》の様子を見守ったり時計塔から枢木のもとに寄越された調査員とやらからの追求をうまくいなしたりと慌ただしい半年間だった。
日々に追われるばかりで僕自身は何か新しいものを得たり成長したという実感はない。
だがそれも枢木に言わせれば「水無月くんも変わったわね」と言う。サクナでさえ「サクヤくんちょっと変わったね」と言うのだ。
他人から見ると違うものなのだろうか。できればそれが進歩であって欲しいものだ。
ただ明確に以前と違うことがあるとすれば───
「セイバー、そろそろ行くわよ。ほら水無月くん、案内してくれるんでしょ？」
くるくると踊るようにターンして勝ち気な笑みを浮かべる枢木。雑貨店の店先に首を突っ込んでいたセイバーが振り返った。
僕も解けかけていたマフラーを結び直し、唇に微笑を乗せて答えた。
「ああ。今行く。サンドイッチが絶品なのだ」
11月の末。曇り空は急に冷え込んできた今日の空気にはよく似合っている。
僕は半年前に得たふたつの縁を追って歩き出した。
なんて枢木が返事するものだからつい様子を伺ってしまった。
相変わらずこの寒空だというのに下半身は気合入った格好だった。ミニスカートからは白い脚が伸びている。
ブーツこそ膝のあたりまであるものの、太腿は涼しげ通り越して寒そうだ。上はジャケットを着込んでそれなりに暖かそうなのに。
それでも枢木がそういう装いをしているとこの格好しかないという気持ちになるから美人は得という話。
「なによ」
「いや。枢木のことだから昼食なんてファストフードで腹が膨れればいいとか言うと思ったのだ。
言っておくがレトロなスタイルのやつだぞ？チェーンじゃない本格的な店だ」
「分かってるわよ。水無月くんのお勧めなんでしょ。なんでも形から入りたがるあなたらしいわ、そういう店押さえてるのって」
「褒められてるのか貶されているのか」
「褒めてるのよ。いいことじゃない。今日びレトロな喫茶店なんて逆に新鮮だわ」
枢木はジャケットのポケットに手を突っ込んだままてきぱきと歩き出した。
変わらないものなんて何もないように枢木も変わった。前はこんな余分を嫌悪さえする尖りぶりだったのに今ではすっかり丸くなったものだ。
何かが変わった自覚を持てていないのは僕だけだ。
あの狂騒に満ちた電脳世界での聖杯戦争が終わった後も落ち着いた日々からは程遠く、滅茶苦茶になった《TSUCHIKA》の様子を見守ったり時計塔から枢木のもとに寄越された調査員とやらからの追求をうまくいなしたりと慌ただしい半年間だった。
日々に追われるばかりで僕自身は何か新しいものを得たり成長したという実感はない。
だがそれも枢木に言わせれば「水無月くんも変わったわね」と言う。サクナでさえ「サクヤくんちょっと変わったね」と言うのだ。
他人から見ると違うものなのだろうか。できればそれが進歩であって欲しいものだ。
ただ明確に以前と違うことがあるとすれば───
「セイバー、そろそろ行くわよ。ほら水無月くん、案内してくれるんでしょ？」
くるくると踊るようにターンして勝ち気な笑みを浮かべる枢木。雑貨店の店先に首を突っ込んでいたセイバーが振り返った。
僕も解けかけていたマフラーを結び直し、唇に微笑を乗せて答えた。
「ああ。今行く。サンドイッチが絶品なのだ」
11月の末。曇り空は急に冷え込んできた今日の空気にはよく似合っている。
僕は半年前に得たふたつの縁を追って歩き出した。
22世紀とは環境の決定的な変化に抗う世紀である、と誰が言ったか。
その危険性を21世紀も中頃になってようやく人類全体は理解し、そのための対抗策を講じてきた。
が、それらの施策はいわゆる温暖化という異常気象の上昇曲線に対して待ったをかけたに過ぎず、つまり───
「ニレ、大丈夫ですか…？」
「あー。うー。むりー」
セイバーが傍らについて団扇で扇ぐのにあわせて枢木は唸った。
そう、猛暑は我が家に避難してきたこのチビ助の住環境にも大いに負担をかけたのである。
枢木は端的に言って他人の家にお邪魔するには酷い格好だった。キャミソールに短パンだけ。
とりあえず隠さないといけないところだけ隠した、というような姿で我が家のソファに寝転がっている。しかし責め切れない。
猛暑で枢木の自宅のエアコンがぶっ壊れ、ほとんど釜茹でのような状態になった部屋から枢木がかけてきたSOSに僕たちが出動したのだ。
他所行きの格好なんてしている暇などなかった。僕とセイバーで担ぎ上げるようにして救い出したのだから。
正直救急車を呼びかけた。踏みとどまったのは枢木が魔術師であり自宅に他人を踏み込ませたくない理由を持つという一点である。
「サクヤくん、氷枕充電してきたけど」
「ああ悪いサクナ、そこに置いていってくれ」
ひょこりと扉から顔を覗かせたサクナが電動の氷枕を置いていく。
引っ掴んで電源を入れ、ぐったりと横たわる枢木の額に乗せた。いくらか安堵の溜め息が枢木の喉から漏れた。
「しかし急なことだったな。パソコンは大丈夫か？」
「余計なお世話よ…。セーフティモードで電源落としてきたから…うう…」
「ニレ。もう大丈夫ですよ。お気を確かに」
セイバーがそう言って枢木の汗ばんだ髪の毛を撫で付けた。
こうしてみるとセイバーは俺からすればある意味役得、という立場にいる。横たわる枢木に膝で枕を貸していた。
役得というのはつまり枢木が非常に油断をした姿であるということだ。
この女は何が何でも脚には布を纏いたくないという子供じみた欲求を律儀に守っているが、反面上半身の装いに拘りはない。
意外にもこんな夏場であろうと長袖を着ていたりして肌を見せない姿ということも多い。
それが今回は緊急時ということもあって全開だった。鎖骨、胸元、二の腕や首筋。
枢木のやや不健康さを感じさせるほどの白く透き通った肌がこれでもかというくらい顕になっている。
それもただ肌が見えているわけではない。べっとりと汗に塗れててらてらと光っている具合なのだ。
枢木がもう少し調子を取り戻して風呂場に放り込まれるまでの僅かな時間のみ維持される悩ましい姿である。
ぶっちゃけると、枢木は美少女だ。それも一山いくらではないくらい整った少女だ。
僕が考える最適なファッションはいちいち撥ねつける難敵ではあれ、モデルとしては身長が低い以外に申し分ない相手だった。
「…サクヤ？そろそろニレに水浴びをさせるので…ええ、あまりまじまじと見ないでいただければ」
「え？ああ、悪い…手間かけさせるが枢木の面倒を見てやってくれ」
されるがままの枢木に肩を貸したセイバーが僕の方を一瞬一瞥し、くすりと笑った。
僕の前を通り過ぎる間にふと枢木の汗の香りが鼻先をくすぐる。目一杯に女を詰め込んだような甘い香りがした。
なんとなく、その去りゆく後ろ姿に言ってしまう。
「なあセイバー。…シャワーを浴びせさせるだけなのだよな？」
「ええそうですよサクヤ。汗をかいたままでは夏風邪を引いてしまいますから…」
にこりと笑ったセイバーが扉の向こうに消えた。妙にどぎまぎしてしまったのは気のせいだろうか。
その危険性を21世紀も中頃になってようやく人類全体は理解し、そのための対抗策を講じてきた。
が、それらの施策はいわゆる温暖化という異常気象の上昇曲線に対して待ったをかけたに過ぎず、つまり───
「ニレ、大丈夫ですか…？」
「あー。うー。むりー」
セイバーが傍らについて団扇で扇ぐのにあわせて枢木は唸った。
そう、猛暑は我が家に避難してきたこのチビ助の住環境にも大いに負担をかけたのである。
枢木は端的に言って他人の家にお邪魔するには酷い格好だった。キャミソールに短パンだけ。
とりあえず隠さないといけないところだけ隠した、というような姿で我が家のソファに寝転がっている。しかし責め切れない。
猛暑で枢木の自宅のエアコンがぶっ壊れ、ほとんど釜茹でのような状態になった部屋から枢木がかけてきたSOSに僕たちが出動したのだ。
他所行きの格好なんてしている暇などなかった。僕とセイバーで担ぎ上げるようにして救い出したのだから。
正直救急車を呼びかけた。踏みとどまったのは枢木が魔術師であり自宅に他人を踏み込ませたくない理由を持つという一点である。
「サクヤくん、氷枕充電してきたけど」
「ああ悪いサクナ、そこに置いていってくれ」
ひょこりと扉から顔を覗かせたサクナが電動の氷枕を置いていく。
引っ掴んで電源を入れ、ぐったりと横たわる枢木の額に乗せた。いくらか安堵の溜め息が枢木の喉から漏れた。
「しかし急なことだったな。パソコンは大丈夫か？」
「余計なお世話よ…。セーフティモードで電源落としてきたから…うう…」
「ニレ。もう大丈夫ですよ。お気を確かに」
セイバーがそう言って枢木の汗ばんだ髪の毛を撫で付けた。
こうしてみるとセイバーは俺からすればある意味役得、という立場にいる。横たわる枢木に膝で枕を貸していた。
役得というのはつまり枢木が非常に油断をした姿であるということだ。
この女は何が何でも脚には布を纏いたくないという子供じみた欲求を律儀に守っているが、反面上半身の装いに拘りはない。
意外にもこんな夏場であろうと長袖を着ていたりして肌を見せない姿ということも多い。
それが今回は緊急時ということもあって全開だった。鎖骨、胸元、二の腕や首筋。
枢木のやや不健康さを感じさせるほどの白く透き通った肌がこれでもかというくらい顕になっている。
それもただ肌が見えているわけではない。べっとりと汗に塗れててらてらと光っている具合なのだ。
枢木がもう少し調子を取り戻して風呂場に放り込まれるまでの僅かな時間のみ維持される悩ましい姿である。
ぶっちゃけると、枢木は美少女だ。それも一山いくらではないくらい整った少女だ。
僕が考える最適なファッションはいちいち撥ねつける難敵ではあれ、モデルとしては身長が低い以外に申し分ない相手だった。
「…サクヤ？そろそろニレに水浴びをさせるので…ええ、あまりまじまじと見ないでいただければ」
「え？ああ、悪い…手間かけさせるが枢木の面倒を見てやってくれ」
されるがままの枢木に肩を貸したセイバーが僕の方を一瞬一瞥し、くすりと笑った。
僕の前を通り過ぎる間にふと枢木の汗の香りが鼻先をくすぐる。目一杯に女を詰め込んだような甘い香りがした。
なんとなく、その去りゆく後ろ姿に言ってしまう。
「なあセイバー。…シャワーを浴びせさせるだけなのだよな？」
「ええそうですよサクヤ。汗をかいたままでは夏風邪を引いてしまいますから…」
にこりと笑ったセイバーが扉の向こうに消えた。妙にどぎまぎしてしまったのは気のせいだろうか。
し…しないわよ！？馬鹿じゃないの！？馬鹿じゃないの！？
こ、こんな格好させて…！あまつさえ犬みたいに鳴けって！？
私を馬鹿にしてるの！？きゃんきゃん喚いてるのがお似合いだって！
見てみなさい！誰もそんな恥ずかしいことしないわよ！
なにかの…なにかの間違いよ！なによサーヴァントに犬の耳生やして！
おまけにあんな露出の多めの…しかも！しかも！
胸を！ 強調した！ 格好！
どうして私に着せるのも同じデザインなのかしら！？
あーっその目！絶対今こう思ったわ！「哀れなほど薄っぺらな本人の人間性の底の浅さが垣間見えるようなおかわいい貧乳だ」って！
畜生！い゛っ゛そ゛わ゛ら゛え゛〜〜！
え？そんなことない？似合ってる？
…うー…騙されたりしないわよ！腹の底では笑ってるんでしょどうせ！まぁでも…ありがと…
待ってくださいサクヤ
確かにニレの小さく可愛らしい胸は決して短所ではなくむしろ魅力であることは認めましょう
ですがそれ以上に押し出すべきポイントがあります 何かわかりますかそう生足です
通常着物は長袖長裾、しかしニレは足が覆われるのを嫌う つまりそのままでは着ないでしょう
そこでサクヤのデザインセンスを活かしミニスカ晴れ着を着せるべきだと進言します
上はしっかり着こなしているのに下は美白の生足が晒される、そのギャップがニレを引き立てるのです
さらには羽根つきで負かした際の墨の落書きを太ももにすることでエロスも際立つでしょう
そんな姿を見ればきっとサクヤもその獣欲を抑えきれなくなるのは間違いなしです
こ、こんな格好させて…！あまつさえ犬みたいに鳴けって！？
私を馬鹿にしてるの！？きゃんきゃん喚いてるのがお似合いだって！
見てみなさい！誰もそんな恥ずかしいことしないわよ！
わんわん❤ う……わうわう……///〜〜〜〜………！！
なにかの…なにかの間違いよ！なによサーヴァントに犬の耳生やして！
おまけにあんな露出の多めの…しかも！しかも！
胸を！ 強調した！ 格好！
どうして私に着せるのも同じデザインなのかしら！？
あーっその目！絶対今こう思ったわ！「哀れなほど薄っぺらな本人の人間性の底の浅さが垣間見えるようなおかわいい貧乳だ」って！
畜生！い゛っ゛そ゛わ゛ら゛え゛〜〜！
え？そんなことない？似合ってる？
…うー…騙されたりしないわよ！腹の底では笑ってるんでしょどうせ！まぁでも…ありがと…
待ってくださいサクヤ
確かにニレの小さく可愛らしい胸は決して短所ではなくむしろ魅力であることは認めましょう
ですがそれ以上に押し出すべきポイントがあります 何かわかりますかそう生足です
通常着物は長袖長裾、しかしニレは足が覆われるのを嫌う つまりそのままでは着ないでしょう
そこでサクヤのデザインセンスを活かしミニスカ晴れ着を着せるべきだと進言します
上はしっかり着こなしているのに下は美白の生足が晒される、そのギャップがニレを引き立てるのです
さらには羽根つきで負かした際の墨の落書きを太ももにすることでエロスも際立つでしょう
そんな姿を見ればきっとサクヤもその獣欲を抑えきれなくなるのは間違いなしです
───ていうかなんで新年一発目からこんなことしなきゃいけないのよ！
私ヒロインよ！ヒロイン！正規ルートだってちゃんとあるヒロインなのよ！？
それがこんなお胸のおかわいいコスプレなんかして、犬耳つけて、あまつさえきゃんきゃん喚いてたら…
ただのヨゴレみたいじゃない！ただの面白い女みたいじゃない！
あっ今「犬種でいったらポメラニアンだな」って目ぇした！わかった、わかっちゃったわ！
あんなに愛嬌投げ売りできないわよ私！あんなにぽめぽめしながら歩けないわよ私！
そういうのはセイバーあたりに任せておくわ。私はヒロインとして王道を歩むんだから！
でっ…できるもん！ちゃんと道の真ん中のっしのっしと歩けるもん！
七転八倒しながらヤケクソ気味に進む面白いヒロインなんかにはならないもん！
ほら私のルート見て！めっちゃ頑張ってるでしょう私！
媚を売れなんて言われても清廉として頑と拒む瀟洒なヒロインなんだからぁ！
聞こえたわよアーチャー！今鼻で笑ったでしょう！ヒロイン（笑）って！
だいたい自分だっておかわい貧乳晒して犬耳の恥ずかしい格好のくせに！恥ずかしい格好のくせに〜！！
いいえニレ、ヒロインだからこそこういうことをするのですよ
原作でもセイバー系ヒロインがライオンの着ぐるみを纏ってマスコットキャラと化しツンデレ系ヒロインが魔法少女のコスプレをしてかわいそうな感じになり後輩系ヒロインが闇の深さを存分に発揮しているのです
そうヒロインとは単に清純ではいられないもの シリアスなシナリオでは曇らせを好む作者によって容赦なく心を滅多打ちにされギャグシナリオではこういったヨゴレをこなさねばならない大変な役割なのです
セイバーは黙ってなさいこの約束されたカワイイを振りまく約束されたカワイイヒロインめ〜！
私天然でございます〜って顔しておきながら口を開けばいやらしい闇妄想がぽんぽん飛び出るくせに！
興味ありませ〜んって顔しておきながらそういうコンテンツには鼻の下伸ばして見入るくせに〜！
でもプロテクト枠だからそういう扱いはされないのよ。これって差別よね？
その点なんなのよ私は。どうしてこういう扱い受けるの。これが分からない！
終わっちゃいないわ！私にとってイロモノ扱いとの戦いは何も終わっちゃいないのよ！
例えば！いいじゃない栄養食品で健康維持してたって！三食が成形食品と飲み物だけでもいいじゃない！
コンパクトでインスタント、まさに現代人らしい食事じゃない！
それをみんなよってたかってイロモノ扱いする！私の時代はいつ来るのよ！少なくとも健康維持は完璧なのよ！
そういう、なに？ヒロイン差別的なもの？ちょっと突ついたら反応がいいヒロインを面白おかしく扱う？
私はそんな風潮と戦わなければならないの！私よくないと思うそういうの！
あっ何その顔 やめなさいセイバー私の手首を握って あっあっ
私ヒロインよ！ヒロイン！正規ルートだってちゃんとあるヒロインなのよ！？
それがこんなお胸のおかわいいコスプレなんかして、犬耳つけて、あまつさえきゃんきゃん喚いてたら…
ただのヨゴレみたいじゃない！ただの面白い女みたいじゃない！
あっ今「犬種でいったらポメラニアンだな」って目ぇした！わかった、わかっちゃったわ！
あんなに愛嬌投げ売りできないわよ私！あんなにぽめぽめしながら歩けないわよ私！
そういうのはセイバーあたりに任せておくわ。私はヒロインとして王道を歩むんだから！
でっ…できるもん！ちゃんと道の真ん中のっしのっしと歩けるもん！
七転八倒しながらヤケクソ気味に進む面白いヒロインなんかにはならないもん！
ほら私のルート見て！めっちゃ頑張ってるでしょう私！
媚を売れなんて言われても清廉として頑と拒む瀟洒なヒロインなんだからぁ！
聞こえたわよアーチャー！今鼻で笑ったでしょう！ヒロイン（笑）って！
だいたい自分だっておかわい貧乳晒して犬耳の恥ずかしい格好のくせに！恥ずかしい格好のくせに〜！！
いいえニレ、ヒロインだからこそこういうことをするのですよ
原作でもセイバー系ヒロインがライオンの着ぐるみを纏ってマスコットキャラと化しツンデレ系ヒロインが魔法少女のコスプレをしてかわいそうな感じになり後輩系ヒロインが闇の深さを存分に発揮しているのです
そうヒロインとは単に清純ではいられないもの シリアスなシナリオでは曇らせを好む作者によって容赦なく心を滅多打ちにされギャグシナリオではこういったヨゴレをこなさねばならない大変な役割なのです
セイバーは黙ってなさいこの約束されたカワイイを振りまく約束されたカワイイヒロインめ〜！
私天然でございます〜って顔しておきながら口を開けばいやらしい闇妄想がぽんぽん飛び出るくせに！
興味ありませ〜んって顔しておきながらそういうコンテンツには鼻の下伸ばして見入るくせに〜！
でもプロテクト枠だからそういう扱いはされないのよ。これって差別よね？
その点なんなのよ私は。どうしてこういう扱い受けるの。これが分からない！
終わっちゃいないわ！私にとってイロモノ扱いとの戦いは何も終わっちゃいないのよ！
例えば！いいじゃない栄養食品で健康維持してたって！三食が成形食品と飲み物だけでもいいじゃない！
コンパクトでインスタント、まさに現代人らしい食事じゃない！
それをみんなよってたかってイロモノ扱いする！私の時代はいつ来るのよ！少なくとも健康維持は完璧なのよ！
そういう、なに？ヒロイン差別的なもの？ちょっと突ついたら反応がいいヒロインを面白おかしく扱う？
私はそんな風潮と戦わなければならないの！私よくないと思うそういうの！
あっ何その顔 やめなさいセイバー私の手首を握って あっあっ
ニレは可愛いですねはぁ！？そ、そういうことセイバーに言われても全然嬉しくないんですけど
ほら可愛さ綺麗さ可憐さでは間違いなくセイバーの方が上だし。私胸ないし。胸平らだし。平野が広がってるし
何言わせるのよぶっ飛ばすわよこの野郎。とにかくセイバーに言われるのは惨めというか情けないというか
ニレは可愛いですねえーと…そのぉ…
ニレは可愛いですね………………あ、ありがと………………
知らぬは本人ばかりなり、ということですね。
いいですかニレ、貴女はこと体型や美貌の話になると自傷と自嘲ばかりですがそんなことはありません。
まずその顔。貴女は私の方が上と言いますけど、私からすればニレのほうが数十倍も綺麗だと思います。
私はサーヴァントであり精霊、初めから綺麗に作られたモノ。美しくあって当然のものなのです。
ですがニレは違います。ニレは生きている。
全てが変わりゆく時の流れの中で、努力し保たれる美しさには、私にはない躍動感が宿るのです。
また胸が小ささを卑下することはありません。ニレも知るようにサクヤは小さい胸も愛せます。
そして何より、自分からは言わないものの実は一番気にしてるであろうその脚です！
メリハリのある体型から生まれるくびれ、そして脚線美はヴィーナスの女神もかくやというもの。
お尻からふともも、ひざ、ふくらはぎから流れていき、踵で曲がって指先に届く、そのライン。
それこそがニレの一番の強み、ニレの聖剣なのです。
いいですか、何度でも言いますがニレは可愛いのです。
もっと自信を持ってください。……貴女には苦悶の表情や涙ではなく、笑顔こそが似合うのですから。
道場SS 〜おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない
＊2102年とは関係ないキャラも登場します
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない
ここは所謂コンティニュー道場というやつだ。
よりによって『マレフィキウム』に声を掛けてナンパとは正直節操なしで趣味が悪いぞ青n(複数の金属音)
………っぅ！(声にならない声)ぁたまがぁ…少し待て。
待たせたな、青年。 兎に角、声を掛けるべき相手は良く選んで誤って声を掛けたら言葉に気を付けろと、まぁ当然のアドバイスになるか。
幾ら見掛けが良くてもあんな陰気オーラバリバリの危険な女からは距離を取れ！2009年で言う地雷おn……俺が盾になっているうちに逃げろ青年！次は選択を間違えるな！
止めろ！兜を脱がせて金槌は止めろマスター！
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
……いや情けないとかそれ以前の問題ですサクヤ。
何ですか信号無視して轢殺って…まだ聖杯戦争もはじまってませんし問おう。もしてないんですよ問おう。
え…君可愛いね？何処かで会ったかな？……会ってないから私は怒っているのです！
そう私は貴方の剣にして友！メインヒロイン！メインヒロインなのですから！
もしかしてアルバム埋めですか！だったら早く戻って話を進めてください！
あ！如何にも怪しそうな男には注意してください！
フハハよくぞ来た余の名は仮に神秘の国エジプトから来た鷹の目の男とでもしておこう
そして隣は平成代表ドラゴンガール…いや流石にガールではなくドラゴンレディだ
時に平成って貴公らの時代から何年前？和暦ってまだある？余はエジプト人だから関係ないけど
さて今からドラゴンレディとミスターホークアイのお役立つかも情報があるわけだがこれ聞いて上手く行ったら我らの手柄であり失敗したら貴公のミスだけどそれでも聞く？
え？マジ？聞くの？すげーな貴公死んだ後まで警戒心ゼロかよある意味尊敬
ところでドラゴンレディここってどんなデッドエンド？余その辺知らないままでとりあえず挨拶だけキメてみたのだが
お呼びとあらば即ドラゴン！がおー！うむどこか懐かしきこの雰囲気…アドバイスの竜と呼ばれたあたしにかかれば秒で解決だけど出番が減るから引き延ばして五分くらいは尺を稼ぎたい乙女心
でもこれ秒もかからず解決なのだわホークアイ君だってこれ明らかに怪しい選択肢踏んで十クリックで来れるもうネタエンドの域なんですもの
エンド回収のためだけに来たに違いないし時間一杯歌って踊って追い返せば仕事完了よ！
あまり命を粗末にするなよ少年！
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
ちょっとした気の緩みから大惨事、あっけなくデッドしちゃったサクヤんを救うユイにゃん道場だぞぅ！
今回は特別ゲスト、首から上が吹っ飛んだテケテケのNIREをお呼びしています。NIREさん、気分はどうですか？
「水無月くんはコロス。慈悲はナイ。インガオホー」
ほぐにゃん「うーんさすがだ。北欧神話的世界観を一身に表している」
気持ちは分かるけど抑えて抑えて！
要はアレだよね、NIREさんよりあの憎きセイバーを優先したサクヤんの行動が業務上過失致死になってしまったワケなんだね。
まあしょうがないよね。NIREさんは女としての魅力でセイバーに劣ってるわけだし！どうせヨゴレだし！
でも勝負は時の運！もうちょっとサクヤんに媚びを売るとかそういうのしなさい！
「───」
でもサクヤんも反省しなよ？あの状況だとセイバーより枢木さんを優先すべきなんだから。
セイバーを見捨てるのは心苦しいけれどどうにかなるんだからここは枢木さんを守ってあげてね。
ひえっ…く、首なしの身体が動いた…！NIREさん、そんな状態で何処にいくというんです…！
「ちょっとそこまで。水無月くんぶっ殺しに」
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
お初にお目にかかる、通りすがりのメイド長ブラックカレントとでもお呼び……くそっ！なぜ私がメイドになっている！！
……この報復は必ずするとして。まぁ良い、君は腹を刺されたと聞いた。あぁ、あれは痛い。私も二度三度滅多刺しにされた経験があるから分かるとも。
そもそも刺されるような事をするな！なに？覚えがないだと！余計たちが悪いわ！
ふぅ…いいか、そんな事を続けていると私の知り合いのようにデカイケツに押し潰されて窒息死するような運命を辿るぞ。
理由が分からないなら、次善の策だ。君も簡単な魔術位は使えるだろう？家から出る前に服に強化魔術をかけておくのはどうだ？
それと話は変わるが、君は成績不良と聞いた。補習用のテキストを作ったから時間を見てやっておくように。以上だ
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
これ言わないと駄目みたいだなァ
それより俺様言ったよなぁ？この先に来たら死ぬぞって。人の忠告は聞くもんだぜ〜
それに婆さんだってまともに戦わねぇってだけで殺すことには一切躊躇ねぇ
優しい婆さんだとおもっても根っこは魔術師だぜ。いい勉強になったなァ
ともかく戦の鉄則として敵が備えてる地で戦うなんてのはご法度だぜぇ
どんな仕掛けがあるかわかんねぇからよ。拠点潰しに行くならしっかり準備を整えねぇと無理だぜ
無茶はするもんじゃねぇ深追いは禁物だ逃げるのは恥じゃねぇさァ
しかしあの罠はエグいな…戦嫌いだとか言っときながら婆さんもよくやるよベトコンってやつ？
おぉサクヤんよ死んでしま…いやいいわそのへん。どうせ恒例だし。
たぶんこれ、私のルートが確定したから選択肢は全部私に選ぶぞって人がやってくる道場だと思うのよね。
そうじゃないとセイバーをギリギリまで放っておく選択肢選ばないと思うし。たぶんよ、たぶんね。
ハイ駄目。ハイ間違いです。
ちょうどいいのでゲストのセイバーさんに話を聞いてみましょう。セイバーさん、どう思いましたか？
「サクヤ。何故私が死ぬのを全力で見逃すのです。死んでください」
…ほらね？
そりゃそうでしょう？あなたのサーヴァントはセイバーでしょ？
それをないがしろにしてどうして生き残れると思うのよ。私とか私のあの陰気臭いアーチャーを助けてどうするのよ。
水無月くん。あなたは聖杯戦争の参加者としてきちんと自分のサーヴァントであるセイバーのことを助けてあげなさい。
私のことはその上で手を差し伸べればそれで十分なの。そもそもあなたがまごついてる間に私はすべきことをしているしね。
こう考えればいいわ。ルート確定したんだから残りは状況に応じた正答を選べばいいって。
…まあでも、たまには私のこと気にしてね。…たまにはよ？ねえ、聞いてる？
え？俺じゃなくてセイバーに殺されたの？
あっそう…じゃあ担当俺かぁ。なんか意外だなー…。
あー今回のはアレだな少し判断が遅かったなサクヤん。どうせ飛び出すならもっと早く行くべきだったよ。だから本命の攻撃の方にカチあっちゃったワケ。
まあだからこれ俺の方のセイバーはただの過失だからあまり恨まないでくれよ。全部俺が悪いんだからさ。
というか俺としちゃそもそも邪魔される方が困るわけなんだけど、その辺は本編でな。サクヤんのためにもきっちり殺してやるよ。
ところで最近また痩せたんじゃないか？最後に会ったの2、3年ぐらい前になんだけど、普段どんくらい食ってる？
おいおいお前またそんだけで足りたって言うんだから…聖杯戦争に参加したらイメージでも体動かすんだから普段の身体作りがモロに出るんだって。それに睡眠取りにくいんだから飯ちゃんと摂ってないと体力持たないだろ。
とりあえず体動かすんなら豚肉だな…えーと…晩御飯酢豚でいいかな？サクヤんはご飯炊いといて。2合ね。
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
「今ので死んだの？ひ弱すぎない？…とは言わないけどもうちょっとガッツがいるんじゃ」
「少なくとも心臓貰うまで生き延びるくらいのタフネス要りますよね」
はいあなたたち主人公成功組は撤収してくださーい。
…まあ、うん。でも気持ちは分かるわ。
ここ分岐点だものね。前日のタイトルが『Fate』だったのに今日が別のタイトルに変わってたらそれ詰んでるから。
えーと、つまり分かりやすく言うとぉ。
セイバー「サクヤはあまりにも移り気すぎではありませんか？いえまだそれはいい。仮に二兎を追うと決めたならばむしろ二兎を追う覚悟をすべきでは？」
はい。代弁してくれたわね。だいたいそういうこと。
私のルートに進んでおいて、その上で迷ってるなら覚悟が足りない。更にハッピーエンドを目指すなら好感度配分にこの時点で失敗してます。
…ということ。だから後者を狙ってるならこれまでの選択肢を選び直さないと駄目ね。
で、これは私のルートも、ハッピーエンドも目指してないのにこれを見てしまった人向けの情報よ。
一度目のルートで私は攻略できないの。だから大人しくセイバーに尽くしたほうが懸命よ？
✋☞ ✡⚐🕆 💣✌😐☜ ☞🕆☠ ⚐☞ 💣💧📬 😐🕆☼🕆☼🕆☝✋🕯💧 💣✋👍☼⚐💣✌💧❄✋✌📪
💧☟☜🕯☹☹ 😐✋☹☹ ✡⚐🕆📬
もし君がクルルギ嬢の胸が慎ましいことを揶揄いでもしたならば、彼女は君を殺すだろうね。
はい、やってきましたシスター道場！
愚図で愚鈍で言動も痛いどうしようもないサクヤくんを仕方ないから救済しちゃうぞっ☆
魔女「お前のそのキャラもこっちだとだんだん慣れてきたな…」
はいそこ静かに！ここは世界観のルールが適用されない無法地帯！私が素を出しても全然オッケーだからいいんです！
さてと今回のデッドエンドだけど…本気？本気でこの選択肢選んだの？やっぱり頭悪いの？
はい！魔女さん！サクヤくんが死んじゃった理由を答えなさい！配点10！
魔女「そりゃ…どう考えても怪しいとサクヤ自身が思っていたのに路地裏にひとりで入っていったからだろ」
ぴんぽんぴんぽーん！
駄目だよサクヤくん。あの人GMからアカウントBANされるギリギリのラインを攻めてるセコいチーターなんだから。
もう何でもあり。むしろナイよりのアリ。ぶっ倒すまで何でも疑ってかかるべし、だよ？
それともひょっとして2周目のサクヤくんかな。枢木さんのルートを探して選択肢総当り中とか。
じゃスペシャルヒントだよ。ずばり、マレフィキウムさんの裏名義を知ること。
このイベントの発生が枢木さんルート確定の瞬間だから、2周目のサクヤくんは参考にしてみてね。
ここは所謂コンティニュー道場というやつだ。
よりによって『マレフィキウム』に声を掛けてナンパとは正直節操なしで趣味が悪いぞ青n(複数の金属音)
………っぅ！(声にならない声)ぁたまがぁ…少し待て。
待たせたな、青年。 兎に角、声を掛けるべき相手は良く選んで誤って声を掛けたら言葉に気を付けろと、まぁ当然のアドバイスになるか。
幾ら見掛けが良くてもあんな陰気オーラバリバリの危険な女からは距離を取れ！2009年で言う地雷おn……俺が盾になっているうちに逃げろ青年！次は選択を間違えるな！
止めろ！兜を脱がせて金槌は止めろマスター！
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
……いや情けないとかそれ以前の問題ですサクヤ。
何ですか信号無視して轢殺って…まだ聖杯戦争もはじまってませんし問おう。もしてないんですよ問おう。
え…君可愛いね？何処かで会ったかな？……会ってないから私は怒っているのです！
そう私は貴方の剣にして友！メインヒロイン！メインヒロインなのですから！
もしかしてアルバム埋めですか！だったら早く戻って話を進めてください！
あ！如何にも怪しそうな男には注意してください！
フハハよくぞ来た余の名は仮に神秘の国エジプトから来た鷹の目の男とでもしておこう
そして隣は平成代表ドラゴンガール…いや流石にガールではなくドラゴンレディだ
時に平成って貴公らの時代から何年前？和暦ってまだある？余はエジプト人だから関係ないけど
さて今からドラゴンレディとミスターホークアイのお役立つかも情報があるわけだがこれ聞いて上手く行ったら我らの手柄であり失敗したら貴公のミスだけどそれでも聞く？
え？マジ？聞くの？すげーな貴公死んだ後まで警戒心ゼロかよある意味尊敬
ところでドラゴンレディここってどんなデッドエンド？余その辺知らないままでとりあえず挨拶だけキメてみたのだが
お呼びとあらば即ドラゴン！がおー！うむどこか懐かしきこの雰囲気…アドバイスの竜と呼ばれたあたしにかかれば秒で解決だけど出番が減るから引き延ばして五分くらいは尺を稼ぎたい乙女心
でもこれ秒もかからず解決なのだわホークアイ君だってこれ明らかに怪しい選択肢踏んで十クリックで来れるもうネタエンドの域なんですもの
エンド回収のためだけに来たに違いないし時間一杯歌って踊って追い返せば仕事完了よ！
あまり命を粗末にするなよ少年！
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
ちょっとした気の緩みから大惨事、あっけなくデッドしちゃったサクヤんを救うユイにゃん道場だぞぅ！
今回は特別ゲスト、首から上が吹っ飛んだテケテケのNIREをお呼びしています。NIREさん、気分はどうですか？
「水無月くんはコロス。慈悲はナイ。インガオホー」
ほぐにゃん「うーんさすがだ。北欧神話的世界観を一身に表している」
気持ちは分かるけど抑えて抑えて！
要はアレだよね、NIREさんよりあの憎きセイバーを優先したサクヤんの行動が業務上過失致死になってしまったワケなんだね。
まあしょうがないよね。NIREさんは女としての魅力でセイバーに劣ってるわけだし！どうせヨゴレだし！
でも勝負は時の運！もうちょっとサクヤんに媚びを売るとかそういうのしなさい！
「───」
でもサクヤんも反省しなよ？あの状況だとセイバーより枢木さんを優先すべきなんだから。
セイバーを見捨てるのは心苦しいけれどどうにかなるんだからここは枢木さんを守ってあげてね。
ひえっ…く、首なしの身体が動いた…！NIREさん、そんな状態で何処にいくというんです…！
「ちょっとそこまで。水無月くんぶっ殺しに」
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
お初にお目にかかる、通りすがりのメイド長ブラックカレントとでもお呼び……くそっ！なぜ私がメイドになっている！！
……この報復は必ずするとして。まぁ良い、君は腹を刺されたと聞いた。あぁ、あれは痛い。私も二度三度滅多刺しにされた経験があるから分かるとも。
そもそも刺されるような事をするな！なに？覚えがないだと！余計たちが悪いわ！
ふぅ…いいか、そんな事を続けていると私の知り合いのようにデカイケツに押し潰されて窒息死するような運命を辿るぞ。
理由が分からないなら、次善の策だ。君も簡単な魔術位は使えるだろう？家から出る前に服に強化魔術をかけておくのはどうだ？
それと話は変わるが、君は成績不良と聞いた。補習用のテキストを作ったから時間を見てやっておくように。以上だ
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
これ言わないと駄目みたいだなァ
それより俺様言ったよなぁ？この先に来たら死ぬぞって。人の忠告は聞くもんだぜ〜
それに婆さんだってまともに戦わねぇってだけで殺すことには一切躊躇ねぇ
優しい婆さんだとおもっても根っこは魔術師だぜ。いい勉強になったなァ
ともかく戦の鉄則として敵が備えてる地で戦うなんてのはご法度だぜぇ
どんな仕掛けがあるかわかんねぇからよ。拠点潰しに行くならしっかり準備を整えねぇと無理だぜ
無茶はするもんじゃねぇ深追いは禁物だ逃げるのは恥じゃねぇさァ
しかしあの罠はエグいな…戦嫌いだとか言っときながら婆さんもよくやるよベトコンってやつ？
おぉサクヤんよ死んでしま…いやいいわそのへん。どうせ恒例だし。
たぶんこれ、私のルートが確定したから選択肢は全部私に選ぶぞって人がやってくる道場だと思うのよね。
そうじゃないとセイバーをギリギリまで放っておく選択肢選ばないと思うし。たぶんよ、たぶんね。
ハイ駄目。ハイ間違いです。
ちょうどいいのでゲストのセイバーさんに話を聞いてみましょう。セイバーさん、どう思いましたか？
「サクヤ。何故私が死ぬのを全力で見逃すのです。死んでください」
…ほらね？
そりゃそうでしょう？あなたのサーヴァントはセイバーでしょ？
それをないがしろにしてどうして生き残れると思うのよ。私とか私のあの陰気臭いアーチャーを助けてどうするのよ。
水無月くん。あなたは聖杯戦争の参加者としてきちんと自分のサーヴァントであるセイバーのことを助けてあげなさい。
私のことはその上で手を差し伸べればそれで十分なの。そもそもあなたがまごついてる間に私はすべきことをしているしね。
こう考えればいいわ。ルート確定したんだから残りは状況に応じた正答を選べばいいって。
…まあでも、たまには私のこと気にしてね。…たまにはよ？ねえ、聞いてる？
え？俺じゃなくてセイバーに殺されたの？
あっそう…じゃあ担当俺かぁ。なんか意外だなー…。
あー今回のはアレだな少し判断が遅かったなサクヤん。どうせ飛び出すならもっと早く行くべきだったよ。だから本命の攻撃の方にカチあっちゃったワケ。
まあだからこれ俺の方のセイバーはただの過失だからあまり恨まないでくれよ。全部俺が悪いんだからさ。
というか俺としちゃそもそも邪魔される方が困るわけなんだけど、その辺は本編でな。サクヤんのためにもきっちり殺してやるよ。
ところで最近また痩せたんじゃないか？最後に会ったの2、3年ぐらい前になんだけど、普段どんくらい食ってる？
おいおいお前またそんだけで足りたって言うんだから…聖杯戦争に参加したらイメージでも体動かすんだから普段の身体作りがモロに出るんだって。それに睡眠取りにくいんだから飯ちゃんと摂ってないと体力持たないだろ。
とりあえず体動かすんなら豚肉だな…えーと…晩御飯酢豚でいいかな？サクヤんはご飯炊いといて。2合ね。
おぉサクヤんよ死んでしまうとか情けない。
「今ので死んだの？ひ弱すぎない？…とは言わないけどもうちょっとガッツがいるんじゃ」
「少なくとも心臓貰うまで生き延びるくらいのタフネス要りますよね」
はいあなたたち主人公成功組は撤収してくださーい。
…まあ、うん。でも気持ちは分かるわ。
ここ分岐点だものね。前日のタイトルが『Fate』だったのに今日が別のタイトルに変わってたらそれ詰んでるから。
えーと、つまり分かりやすく言うとぉ。
セイバー「サクヤはあまりにも移り気すぎではありませんか？いえまだそれはいい。仮に二兎を追うと決めたならばむしろ二兎を追う覚悟をすべきでは？」
はい。代弁してくれたわね。だいたいそういうこと。
私のルートに進んでおいて、その上で迷ってるなら覚悟が足りない。更にハッピーエンドを目指すなら好感度配分にこの時点で失敗してます。
…ということ。だから後者を狙ってるならこれまでの選択肢を選び直さないと駄目ね。
で、これは私のルートも、ハッピーエンドも目指してないのにこれを見てしまった人向けの情報よ。
一度目のルートで私は攻略できないの。だから大人しくセイバーに尽くしたほうが懸命よ？
もし君がクルルギ嬢の胸が慎ましいことを揶揄いでもしたならば、彼女は君を殺すだろうね。
はい、やってきましたシスター道場！
愚図で愚鈍で言動も痛いどうしようもないサクヤくんを仕方ないから救済しちゃうぞっ☆
魔女「お前のそのキャラもこっちだとだんだん慣れてきたな…」
はいそこ静かに！ここは世界観のルールが適用されない無法地帯！私が素を出しても全然オッケーだからいいんです！
さてと今回のデッドエンドだけど…本気？本気でこの選択肢選んだの？やっぱり頭悪いの？
はい！魔女さん！サクヤくんが死んじゃった理由を答えなさい！配点10！
魔女「そりゃ…どう考えても怪しいとサクヤ自身が思っていたのに路地裏にひとりで入っていったからだろ」
ぴんぽんぴんぽーん！
駄目だよサクヤくん。あの人GMからアカウントBANされるギリギリのラインを攻めてるセコいチーターなんだから。
もう何でもあり。むしろナイよりのアリ。ぶっ倒すまで何でも疑ってかかるべし、だよ？
それともひょっとして2周目のサクヤくんかな。枢木さんのルートを探して選択肢総当り中とか。
じゃスペシャルヒントだよ。ずばり、マレフィキウムさんの裏名義を知ること。
このイベントの発生が枢木さんルート確定の瞬間だから、2周目のサクヤくんは参考にしてみてね。
SS(2102年の聖杯戦争/after)
破けた世界-X軸の咆哮-
君はもう満たされることなどない。そう断言する声が聞こえてくる。それがサクヤにとって忌々しく憎たらしかった。
かつてその世界は、サクヤだけのものだった。外界から遮断されたそこでは全てが彼の思い通りに描かれた。今は、違う。
あの運命の日以来、破けてしまったその世界の空には真っ黒な穴が開いていた。どうやっても消すことは出来なかった。最近気づいたことだが、穴は徐々に広がっているようだった。
セイバーが開けた穴なのだと考えていた頃、その穴は好ましい物だった。長年使い古したジーンズに開いた穴のように、勲章なのだと思えていた。
変わったのはあの戦いから二ヶ月も経った頃だ。その頃にはもうクオリアを生み出した天才、人類の生活を新たなステージに引き上げた英雄、鱗画聖永への追悼番組も見かけなくなっていた。
ヘッドフォンで耳を覆いバラードを流し外界の音を消し去り、自分の世界へと侵入している時だった。世界の中に、先人がいる気配がした。
自分以外の存在など居るはずがなかった。きっと気のせいだと思った。男が穴から這い出てきたのを見るまでは。
その男は鱗画聖永だった。サクヤはますますこんなところに居るはずがないと思った。
何者だ。お前は、死んだ。この手で、殺した。僕以外には、殺せない。だから、僕が、殺した。そう、だろう？
そうだ。鱗画聖永は死んでいる。私は、君自身だ。
疑問に対して返答する声が聞こえてきた。かつてのやりとりと同じく、その男が発する言葉は明瞭なものだった。サクヤはこの世界で聖永が蘇ったのだと信じた。
それ以来、サクヤにとって破けた穴はセイバーが残した傷痕などではなく、死者の世界へと通じる忌々しい道となった。
彼の世界に住み着いた聖永は、何をするわけでもなくこちらをじっと見つめていた。問いかけると答えはしたがこちらを観察するのをやめてはくれなかった。
自分の世界によりによって、自らの手で殺した宿敵が居座っているという事実がサクヤの心をかき乱したが、いつでもいるというわけではなかった。
サクヤはそういう時は心安らかに自分の世界に浸ることが出来た。次のアバターのアイデアをまとめたり模様替えをして色の相性を確かめたりかつてと同じように世界を自由に出来た。
しばらくすると、現実でも声が聞こえてくるようになった。
何かに悩んだ時、聖永は導くように言葉をかけてきた。監督役として振る舞っていた頃と寸分違わぬその振る舞いが気に食わなかった。ただし、10月の中間テストと12月の期末テストの時だけはサクヤは彼の導きに感謝した。
サクヤは自分の中に鱗画聖永がいることを誰にも話さなかった。誰にも知られたくなかった。身近な人達に心配をかけたくなかったし、そんなことに時間を使うより楽しい事がしたかった。サクヤは飢えていた。
セイバーとデートをし体を重ねていても、楡の杜撰な生活にお節介を焼いているときも、竜胆の話を聞きながらぬいぐるみを選んでいるときも、唯とともにオンラインゲームで戦っていても、学園で友達と過ごしていても、《クオリア》で趣味の集まりに顔を出していても、サクナとかつてのように暮していても、何をしていても、サクヤにはどこか満たされぬ渇きがあった。
あの聖杯戦争の中で、サクヤが求め守ろうとしていた日常はもはや色褪せていた。
お前に開いた穴は埋まることなどないと聖永は言った。
ある日、サクヤは久しぶりに唯と共に《TSUCHIKA》で遊ぶことになった。
《ALPHA》による被害からの復興と外部からの接続者を受け入れ、変わろうとしているこの世界のことをサクヤは好ましくも疎ましくも思っていた。
ここからどう人々やNPCが変わっていくのか、何を作り上げていくのかが楽しみであったが、そうして消えていく傷痕がなんだか自分たちが経験したあの出来事も一緒に消えていっているようで嫌だった。
2009年のゲームセンターを巡り、彼らにとって100年前のレトロゲームで対戦したり共闘したりして遊んだ。
初めてやった頃からお互い腕が上がっていたが、やっぱり唯には負け越していた。暴れが通れば勝てたが、基本的には読み負けていた。
2on2で共闘するタイプのゲームでは、ふたりは強かった。サクヤは誰かをフォローする動かし方に慣れていたし、唯は回避がとにかく上手かった。負けた時は互いのせいにして罵りあった。
すでに行きつけのゲーセンでは顔見知りも出来ていて彼らと遊ぶこともあった。木村が今度の日曜に開く大会に参加することを勧めてきたが、その日はセイバーへのプレゼントを買いに行く予定だったので断った。
十分遊んだ帰りに突如現れたという不思議な警察署でも見に行こうという話になった。
話はサクヤから切り出した。唯も興味があったようで同意した。
ゲームセンターから場所は近かったし、急ぐものでもなかったので徒歩で行くことにした。
《TSUCHIKA》でも12月なのは変わらないようで、町中には赤と緑のクリスマスカラーが目についた。ケーキ屋の看板のいちごのショートケーキを見ると、生クリームの重たさを思い出して気分が悪くなった。
そこへ誰かが走ってきて、ふらふらしていたサクヤとぶつかった。サクヤは転んだ。
気づくと生暖かくて少しアンモニアの臭いがする柔らかいものに顔をうずめていた。両側からも挟まれ、とても息苦しかった。
左手は楡の胸を触っているときのような感触を伝えてきた。探ってみるとそれとは何かが違った。硬さか。突起物か。これはこれでいいものだと手がその感触の違いを確かめようと勝手に動いた。
痛かったのは右腕だった。相手の尻かふとももに押しつぶされている。霊子を硬化させていても、服は服に過ぎない。挟まれては潰れるしかなかった。それでもなんとか逃れようと動こうとした。
女性の悲鳴が聞こえ、次にコロスという物騒な宣言が聞こえ、何かが背中にぶつかった。それは背中側から心臓を貫こうと狙っていた。その目的を達成することは、彼女が持っている骨喰包丁ならば容易く可能なはずだったが、出来なかった。
2102年の技術である合成スパイダーシルクで編まれ、さらに霊子変換・硬化 によって中世のチェーンメイルなど比較にならない強大な防刃性を獲得しているサクヤのMA-1ジャケットが骨喰包丁の凶刃を何度も何度も防いだ。衝撃は着込んでいたインナーダウンが吸収した。
唯が刃物を蹴り飛ばし女性を止めてくれたおかげでようやくサクヤは立ち上がることが出来た。
とりあえず場所を変えて、メガネを掛けたその女性を落ち着かせることにした。彼女は包丁に執着を見せ欲しがったので、唯が回収した。
サクヤと唯は近くのカフェで話すことにした。
サクヤは不可抗力とはいえ失礼を謝った。女性は許さなかった。
「あ、あんなことされて許すわけないじゃないですか！！ちゃんと責任をとってください！」
顔を真っ赤にして目に涙を浮かべて訴える彼女をもっといじめてみたいなとサクヤは思った。
彼女が《TSUCHIKA》のNPCであることは、サクヤはその服を見てわかっていた。
話を聞いてみると、彼女には自身に関する記憶がないとのことだった。自分の名前もわからないようで、なぜか警察に追われているから逃げていたのだと話した。彼女にとって包丁は自分の記憶に繋がる貴重な手がかりだった。
なら返してあげようとサクヤは提案した。
「サクヤんさ、本当に大丈夫だと思ってるの？」
「僕が刺される分にはね。それにさっき彼女に言われてしまったじゃないか。僕は責任を取らなくちゃならない。責任をとって彼女に付き合い記憶を戻すのが僕が今やるべきことだ」
唯は親友のこういう所に心底呆れていた。数年ぶりに再開した親友は、女と見れば口説きに行く軽薄な男にしか思えなかった。今もただのナンパにしか見えない。
自分を刺そうとした女に対してよくやるものだ。一度ぐらい本当に刺されれば反省するだろうか。
「サクヤんのセイバーに言いつけるぞ」
「ん、すぐバレるだろうが内緒にしておいてくれ。僕はスリルを楽しみたい……が彼女はすぐに全部察してしまうしそういう展開にはしてくれないだろう。困ったものだ」
唯は、その惚気なんだかよくわからない発言にますます呆れた。そういうことばかりしているといつか突然愛想を尽かされそうだなと考えてそんな光景を想像して見た。なんだかしっくりきてしまったので余計心配になった。
警察に追われている彼女を連れて警察署に向かうのは自殺行為だということで、未来を読めれば逃げることは出来るだろうと唯が偵察を行うこととなった。
カフェの代金をサクヤが全て支払うことで唯は納得した。唯は高いパフェを頼み軽井沢に遠慮なく食べていいよと言って出ていった。
サクヤはその間、記憶のない彼女から手がかりを得ようと質問をしたり、不安がる彼女を励ましたりしていた。
そのうち、彼女のカバンを調べたらタロットカードが出てきた。占いが好きだったのかもしれないという話になった。
占い方は覚えていたようで、とりあえず唯がいつ戻ってくるかでも当ててもらうことにした。
占いの結果通り、すぐに唯が戻ってきて、彼女が書かれた指名手配書を見つけてきた。
軽井沢千璃、それが彼女の名前のようだった。一歩前進した。
唯は、他にも貰ってきていた。その中にはバーサーカーのマスターであった楊小路水貴の顔もあった。脱獄犯と書かれていた。
「ねぇサクヤん、水貴さんって今はアイドルに戻ったんじゃなかったっけ？」
「まったくなにしたんだ親分は……。心配だが、たぶん関わるとろくなことがなさそうなのだなぁ……」
サクヤはかつての聖杯戦争で、いやその後も度々彼女には苦労させられていた。サクヤはそれが嫌ではなかったし人物的には好きな相手だったが、今は会いたくなかった。
他には千璃の着ていたコートと似たような人物も手配されていた。サクヤには、全く同じ服だと分かった。何らかの関係性があるのだろうか。
三人は他に手がかりも無いため、関係あるという方向で結論づけ今後の指針とすることにした。
その後、千璃の生活をどうするかについてだが、唯は事情があって拠点に置けないということでサクヤが預かることとなった。
「へぇこれがサクヤんのお城ですか〜。ってここどう見てもラブホじゃないですか！！やっぱり軽井沢の体が目当てだったんですねこのエロサクヤん！！」
「これには、深い事情があってな……僕だって最初は嫌だったけど慣れると愛着が湧いて……ベッドも回るし……」
かつてラブホテルエス・エムであった城は、奇跡的に《ALPHA》による被害を逃れていた。そのため権利書を見つけ城主となっていたサクヤとセイバーはあの事件のあと一般NPCたちの避難所として開放したりしていた。今ではこの城を《TSUCHIKA》における商売の拠点にするためにセイバーと活動している。立地こそ悪いが2102年の商法を活かし通販を主体とすれば勝機はあると考えていた。
騒ぐ千璃をなだめながら入城する。城の何部屋かはまだホテルとして家を無くした人たちが使っているのだとサクヤは話した。
慣れた足乗りで、自室へと入っていく。そこはまるで女の子が住んでいるような部屋だった。
「あ、私この部屋でいいです」
「えっここ僕の使ってる部屋だから嫌だけど」
「なんでこんな女の子みたいなファンシーな部屋なんですか！？このスカートなんかもサクヤんのものですか！？」
「壁紙については最初からだからなんでこんな子供っぽいのかわからないけど、それスカートじゃなくてキルトね。スコットランドの民族衣装。アクセル・ローズのファッションに憧れてね。それに男子がスカートを履くのなんて、未来の日本では立派なファッションとして許容されてるのだが」
サクヤは自分がキルトを着た写真を見せて納得してもらう。
ひとまずセイバーの部屋の隣の空き部屋が千璃の部屋ということになった。特に改装もしておらずラブホテルそのままの部屋だがしばらく我慢してもらうことになった。
千璃は最初は不満げだったが、回るベッドで遊んでいるうちにどうでもよくなった。その純粋な人間性に心を惹かれた。
千璃の部屋でふたりでトランプで遊んだが、そのうち疲れて、今日はもう寝るとのことでサクヤは自室に戻った。
彼女の明日のための着替えを用意しないといけないと思った。幸い楡の為に用意していた服がちょうど使えそうだった。
自分が誰なのかわからないという不安はどういうものなのかサクヤにはわからなかったが、彼女の屈託のない笑顔を見ていると少しだけ満たされる気がしていた。
――――出会いは運命だとでも思ったのか水無月サクヤ。
あの声が、聞こえてきた。
丁度いい。考えをまとめるために自室でヘッドフォンをつけ、アルバムを流し、サクヤは自分の世界へと沈潜する。
鮮やかなる世界の片隅で、聖永がいつものように待っていた。珍しかったのはこちらが何かを問いかける前に、話しかけてきたことだ。
君は本当はわかっている。軽井沢千璃はただのNPCだ。運命の相手などではない。
君が求めているのはあの日からの出来事の再現だ。非日常へと戻れば、その飢えが収まるとでも考えている。
捕まったことを知りながら、枢木楡を助けに行かないのも、信頼などではない。君のその目的にとって邪魔だからだ。セイバーに軽井沢千璃のことを隠そうとするのも同じことだ。
飢えから逃れるためならば、犠牲を捧げることも厭わない人間。それが今の君だ。
軽井沢千璃とて、君にとっては道具のような物。いや餌というのがふさわしい。傷付け喰い荒らし陵辱することになろうと構わないのだろう？ 所詮、過去から再現されたNPCだ。君がすることを咎めるつもりはない。
君の本質は芸術家 だ。その歩む道程は、建築家 であった私とは違う。だが行き着く終点は同じだと考えたことはないか。
かつて君が目指していたものは、全てを友とすることで孤独を得ようとしていた。
ドイツの植物学者ヴィルヘルム・ペッファーの言葉通りだ。
"誰の友にもなろうとする人間は、誰の友人でもない''
今は違うと言えるのか？ その事は自分自身がよく分かっているはずだ。いくら誤魔化そうとしても君が行き着く先は同じだ。
君はもう異常者だ。埋まらない穴を埋めるために、やがて私と同じ所にたどり着く。
忘れるな。私は、君の未来だ。
サクヤは反論することなくただ聴いていた。聖永の言葉を否定することができなかった。その代わり、ならたどり着く前に死ねばいいかと漠然と考えた。
音楽プレイヤーから流れているアルバムタイトルは、NIRVANAのNevermind。
穴は徐々に広がっていた。
かつてその世界は、サクヤだけのものだった。外界から遮断されたそこでは全てが彼の思い通りに描かれた。今は、違う。
あの運命の日以来、破けてしまったその世界の空には真っ黒な穴が開いていた。どうやっても消すことは出来なかった。最近気づいたことだが、穴は徐々に広がっているようだった。
セイバーが開けた穴なのだと考えていた頃、その穴は好ましい物だった。長年使い古したジーンズに開いた穴のように、勲章なのだと思えていた。
変わったのはあの戦いから二ヶ月も経った頃だ。その頃にはもうクオリアを生み出した天才、人類の生活を新たなステージに引き上げた英雄、鱗画聖永への追悼番組も見かけなくなっていた。
ヘッドフォンで耳を覆いバラードを流し外界の音を消し去り、自分の世界へと侵入している時だった。世界の中に、先人がいる気配がした。
自分以外の存在など居るはずがなかった。きっと気のせいだと思った。男が穴から這い出てきたのを見るまでは。
その男は鱗画聖永だった。サクヤはますますこんなところに居るはずがないと思った。
何者だ。お前は、死んだ。この手で、殺した。僕以外には、殺せない。だから、僕が、殺した。そう、だろう？
そうだ。鱗画聖永は死んでいる。私は、君自身だ。
疑問に対して返答する声が聞こえてきた。かつてのやりとりと同じく、その男が発する言葉は明瞭なものだった。サクヤはこの世界で聖永が蘇ったのだと信じた。
それ以来、サクヤにとって破けた穴はセイバーが残した傷痕などではなく、死者の世界へと通じる忌々しい道となった。
彼の世界に住み着いた聖永は、何をするわけでもなくこちらをじっと見つめていた。問いかけると答えはしたがこちらを観察するのをやめてはくれなかった。
自分の世界によりによって、自らの手で殺した宿敵が居座っているという事実がサクヤの心をかき乱したが、いつでもいるというわけではなかった。
サクヤはそういう時は心安らかに自分の世界に浸ることが出来た。次のアバターのアイデアをまとめたり模様替えをして色の相性を確かめたりかつてと同じように世界を自由に出来た。
しばらくすると、現実でも声が聞こえてくるようになった。
何かに悩んだ時、聖永は導くように言葉をかけてきた。監督役として振る舞っていた頃と寸分違わぬその振る舞いが気に食わなかった。ただし、10月の中間テストと12月の期末テストの時だけはサクヤは彼の導きに感謝した。
サクヤは自分の中に鱗画聖永がいることを誰にも話さなかった。誰にも知られたくなかった。身近な人達に心配をかけたくなかったし、そんなことに時間を使うより楽しい事がしたかった。サクヤは飢えていた。
セイバーとデートをし体を重ねていても、楡の杜撰な生活にお節介を焼いているときも、竜胆の話を聞きながらぬいぐるみを選んでいるときも、唯とともにオンラインゲームで戦っていても、学園で友達と過ごしていても、《クオリア》で趣味の集まりに顔を出していても、サクナとかつてのように暮していても、何をしていても、サクヤにはどこか満たされぬ渇きがあった。
あの聖杯戦争の中で、サクヤが求め守ろうとしていた日常はもはや色褪せていた。
お前に開いた穴は埋まることなどないと聖永は言った。
ある日、サクヤは久しぶりに唯と共に《TSUCHIKA》で遊ぶことになった。
《ALPHA》による被害からの復興と外部からの接続者を受け入れ、変わろうとしているこの世界のことをサクヤは好ましくも疎ましくも思っていた。
ここからどう人々やNPCが変わっていくのか、何を作り上げていくのかが楽しみであったが、そうして消えていく傷痕がなんだか自分たちが経験したあの出来事も一緒に消えていっているようで嫌だった。
2009年のゲームセンターを巡り、彼らにとって100年前のレトロゲームで対戦したり共闘したりして遊んだ。
初めてやった頃からお互い腕が上がっていたが、やっぱり唯には負け越していた。暴れが通れば勝てたが、基本的には読み負けていた。
2on2で共闘するタイプのゲームでは、ふたりは強かった。サクヤは誰かをフォローする動かし方に慣れていたし、唯は回避がとにかく上手かった。負けた時は互いのせいにして罵りあった。
すでに行きつけのゲーセンでは顔見知りも出来ていて彼らと遊ぶこともあった。木村が今度の日曜に開く大会に参加することを勧めてきたが、その日はセイバーへのプレゼントを買いに行く予定だったので断った。
十分遊んだ帰りに突如現れたという不思議な警察署でも見に行こうという話になった。
話はサクヤから切り出した。唯も興味があったようで同意した。
ゲームセンターから場所は近かったし、急ぐものでもなかったので徒歩で行くことにした。
《TSUCHIKA》でも12月なのは変わらないようで、町中には赤と緑のクリスマスカラーが目についた。ケーキ屋の看板のいちごのショートケーキを見ると、生クリームの重たさを思い出して気分が悪くなった。
そこへ誰かが走ってきて、ふらふらしていたサクヤとぶつかった。サクヤは転んだ。
気づくと生暖かくて少しアンモニアの臭いがする柔らかいものに顔をうずめていた。両側からも挟まれ、とても息苦しかった。
左手は楡の胸を触っているときのような感触を伝えてきた。探ってみるとそれとは何かが違った。硬さか。突起物か。これはこれでいいものだと手がその感触の違いを確かめようと勝手に動いた。
痛かったのは右腕だった。相手の尻かふとももに押しつぶされている。霊子を硬化させていても、服は服に過ぎない。挟まれては潰れるしかなかった。それでもなんとか逃れようと動こうとした。
女性の悲鳴が聞こえ、次にコロスという物騒な宣言が聞こえ、何かが背中にぶつかった。それは背中側から心臓を貫こうと狙っていた。その目的を達成することは、彼女が持っている骨喰包丁ならば容易く可能なはずだったが、出来なかった。
2102年の技術である合成スパイダーシルクで編まれ、さらに
唯が刃物を蹴り飛ばし女性を止めてくれたおかげでようやくサクヤは立ち上がることが出来た。
とりあえず場所を変えて、メガネを掛けたその女性を落ち着かせることにした。彼女は包丁に執着を見せ欲しがったので、唯が回収した。
サクヤと唯は近くのカフェで話すことにした。
サクヤは不可抗力とはいえ失礼を謝った。女性は許さなかった。
「あ、あんなことされて許すわけないじゃないですか！！ちゃんと責任をとってください！」
顔を真っ赤にして目に涙を浮かべて訴える彼女をもっといじめてみたいなとサクヤは思った。
彼女が《TSUCHIKA》のNPCであることは、サクヤはその服を見てわかっていた。
話を聞いてみると、彼女には自身に関する記憶がないとのことだった。自分の名前もわからないようで、なぜか警察に追われているから逃げていたのだと話した。彼女にとって包丁は自分の記憶に繋がる貴重な手がかりだった。
なら返してあげようとサクヤは提案した。
「サクヤんさ、本当に大丈夫だと思ってるの？」
「僕が刺される分にはね。それにさっき彼女に言われてしまったじゃないか。僕は責任を取らなくちゃならない。責任をとって彼女に付き合い記憶を戻すのが僕が今やるべきことだ」
唯は親友のこういう所に心底呆れていた。数年ぶりに再開した親友は、女と見れば口説きに行く軽薄な男にしか思えなかった。今もただのナンパにしか見えない。
自分を刺そうとした女に対してよくやるものだ。一度ぐらい本当に刺されれば反省するだろうか。
「サクヤんのセイバーに言いつけるぞ」
「ん、すぐバレるだろうが内緒にしておいてくれ。僕はスリルを楽しみたい……が彼女はすぐに全部察してしまうしそういう展開にはしてくれないだろう。困ったものだ」
唯は、その惚気なんだかよくわからない発言にますます呆れた。そういうことばかりしているといつか突然愛想を尽かされそうだなと考えてそんな光景を想像して見た。なんだかしっくりきてしまったので余計心配になった。
警察に追われている彼女を連れて警察署に向かうのは自殺行為だということで、未来を読めれば逃げることは出来るだろうと唯が偵察を行うこととなった。
カフェの代金をサクヤが全て支払うことで唯は納得した。唯は高いパフェを頼み軽井沢に遠慮なく食べていいよと言って出ていった。
サクヤはその間、記憶のない彼女から手がかりを得ようと質問をしたり、不安がる彼女を励ましたりしていた。
そのうち、彼女のカバンを調べたらタロットカードが出てきた。占いが好きだったのかもしれないという話になった。
占い方は覚えていたようで、とりあえず唯がいつ戻ってくるかでも当ててもらうことにした。
占いの結果通り、すぐに唯が戻ってきて、彼女が書かれた指名手配書を見つけてきた。
軽井沢千璃、それが彼女の名前のようだった。一歩前進した。
唯は、他にも貰ってきていた。その中にはバーサーカーのマスターであった楊小路水貴の顔もあった。脱獄犯と書かれていた。
「ねぇサクヤん、水貴さんって今はアイドルに戻ったんじゃなかったっけ？」
「まったくなにしたんだ親分は……。心配だが、たぶん関わるとろくなことがなさそうなのだなぁ……」
サクヤはかつての聖杯戦争で、いやその後も度々彼女には苦労させられていた。サクヤはそれが嫌ではなかったし人物的には好きな相手だったが、今は会いたくなかった。
他には千璃の着ていたコートと似たような人物も手配されていた。サクヤには、全く同じ服だと分かった。何らかの関係性があるのだろうか。
三人は他に手がかりも無いため、関係あるという方向で結論づけ今後の指針とすることにした。
その後、千璃の生活をどうするかについてだが、唯は事情があって拠点に置けないということでサクヤが預かることとなった。
「へぇこれがサクヤんのお城ですか〜。ってここどう見てもラブホじゃないですか！！やっぱり軽井沢の体が目当てだったんですねこのエロサクヤん！！」
「これには、深い事情があってな……僕だって最初は嫌だったけど慣れると愛着が湧いて……ベッドも回るし……」
かつてラブホテルエス・エムであった城は、奇跡的に《ALPHA》による被害を逃れていた。そのため権利書を見つけ城主となっていたサクヤとセイバーはあの事件のあと一般NPCたちの避難所として開放したりしていた。今ではこの城を《TSUCHIKA》における商売の拠点にするためにセイバーと活動している。立地こそ悪いが2102年の商法を活かし通販を主体とすれば勝機はあると考えていた。
騒ぐ千璃をなだめながら入城する。城の何部屋かはまだホテルとして家を無くした人たちが使っているのだとサクヤは話した。
慣れた足乗りで、自室へと入っていく。そこはまるで女の子が住んでいるような部屋だった。
「あ、私この部屋でいいです」
「えっここ僕の使ってる部屋だから嫌だけど」
「なんでこんな女の子みたいなファンシーな部屋なんですか！？このスカートなんかもサクヤんのものですか！？」
「壁紙については最初からだからなんでこんな子供っぽいのかわからないけど、それスカートじゃなくてキルトね。スコットランドの民族衣装。アクセル・ローズのファッションに憧れてね。それに男子がスカートを履くのなんて、未来の日本では立派なファッションとして許容されてるのだが」
サクヤは自分がキルトを着た写真を見せて納得してもらう。
ひとまずセイバーの部屋の隣の空き部屋が千璃の部屋ということになった。特に改装もしておらずラブホテルそのままの部屋だがしばらく我慢してもらうことになった。
千璃は最初は不満げだったが、回るベッドで遊んでいるうちにどうでもよくなった。その純粋な人間性に心を惹かれた。
千璃の部屋でふたりでトランプで遊んだが、そのうち疲れて、今日はもう寝るとのことでサクヤは自室に戻った。
彼女の明日のための着替えを用意しないといけないと思った。幸い楡の為に用意していた服がちょうど使えそうだった。
自分が誰なのかわからないという不安はどういうものなのかサクヤにはわからなかったが、彼女の屈託のない笑顔を見ていると少しだけ満たされる気がしていた。
――――出会いは運命だとでも思ったのか水無月サクヤ。
あの声が、聞こえてきた。
丁度いい。考えをまとめるために自室でヘッドフォンをつけ、アルバムを流し、サクヤは自分の世界へと沈潜する。
鮮やかなる世界の片隅で、聖永がいつものように待っていた。珍しかったのはこちらが何かを問いかける前に、話しかけてきたことだ。
君は本当はわかっている。軽井沢千璃はただのNPCだ。運命の相手などではない。
君が求めているのはあの日からの出来事の再現だ。非日常へと戻れば、その飢えが収まるとでも考えている。
捕まったことを知りながら、枢木楡を助けに行かないのも、信頼などではない。君のその目的にとって邪魔だからだ。セイバーに軽井沢千璃のことを隠そうとするのも同じことだ。
飢えから逃れるためならば、犠牲を捧げることも厭わない人間。それが今の君だ。
軽井沢千璃とて、君にとっては道具のような物。いや餌というのがふさわしい。傷付け喰い荒らし陵辱することになろうと構わないのだろう？ 所詮、過去から再現されたNPCだ。君がすることを咎めるつもりはない。
君の本質は
かつて君が目指していたものは、全てを友とすることで孤独を得ようとしていた。
ドイツの植物学者ヴィルヘルム・ペッファーの言葉通りだ。
"誰の友にもなろうとする人間は、誰の友人でもない''
今は違うと言えるのか？ その事は自分自身がよく分かっているはずだ。いくら誤魔化そうとしても君が行き着く先は同じだ。
君はもう異常者だ。埋まらない穴を埋めるために、やがて私と同じ所にたどり着く。
忘れるな。私は、君の未来だ。
サクヤは反論することなくただ聴いていた。聖永の言葉を否定することができなかった。その代わり、ならたどり着く前に死ねばいいかと漠然と考えた。
音楽プレイヤーから流れているアルバムタイトルは、NIRVANAのNevermind。
穴は徐々に広がっていた。
解説（あんまりすぐ見ないで）
水無月サクヤ/Afterがどういう存在なのか、どういうメンタルなのかを解説するための話。これがないと多分、やってること理解されない気がする。
一般人メンタルで後日談なんかしたら聖杯戦争を生涯引きずり続けるPTSD患者にしかならねぇー。
Afterだけでなく、セイバールートや枢木ルートの直接のその後でもずっと彼は悩んでいくと思います。いずれ折り合いはつけていくだろうけどすっきり解決できるもんでもねぇー。
しかも唯くんとのパートで示せたと思うが、それを表にまったく出さず普段どおり振る舞おうとしてくる厄介な人間なんですよこの子。
あとこの話に出てくる聖永くんは言わなくても分かるだろうけど、ただのサクヤくんの妄想で幻覚に過ぎない存在です。竜胆ルートのように本物の魂とかではありません。
一般人メンタルで後日談なんかしたら聖杯戦争を生涯引きずり続けるPTSD患者にしかならねぇー。
Afterだけでなく、セイバールートや枢木ルートの直接のその後でもずっと彼は悩んでいくと思います。いずれ折り合いはつけていくだろうけどすっきり解決できるもんでもねぇー。
しかも唯くんとのパートで示せたと思うが、それを表にまったく出さず普段どおり振る舞おうとしてくる厄介な人間なんですよこの子。
あとこの話に出てくる聖永くんは言わなくても分かるだろうけど、ただのサクヤくんの妄想で幻覚に過ぎない存在です。竜胆ルートのように本物の魂とかではありません。
テセ梅で「耳」
「……ほ、本当に開けちゃっていいの？」
「うん、お願いするよ」
不安そうな表情を浮かべる海深に、信頼の眼差しでピアッサーを手渡した。
事の発端は今朝。珍しくオフの日ができたから洋服を見に行こう、と海深がデートに誘ってきた。
特に断る理由もなく、むしろ海深との交友を深めるいい機会だと僕は二つ返事で了承した。
そうしてショッピングモールを訪れ、歩き回りながらあれこれ見ていた時、ふと、それが目に映った。
「体に穴を開けてまで飾るだなんて、女の子のオシャレへの情熱は物凄いね」
ピアス。生前のギリシャにもあったかもしれないけど、つける機会が無かったもの。
こういうものもあるのかと眺めていると、その様子を見た海深が、思い立ったが吉日と言わんばかりにピアッサーも合わせて有無を言わさず購入し、プレゼントしてくれたのだ。
興味があったのは事実だし、信頼する人物からの贈り物とあっては身に着けない理由はなかった。
けれど、一つだけ誤算があったとすれば。
「こういうのって、自分でやったほうがいいと思うんだけど……」
「そこを何とか頼むよ。正直、失敗しない自信がないんだ」
ただ耳に付ければいいのではなく、きちんとした手順でまず穴を開けなければならないこと。
「誰かに傷つけられることには慣れてるけど、自傷はちょっと勝手が分からなくてさ。
僕は力が強いから、痛みで力んでこれを壊してしまう、なんてことがあったら悲しいし」
替えが利くものだとしても贈り物を台無しにしたくないんだ、と付け加えると、しょうがないなあ、と海深はピアッサーを受け取ってくれた。
「それじゃあ、ちょっとだけじっとしててね」
「うん。よろしく頼むよ」
目を閉じてその時を待つ。髪をかき分けようと海深の手が耳に触れて思わず、んっ、と声が漏れてしまったけど、それでも体は震わせずじっと待つ。
そしてピアッサーが耳に宛がわれて、少しの静寂の後。
ぱちん、と音が鳴った。
「……綺麗だね、これ」
鏡に映る僕の、耳に付けられた翡翠のピアスを見て思わず呟く。
女性らしさというものにとんと理解のない僕でも美しいと思うほどに、それは耳元で小さく輝いていた。
現代の女の子たちがオシャレに心血を注ぐわけがちょっとだけ分かった気がする。
「……あ、言い忘れちゃってたけど。開けたばかりのピアスホールは塞がりやすいから注意だよ。
特にセイバーさんの体は普通の人より凄いから、もしかしたら10分外しただけでも危ないかも？」
「それは大丈夫かな。せっかくくれたプレゼントを外す気はないし」
それに、と付け加えながら、ピアスを付けた耳たぶを指で撫でる。
「海深がつけてくれた傷が消えるのは嫌だからね」
そう僕が言うと、海深は何とも言えない表情で、そういうところだよ！と言いながらぽすぽすと僕のお腹に軽く拳をぶつけてきた。
何か怒らせることを言ってしまったかなとも思ったが、彼女の表情や声、拳に怒りの感情は篭っていなかった。
むしろ好意にも似た暖かい気持ちを感じて、どうしてか僕はそれを嬉しいと感じて。
僕は自然と微笑んでいた。
「うん、お願いするよ」
不安そうな表情を浮かべる海深に、信頼の眼差しでピアッサーを手渡した。
事の発端は今朝。珍しくオフの日ができたから洋服を見に行こう、と海深がデートに誘ってきた。
特に断る理由もなく、むしろ海深との交友を深めるいい機会だと僕は二つ返事で了承した。
そうしてショッピングモールを訪れ、歩き回りながらあれこれ見ていた時、ふと、それが目に映った。
「体に穴を開けてまで飾るだなんて、女の子のオシャレへの情熱は物凄いね」
ピアス。生前のギリシャにもあったかもしれないけど、つける機会が無かったもの。
こういうものもあるのかと眺めていると、その様子を見た海深が、思い立ったが吉日と言わんばかりにピアッサーも合わせて有無を言わさず購入し、プレゼントしてくれたのだ。
興味があったのは事実だし、信頼する人物からの贈り物とあっては身に着けない理由はなかった。
けれど、一つだけ誤算があったとすれば。
「こういうのって、自分でやったほうがいいと思うんだけど……」
「そこを何とか頼むよ。正直、失敗しない自信がないんだ」
ただ耳に付ければいいのではなく、きちんとした手順でまず穴を開けなければならないこと。
「誰かに傷つけられることには慣れてるけど、自傷はちょっと勝手が分からなくてさ。
僕は力が強いから、痛みで力んでこれを壊してしまう、なんてことがあったら悲しいし」
替えが利くものだとしても贈り物を台無しにしたくないんだ、と付け加えると、しょうがないなあ、と海深はピアッサーを受け取ってくれた。
「それじゃあ、ちょっとだけじっとしててね」
「うん。よろしく頼むよ」
目を閉じてその時を待つ。髪をかき分けようと海深の手が耳に触れて思わず、んっ、と声が漏れてしまったけど、それでも体は震わせずじっと待つ。
そしてピアッサーが耳に宛がわれて、少しの静寂の後。
ぱちん、と音が鳴った。
「……綺麗だね、これ」
鏡に映る僕の、耳に付けられた翡翠のピアスを見て思わず呟く。
女性らしさというものにとんと理解のない僕でも美しいと思うほどに、それは耳元で小さく輝いていた。
現代の女の子たちがオシャレに心血を注ぐわけがちょっとだけ分かった気がする。
「……あ、言い忘れちゃってたけど。開けたばかりのピアスホールは塞がりやすいから注意だよ。
特にセイバーさんの体は普通の人より凄いから、もしかしたら10分外しただけでも危ないかも？」
「それは大丈夫かな。せっかくくれたプレゼントを外す気はないし」
それに、と付け加えながら、ピアスを付けた耳たぶを指で撫でる。
「海深がつけてくれた傷が消えるのは嫌だからね」
そう僕が言うと、海深は何とも言えない表情で、そういうところだよ！と言いながらぽすぽすと僕のお腹に軽く拳をぶつけてきた。
何か怒らせることを言ってしまったかなとも思ったが、彼女の表情や声、拳に怒りの感情は篭っていなかった。
むしろ好意にも似た暖かい気持ちを感じて、どうしてか僕はそれを嬉しいと感じて。
僕は自然と微笑んでいた。
服関連
2102年における服飾の歴史
講師：水無月サクヤ
服の流行というのは模倣の文化だった。
かつてはパリやミラノで行われていたファッションショーにて
トップデザイナーたちは腕をふるって作品を作り上げた。
それを良いと思った俳優やトップモデルたちが着こなし、
更にそれを見た日本のデザイナーや企業が自分たちのブランドに取り込み、
やがて量販店が格安で販売し、流行が生まれるというピラミッド型の構造だった。
この最後の消費の流れをファストファッションと言う。
君たちも人類の最も愚かしい悪行の一つとして習ったことあるだろう？
だが時代は変わったのだ。
キーワードは2つ。ファッション用3Dプリンター技術の向上とクオリアの存在だ。
前者は言うまでもないだろう。
データさえあれば上流から下流まで即座に届くようになってしまった。
流行するまでの速さがどんどん加速していったのだ。
これ自体はいいことばかりでもなかったが……。
そしてファッションの発信地は、今ではクオリアの電脳空間からだ。
クオリアではデータを作るだけだ。実際に製造するコストは掛からない。
さらに現実では現在は実現困難だったり不可能なアイデアや、
現実では希少すぎて服に使えない素材だって惜しみなく使える。
デザイナーたちの様々なアイデアが即座に仮想空間上に再現され、
それを着て歩く様々な姿格好をしたアバターたち。
やがて現実でも着たいという声が上がるのも当然だった。
同時に、チャンスも身近になった。
名前も知られていなかったアマチュアデザイナーが
クオリア内の著名インフルエンサーの目に止まり拡散されれば一躍トップデザイナーの仲間入りだ。
今では誰もが知る著名なデザイナーのスーパーグレート氏もそうだった。
氏はクオリア上でアウターアーマースタイルというものを発案して一気に今の地位へ上り詰めた。
これは超軟体合成繊維を使った硬質化素材によって動いてもシワを作ったり形を崩すことのない
まるでロボットやパワードスーツのようなファッションを実現するというものだ。
さらに画期的だったのは分割式であるため普段の服の上から一部のパーツだけをつけることで
大きく印象を変えたり、空調機能の追加などのような使い方もできることだ。
当時はまさにかつて思い描いた未来に現実が追いついたデザインとしてもてはやされたという。
僕も去年、アメリカの一部でちょっと受けたサイボーグシャークマンという
アバターの販売によるロイヤリティで生活がだいぶ楽になったよ。
特にファッション用の超光学3Dプリンターを最新のものに新調できたのは大きな収穫だ。
合成用マテリアルが高くつくため、あまり頻繁に使いたくないのが悩みだ……。
だが変わらないものもある。
ほつれた部分の修繕なんかはやっぱり手縫いとミシンでやるものだし、
合成でない天然の服がほしければ昔ながらの製法しかない。
メンテナンス方法である洗濯に関しても同様だ。洗って干して乾かす。
この点で、水と日光ほど優れたものはないな…。
それにオーダーメイドの世界でも光学プリンターでデータを入れて製造するだけよりも
職人を抱えている店のほうが、人の温かみがあるとかもてはやされるだけじゃなく
微調整や修繕などのアフターフォローがある点も喜ばれている。
もちろん僕だってそちらの方面についても勉強を進めている。
スーパーグレート氏も服飾史に置ける基本を学ぶことの大切さを進めているし
もともと僕と服の関わりは親父のボロ服を縫い直そうとしたことから始まっているからだ。
旧世代の大量生産とゴミの山の時代はとっくに終わっている。
今は必要なものを必要なときだけ生産する時代だ。
ああ、みんな知ってることだけどきちんとここで負の歴史に触れておこう。
アパレル業界は、かつて地球温暖化全体の約10%を担っていた。*2
このことが本格的に問題視された80年前の状況はひどいものだ。
毎年930平方メートルの水を使い、石油300万バレルに相当するプラスチック素材を海洋に垂れ流した。
そうポリエステルやナイロンといったプラスチック素材による化学繊維は水質汚染と健康被害を引き起こした。
炭素排出量は国際航空業界と海運業界を足したものよりも多い量を排出し、
ゴミの量は約9200万トン、無駄に作られた服や靴の70%は埋立地に送られたという。
それに対して、リサイクル率は5%しかなかったという話だ。
僕たちにはとても信じられないことだな。
80年前の当時、2030年では約5200万トンが加わると予想されていた*3が、現実はもっとひどかった。*4
また過度の消費社会は嘆かわしいことに労働者の命をも犠牲にしていった。
安価に生産するために当時の後進国に建てられた工場では最低賃金以下で働かされ
老朽化して退去命令が出されてもオーナーや経営者により無理やり働かされ
そして1000人以上が犠牲になった事故*5も記録に残されているのだ。
もちろん、現在では化学繊維は世界各国で禁止され、
自然に悪影響を及ぼさない完全な有機素材や合成素材*6に置き換わってはいるが、
環境汚染による傷痕は今も深く地球に残っている。
甘く見積もっても改善が世界に広がったと言えるのはここ50年以内の話なのだからな。
「人間は失敗からしか学ばない」と親父はよく僕に言っていたものだ。
だからこそ物事に隠れている歴史を尊重し、ルーツを大切にしろと。
こんなところで今日の僕の講義はおしまいだ。
クオリアのお陰で実際に生産する前に着心地やデザインを確かめられたり、
無駄な消費を抑えることが出来る時代に生まれてよかったと改めて思ったよ。
クオリアが普及したことで新たに生まれた問題も確かに多い。僕も嫌な思いをさせられたことはある。
でも僕はそれ以上に世界全体に良い影響を与えてくれてる物だと思うし、クオリアを作ったという鱗画聖永氏のことは本当に尊敬しているのだ。
僕などに言われずともこの時代に生きるものなら当然だと思うが、君たちも服を…いやそれだけじゃなく物は大事に使うべきだ。
かつてはパリやミラノで行われていたファッションショーにて
トップデザイナーたちは腕をふるって作品を作り上げた。
それを良いと思った俳優やトップモデルたちが着こなし、
更にそれを見た日本のデザイナーや企業が自分たちのブランドに取り込み、
やがて量販店が格安で販売し、流行が生まれるというピラミッド型の構造だった。
この最後の消費の流れをファストファッションと言う。
君たちも人類の最も愚かしい悪行の一つとして習ったことあるだろう？
だが時代は変わったのだ。
キーワードは2つ。ファッション用3Dプリンター技術の向上とクオリアの存在だ。
前者は言うまでもないだろう。
データさえあれば上流から下流まで即座に届くようになってしまった。
流行するまでの速さがどんどん加速していったのだ。
これ自体はいいことばかりでもなかったが……。
そしてファッションの発信地は、今ではクオリアの電脳空間からだ。
クオリアではデータを作るだけだ。実際に製造するコストは掛からない。
さらに現実では現在は実現困難だったり不可能なアイデアや、
現実では希少すぎて服に使えない素材だって惜しみなく使える。
デザイナーたちの様々なアイデアが即座に仮想空間上に再現され、
それを着て歩く様々な姿格好をしたアバターたち。
やがて現実でも着たいという声が上がるのも当然だった。
同時に、チャンスも身近になった。
名前も知られていなかったアマチュアデザイナーが
クオリア内の著名インフルエンサーの目に止まり拡散されれば一躍トップデザイナーの仲間入りだ。
今では誰もが知る著名なデザイナーのスーパーグレート氏もそうだった。
氏はクオリア上でアウターアーマースタイルというものを発案して一気に今の地位へ上り詰めた。
これは超軟体合成繊維を使った硬質化素材によって動いてもシワを作ったり形を崩すことのない
まるでロボットやパワードスーツのようなファッションを実現するというものだ。
さらに画期的だったのは分割式であるため普段の服の上から一部のパーツだけをつけることで
大きく印象を変えたり、空調機能の追加などのような使い方もできることだ。
当時はまさにかつて思い描いた未来に現実が追いついたデザインとしてもてはやされたという。
僕も去年、アメリカの一部でちょっと受けたサイボーグシャークマンという
アバターの販売によるロイヤリティで生活がだいぶ楽になったよ。
特にファッション用の超光学3Dプリンターを最新のものに新調できたのは大きな収穫だ。
合成用マテリアルが高くつくため、あまり頻繁に使いたくないのが悩みだ……。
だが変わらないものもある。
ほつれた部分の修繕なんかはやっぱり手縫いとミシンでやるものだし、
合成でない天然の服がほしければ昔ながらの製法しかない。
メンテナンス方法である洗濯に関しても同様だ。洗って干して乾かす。
この点で、水と日光ほど優れたものはないな…。
それにオーダーメイドの世界でも光学プリンターでデータを入れて製造するだけよりも
職人を抱えている店のほうが、人の温かみがあるとかもてはやされるだけじゃなく
微調整や修繕などのアフターフォローがある点も喜ばれている。
もちろん僕だってそちらの方面についても勉強を進めている。
スーパーグレート氏も服飾史に置ける基本を学ぶことの大切さを進めているし
もともと僕と服の関わりは親父のボロ服を縫い直そうとしたことから始まっているからだ。
旧世代の大量生産とゴミの山の時代はとっくに終わっている。
今は必要なものを必要なときだけ生産する時代だ。
ああ、みんな知ってることだけどきちんとここで負の歴史に触れておこう。
アパレル業界は、かつて地球温暖化全体の約10%を担っていた。*2
このことが本格的に問題視された80年前の状況はひどいものだ。
毎年930平方メートルの水を使い、石油300万バレルに相当するプラスチック素材を海洋に垂れ流した。
そうポリエステルやナイロンといったプラスチック素材による化学繊維は水質汚染と健康被害を引き起こした。
炭素排出量は国際航空業界と海運業界を足したものよりも多い量を排出し、
ゴミの量は約9200万トン、無駄に作られた服や靴の70%は埋立地に送られたという。
それに対して、リサイクル率は5%しかなかったという話だ。
僕たちにはとても信じられないことだな。
80年前の当時、2030年では約5200万トンが加わると予想されていた*3が、現実はもっとひどかった。*4
また過度の消費社会は嘆かわしいことに労働者の命をも犠牲にしていった。
安価に生産するために当時の後進国に建てられた工場では最低賃金以下で働かされ
老朽化して退去命令が出されてもオーナーや経営者により無理やり働かされ
そして1000人以上が犠牲になった事故*5も記録に残されているのだ。
もちろん、現在では化学繊維は世界各国で禁止され、
自然に悪影響を及ぼさない完全な有機素材や合成素材*6に置き換わってはいるが、
環境汚染による傷痕は今も深く地球に残っている。
甘く見積もっても改善が世界に広がったと言えるのはここ50年以内の話なのだからな。
「人間は失敗からしか学ばない」と親父はよく僕に言っていたものだ。
だからこそ物事に隠れている歴史を尊重し、ルーツを大切にしろと。
こんなところで今日の僕の講義はおしまいだ。
クオリアのお陰で実際に生産する前に着心地やデザインを確かめられたり、
無駄な消費を抑えることが出来る時代に生まれてよかったと改めて思ったよ。
クオリアが普及したことで新たに生まれた問題も確かに多い。僕も嫌な思いをさせられたことはある。
でも僕はそれ以上に世界全体に良い影響を与えてくれてる物だと思うし、クオリアを作ったという鱗画聖永氏のことは本当に尊敬しているのだ。
僕などに言われずともこの時代に生きるものなら当然だと思うが、君たちも服を…いやそれだけじゃなく物は大事に使うべきだ。
怪盗紳士398〜水無月サクヤはカッコつけたい〜
運命の夜…の次の日の22時以前。
水無月サクヤ（16歳）はごく普通の男子高校生である。
彼は今、大いに悩んでいた。
僕を悩ませているものは、夜に着ていく服だ。
あの可憐なる少女騎士と共に歩くのにふさわしい装いとは一体何がよいのだろうか。
これはモテる男にとっては重要な問題だ。
相手が仮想世界のデータに過ぎないとしても、
油断せずオシャレを追求することで思考が磨かれセンスが生まれる。
まず彼女の服装から見て地域はイギリス……あるいはフランス……ともかくヨーロッパだろう。
騎士なんてそのへんに生息してるもんだったはずだし。あれ？アメリカにも騎士っていたっけ？
アメリカンナイトクラブって集団クオリアでみたことあるし。
そういえばクオリアで中世の鎧展が開催した時、
色々見たはずなんだけどヘンリー8世の兜*7しか思い出せない。
絶対に許さないぞコンラート・ゾイゼンホーフェル*8！！
ともかく彼女は騎士だ。騎士に使える従者スタイル…？
チェインメイル風の服装にサーコートでも加えるかな？
チェインメイルを作るの自体は3Dプリンターのおかげで
現代では比較にならんほど素早く輪っかを量産することが出来るだろう。
だが、流石に輪っかの組み立てが今からだと間に合わない。
輪っかを大量生産できてもそこは自分でやらなくてはならないよなぁ…。
それにセイバーは僕のことをマスターと呼んでいたはずだ。
ならば従者なのはあちら…。
騎士が仕える王侯や貴族風のデザインのがよいか？
うーん、ダブレット*9を着ていくか？そうなるとマントも欲しいな。
でもこれバトルロイヤルゲームだし、昨日も危うく即落ちしかけたし
あんまり中世コスプレして動きづらくするのも本末転倒だな…。
枢木楡には見られたが、できれば身バレを防ぐために顔も隠したほうがいいだろう。
だからといってカジュアルな服装は彼女の正装と釣り合わない。
貴族が着ていた服の歴史もたどるとなると…フロックコートか？
いや更に発展した燕尾服だろうな。
さらに、夏向けならば歴史的にメスジャケット*10になるか…。
同様にウェストコートよりもカマーバンド*11を着用するのが良いな。
僕の体型だと、細くしまったウェストを強調し、足が長くスラリと見える。
もっと上半身に筋肉のある人ならば逆三角形のラインを強調することだろう。
更に顔を隠すもの……舞踏会用のバタフライマスクはどうだ？
びっしりと決めたフォーマルな出で立ちに目元を隠すマスク。
まるでアニメやドラマの怪盗だ。そうなるとマントも欲しい。
こういうゲームでいつも僕が愛用する光学迷彩マントがあればかなり有利だろうが……
アレは現実では軍用のみしか製造許可されていない。*12作れたとしても警察に捕まる。
民間に普及したら犯罪にしか使われないという理由はそれはそうだとわかるから仕方ない。
防弾・防刃マントで我慢するしかないか……。カッコいいからまぁ良いな！
フフ、昼間と違った大人の魅力*13にセイバーは…ふふふふふ。
水無月サクヤ（16歳）はごく普通の男子高校生である。
自分はとてもクールでかっこいいオシャレな男だと思っているが、
女子の前ではついカッコつけてしまう気持ちを抑えられないのだった。
水無月サクヤ（16歳）はごく普通の男子高校生である。
彼は今、大いに悩んでいた。
僕を悩ませているものは、夜に着ていく服だ。
あの可憐なる少女騎士と共に歩くのにふさわしい装いとは一体何がよいのだろうか。
これはモテる男にとっては重要な問題だ。
相手が仮想世界のデータに過ぎないとしても、
油断せずオシャレを追求することで思考が磨かれセンスが生まれる。
まず彼女の服装から見て地域はイギリス……あるいはフランス……ともかくヨーロッパだろう。
騎士なんてそのへんに生息してるもんだったはずだし。あれ？アメリカにも騎士っていたっけ？
アメリカンナイトクラブって集団クオリアでみたことあるし。
そういえばクオリアで中世の鎧展が開催した時、
色々見たはずなんだけどヘンリー8世の兜*7しか思い出せない。
絶対に許さないぞコンラート・ゾイゼンホーフェル*8！！
ともかく彼女は騎士だ。騎士に使える従者スタイル…？
チェインメイル風の服装にサーコートでも加えるかな？
チェインメイルを作るの自体は3Dプリンターのおかげで
現代では比較にならんほど素早く輪っかを量産することが出来るだろう。
だが、流石に輪っかの組み立てが今からだと間に合わない。
輪っかを大量生産できてもそこは自分でやらなくてはならないよなぁ…。
それにセイバーは僕のことをマスターと呼んでいたはずだ。
ならば従者なのはあちら…。
騎士が仕える王侯や貴族風のデザインのがよいか？
うーん、ダブレット*9を着ていくか？そうなるとマントも欲しいな。
でもこれバトルロイヤルゲームだし、昨日も危うく即落ちしかけたし
あんまり中世コスプレして動きづらくするのも本末転倒だな…。
枢木楡には見られたが、できれば身バレを防ぐために顔も隠したほうがいいだろう。
だからといってカジュアルな服装は彼女の正装と釣り合わない。
貴族が着ていた服の歴史もたどるとなると…フロックコートか？
いや更に発展した燕尾服だろうな。
さらに、夏向けならば歴史的にメスジャケット*10になるか…。
同様にウェストコートよりもカマーバンド*11を着用するのが良いな。
僕の体型だと、細くしまったウェストを強調し、足が長くスラリと見える。
もっと上半身に筋肉のある人ならば逆三角形のラインを強調することだろう。
更に顔を隠すもの……舞踏会用のバタフライマスクはどうだ？
びっしりと決めたフォーマルな出で立ちに目元を隠すマスク。
まるでアニメやドラマの怪盗だ。そうなるとマントも欲しい。
こういうゲームでいつも僕が愛用する光学迷彩マントがあればかなり有利だろうが……
アレは現実では軍用のみしか製造許可されていない。*12作れたとしても警察に捕まる。
民間に普及したら犯罪にしか使われないという理由はそれはそうだとわかるから仕方ない。
防弾・防刃マントで我慢するしかないか……。カッコいいからまぁ良いな！
フフ、昼間と違った大人の魅力*13にセイバーは…ふふふふふ。
水無月サクヤ（16歳）はごく普通の男子高校生である。
自分はとてもクールでかっこいいオシャレな男だと思っているが、
女子の前ではついカッコつけてしまう気持ちを抑えられないのだった。
- *1 : ここでこの町の住人ではないと気づいてしまった
- *2 : 温暖化の主要因の2位と言われているが1位は不明瞭だったり要出典すぎる
- *3 : 本当
- *4 : たぶんそうなるだろうという予測。人間は愚かだ
- *5 : 2013年にバングラデシュで起きた事故、通称『ラナ・プラザの悲劇』
- *6 : 有機スパイダーシルクを始めとし2021年現在様々なものが発案・研究・生産されている
- *7 : 画像検索すれば分かる
- *8 : あの兜と鎧作った鎧職人。『最後の騎士』マクシミリアン1世に仕え様々な革新的な鎧と鋳造技術を編み出したと言われる
- *9 : フランス語ではプールポワンとも呼ばれる。騎士鎧の下にも着る体にフィットしたピッタリした服
- *10 : 燕尾服の燕尾を切り落とした服。アメリカ海軍の艦長が暑いから切り取ったのが始まり
- *11 : こちらも植民地時代のイギリスがインドでも正装をしていたのだが暑いのでインド人の巻く布をウェストコート代わりにしたのが始まり
- *12 : 現実にそういう記事あった。まぁそりゃ普及させちゃうと悪用されますよね…
- *13 : このコーディネイトほとんどシルクハット抜きのタキシード仮面様だわ…この子この後シルクハットも被りそう…
コメントをかく