凛はアイドルとしてステージに立つ意味を探していた。
そんなとき出逢った楓や瑞樹の助言を受けて、
ステージの上で何かを見つけようと決心する。
そして、自分の意志でスポットライトの下へと、
踏み出すのだった。
そんなとき出逢った楓や瑞樹の助言を受けて、
ステージの上で何かを見つけようと決心する。
そして、自分の意志でスポットライトの下へと、
踏み出すのだった。
アイドルフェス 3日前 | |
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卯月 | 撮影、お疲れさまでした〜! |
未央 | うんうん、お疲れ〜! フェスの宣材写真もバッチリ撮ったし、アイドルフェスの準備も万端! ねっ、しぶりん! |
凛 | うん……。 |
未央 | なーんだよ、しぶり〜ん、テンション低いな〜。 もしかして、アイドル力を放出しきってしまったのかーい? |
凛 | ……違うよ。 |
未央 | それだけ? そこは、アイドル力ってなんやねーんっていう ツッコミをだね……。 |
卯月 | 凛ちゃん、疲れちゃったんですかね? 撮影中も、なんとなくぼんやりしているように見えましたし……。 |
凛 | そうだった? |
未央 | そうだよー。 しぶりんのキレのあるツッコミがないと、 未央ちゃんも寂しいぞっ! |
凛 | ……そうだね。 |
未央 | 認めちゃうのかーい! まっ、しぶりんは大丈夫だと思うけどさ。 なんかあったら頼ってよ。 |
卯月 | 私たちで力になれることがあったら、なんでも言ってください! |
凛 | ありがとう、卯月。未央。 ごめん、なんか疲れてるみたい。 プロデューサー、今日は先に帰ることにするよ。お疲れさま。 |
卯月 | お疲れさまでした! 凛ちゃん、また明日! |
未央 | 気を付けて帰るんだよー! ばいばーい! |
卯月 | 凛ちゃん、具合でも悪かったんでしょうか……。 私たちが、なにか力になってあげられたらいいんですけど……。 |
未央 | うーん……しぶりん、あの性格だからなぁ……。 |
あんまりつっこんでも、 『卯月たちに頼って心配させたくないから』 ……なーんて、言いそうだし。 | |
卯月 | そうですよね……。 あっ、それにしてもやっぱり、 未央ちゃんって私たちのこと、すっごくよく見てますね。 |
未央 | え? あー、いやぁ、そうかなぁ、あははは……。 だって、同じアイドルとして頑張る仲間じゃん? 仲間のことは、気になるもんだよ! |
卯月 | ふふふっ、優しいですね! じゃあ、凛ちゃんにも余計な心配させたくないですし、 私たちはおせっかいせず、そっと見守りましょう! |
未央 | おうっ!信じるのも仲間の仕事だよね! じゃあ、しぶりんのいない間に、もう一回おさらいしとこっか! 苦手なステップ、ビシッとできるように頑張ろ! |
卯月 | はぁ〜い、がんばりま〜す。 ……ふぇぇ〜ん。 |
凛 | はぁ……。 |
瑞樹 | だから言ってやったのよ。 元アナウンサーをあなどらないでね、って。 |
楓 | アナ、だけに、ですね。うふふっ。 |
瑞樹 | えっ? あーらやだもう、そんな…… ダジャレとかじゃなかったのよ、今のは。 |
楓 | でも、面白かったですよ。川島さん。 |
瑞樹 | そーおー? 私、おもしろ路線は攻めるつもりないんだけど…… |
あら? あなた、確か……。 | |
凛 | あぁ、どうも……渋谷凛です。 えっと、高垣楓さんと、川島…… |
瑞樹 | はぁ〜い、アイドル川島瑞樹、ピッチピチの〜 |
楓 | に! |
瑞樹 | じゅうはっさいでぇ〜す☆ ってちょっと楓ちゃ〜ん!? んもぉ〜! |
楓 | ふふっ。 凛ちゃん、こんにちは。高垣楓です。 ちゃんとご挨拶はしてなかったわね。 |
凛 | あぁ、はい。よろしくお願いします。 |
瑞樹 | うんうん。 でも……凛ちゃん、どうしたの? なんだか暗い顔してるわねぇ。 |
凛 | そんなことは……。 |
楓 | なにか、困ったことでもあったんですか? |
凛 | なんで、わかるの……? |
瑞樹 | そりゃぁ……わかるわ。オトナだからね。 |
楓 | 私たちでよかったら、話を聞きましょうか。 |
凛 | そんな、二人に聞いてもらうなんてほどのことじゃ……。 |
瑞樹 | あー、若いわねぇ……。 何でも一人で抱え込んで、解決したいけどできなくて…… 青春ってそれを繰り返してオトナになるのよね……。 |
楓 | 川島さん、あんまり回想に浸ってると、心が歳とっちゃいますよ。 |
瑞樹 | そうね、いけないわ。心はいつも若くフレッシュにね。 ……で、凛ちゃん。何かあるなら、話してごらんなさい? |
凛 | は、はい……。 その、私、卯月や未央たちと、小さなLIVEフェスへ 参加することになったんですけど……。 |
楓 | あぁ、アイドルフェスかしら? 新人アイドルの登竜門ですね。 |
凛 | でも、私、こんなこと言うのもおかしいんだけど…… なんでステージに立つのか、まだわからなくて。 |
瑞樹 | うんうん。そういう時期、あるわよねぇ。 |
凛 | このままじゃダメな気がするんだけど、 自分でもどうしていいかわからなくて。 |
楓 | ……うん。 |
凛 | でも、今さらこんなことを誰かに聞くわけにもいかないし。 けど、ずっと考えててもわからなくて。 |
楓 | そういうときって、ぼんやりしていて、 お仕事でもミスしてしまったりするんですよね。 |
凛 | ……っ! そう、ですね。 |
瑞樹 | それで、凛ちゃんはどうしたいの? |
凛 | 私は……自分で見つけたい。 私がどうしてLIVEステージに立つのかを。 このもやもやを、はっきりさせたい。 |
楓 | それは、プロデューサーさんに頼る訳にはいかないの? |
凛 | それは……。 |
瑞樹 | ふふっ。かわいいわー。 凛ちゃんって強い子なのね。 自分でそれを見つけて、認めてほしいのね。 |
凛 | そういうわけじゃ……っ! |
楓 | じゃあ、川島さんに質問です。 東京都にお住まいの渋谷さんから。 川島さんはどうしてステージに立つんですか? 教えてください♪ |
瑞樹 | そりゃぁもちろん、答えはひとつ! それは川島瑞樹が、アイドルだからよ! |
凛 | え……。 |
瑞樹 | アイドルっていうのは、ステージの上で歌って踊るものなの。 今の私はアイドルなの。だから歌って踊るわ。 理由なんて、それだけよ。 |
凛 | それだけ……。 |
瑞樹 | 私は、アイドルになる前アナウンサーだったの。 アナウンサーはステージの主役じゃないし、歌うこともないわね。 |
楓 | まぁ、当然ですよね。 |
瑞樹 | だけど今はステージに立って歌うのがお仕事よ。 なら、それを全力で楽しまなきゃ。 じゃなかったら、過去の私に申し訳ないもの。 |
凛 | そういう人もいるんだ。 私、想像したこともなかった。 |
瑞樹 | 世の中の物事って、想像できないようなことも多いものよ! さぁ、次は楓ちゃんの番ね! |
楓 | 私、ですか? そうですね……なぜ、ステージに立つのか、ですよね。 |
凛 | うん。楓さんは、どうして……? |
楓 | どうして……うーん、どうしてでしょう……? |
凛 | えっ? |
瑞樹 | あーっ……忘れてたわ。楓ちゃんって、こういう子よ。 |
楓 | ステージに立つときは毎回ドキドキしますし、 終われば楽しかったとか、次はもっとうまくやりたいとか、 いろいろ考えます。けど……。 |
そもそもなぜステージに立つか、なんて、 考えたことありませんでした。 私の場合、理屈ではないのかも……。 | |
凛 | 楓さんみたいな人もいるんだ。 ますます想像したことなかった……。 |
楓 | でも、楽しくなかったら続きませんよね。 そこに理由があるかもしれません。 |
瑞樹 | そうよ。ステージにはステージの、 生でしか味わえない楽しさと感動があるもの。 せっかくなんだから、アイドルをめいっぱい楽しんじゃいなさい! |
楓 | 私たちの話で、なにか参考になったかしら? |
凛 | うん……まだ答えは見えないけど、頑張ってみます。 |
瑞樹 | うんうん!若いんだから、おもいっきり悩んで、 はじけて、青春しちゃいなさい! |
楓 | 今週も来週も、青春ですね。 もちろん、先週も。 ……なーんて。 |
凛 | あはは……。 でも、助かりました。 楓さん、川島さん、ありがとうございました。 |
瑞樹 | うん、じゃあ頑張ってね!応援してるわ! 凛ちゃん自身の花、咲かせてね! |
楓 | ステージにも、大輪の花が咲くといいですね。 |
凛 | (私が、ステージに立つ理由……。) |
(卯月なら、なんて言うだろう。アイドルに憧れていた卯月なら、 きっと『ステージに立つことが憧れだから』って言うのかな。) | |
(未央なら……きっと、 『お客さんやファンのみんなと、楽しみたいから』って言うのかな。) | |
(私なら……。) | |
(それを見つけよう……。見つけるために、ステージに立とう……!) | |
LIVE前 | |
卯月 | 次は凛ちゃんのセンターステージですっ! 頑張ってください! |
凛 | うん、ありがとう。 卯月、未央、あとそっちの二人も、よろしくね。 |
奈緒 | おいおいおい、そっちの二人ってなんだよ〜。 あたしには神谷奈緒っていうちゃんとした名前があるんだぞ〜! ま、いいけどさ!みんな、今日はよろしくな! |
加蓮 | どーも、『そっちの二人』の奈緒じゃない方、北条加蓮だよ。 今日はよろしくね。あ、後ろで踊ってるけど、 気にしなくていいから。凛は歌に集中してよ。 |
凛 | ふふっ。わかった。 |
未央 | かみやんとかれんだ! 一緒のステージ、協力してしぶりんを盛り上げようっ! |
卯月 | みんなで一緒に頑張りましょうね! |
奈緒 | おう!カッコいいステージにしような! |
加蓮 | 奈緒、凛より目立っちゃダメだからね。 |
奈緒 | わ、わかってるってば〜! |
凛 | じゃあ、行くよ、みんな! |
卯月 | はいっ! おー! |
未央 | |
奈緒 | おう! うん! |
加蓮 | |
凛 | じゃあ……プロデューサー、行ってくるよ。 |
LIVEへ 『The Flower of My Heart.』 楽曲:Never say never | |
LIVE後 | |
凛 | ふぅ……。 |
未央 | しーぶりん。楽しかった? |
凛 | うん……楽しかった。 |
未央 | なんかモヤモヤしてたのは、もう大丈夫そうだね。 |
凛 | なっ、なんでそれを……。 |
卯月 | うふふっ。実は、心配してたんですよ! |
凛 | そうだったんだ……ごめん、心配かけて。 |
未央 | でも、心配するだけムダだったなー! しまむー、やっぱり言ったとおりだったでしょ? |
卯月 | そうですね!未央ちゃんの言うとおりでした! それに、さすが凛ちゃん! |
凛 | ……? どういうこと? |
未央 | なんか悩んでても、しぶりんはきっと 自分で何とかしちゃうよって話してたんだ! |
卯月 | 未央ちゃんの言ったとおりでした! |
凛 | ……未央。 |
未央 | てっへへー☆ |
凛 | でも、心配かけたのは悪かったよ。 もう、大丈夫だから。 |
未央 | しまむーばりのエンジェルスマイルだったね。 なにか大事なもの、見つかった? |
凛 | うん。ステージに立つ理由が、少しだけわかったよ。 私は、私が夢中になれる瞬間があるから、ステージに立つんだ。 |
卯月 | 凛ちゃんらしくて、素敵だと思います! |
凛 | ところで、奈緒と加蓮は? |
卯月 | 邪魔しちゃ悪いから、出てるって言ってました。 またあとでねって! |
凛 | そっか。二人にも感謝しなきゃ……。 |
未央 | ふっふっふ……見つけたみたいだね! しぶりんも!あの…… |
凛 | アイドルの星はもういいって。 ほら、次は未央のセンターステージでしょ。 スタンバイしなよ。 |
未央 | ちぇーっ。 んじゃ、いっちょ行きますかーっ! |