ナレーション | 川島学園。 |
かつては進学校として名を馳せたが、ここ数年は生徒たちの 学習意欲の著しい低下や素行の悪化などにより、 経営に暗雲が立ち込めていた。 | |
これに対し、理事長である川島瑞樹は学園立て直しのため、 外部から特別教師陣を招聘。 学園始まって以来の大改革に打って出るのだった……! | |
瑞樹 | ……来ましたね。 我が校の改革を担う、ひとり目の特別教師。 |
??? | 特別教師ねぇ……何だか締まらねえ響きだなァ……。 |
瑞樹 | では、どんな肩書をご所望かしら? |
??? | そうだな……特別教師ってよりも、 特別講師のほうが……いや。 |
拓海 | 『特講』……アタシは『特講の拓海』だ……! |
教室 | |
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比奈 | あー……。 今日も授業かったるいっスねぇ。 |
柑奈 | どうせ自習でしょ。 ギター弾いててもいい? |
晶葉 | 今製図がいい調子なんだ。 集中が途切れるから我慢しろ。 |
幸子 | まぁまぁみなさん。 今日から学園が雇った特別教師が来るらしいですから、 まずはお手並み拝見といこうじゃないですか。 |
輝子 | フヒ……今度の先生は、逃げないといいな……。 |
小梅 | 気配がするよ……来たみたいだね……ふふ。 |
麗奈 | まずは挨拶代わり。 ドアを開けたら上からレイナサマ特製トラップが……。 |
拓海 | 授業の時間だコラァァ!! |
幸子 | ギャァァァァ! |
麗奈 | |
拓海 | ……お? 悪ぃ悪ぃ。 つい勢いで入口蹴破っちまった。つーワケで、 道徳担当の特別講師……特講の向井拓海だ、夜露士苦な! |
幸子 | ど……道徳……入口蹴破って入って来た人が道徳……。 ふ、ふふ……しかし、学園内でも特に問題児クラスと名高い ウチのクラスで、道徳の授業が成立するとでも……? |
拓海 | おう、当然よ。 じゃあ早速だが、お前らに簡単な質問をしていくぞ。 あー……じゃ、そこのちっこいの。 |
小梅 | ……ふふふ。 なにかな、先生。 |
拓海 | 廊下を歩いてたら反対から教師が歩いてきた。 お前はどうする? |
小梅 | そうだね……気配を殺して暗がりから声を掛けるかな…… 先生たちには見えない、あの子たちと一緒に……。 |
幸子 | ふふ。 この学校の教師たちは生徒から信用されていませんからね。 まともな礼儀礼節なんて……。 |
拓海 | ま ず ガ ン を 飛 ば せ ! |
幸子 | えーーーーーーッ!? |
小梅 | |
拓海 | 今までお前らが見てきた先公連中はな、お前らと向き合うのを 放り出してアタシらみたいな外部の人間に頼るようなヤツらだ。 ナメられてんだよ。 |
逆にお前らもそれをわかっちまってるから向き合わねえ。 いいか、ビビったら負けだ。 ガン飛ばしだけで負かすくらいの気持ちで相手の目を見ろ。 | |
そんで『アタシはここに居る、アタシを見ろ』って わからせるために、デケー声で挨拶すんだ。 そうすりゃ、相手もお前をお前個人として見るようになる。 | |
小梅 | は……はい……。 |
拓海 | ん? そっちのヤツ、机の下の鉢植えに生えてんの、キノコか? |
輝子 | え? あ……ホワイトマッシュルーム……。 |
拓海 | キノコ、好きなのか。 |
輝子 | わ……私は……世界をキノコで満たしたいんだ……。 でも先生たちにはそんなもの勉強に必要ない、 くだらないって言われて……それでコッソリ……。 |
拓海 | いいじゃねーか。 ドンドンやれ。 好きなんだろ? |
輝子 | え……。 |
拓海 | こっちもマジにならなきゃ、相手をマジにさせることなんざ 出来やしねえ。 |
好きなこと、やりてぇこと。 そういうモンが大人から見て応援しづれぇモンだったり、 わかってもらいにくいモンだったりすれば特にな。 | |
だったらテッペン獲ってやるって気概をみせりゃあいい。 キノコが好きならキノコ栽培で、テッペンを穫るってよ。 | |
輝子 | テッペン……キノコで……フヒ。 |
拓海 | やりてぇことに腕っぷしが必要なんだったら強くなりゃあいい。 アタマが必要だってんなら勉強すりゃあいい。 絵が上手くなりてぇ、音楽で飯食っていきてぇ。何でもな。 |
お前らが本気でやりてぇことをバカにするような 大人がいたらアタシに言え。 全員アタシがシメてやるからよ? | |
比奈 | アタシの……夢……。 |
柑奈 | あはは、何かちょっと面白そうな先生みたいだね。 |
晶葉 | この学校の授業なぞ程度が低くて聞く気になれなかったが、 少しは楽しめそうだな。 それに、ああいう突拍子もない輩の存在は発明の刺激になる。 |
幸子 | み、みなさん何だか雰囲気が……。 |
拓海 | いいか、本気でテッペン目指して突っ走るヤツには、 周りも変える力があるんだぜ。 こいつがいわゆる『仏恥義理』ってやつだ……! |
幸子 | なんだかわかるようなわからないような締め方しないでくださいーっ! |
ナレーション | こうして、 特別教師たちを擁する川島学園の改革は幕を開けたのだった……! |