最終更新:ID:r+s1lcFiaQ 2009年09月11日(金) 11:16:38履歴
- 848 ◆wF1pnJN. 01/08/30 22:07
- A君という男の子が小学生の時に体験したというお話。
A君は明治時代からあるという古い旅館の子供だったんだ。
A君のお母さんの生まれ育った家でもあった。
つまり、A君のお父さんはお婿さんに来たんだね。
A君は、子供だったから、古い家は何だか怖かったんだって。
自分の家なのに。
それで、
A君は小学1年の時から自分の部屋を与えられて
両親とは別に寝るようになったんだけど、
夜、真っ暗になるのがどうしても怖くて
でも、暗いのが怖いというのが恥ずかしかったんで、
家にある古い大きな倉庫から、とっても古い電気スタンドを探してきて
それを自分の枕元に置いたんだ。
怖くなったら電気を付けられるように。
- 849 ◆wF1pnJN. 01/08/30 22:08
- ところが、ある晩、電気スタンドの灯りを付けて絵本を読んでいたら
何だか、女の子のささやくような声がしたんだって。
「・・・・うん、・・・・大丈夫・・・早く寝て・・・・」
とか、誰かと話しているような声だったんだ。
怖がりなはずのA君だったんだけと、不思議とその時は怖くなくて、
その後、何だか眠くなってきて、灯りを消して眠ったそうだよ。
それから、女の子の声は、毎晩のように聞こえたんだって。
不思議だったけど、A君は両親にもそのことを話さなかった。
電気スタンドを勝手に倉庫から持ってきたことがばれちゃうから。
毎晩、聞いているうちに、
女の子の声は、どうやらその女の子の母親と話をしているらしいことが分かった。
でも、聞こえるのは女の子の声ばかりで、
相手になっているはずの母親の声は全然聞こえなかった。
そのうち、A君はどうしてもその女の子と話をしてみたくなったんだ。
それで、ある晩、とうとう声をかけてみたんだって。
「こんばんは、君は誰?どこにいるの?」ってね。
そうしたら
女の子から、驚いたような声で、
「君の方こそ誰?声しか聞こえないよ?」という返事があったんだ。
しばらく、いろいろと話しているうちに
女の子の方も電気スタンドが枕元にあって
そこからA君の声が聞こえてきていることが分かったんだって。
それで
「僕のスタンドは家にあったすごく古い奴なんだけど・・・君のは?」
ってA君が聞いたら、
女の子の声は
「友達からもらったの。私が病気だから、仲のいい友達がプレゼントしてくれたんだ。」
って答えたんだって。
その女の子は入院中だった、そうなんだ。
- 850 ◆wF1pnJN. 01/08/30 22:09
- ところが
そうやって女の子の声とA君が話している最中に
突然にA君のお母さんが戸を開けて部屋に入ってきたんだって。
A君のお母さんは、
A君一人しかいない部屋から話し声が聞こえるのを不思議に思って
来てみたんだね。
A君は、あっ、怒られる、と思ったそうなんだけど、
お母さんは、枕元にある古い電気スタンドを見て、
困ったような、悲しいような、不思議な表情をして
A君に言ったんだって。
「倉庫から出してきたの?
このスタンドはね、お母さんの大切な思い出なの。
お母さんの子供の時の親友の形見なのよ。」
お母さんの話だと、
その電気スタンドは、
お母さんが小学生の時に
仲の良いお友達が何かの病気で入院してしまって、
その際にお見舞いかわりにあげたものなんだって。
でも、
そのお友達は入院中に急に亡くなってしまい、
お友達のお母さんから、形見分けとして返してもらったのが
その電気スタンドだったんだ。
もう寝なさい、と言ってA君のお母さんが部屋から出ていった後、
A君はもう一度、電気スタンドに向かって、話しかけた。
「君の言っていた友達って、今の女の人かい?」って。
でも
もう二度と、電気スタンドからは声はしなかった。
次の日の朝、お日様の下で、A君は電気スタンドの電球を割って壊したんだ。
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