ステージの前夜に、瑞樹は、楓と早苗とともに
自分たちの生き様について語り合っていた。
翌日、瑞樹は28歳の自分らしいステージを披露するが
桃華と幸子は本当にそれでいいのかと疑問を持つ。
瑞樹は若い2人に自分の生き方を語るのだった。
自分たちの生き様について語り合っていた。
翌日、瑞樹は28歳の自分らしいステージを披露するが
桃華と幸子は本当にそれでいいのかと疑問を持つ。
瑞樹は若い2人に自分の生き方を語るのだった。
Bar | |
---|---|
瑞樹 | ……はぁ〜。 |
楓 | ため息をつくと幸せが逃げるって、以前言ってませんでした? |
瑞樹 | あらっ。いけない、いけないわ。 |
早苗 | まぁ、ビールをもう一杯おかわりしたら幸せになれるわよ! |
瑞樹 | ほんと、早苗ちゃんは気楽で良いわねぇ。 私だって、アイドルのお仕事をしてたら、 悩みの一つや二つはあるんだから。 |
楓 | 明日はトークショーにステージで歌まで控えてますもんね。 |
早苗 | 大事なステージだから成功させたいのは分かるけど、 気負いがあっちゃいけないわよ〜。 |
楓 | そうですよ。 失敗したら実家に帰らなきゃいけない…… ってわけでもないでしょう。 |
瑞樹 | そんなこと、この歳で考えたくもないわね……。 |
早苗 | 異業種からの転職組としては身につまされる話だわ……。 |
瑞樹 | せっかくアイドルに転身したんだから、 成功していきたいものね。 私だってアナウンサーを辞めてまでチャレンジしたんだから。 |
早苗 | ほんとよね〜! |
楓 | そういえば…… アナウンサー時代の川島さん、見たことがありますよ。私。 |
瑞樹 | えぇ〜っ、楓ちゃん、ホント!? |
楓 | 関西の地方局にいたんですよね。 ローカルニュースの番組持ってませんでした? |
瑞樹 | やっだ、それ、ほんとに私だわ……。 1年目から配属されたのよ。情報コーナー。 すぐに変えられちゃったけどね。 |
早苗 | まさか目撃者がこんな身内にいただなんてね〜! |
楓 | ふふっ。 その頃は、どんな思いでお仕事していたんですか? |
瑞樹 | そうねぇ……私は私じゃなきゃできない仕事がしたかったのに、 そんな仕事はさせてもらえなくって…… 華やかなところは同期のキャピキャピした子が持っていって……。 |
早苗 | キャピキャピ……。 |
瑞樹 | 先輩になったら若い子に負けて……与えられた原稿を読むだけで。 自分が主役になりたくっても、 それを周りは許してくれなかったわ。 |
だから、辞めちゃったの。 誰かに遠慮するのなんて、つまらなくって。 | |
楓 | そういう思いって、誰しもが持つものですよね。 |
瑞樹 | わかる〜? |
早苗 | わかるわ! わかるわ。 |
楓 | |
瑞樹 | ふふっ!ありがと。 |
早苗 | でもいま、瑞樹ちゃんは、楓ちゃんや愛梨ちゃんみたいな、 自由な子と組むことが多いじゃない? それは瑞樹ちゃんがしっかりしているからだと思うけど。 |
瑞樹 | そうね。 |
楓 | 川島さんと一緒のお仕事では、自由にやらせてもらってます♪ うふふ〜♪ |
早苗 | それは、瑞樹ちゃん的にはいいの? |
瑞樹 | ん〜……全然、気にしたこともなかったわ。 たしかに楓ちゃんや愛梨ちゃんと組んで、 お仕事でフォローに回ることはあるけど……。 |
私と組んだことで、楓ちゃんや愛梨ちゃんみたいな自由な子が 生きるんだったら…… それは同時に私のキャラも生きてるってことじゃないかしら? | |
それが私にしかできないことなら、それでもいいと思えるのよね。 いまは……。 | |
楓 | ありがとうございます♪ 小娘に負けない、なんて言ってた人が、意外ですよね。 |
瑞樹 | んもう、それは言いっこなしよ〜。 それに、私が主役の舞台はちゃんと用意されてるもの。 そっちも全身全霊で楽しんでいくつもりよ。 |
早苗 | じゃ、明日のステージの成功を願って、 もう一杯、いっときますか! |
楓 | はいはーい♪ かんぱーい♪ |
瑞樹 | まったく、明日は私のステージなのよ〜? |
イベント当日 | |
瑞樹 | 今日は、LIVEステージのバックメンバー、よろしくね。 幸子ちゃん、桃華ちゃん。 |
桃華 | どうも、宜しくお願いしますわ。 同年代の方以外とお仕事をご一緒する経験があまりなくて。 櫻井桃華、お勉強させていただきますわ。 |
幸子 | フフーン。 このカワイイカワイイ輿水幸子が来たからには 安心していいですよ!川島さん! |
瑞樹 | う〜ん、若くていいわね〜! そのフレッシュな空気、ステージでもお願いね! |
幸子 | アイドルにとって若さっていうのは大事な要素ですからね! その点ボクは14歳と若いですから!完璧ですね! |
桃華 | ならばわたくしの方が適していますわね。 わたくしは12歳ですから! |
瑞樹 | あら、コホン。川島みじゅき、28ちゃいも頑張るわよぉ♪ 若いだけじゃできないステージもあるって、見せてあげるわ! |
幸子 | だ、大丈夫なんですか……。 |
瑞樹 | 大丈夫よ!ねぇプロデューサー君!? 今日のミズキは? |
touch:カワイイ! | |
瑞樹 | そうよね!ミズキはカワイイわよね! オトナなところもカワイイところもナイスよね♪ |
幸子 | えぇ……。 |
桃華 | 大丈夫なんですの、本当に……。 |
瑞樹 | 大丈夫よ!じゃあ、行ってくるわ! プロデューサー君、見ていてね! |
LIVE会場 | |
MC | それでは、ここからは アイドルの川島瑞樹さんをお呼びしたいと思いまーす。 どうぞ〜! |
瑞樹 | はーい☆ 川島瑞樹でぇす!今日は、みんなよろしくねぇ〜♪ アイドルみずきんに会いに来てくれて、ありがとー☆ |
観客A | うわ……。 |
観客B | キツ……。 |
幸子 | やっぱりキツいとか言われてるじゃないですかー! |
桃華 | あれはいけませんわね……。 |
早苗 | 瑞樹ちゃん、やってる〜? |
楓 | どうかしら〜。 |
幸子 | 楓さんと早苗さん! って、居酒屋の店主に声かけてるんじゃないんですから! |
桃華 | お客さまが、だいぶ引いているようでして……。 |
楓 | あらあら。 |
桃華 | やっぱり、年齢の問題なのかしら……。 |
幸子 | ボクの倍ですからね! |
早苗 | それ、リアルにキツいわ……。 |
幸子 | ボク、川島さんと誕生日同じなんですよね。実は。 |
早苗 | ホントに倍なのね……よけい効くわ……。 |
桃華 | それで、川島さんは大丈夫なんですの……? |
楓 | それなら大丈夫。ほら……。 |
瑞樹 | ……ってなもんで、邪魔するで〜って入ってきたら、 邪魔すんなら帰って〜って返すのが礼儀だと思うでしょ? でもこれ、最近の若い子には通じないのよね〜! |
観客A | わかんないよ〜! |
瑞樹 | あらっ、また言われちゃった。 これ、ジェネレーションギャップなのかしら。もう、や〜ね〜。 |
ってこれ、オバチャンっぽいわね。いっけなーい、いけないわ!! フレッシュ!フレッシュミズキに改名するわ! | |
観客B | 自虐ネタはずるいよ〜。 |
瑞樹 | そうね……もっとフレッシュになるためには どうしたらいいかしら? なにか、いい案ある? ……ふんふん。なるほど。 |
みんなは、いま、恋してるかしら。 私は、してるわ!することにしたの! この瞬間……会場のみんなにね! | |
笑い声が響いた | |
瑞樹 | もー、笑わないでよー♪ あ、これトークショーだから笑っていいのよ! むしろ笑ってもらわないとお仕事にならないわ! |
幸子 | あれ、なんか、ダメじゃありません? |
楓 | ダメじゃないですよ。ああいう芸風なんです。ふふっ。 |
桃華 | 芸風……笑われているようにしか見えませんけど……。 |
早苗 | まぁまぁ!いいのよあれで! |
MC | トークパートはここまでとなりまーす。 このあとは、LIVEパートをお楽しみくださーい。 |
瑞樹 | みんな、トークは楽しんでもらえたかしら〜? この後の歌も、聴いていってね〜! |
観客A | 面白いオバちゃんだったな〜! |
観客B | ホントだよな! |
瑞樹 | オバチャンじゃなくて、お姉さんよ〜! |
LIVEへ 『Just Started』 楽曲:Angel Breeze | |
LIVE後 | |
瑞樹 | みんな〜、私の歌『Angel Breeze』、 聴いてくれてありがとう〜! |
MC | あらためて、川島瑞樹さんでした〜! |
観客A | ミズキ〜! |
観客B | 歌、よかったな! |
観客A | 面白い人かと思ったら歌はガチだったな! |
瑞樹 | みんな、楽しんでもらえたかしら? 私は歌もトークもすっごく楽しかったわ! |
それに、そんな私を見て、 みんなが少しでも楽しいと思ってくれたらもっと嬉しいわ〜! | |
観客A・B | 楽しかったよー! |
瑞樹 | あはっ☆ ありがとーっ☆ ばいばーい♪ |
瑞樹 | ん〜っ、今日も楽しんだわね〜! みんな、どうだった? |
幸子 | 川島さん、その……見直しましたよ。ボクは。 |
瑞樹 | あら、見直したってことは見放してたってことかしら? いや〜ん、ミズキショック〜! |
幸子 | そ、そういうわけではありませんけど……。 |
楓 | 今回も、川島さんらしいステージでしたね。 |
桃華 | トークは、わたくしの趣味ではありませんでしたけど……。 |
早苗 | でも、笑ってくれてたんじゃない? |
桃華 | そうですわね……。 でも、川島さんはアレでいいんですの? |
瑞樹 | もちろんよ! お客さんが笑顔になって帰ってくれること以上に、 求めるものがあるかしら? |
幸子 | ……その考え方、奇遇ですね、ボクも同じです! |
瑞樹 | あら、嬉しい♪ わかる〜? |
幸子 | わ……。 |
瑞樹 | わ? |
幸子 | わかるわ……。 |
桃華 | 言わされているんじゃありませんこと!? |
楓 | ふふっ♪ 聞いていると、使いたくなっちゃうんですよね。 |
早苗 | ほんと、瑞樹ちゃんを見てると 楽しくなって元気をもらえるのよね! |
桃華 | でも、笑われるなんて……。 |
瑞樹 | 私は、それでもいいと思ってるの。 川島瑞樹は、普通のアイドルじゃないから。 |
幸子 | 普通の? ……どういうことですか? |
瑞樹 | 普通の若い子だったら、10代でアイドルになって、 20代を謳歌して、30になるころには引退か、 女優にでもなるのかしら。 |
楓 | ……そうですね。 |
瑞樹 | でも、私は28歳がスタートでしょう? 他の人……幸子ちゃんや桃華ちゃんからしたら 遅すぎるスタートよね。 |
幸子 | ま、まぁ……。 |
桃華 | そうですわね。 |
瑞樹 | 若さって武器は既に持っていないし、遅咲きで、崖っぷちよ。 けど、年齢を理由にしたくないし、 そもそも、これ以上失うものもないわ。 |
早苗 | ほんと……わかるわ〜。 |
瑞樹 | 私はね、始めるのに遅すぎることはないってことを証明したいし、 アイドルになりたいって思った、昔の私のためにも、 誰よりもアイドルを楽しみたいの。 |
だから、ファンのみんなが笑顔になってくれることが、 最高のご褒美よ。 | |
幸子 | お、驚きましたね。 ボク並……いや、ボク以上のプロ意識を持っているなんて! |
桃華 | ……ほんとうに、ステキなレディですの。 |
瑞樹 | ふふっ♪ ありがとう。 だって、ミズキは……アイドルなんだもの♪ |
楓 | ……いいお話に、まとまりましたね♪ |
早苗 | じゃあ、まとまったところで、LIVEの打ち上げにいきますか〜! |
瑞樹 | ちょっとちょっと、人がせっかくいい話をしたのに…… またその流れなの〜!? |
桃華 | ふふふっ! うふふっ! |
幸子 |