時の旅人


表紙のフォンテーヌ文字は「mi」から始まる文章?文字が潰れてしまっているため詳細不明

◆第1巻(時の旅人・第一巻)

スチームバード新聞から出版されているフォンテーヌのSF小説。とあるエンジニアがタイムマシンを利用して旅をする物語。
あれはもう、何年も前のことだ。晩餐会の後、マドモワゼル・アイヴィア(今はネノネ夫人と言うべきか)が、いつも通りの芝居がかった口調で「現代科学の急速すぎる発展について」を我々に嘆いた。彼女は工学に関しては、海祇島の土壌の質ほどの知識もなかった(もちろん、彼女はその土壌についてもほとんど知らないのだが)。当時は、一部の紳士淑女の間で「工学に興味を示す」ことが流行っていたのだ。

「数千年前、私たちの祖先は既に、この大地を支配していたんです…」彼女は咳払いをし、孔雀の尾羽と蒼晶石の飾られた華麗な扇子を振り、哀愁の帯びた表情を作りながらこう言った。「数百年前、彼らは新しい潜水装備であっさりと海に進出しました。そして今、高貴な紳士淑女たちは大地の束縛を破り、『重力機械』を用いて、空を征服しようという奇想天外な発想を抱いていらっしゃる――そしてそれも、近い将来に実現することでしょう。」

「素晴らしい!おっしゃる通りだ。人類というのは――何と強く精力的な知的生命体なのだ!如何なる時代も、彼らは想像を絶する情熱によって、自分たちを取り巻く環境を変えてきた。」スチームバード新聞社の編集者がすぐに反応した。「実際、機械工学と理論的な観点だけを見ると――他の要素をひとまず無視すればの話だが――人類は造物主に匹敵する立ち位置にいる。彼らは自らの知恵により自然界の大部分を征服し、強い意志によって、この世界の姿を再構築できるからだ。」

「ああ、そういう意味じゃないんです…」マドモワゼル・アイヴィアは大げさにため息をついた。「遥かな未知の暗黒大陸や海底に眠る古代遺跡――そういったロマンチックな探検と開拓、私たちの科学技術と理性の栄光である偉業が、今の文明には影も形も見当たらない。我々の先祖は驚くべきことをたくさん成し遂げたけれど、探検や征服をする余地を残してくれなかった。未知の探検を愛する心を持って生まれた紳士淑女の方々にとって、これ以上苦痛なことがないのではなくて?」

彼女は伝説の国王アルゲアデスの言葉を大仰に引用し、その思いに心を痛めているかのように振る舞った。しかし、会場にいた人々は誰もがただものぐさに座っており、せいぜい礼儀正しく頷く程度だった。エルエ夫人は静かに欠伸をした。

それから誰も発言しなかったので、マドモワゼル・アイヴィアは興ざめし、話題を翌週の舞踏会に変えた。この話題は明らかに歓迎され、固まっていた雰囲気が再び賑やかになった。ラーターラ勲功爵がスメールで聞いた高塔、魔法使い、ガラス玉の伝説を話そうとした時、ずっと黙っていたクリーク氏が発言を遮って言った。

「マドモワゼル・アイヴィア、今印象深いことを仰いましたね…」彼は煙草に火をつけた。「だが、心配ない。この世には人類が征服していない空間――そして必要な技術が現れない限り、永遠に征服されることのない空間がある。」

「どこだ?」勲功爵は怒りの表情で尋ねた。彼はさっきの猿の話に相当自信があったのだ。

「時間だ。」

会場は一瞬で静まり返り、次の瞬間には全員が腹を抱えて笑い出した。

「なんと荒唐無稽な!」ライアイラ医師は笑いを必死に堪えながら言った。「そもそも、時間が空間の一部であるわけがないだろ?」

「あなたは時間から切り離され、空間に独立して存在できるかな?」

「どういう意味で?」

「この瞬間、あなたはここで私と話しているが、次の瞬間――すっかり消え失せてしまう、そんなことはありうるのだろうか?」彼は他の人に考える時間を与えたかのように、しばらく黙り込んだ後、こう言った。「そう。合理的な思考を持つ方なら誰でも分かるはず。長さ、幅、高さと同じように、時間も空間に属する次元の一つだ。だから、時間も空間の一部として――征服することができる。」

「理屈になっていない…」医師は小声で呟いたが、それ以上反論しなかった。

「私がこの研究に携わってからもう長い。」彼は言葉を続けた。「時間を自由に行き来できる機械を考案したのだ。それがあと二ヶ月ほどで完成する。その時にはマドモワゼル・アイヴィア、あなたとこちらの紳士淑女の皆さんを工房にお招きし、共に人類の新たな偉業――時間の征服を見届けましょう。」

マドモワゼル・アイヴィアは黙っていた。その表情を見るに、高貴な身分のこのお方が、クリーク氏の言葉を理解していないことは明らかだった。

◆第2巻(時の旅人・第二巻)

スチームバード新聞から出版されているフォンテーヌのSF小説。とあるエンジニアがタイムマシンを利用して旅をする物語。
二ヶ月後、私たち数人――スチームバード新聞社の編集者、医師、レヴェーロ・ローヴェレ氏、それにあの日の晩餐会にいた数人が、約束通りクリークの工房に足を運んだ。マドモワゼル・アイヴィアは来なかった。彼女はこのような事より、サロン・カリタの舞踏会の方によほど興味を感じていた。

驚くことに、二ヶ月前と比べてクリークは明らかに老け込み、やつれていた。薄暗い明かりの下、情熱的で傲慢だった顔には、冷淡で厳かな表情が張り付き、まるでスメールの干からびた苦行僧のようだった。

彼は静かな口調で、私たちに座るよう勧めた。

「で、時間の征服に向けた計画の進展はどうだい?」スチームバード新聞社の編集者は率直に聞いた。「『タイムマシン』とやらはどこにある?」

クリークは返事をしなかった。代わりに、傍らにある机を指差した。私たちがその方向を見ると、机の中央に、金メッキの鯨型飛行艇模型が置かれていた。それは小型の時計ぐらいの大きさで、素人でも一目瞭然なほどよく出来ている。澄んだ水晶の筐体の中を、何とも形容し難い不定形の色がゆっくりと流れ、照明が作る影の中でキラキラと光を放っている。

「つまり…」医師は言った。「あなたは二ヶ月かけて、ルポートの職人が驚きそうな玩具を作ったってわけか。」

「確かに一見すると何の変哲もないが…」クリークがちらりと彼に向けた視線には、私には形容し難い感情が籠もっていた。憐憫と言うのだろうか。「これはこの瞬間に投影されたものに過ぎない。紙切れを横から見れば、細い線にしか見えないのと同じように。」

「馬鹿げてる。」

なぜか、クリークは反論せず、静かな口ぶりで、「時間旅行の話をさせてくれ」と私たちに言った。私たちはそれに応じ、以下に記す話を彼は話し始めた。その話は最初から最後まで、一度も中断されることはなかった。

あなたたちにとっての二ヶ月前、私は初めてタイムマシンのことを話した。同じく、あなたたちにとっての約一週間前、私はこの機械を完成させた。そして、人類史上初の時間旅行に乗り出すことを決めた。

時間旅行中の感覚を言葉で説明するのは不可能だ。盲人に星の煌めきを理解させるようなものだろう。約二十分後――主観的な時間感覚で時間旅行を語るのは意味のないことだが――機械は停止した。辺りを見回すと、私はレムリア帝国の居住地にいた。巨石で造られた神殿や競技場は、エピクレシス歌劇場を霞ませるくらいの迫力で、マスターアラン・ギヨタンの造物なんて、堂々と街を歩く魔像と比べると、小人のようなものだった。私が感嘆していると、巡回中の軍団兵士に見つかった。奇怪な服を着た私を、彼らはきっと蛮族の遣わしたスパイだと思ったのだろう。立ち所に私を捕まえ、「下賤な奴隷」だとか「偽りの神を信仰する堕落者」だとか罵り、深い穴に落として毒蛇の餌にしようとしていた。

幸い、現地の造営官――後に名をエイディア・アナヴァナだと知った――は、私の出で立ちが一般人と違うことに気がつき、私を彼女のもとへと連れて来させた。彼女は私の滅茶苦茶な文法や発音に怒ったりせず(当時、私は「レムリア」という言葉を発音できず、「エムイア」などと言った)、私に様々な質問をした。私が正直に答えたので、彼女はすぐに私が未来から来たと信じてくれ、奴隷たちが最近発掘した石板を見せてくれた。

◆第3巻(時の旅人・第三巻)

スチームバード新聞から出版されているフォンテーヌのSF小説。とあるエンジニアがタイムマシンを利用して旅をする物語。
それは正方形の石板で、すべての行と列に七つの対称的な文字が刻まれていた――レムリア文字ではなく、私たちが今使っている文字だった。どのように読んでも、どの順番で読んでも、書かれている情報は全く同じだ。よく考えられた謎掛けで、犬、牧草、蒼翎雀、夏の雨、薔薇の歌声、リシュボラン虎の斑模様、規則的な岩の模様に関するものだった。言葉遊びが好きな私でも、無限に繰り返される謎掛けには目眩に近い感覚を覚えた。なぜか、この謎掛けを絶対に…どんな代償を払ってでも解かなければならないという気がした。そして、丸半年をかけ、私はエイディアと共にそれを解読した――その手がかりは、三十年前に死んだ奴隷の名前…そして答えは、ある日付――帝国が滅亡してから数百年後の日付だった。

私はエイディアに別れを告げ、タイムマシンに乗り、その日付に向かった。石板に隠された秘密を期待して。そこで出会ったファントムハンターたちは、私にもう一つの石板を見せた。そこには同様に四十九の対称的な文字が刻まれており、これもまた違う謎掛けを形成していた。今回の答えは、ずっと未来の、ある日付だった。

私は石板に導かれ、過去と未来を十三回も行き来した。石板の謎掛けはどんどん難しくなっていった。ある謎掛けの手がかりは三百年後に出版される陳腐な恋愛小説で、その本の37ページ目にある5つ目の単語が、375年前の執律庭警察官識別番号375番の本名と同じだった。もう一つの謎掛けの手がかりは、数千年後に咲く白い花にあった――その名前を私は知らないが、複数ある雌しべが奇妙な形をしていた。銭葵の一種かもしれないが、確信はない――その花は雲雀の鳴き声を養分としており、手がかりはレムリア時代に生きていた雲雀の肋骨の数だったのだ。謎掛けの構成は、おおよそこんな感じだった。

最後の石板はバザル・エルトン記念博物館の地下倉庫にあった。それには他の文字はなく、ただ一つの数字だけが刻まれていた。「0」。

その時、自分が何を考えていたのかは分からない――目的地を「0」に設定するのは無意味な行為だった――しかし、私は機械にその数字を入力し、レバーを引いた。どれほど経ったのだろう、機械が再び停止した時、私は大海原の上に浮かんでいた。潮の動きも波も無かったのは、この瞬間、風さえ存在していなかったからだ。頭上を覆う空はもはや青ではなく、名状し難い暗赤色で、無数の遠く白い星々は、まるで海岸を覆う塩の結晶のようだった。

原初の海をじっと見つめて数分が経過すると、穏やかな海面の下に何かが隠れているのに気がついた。それは、そこに存在しないはずのパレ・メルモニアだった。

その時、誰かが私の名前を呼んでいるのが聞こえた――ネイヴン・クリーク、とその声は言った。振り返ると、まるで鏡を見るように、自分と全く同じ顔をした人が、私の目を見つめていた。私が彼を見つめているのと同じように。

「ネイヴン・クリーク…」彼は続けた。「君は時間を征服しようとしているが、時間を征服することは誰にもできない。」

「君があの謎掛けを残した?」

「君があの謎掛けを残した。」彼は私の質問を、まるでそれが答えだと言うように繰り返した。「謎掛けは時間の一部、対称となる文字の一つ一つは時間そのものと同じだ。」

「だから――時間の最終的な答えは0だと。」

「0は答えではなく、別の謎掛けだ。なぜなら、問題の中に答えがあるなど有り得ないからだ。」彼は言った。「時間の答えは鏡だ。言い換えれば、最も理解しやすい答えが鏡。合わせ鏡の中で無限に反射する光の軌跡こそが時間なのだ。互いに乖離し、集合し、平行する無数の光が「時間」という錯覚を生み出す。過去も未来もない、なぜなら、過去が未来だからだ。0の時間に立っている時、合わせ鏡の隙間から前を見ると、あらゆる光の軌跡が同一平面にあり、そこからはどの光も逃げられない。パレ・メルモニアは建設される前に沈没し、沈没したパレ・メルモニアは再建される。笑い、悲しみ、涙、死は何度も繰り返される。それが鏡の本質だからだ。君は永遠に時間を征服できない。自らの手で自らの影を捉えることができないように。」

恐怖か、あるいは一時の狂気からか――彼の最後の言葉が終わると同時に、私は護身用の銃を抜き、彼の頭に向かって引き金を引いた。

――工房は静まり返った。

「こんな話を信じてくれとは言わない…」クリークは立ち上がり、私たちを見回した。「タイムマシンを作れなかった私の、お粗末な言い訳だと思ってくれたまえ。単なる妄想から出た寝言だと。じゃあ――失礼するよ、紳士淑女の皆さん。私は、未来の自分に謎掛けを残しに行く。」

私は二度と、クリーク・ネイヴンに会うことはなかった。

更新履歴

赤字は変更前から消えた・変更された箇所、青字は追加や改稿された箇所。気付いた分のみ、全てのゲームデータの更新状況を記録しているわけではありません。
Ver.4.4 第1巻〜第3巻実装
最終確認:Ver.4.5(掲載中テキスト)


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