Nocturne > 第1話 情熱ブレイクショット
『大人の遊び場で妖しい情熱』をテーマに撮影をする
瑞樹、涼、奏。奏は特に気合が入った様子で、瑞樹と
静かな情熱をぶつけ合いながら撮影に臨んでいた。
そんなふたりに気後れする涼だったが、奏に誘われた
ビリヤード対決を通し、いつしかふたりと同じように
情熱に満ちた表情を浮かべていたのだった。
瑞樹、涼、奏。奏は特に気合が入った様子で、瑞樹と
静かな情熱をぶつけ合いながら撮影に臨んでいた。
そんなふたりに気後れする涼だったが、奏に誘われた
ビリヤード対決を通し、いつしかふたりと同じように
情熱に満ちた表情を浮かべていたのだった。
Bar | |
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涼 | へぇ……こういう外の店を貸し切って撮影をするんだな。 スタッフも多いし……結構すごい仕事なのかも。 |
奏 | …………。 |
涼 | で、今回のテーマが『大人の遊び場で妖しい情熱』か。 また難しい注文だな……。 |
奏 | …………。 |
涼 | ……なぁ、奏。 さっきからどうしたんだよ。 精神統一? 緊張でもしてるのか? |
奏 | ……まあ、そんなところ。 今回の撮影は、いつも以上に気合い入れないとと思って。 |
涼 | へぇ。意外だな。 こういうの得意なんじゃないのか。 |
奏 | そうね。グラビアの仕事は好きよ。 でも、今まではソロのお仕事がメインだったから。 みんなでとなると、また違うわ。 |
涼 | そういうもんなのか? |
奏 | ええ。独りなら、自分のことにだけ集中できる。 目線、表情、体の使い方…… 今、自分がどう写っているかを想像しながらね。 |
でも、ユニットは全員で一枚の絵をつくるでしょう。 全体がどう写っているか、その中で自分がどう動くべきか……。 難しいと思わない? | |
涼 | ……すごいな。 アタシ、そんなこと考えちゃいなかったぜ。 |
奏 | ああ、ごめんなさい。そんなつもりで言ったんじゃないの。 身構えちゃったかしら。 私だって、普段だったらこんなこと言わないわ。 |
涼 | 普段だったら? ……今回は何か違うのか? |
奏 | ええ。 ……ほら。 |
瑞樹 | おはようございまーす! 今日はよろしくお願いしまーす。 |
涼 | 川島サン? |
奏 | そう。まあ、撮影始めればわかるわ。 あっ……わかるわって言っちゃった。もう。 さ、行きましょ。 |
涼 | ??? |
カメラマン | 行くよー。 まずは自由に動いてみてね。はーい。 |
瑞樹 | 妖しい情熱……。 妖艶に、激しく、ね。こう? くねっ? ……ああ、しなっとした感じとか、どうかしら。 |
カメラマン | 瑞樹ちゃん、いいねー。 ふたりも、もう少しポーズに動きつけてみようか。 |
奏 | はい。 は、はい。 |
涼 | |
奏 | ……川島さん、肩に手を置いても? |
瑞樹 | もちろんよ! 遠慮せずにガンガン触って? |
奏 | そう……じゃあ、こんな感じで。 |
瑞樹 | あら……それは少し……。 やるじゃない、奏ちゃん。 |
奏 | ふふ……。 やられっぱなしじゃ、いられませんから。 |
カメラマン | オッケー、撮っていくよー! |
涼 | …………。 |
カメラマン | じゃあ、次はこっちで。 ビリヤードしてる風でいってみようか。 |
瑞樹 | 実際に打ってみてもいいのかしら? |
カメラマン | もちろん! 自由に動いてもらって、かまわないよ。 |
奏 | そうだ。せっかくだし、ちょっと勝負してみない? この間、周子たちがビリヤードしてたって聞いて、 やってみたかったのよね。 |
瑞樹 | いいわね! 言っておくけど、私、ちょっとしたものよ? 学生時代はブイブイ言わせてたんだから! |
奏 | 涼はどう? ビリヤード。 |
涼 | え? ああ。やったことくらいはあるけど……。 |
奏 | そう。じゃあ大丈夫ね。 3人だけど、ナインボールで。 ……始めましょ。 |
瑞樹 | ふたりとも、なかなかやるじゃない? でもね……勝利は私のものよ! えいっ!……ああっ。 |
奏 | 力み過ぎですよ。川島さん。 最後は私が決めさせてもらいます。 ……あ。 |
涼 | あははっ。ふたりとも、しまらないな。 よっ……。おっし、入った! アタシの勝ちだな! |
瑞樹 | ……まあ、なかなかやるじゃない? ビギナーズラックってあるわよね。わかるわ。 |
奏 | 自信無いなんて言っておいて油断させて…… 意外としたたかね? |
涼 | どんだけ負けず嫌いなんだよ、アンタたち……。 でも、ずいぶん言ってくれるじゃねーか。 アタシの本気、こんなもんじゃないよ? |
奏 | あら……良い顔するようになったじゃない。 いいわ。もう一戦いきましょう? |
瑞樹 | そうね。ちょうど肩も温まってきたところだし。 簡単に勝ちを譲る私じゃないってこと、教えてあげる! |
涼 | へへっ。次も負けないよ? いいぜ、かかってきな! |
こうして、熱いビリヤード対決…… ではなく、熱い撮影は遅くまで続いた…… |