最終更新:ID:Xu2xplwGIQ 2019年02月07日(木) 07:40:08履歴
……私は、自分が強いと思ったことはない。
優れているとも、賢いとも、獣として秀でているとも思わない。
名前もないただの猫として生を受けて、その生を全うするはずだったんだ。
けど、私の元に現れたご主人様は、私よりも一層弱くて、劣っていて、情けない人だった。
だから、少しでも勝っている私が助けてあげなければ、と思ったんだ。
私は何も持っていない。才能も、天性の肉体も、神からの寵愛も。
……何も持たざる者だからこそ、私は無いものをひねり出した。
それからだ。私は、ただ相手の気持ちを探って包み込む狡猾さを手に入れた。
決して威張れるものではない。きっと、人から見ればとても惨めで、卑怯な手段に映るだろう。
でも、仕方ない。これ以外に何が出来る?何も持たない者が誰かを救うには、“これしか無い”んだ。
話術。詐術。偽装。煽動。使える手段は何だって使った。
そして私は……私達は、凡人じゃ命を懸けても手に入れられないような、巨万の富と地位を得た。
――――――――生命が持つ、最も尊いものを犠牲にして。
…………だから、次のご主人様の前では、素直でいようと思ったんだ。
次のご主人も、前のご主人様のように弱くて、才能も持たず、戦うすべを持たない人だったけど。
それでも、その心には何よりも尊い―――私には、もう無い―――ものを持っていた。
そんなご主人を私は信じた。今度は私が導くのではなく、私がご主人に付いてくのだ、と。
竜の魔女を倒した。破壊の大王を押し返した。四つの海を超えた。霧の街を晴らした。大陸を駆け抜けた。
女神と相見えた。原初の母を見た。最大の犯罪を解き明かした。幻想を守った。狂気の街を開放した。
―――――――――――この世界を、救った。
何も持っていない人だったけど、それでもご主人は戦い抜いて、自分の役目を果たしてみせた。
もし、私があの日……尊いものを、失っていなければ。
もっと胸を張って、誇り高く…………彼の側に、在り続けられたのに。
ご主人はきっと、私がいなくても成し遂げられただろう。こんな、嘘に塗れた私がいなくても。
……お別れの日。私はいつものように張り付いた笑顔を残し、慣れ親しんだカルデアを離れた。
ああ。初めて、涙が枯れていたことを喜んだ。嘘泣きでしか泣けない身体でよかった。
…………あの人の心を曇らせずに済んで、よかった。
三度、私は目が覚めた。
慣れ親しんだ場所……いや、見た目は似ているけれど、見知らぬ場所で。
こんな時……何が起こったのかを察してしまう、妙に冴えたこの頭に嫌気が差す。
ふと見れば、ご主人がこちらを見ていた。やつれた表情、微かに翳るその気配。
―――――心が軋む音がした。彼の心にあるのは錆色の光。私が尊いと思ったそれは、もう。
……そうか。なら、私は役目を果たすとしよう。何、このような役回りには慣れている。
全てを失い、希望を無くし、喚び出された者に絶望した男の顔を知っている。そんな男の導き方を知っている。
初めはご主人様の手を引いて、次はご主人に手を引かれた。ならば、その次は―――――――
「もうっ、辛気臭い顔ですねえご主人?再召喚で喚び出されたサーヴァントが私で、またがっかりしてるんですかぁ?
安心してくださいよご主人っ!貴方が喚び出したものが、そんなに悪いものではないってこと……もう一度教えてあげますからっ!」
――――――――――手を繋ぎ、共に行こう。もう、その光に負い目を感じることはない。
……久し振りじゃない、マスター?
一度は追い出しておきながら、また喚び出してくるなんて……質の悪い男みたいよ?
まあいいわ。概ね事情は把握しているもの。こーんな騎士の屑にも頼らなければならないほど、人出が足りてないんでしょう?
あら?その顔……随分驚いた顔してるわね。
ああ、そう。そういう事……どこかで少し因果がねじれちゃったのかしら。
それとも、貴方が喚び出していた“私”は……何か外せない用事があったのかも知れないわね?
マスターちゃんの危機に馳せ参じる事よりも優先すべきことがあるなんて、騎士の風上にも置けないわねえ。
……或いは。この漂白された地球の何処かで、既に“喚び出されている”のか。まあ、そんな事は私には関係ないけど。
改めて―――――セイバー、ベイリン。召喚に応じ、参上したわ。
いつものように、気兼ねなく……“あの男”にそうしていたように、主として命令を下しなさいな。
まあ、私がやれることなんて唯一つしか無いけど。その分、その“一つ”に関しては、抜かり無くやり遂げてあげる。
どんな世界だろうと、どんな場所だろうと、やることなんて決まってるわ。
―――――――暴れて、暴れて、戦いまくる。ただ、それだけよ。
一度は追い出しておきながら、また喚び出してくるなんて……質の悪い男みたいよ?
まあいいわ。概ね事情は把握しているもの。こーんな騎士の屑にも頼らなければならないほど、人出が足りてないんでしょう?
あら?その顔……随分驚いた顔してるわね。
ああ、そう。そういう事……どこかで少し因果がねじれちゃったのかしら。
それとも、貴方が喚び出していた“私”は……何か外せない用事があったのかも知れないわね?
マスターちゃんの危機に馳せ参じる事よりも優先すべきことがあるなんて、騎士の風上にも置けないわねえ。
……或いは。この漂白された地球の何処かで、既に“喚び出されている”のか。まあ、そんな事は私には関係ないけど。
改めて―――――セイバー、ベイリン。召喚に応じ、参上したわ。
いつものように、気兼ねなく……“あの男”にそうしていたように、主として命令を下しなさいな。
まあ、私がやれることなんて唯一つしか無いけど。その分、その“一つ”に関しては、抜かり無くやり遂げてあげる。
どんな世界だろうと、どんな場所だろうと、やることなんて決まってるわ。
―――――――暴れて、暴れて、戦いまくる。ただ、それだけよ。
我が可能性(グリムリーパ)より、死を知った
我が可能性(ガグンラーズ)より叡智を知った
──剪定事象(かのうせい)より絶望を知った
絶望の畔、閉じた世界、人は其を剪定と呼ぶ
何という傲慢だろうか、何という酷だろうか
たかが歴史に強弱をつけるなど、くだらない
だが其すらも私は愛す。私は全て愛している
だが、此度に於いて私は初めて、他者に対し
愛ではなく怒りを覚えたと言えるのだろうな
異星の神風情が、誰の許しを得て我が北欧の大地に根を張っている?
誰の許しを得て、我が同胞たるスカディに、希望を抱かせ其を奪う?
我が愛は破壊の情、なれば此の迸る我が怒りは何を顕すのだろうか?
叡智を得たこの身でさえも、その問いに答えはない。理由は明快な事
我が身は神に値せず。所詮我が身は他我なる分霊、嵐の夜の顕現なり
さぁ我が槍を使え、我がマスターよ。我が総軍を使え、我が協力者よ
この身は神に非ず。ならば我が身を縛る条理さえ無し。我が槍はただ
怒りのままに、貴様の命令と共に振るわれるだろう。振るうのは私だ
行使するのも私だ。されど命令するのは、貴様だ。その覚悟があると
いうならば、このヘルファズル。貴様の怒りを代行する黄昏となろう
我が可能性(ガグンラーズ)より叡智を知った
──剪定事象(かのうせい)より絶望を知った
絶望の畔、閉じた世界、人は其を剪定と呼ぶ
何という傲慢だろうか、何という酷だろうか
たかが歴史に強弱をつけるなど、くだらない
だが其すらも私は愛す。私は全て愛している
だが、此度に於いて私は初めて、他者に対し
愛ではなく怒りを覚えたと言えるのだろうな
異星の神風情が、誰の許しを得て我が北欧の大地に根を張っている?
誰の許しを得て、我が同胞たるスカディに、希望を抱かせ其を奪う?
我が愛は破壊の情、なれば此の迸る我が怒りは何を顕すのだろうか?
叡智を得たこの身でさえも、その問いに答えはない。理由は明快な事
我が身は神に値せず。所詮我が身は他我なる分霊、嵐の夜の顕現なり
さぁ我が槍を使え、我がマスターよ。我が総軍を使え、我が協力者よ
この身は神に非ず。ならば我が身を縛る条理さえ無し。我が槍はただ
怒りのままに、貴様の命令と共に振るわれるだろう。振るうのは私だ
行使するのも私だ。されど命令するのは、貴様だ。その覚悟があると
いうならば、このヘルファズル。貴様の怒りを代行する黄昏となろう
―――いい子の諸君!!待たせたな!!隻腕のベディヴィエール華麗にさん……何ィ!?
なんかその……結構なんかいたぞ!誰だアイツら!?味方?あっそう……
うん、まぁ味方ならいいや。
なんか一番槍どころか三番槍ぐらい出遅れた感あるがそこは許してくれ、ちょっとマーリン野郎と口にも出したくないクソ魔女をシバくのに忙しくてな……
あー、うむ。私とて年がら年中アホで通せるわけではない。わかってるよ。お前達に、これまで何があったか。
まぁ、何ともスケールの大きな話だな?急に世界が一変して、マスターたちが巻き込まれて……
……そうだな、失ったか。色々と。
―――率直に言おう、マスター。最近溜め込んでいないか?
いや、思春期の熱い何かじゃなくてだな……これまで背負ってきたもの、背負わされてきたものだ。
重いと感じたことは無いか?お前は人が良いからな。不平を言ったり、泣き言を言ったら迷惑だとでも思ってるんだろう。
だが、お前は荷を背負っていつまで歩ける?荷を下ろさず、脚を止めず、飲まず食わずで歩ける距離なんてたかが知れているだろう?
あるいは、早々に力尽きて、十分頑張った風に相棒にでも押し付けるのがお前の望みなのか。
……すまん、意地悪だったな。あまり、今のお前を見ていられなかったから……いや、言い訳はやめておこう。
ともあれ、この場で一度荷を下ろすがいい。遅刻したボンクラ騎士だが、今ならお前に胸の一つぐらい貸してやれるからな。ほら、来い。
――――――いいんだ、涙は止めなくていい。全て流し終えたら、再び幕を開こう。お前がもう一度立ち上がれるように。
なんかその……結構なんかいたぞ!誰だアイツら!?味方?あっそう……
うん、まぁ味方ならいいや。
なんか一番槍どころか三番槍ぐらい出遅れた感あるがそこは許してくれ、ちょっとマーリン野郎と口にも出したくないクソ魔女をシバくのに忙しくてな……
あー、うむ。私とて年がら年中アホで通せるわけではない。わかってるよ。お前達に、これまで何があったか。
まぁ、何ともスケールの大きな話だな?急に世界が一変して、マスターたちが巻き込まれて……
……そうだな、失ったか。色々と。
―――率直に言おう、マスター。最近溜め込んでいないか?
いや、思春期の熱い何かじゃなくてだな……これまで背負ってきたもの、背負わされてきたものだ。
重いと感じたことは無いか?お前は人が良いからな。不平を言ったり、泣き言を言ったら迷惑だとでも思ってるんだろう。
だが、お前は荷を背負っていつまで歩ける?荷を下ろさず、脚を止めず、飲まず食わずで歩ける距離なんてたかが知れているだろう?
あるいは、早々に力尽きて、十分頑張った風に相棒にでも押し付けるのがお前の望みなのか。
……すまん、意地悪だったな。あまり、今のお前を見ていられなかったから……いや、言い訳はやめておこう。
ともあれ、この場で一度荷を下ろすがいい。遅刻したボンクラ騎士だが、今ならお前に胸の一つぐらい貸してやれるからな。ほら、来い。
――――――いいんだ、涙は止めなくていい。全て流し終えたら、再び幕を開こう。お前がもう一度立ち上がれるように。
すぅ……はぁー……召喚されて早々私は呼吸を整えていた。
気分は悪くない、というかあの人の悪意にクソを加えてドブと欲望で煮詰めた泥寧の新宿に比べれば、真新しい建材と神代のカビ臭い匂いの残るこの場所でさえ天国だ。
……そう、気分は悪くないが機嫌は悪い。
クリプター? 異星の神? 空想樹?
カルデア襲撃と壊滅、それを傍観していた神の一柱であるオリジナルの私も、抑止力の手先となった私も、良くはないが、まぁいい。それぞれ事情があるのは分かる、我慢は出来る。
一番気に入らないのは、一番腹が立っているのは、泥寧の新宿を解決した程度でなにやら満足し、後はマスターとマシュだけで大丈夫だと全てを任せ退した自身に、だ。
まぁ、いつまでも腹を立てていても仕方ない。
自身の憤怒に一先ずのケリを付け――この胸の怒りは後で異聞帯とクリプターの連中にぶつけさせてもらうとしよう――、数が少なくなった懐かしい顔と見慣れぬ新顔を改めて見回す。
よりにもよって生き延びていたか、ムニエル。 相変わらず見かけ通り無駄にしぶとい奴だ。
大分縮んだな、ダ・ヴィンチ。 ああ、分かっている、貴方が貴方でないことは。
珍しく病み上がりか、探偵? 貴様がハッパをキメながら安楽椅子に座っていられないとは余程の事態だな。
それに、久しぶりだな、マスター、マシュ……ああ、再会の挨拶は少し待ってくれ。
泥新宿第二のランサー、竜狩り。
召喚に応じて再び参上した、三度お前たちの槍として槍を振るおう。
うん、やはりこれを言わなければ決まらないだろう?
任せるが良い、マスター。 竜であれば異聞帯であろうと神であろうと殺して見せる。
気分は悪くない、というかあの人の悪意にクソを加えてドブと欲望で煮詰めた泥寧の新宿に比べれば、真新しい建材と神代のカビ臭い匂いの残るこの場所でさえ天国だ。
……そう、気分は悪くないが機嫌は悪い。
クリプター? 異星の神? 空想樹?
カルデア襲撃と壊滅、それを傍観していた神の一柱であるオリジナルの私も、抑止力の手先となった私も、良くはないが、まぁいい。それぞれ事情があるのは分かる、我慢は出来る。
一番気に入らないのは、一番腹が立っているのは、泥寧の新宿を解決した程度でなにやら満足し、後はマスターとマシュだけで大丈夫だと全てを任せ退した自身に、だ。
まぁ、いつまでも腹を立てていても仕方ない。
自身の憤怒に一先ずのケリを付け――この胸の怒りは後で異聞帯とクリプターの連中にぶつけさせてもらうとしよう――、数が少なくなった懐かしい顔と見慣れぬ新顔を改めて見回す。
よりにもよって生き延びていたか、ムニエル。 相変わらず見かけ通り無駄にしぶとい奴だ。
大分縮んだな、ダ・ヴィンチ。 ああ、分かっている、貴方が貴方でないことは。
珍しく病み上がりか、探偵? 貴様がハッパをキメながら安楽椅子に座っていられないとは余程の事態だな。
それに、久しぶりだな、マスター、マシュ……ああ、再会の挨拶は少し待ってくれ。
泥新宿第二のランサー、竜狩り。
召喚に応じて再び参上した、三度お前たちの槍として槍を振るおう。
うん、やはりこれを言わなければ決まらないだろう?
任せるが良い、マスター。 竜であれば異聞帯であろうと神であろうと殺して見せる。
私はアーチャー、カリスト。穢れなき純潔の狩人にして、女神アルテミスへと仕える者―――――
……と、格好つけてみたはいいものの、貴方は既に……獣である私を知っているんでしたね。
カルデアでの私は、泥に侵され性質が反転した。結果として、バーサーカー……オルタとして登録されていました。
そんな私が今こうして、再び純潔を守っていた頃の姿で召喚されるというのは……少し、気恥ずかしいのですが
それでも、一度は貴方に仕えた身。泥に蝕まれ、獣に堕ちて尚信じてくれた貴方を救うためならば……この身を捧げる覚悟です。
星が漂白されようとも。人理が漂白されようとも。私という存在は、常にあの北天に在り続けます。
そして、貴方が道に迷い……目的を見失っているというのならば。貴方の手を取り、共に歩み続けましょう。
嘗て、道を違えた私の手を取り、歩んでくれた貴方のように……今度は私が、貴方を導く標となるのです。
さぁ、行きましょうマスター。我が愛しの主。
一度世界を救った貴方なのです――――この私がいれば、世界をもう一度救うことくらい、造作もありませんよ。
……と、格好つけてみたはいいものの、貴方は既に……獣である私を知っているんでしたね。
カルデアでの私は、泥に侵され性質が反転した。結果として、バーサーカー……オルタとして登録されていました。
そんな私が今こうして、再び純潔を守っていた頃の姿で召喚されるというのは……少し、気恥ずかしいのですが
それでも、一度は貴方に仕えた身。泥に蝕まれ、獣に堕ちて尚信じてくれた貴方を救うためならば……この身を捧げる覚悟です。
星が漂白されようとも。人理が漂白されようとも。私という存在は、常にあの北天に在り続けます。
そして、貴方が道に迷い……目的を見失っているというのならば。貴方の手を取り、共に歩み続けましょう。
嘗て、道を違えた私の手を取り、歩んでくれた貴方のように……今度は私が、貴方を導く標となるのです。
さぁ、行きましょうマスター。我が愛しの主。
一度世界を救った貴方なのです――――この私がいれば、世界をもう一度救うことくらい、造作もありませんよ。
なんだ貴方たちですか。新宿以来でしょうねぇ。私、召喚された覚えは欠片もありませんもの。
出逢っていたとすれば、それは他の私。こちらの私は何かの拍子にタイプされた誤謬のような存在。
再召喚、でしたっけ。この身体は所詮その過程で滴り落ちた数滴のインクの染みに過ぎません。
まだわかりませんか? はぁ、鈍い。言語化しましょう。私は貴方達に力を貸す義理も、価値も、持ち合わせていない。
理解しました? 理解したなら速やかに私をカオスの海に還し、本来召喚されるべき私を召喚すると良いでしょう。
……チッ、意地でも還さない気ですか。傲慢。それは優しさではない。私は認めない。
いいでしょう。寝首を掻かれる覚悟があるならご自由に。泡沫の夢に力を貸しましょう。
されど貴方の知る私と違い、疾走する我が身は恩讐に硝る躯を虚無に捧ぐ無意味の無為身。
決して怒りを使役できると思い上がらないでくださいまし。私、アヴェンジャーではありませんので。
それでは。ロスト、ベアトリーチェ・ポルティナーリ。偶然と気紛れに従い召喚に応じましょう。
────問おう。かつて、泥濘の新宿で私を滅ぼした者どもよ。貴方が私のマスターですか?
出逢っていたとすれば、それは他の私。こちらの私は何かの拍子にタイプされた誤謬のような存在。
再召喚、でしたっけ。この身体は所詮その過程で滴り落ちた数滴のインクの染みに過ぎません。
まだわかりませんか? はぁ、鈍い。言語化しましょう。私は貴方達に力を貸す義理も、価値も、持ち合わせていない。
理解しました? 理解したなら速やかに私をカオスの海に還し、本来召喚されるべき私を召喚すると良いでしょう。
……チッ、意地でも還さない気ですか。傲慢。それは優しさではない。私は認めない。
いいでしょう。寝首を掻かれる覚悟があるならご自由に。泡沫の夢に力を貸しましょう。
されど貴方の知る私と違い、疾走する我が身は恩讐に硝る躯を虚無に捧ぐ無意味の無為身。
決して怒りを使役できると思い上がらないでくださいまし。私、アヴェンジャーではありませんので。
それでは。ロスト、ベアトリーチェ・ポルティナーリ。偶然と気紛れに従い召喚に応じましょう。
────問おう。かつて、泥濘の新宿で私を滅ぼした者どもよ。貴方が私のマスターですか?
「ひどい顔をしていますね。人間」
「罪悪感と喪失感と焦燥感で疲れ切った。ええ、見るに堪え難い顔ですとも」
「かつて泥新宿で滅び を退けたあなたはどこに行ったのです?」
ええ。分かっていますとも。既に情報は得ています。
取り戻したはずの人理は異星の神によって真っ白に漂白され、
生命は全て抹消され。異聞帯なる敗北の歴史による侵略を受けていると。
「ふん。全く無様ですね。一度失った未来を取り戻し、
訪れた滅びの前兆を退けておきながら、あっさりと滅ぼされるなど」
「ビッグ・ファイヴ、言い方言い方」
そして、滅ぼされておきながら、侵略されておきながら。
敗北した歴史の――異聞帯を切除することに罪悪感を覚えているなど。
その優しさは見上げたものですが。こと生存競争においては悪癖でしょうに。
……そのザマでは私が滅ぼすまでもなく、異聞に滅ぼされるまでもなく、自滅するでしょうよ。
「……ですが。その優し さ、嫌いではありません」
そして何より。
「敗北しておきながら、勝手に敗者復活戦を始める異聞帯も。
余所者でありながら、地球の尊い生命に手を出す異星の神どもも。
赦せませんね。地球生命を愛する私ですが、余所者と横紙破りだけは憎たらしいのです」
一時的とはいえ、夏の思い出とはいえ、敵対者で滅びそのものであった私を受け入れてくれたあなたに、
そんな顔をさせた奴らを赦せるはずがないでしょう――とは、口に出さない。
私は滅び。大量絶滅。一個人に肩入れする台詞を吐くわけにはいかない。
「……素直じゃありませんね、ファイヴは。まぁ、それを代わりに口にするほど私も無粋じゃないですけどね?」
「安心しなさい。利害の一致です。
この私、大量絶滅があなたたちの敵を悉く滅ぼして見せましょう」
「ええ。私たちに任せて頂戴。この全てが滅んだ世界にも、もしかしたら生命の残滓 があるかもしれないもの。
……そして、どこかに残っているなら必ず見つけ出せる」
「絶滅そのものである私と、絶滅を証明した私がいるんですもの。これでもう負ける要素はありません――なんて。
こんな格好 で言っても締まらないか」
「……ともかく。異聞帯を滅ぼすまでは、一時的に手を組みましょう。
勘違いしないでください。私は人間達の仲間になったわけではありません」
「ただ、地球という星の生存競争に――異星の神 が手を出すのが許せなかっただけです」
「異星生物までならともかく、全てを滅ぼす神は許容できませんとも!」
「ええ! つまり! 協力するのは今回限りだということを肝に銘じておきなさい、人間!」
「罪悪感と喪失感と焦燥感で疲れ切った。ええ、見るに堪え難い顔ですとも」
「かつて泥新宿で
ええ。分かっていますとも。既に情報は得ています。
取り戻したはずの人理は異星の神によって真っ白に漂白され、
生命は全て抹消され。異聞帯なる敗北の歴史による侵略を受けていると。
「ふん。全く無様ですね。一度失った未来を取り戻し、
訪れた滅びの前兆を退けておきながら、あっさりと滅ぼされるなど」
「ビッグ・ファイヴ、言い方言い方」
そして、滅ぼされておきながら、侵略されておきながら。
敗北した歴史の――異聞帯を切除することに罪悪感を覚えているなど。
その優しさは見上げたものですが。こと生存競争においては悪癖でしょうに。
……そのザマでは私が滅ぼすまでもなく、異聞に滅ぼされるまでもなく、自滅するでしょうよ。
「……ですが。その
そして何より。
「敗北しておきながら、勝手に敗者復活戦を始める異聞帯も。
余所者でありながら、地球の尊い生命に手を出す異星の神どもも。
赦せませんね。地球生命を愛する私ですが、余所者と横紙破りだけは憎たらしいのです」
一時的とはいえ、夏の思い出とはいえ、敵対者で滅びそのものであった私を受け入れてくれたあなたに、
そんな顔をさせた奴らを赦せるはずがないでしょう――とは、口に出さない。
私は滅び。大量絶滅。一個人に肩入れする台詞を吐くわけにはいかない。
「……素直じゃありませんね、ファイヴは。まぁ、それを代わりに口にするほど私も無粋じゃないですけどね?」
「安心しなさい。利害の一致です。
この私、大量絶滅があなたたちの敵を悉く滅ぼして見せましょう」
「ええ。私たちに任せて頂戴。この全てが滅んだ世界にも、もしかしたら
……そして、どこかに残っているなら必ず見つけ出せる」
「絶滅そのものである私と、絶滅を証明した私がいるんですもの。これでもう負ける要素はありません――なんて。
「……ともかく。異聞帯を滅ぼすまでは、一時的に手を組みましょう。
勘違いしないでください。私は人間達の仲間になったわけではありません」
「ただ、地球という星の生存競争に――
「異星生物までならともかく、全てを滅ぼす神は許容できませんとも!」
「ええ! つまり! 協力するのは今回限りだということを肝に銘じておきなさい、人間!」
あら、しばらく見ない内に随分と良い顔になったわね。まるで世界を滅ぼしてきた後みたいよ。
あらあら、睨まなくっても大丈夫よ……私は復讐者ですもの、事情を知らなくても目を見れば分かるわ。
あぁ、けど…… まだ折れていないのね。必死に取り戻そうとしているのね。そう、そうなの……。
本当に……腹が立つ位に良い顔をするようになったわ、あなた。気に入ったわ、復讐する のは最後にしてあげる。
えぇそうよ、あなたは最後。今はまだ復讐しないであげるわ、だって……。
だって、先に復讐しなきゃならない相手が出来ちゃったのだもの。奇遇にも、相手はあなたと同じ相手。
私より先にあの国を滅ぼすなんて……それも良く分からない復讐以外の理由でまっさらに消し去ってしまうなんて、許せないでしょう?
だったら、復讐するしかないじゃない。私は復讐機械 なのだもの……ねぇ?
えぇ、じゃあ今後ともよろしくお願いするわね、ジャパニーズ。いえ…汎人類史の復讐者 さん。
………………
自分の国の事は良いのか?
そうねぇ、まだしぶとく生き残ってる所もあるみたいだし、それが無くなったら考えるわ。
あらあら、睨まなくっても大丈夫よ……私は復讐者ですもの、事情を知らなくても目を見れば分かるわ。
あぁ、けど…… まだ折れていないのね。必死に取り戻そうとしているのね。そう、そうなの……。
本当に……腹が立つ位に良い顔をするようになったわ、あなた。気に入ったわ、
えぇそうよ、あなたは最後。今はまだ復讐しないであげるわ、だって……。
だって、先に復讐しなきゃならない相手が出来ちゃったのだもの。奇遇にも、相手はあなたと同じ相手。
私より先にあの国を滅ぼすなんて……それも良く分からない復讐以外の理由でまっさらに消し去ってしまうなんて、許せないでしょう?
だったら、復讐するしかないじゃない。私は
えぇ、じゃあ今後ともよろしくお願いするわね、ジャパニーズ。いえ…汎人類史の
………………
自分の国の事は良いのか?
そうねぇ、まだしぶとく生き残ってる所もあるみたいだし、それが無くなったら考えるわ。
コメントをかく