kagemiya@ふたば

────────カルデアにて……


「な、何ィ！？　ハワイにてフォーリナー反応だとぉ！？」

カルデアの廊下にて、男の絶叫が響き渡った。

「（曖昧な表情で沈黙しているダヴィンチちゃん）」
「（誰だよこいつの耳にこの情報垂れ流したの、って顔のマリニー君）」
「こうしちゃあいられない……。行くぞマリニー！！　四本針の時計を回せ！」

そう叫びながら、ボロボロのコートを纏った三十路の男性は、
同じ年齢と思しき男の首根っこを掴んでカルデアの出口へと走っていく

「あっ、待ってタイタス！！　今の君がカルデアから出たら───────」
「ｱ」

言うや否や、カルデアから出た瞬間に男性は光の粒子になって消滅演出のSEと共に消滅した。

「タイタスーっ！！！！！」

天気のいい南極の山脈にて、四本針の時計を抱えた青年の叫び声が天に響いた。

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「タイタス……あいつは良い奴だったよ……」
「勝手に殺すなぁー！！」

ベッドに横たわったままに、先程消滅に聞きに瀕した男、
タイタス・クロウが憤怒の表情で叫ぶ。

「でも、本当に危険だったんだよ？　君はアザトースちゃんをフォーリナーから
ただ一人のロストにした代償として抑止の力と英霊としての霊基を失ったんだ。
本来なら、こうして人格を保っているだけでも奇跡なんだから」
「全くだ。こうして生きているだけでも儲けものなんだから、本当に無茶だけはしないでくれ」
「だがよぉ！！！」

ガタリ！とタイタスがベッドから起き上がり抗議する

「反応を見ただろう！？　フォーリナーだ！！
そしてこの胸の疼き……以前アーカムでニャル公に受けた傷が疼く！！
この邪悪と嘲笑の兆候、明らかに奴だ！　俺が出ないで誰が出るというんだ！！」
「いや、確かにそうだけれど…………。そうなんだけれどー…………」
「抑止の使者でもなくなった亡霊未満の君が、何かできるというのかい？」
「ふげぇー！」

言い返すことも出来ない正論をド直球にダ・ヴィンチにぶつけられ
どさーとタイタスは再びベッドに倒れ込む。

「ダ・ヴィンチ！　僕が言い淀んでいたことを！？」
「それに、君の代理としてならラバン君がいるじゃないか
彼はどうしたんだい？　ひょっとして多くのサーヴァントと同じく休暇？」
「「…………………。」」

タイタスとマリニーは互いに揃って、
曖昧な表情で沈黙をしてフリーズしてしまった

「えっ、何この雰囲気。なにがあったの」
「…………………。いや、実は………………」

ほわんほわんまろまろ〜


◆　　◇　　◆


「ああ？　蜂蜜酒だぁ？」
「ええ、そうよ！」

廊下で二人の男女が話す。片方は誰もが見とれる美しき美女。
そしてもう方や、明らかにその女性とは不釣り合いな、サングラスをかけた老人であった。

「あなたも持っているんでしょ？　黄金の蜂蜜酒！
ちょっと私の蜂蜜酒と、飲み比べをしたいと思って！！」
「ほぉー、かの女王メーブの蜂蜜酒……神代の酒を飲めるたぁ、光栄じゃねぇか
しかし大丈夫かい？　俺の蜂蜜酒は特別性だ。飲んでSANチェック起きても知らねぇぞ？」
「あら、私を誰だと思ってるの？　その程度で錯乱するほど精神は弱くないわ」
「おっと、そいつぁ失礼した」
「それに、私の蜂蜜酒も特別性だしね！」
「ハハッ！　そりゃあ楽しみだ。それじゃあ、一気に仰ぐとするかぁ！」

そう言ってサングラスの老人は、ガバァと通りすがりの女王から注いでもらった蜂蜜酒を、
迷う事もなく一気に口に含んだ。…………飲めば誰であろうと、彼女の虜に堕ちる蜂蜜酒を……

「（くくっ、また一人……。下僕は多いに越したことはないからね……）」


◆　　◇　　◆


「今頃、ハワイのビーチで『メイヴちゃんサイコー！』してるだろうよ」
「すまない。すんでの所で止められなかった僕のせいだ……」
「いやいや……マリニー君のせいじゃないさ」

ダヴィンチちゃんが苦笑いしながら、落ち込むマリニーを慰める。

「しかし、これマジでどうするんだよ……。ラバンの叔父貴がダメになった今、
俺が出るしかねぇじゃねぇかしょうがねぇなぁー俺しかニャル公に対抗できねぇかー」
「本音は？」
「他人の金でハワイ行きてぇ」
「安静に寝ていなさい」
「やだー！！」

ベッドでじたばたと暴れるタイタスを、
筋力Eの二人が同時に押さえつける。

「ほら見ろ。筋力Eの私達ですら取り押さえられる君が、
邪神相手に何ができるというんだいホントに！」
「やーだー！！　俺が出なくて誰がでるってーのー！！」
「うぅん……。せめて僕みたいに、幻霊で補強できれば……」
「それは無理だ。幻霊ならば互いの霊基の穴を埋める事は出来るけれど
今のタイタスは亡霊未満の存在だ。ただの幻霊ですら食われて消滅してしまう」
「うぅむ……」
「せめて、彼の霊基に非常に同調する英霊、あるいは幻霊がいれば……
多分、外出と戦闘が可能なまでに霊基は安定するんだろうけれど」
「タイタスに同調……？　そんな、近代のタイタスに同調できる英霊が他にいる訳が」

ウィーン、と自動ドアが開く音が響く。

「やっほーダビンチちゃん！　ティタニアがどうしてもハワイに行きたいって言うのでぇー！
私もちょっとタイタスの代わりに夫婦バカンスに行って……げぇええ！？　男の私！？」
「「いた」」


◆


「待って！　待って！！？
なんで私縛られてコフィンに入れられてるの！！？」
「落ち着け女の俺。これは人理の為にしょうがない事なんだ」

ぎっちぎちに詰め込まれたコフィンの中で少女が叫ぶ
その隣には、同じくぎっちぎちに詰め込まれた男が少女を諭していた。

「やだ！　一緒に入ってこないでよ気持ち悪い！！　ティタニア助けて！！」
「うぅーん……これで霊基融合できるとは思わないけど、失敗したら今度こそ消滅だよ君？」
「構わんやってくれダ・ヴィンチ」

そう言われて万能の天才が、うぅーんと眉をひそめながらも、
レイシフトのボタンをぽちりと押した。座標は当然、現代のハワイである。

「というか、レイシフトして良いんだっけこれ」
「きんきゅーじたいきんきゅーじたい。んじゃあ、留守番頼んだぜマリニー！」
「タイタス！！　私もいっしょに行く！　二人だけじゃ心配だもん！！」
「えっ」

ばっ！！とエメラルド色の髪の少女が飛び出し、
そしてガバ！！とコフィンの蓋を開き、狭いコフィンの中身がさらに狭くなった。


「待て待て待て三人はきつい！
待ってくれダ・ヴィンチ装置を止め！
ちょ、あああああああああああ！！！」


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