2ちゃんねるオカルト板「心霊ちょっといい話」のまとめwiki

147 1/4 2009/09/14(月) 03:33:00
私は地元の神社の雅楽会で龍笛(横笛)を吹いています。
そこの偉いさんのAさん(50代のおじさん)に先週聞いた話です。

Aさんの母校はある宗教系の高校で、雅楽部がありました。
そこで初めて雅楽を始めたそうです。
Aさんにはその雅楽部で仲が良かったBさんCさんという友人がいました。
Aさんは篳篥(ひちりき)、BさんCさんは龍笛担当でした。
AさんとBさんは器用で、与えられた課題を割とスラスラこなすタイプ、
Cさんはとっかかりは苦労するけれど、ものすごく努力する人で
結局は一番いい音を出すようになるタイプ。

ところが、1年生の終わり頃にCさんが事故で亡くなってしまいました。
当然ですが、残されたAさんとBさんは非常に悲しみました。
まだ若かった2人は、祖父母も健在で身近な人の死に接するのは
初めてだったのです。
それが毎日一緒に居た友達だったのですから、15歳の少年には酷な出来事です。
Cさんのお母さんが形見分けとして、楽譜をAさんに、龍笛をBさんに、
それぞれ届けてくれました。
2人はCさんを失った余りの悲しさに蓋をするように、お互いあえて彼の話を
避けるようになっていきました。

春休みの練習日、2人は学校の練習室の掃除当番で
他の部員より遅くまで残っていました。
掃除はテキトーに済ませ、ウダウダと喋ったり練習したりしていました。
すると、部屋の隅の方からコツコツと足音がしてきました。
思わずAさんは「Cか!?」と呼び、Bさんはボロボロと泣き出しました。
足音はしばらくグルグル歩き回り、やがて近づいてきました。
2人の前にあった椅子が微かにコトッと音を立てて静かになりました。
AさんとBさんは『越天樂』を吹き、心の中で「忘れてないよ」と声をかけました。
148 2/4 2009/09/14(月) 03:35:33
新学期、2人は2年生になり後輩が入ってきました。
その中に、優しくて面倒見のいいBさんになついてひっついてくるようになった
1年生がいました。
彼は外見こそ全く違ったけれど、性格や不器用で努力家なところが何となく
Cさんに似ていました。
しかも、下の名前がCさんと同じだったのです。
雅楽部では下の名前で呼び合う習慣があり、その後輩くんもCさんと同じ呼ばれ方でした。
3人でわいわいやっていると、同級生や先輩に「ちょっとドキッとするな」と
よく言われました。

卒業した先輩のパートの人数の関係で、若干パート変更することになりました。
Bさんは前々から興味を持っていた笙に転向しようかと迷い、Aさんたちに相談しました。
皆、異存はなかったのですが、Bさん自身はCさんの形見の龍笛のことを気にしていました。
誰も吹かないようになると寂しい気がすると・・・。
Aさんは「どうせ上達してきたらもっと良い笛が欲しくなるし、むしろいつまでも
入門用の笛ではいられないだろう」と言ったのですが、Bさんは何となくすっきりしない
様子でした。
その時、後輩Cくんが「僕に譲ってもらえませんか」と言い出しました。
Bさんは「とんでもない。俺が使わなくなったとしても形見を他の人に譲るなんて」と
言ったのですが、Aさんは「しまい込まれるのと、違う人でも吹いてくれるのが居るのと
どっちが喜ぶだろうか」と言いました。
確かめようがないまま数日過ぎて、後輩Cくんが「お墓参りに行ってお願いしてくるから
譲ってください」と言い、何となく3人でCさんのお墓参りに行くことになりました。
149 3/4 2009/09/14(月) 03:36:57
お花を供えて手を合わせてると、またコツコツと音がしてきました。
屋外なので、どこから聞こえてるかはよく分かりませんでしたが、小さな音だったから
すぐ近くで鳴っているように感じました。
後輩Cくんが「龍笛を僕にください。大事にしますから!」とお墓に向かって言いました。
コツコツ音はなり続けています。
Aさんは「Cが怒ってるのでは・・・」とちょっと怖くなってきました。
でも、Bさんが気づきました。
よく聞くと、コツコツ音は一定のリズムを刻んでいたのです。
コツコツとコツコツの間が少しあいていました。
コツコツ休みコツコツ休み・・・雅楽のリズムです。
雅楽は不思議な拍の取り方をします。
1・2〜ぃ・3・4〜ぃ・・・という感じです。
コツコツに合わせてCさんが龍笛を吹いてみたら、最後までコツコツ音も続いていました。
Cさんは「僕がもらっていいってことですか?」と聞き、AさんとBさんが「C!いいのか?」
と聞きましたが、うんもすんもコツも言いませんでした。
許しを得たと解釈し、その日からCさんの笛は後輩くんの物になりました。

そして今日、我が雅楽会に新メンバーが入ってきました。
神官さんが前に立ち、「先週Aさんから紹介があった○○Cさんです」と言いました。
Aさんはそのために先週私達に話を聞かせてくれたのです。
正直、三週聞いたときは冗談だと思っていました。
新メンバーCさんが「龍笛を吹いてます。やっと地元の本社に戻ってこれたので
これからお世話になります。宜しくお願いします」とペコリと頭を下げました。
ずっと転勤族だったそうです。
聞いていた通りの人懐っこい面白い人でした。
148 4/4 2009/09/14(月) 03:37:38
新Cさんは年季の入った笛袋を出し机の上に置いたのに、また別の袋から高価そうな笛を
取り出し吹いていました。
古いほうの笛を見せてくれて、「これねぇ、持ってないと調子悪いんだよ」と言っていました。
スランプのときには今でもそちらの古い方を使うそうです。
「Aさんだって楽譜持ち歩いてるんだぜ(笑)」と言い、その楽譜も見せてもらいました。
ものすごくボロボロになっていました。
雅楽の楽譜って、とても不親切なんです。
漢字とカタカナが縦にズラッと並んでるだけで、音を切るところも繰り返しも、
微妙につける音の変化も、何もかも自分で書き込まないといけません。
Aさんの楽譜には1年弱しか吹くことが出来なかったCさんの書き込みが
たくさんたくさん几帳面な字や記号で残されていました。

私は最初にこの話を聞いたときに感じた最大の疑問を新Cさんにぶつけてみました。
「どうしてそんなにその龍笛を欲しいと思ったんですか?」
新Cさんはあっけらかんと言いました。
「笛がもらってくれって言ってたから(笑)」と。
何の根拠もないけれど、本当にそうなんだろうなぁと思いました。
因みにBさんは遠方住みで、定年になれば戻ってきて入会してくれるそうです。
あと数年で、また仲良し4人組が一緒に吹けるようになります。

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