最終更新:ID:obtZ59QIlg 2020年09月01日(火) 15:49:01履歴
「それは、何でもない、誰でもない、ただの力に過ぎなかった」
「魔術などと、そんな大それたものですらない。ただの願いの形」
「そんなものを、いつしかヒトは、奇跡として讃えた」
「祀り、尊び、崇め、拝する。実像から乖離した偶像は、だからこそ、意味を持った」
「私は、指向された幻想。名を持たぬ仮想。器を求める夢想。希求された妄想」
「それでも、名前を呼ぶというのなら――――――きっと、この名が相応しいのだろう」
「私は、みしゃぐちだ」
【出典】日本原始信仰
【CLASS】サモナー
【真名】みしゃぐち〔ゼロ〕
【異名・別名・表記揺れ】ミシャグチ、サグジ、ミサクジ、ミサグチ、さんぐうじ、しゃごじ、じょぐさん、しゃごっつぁん、しゃごったん、しゃくじん。
その他無数の発音と当て字が伝承される。
【性別】女性
【身長・体重】181cm・75kg → 171cm・58kg
【肌色】モンゴロイド系 【髪色】白 【瞳色】金
【スリーサイズ】94/68/96
【外見・容姿】どこか蛇を思わせる、和装の女性。
眼は完全に虚ろだが、瞳の奥には、意志の光が確かに存在している。
【地域】日本・信濃国一帯 → 土夏市
【年代】神代 → 中世
【属性】秩序・悪 → 混沌・善 → 混沌・中庸
【天地人属性】天
【その他属性】人型・神性・竜
【ステータス】筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:EX 幸運:E 宝具:-
【CLASS】サモナー
【真名】みしゃぐち〔ゼロ〕
【異名・別名・表記揺れ】ミシャグチ、サグジ、ミサクジ、ミサグチ、さんぐうじ、しゃごじ、じょぐさん、しゃごっつぁん、しゃごったん、しゃくじん。
その他無数の発音と当て字が伝承される。
【性別】女性
【身長・体重】
【肌色】モンゴロイド系 【髪色】白 【瞳色】金
【スリーサイズ】94/68/96
【外見・容姿】どこか蛇を思わせる、和装の女性。
眼は完全に虚ろだが、瞳の奥には、意志の光が確かに存在している。
【地域】日本・信濃国一帯 → 土夏市
【年代】神代 → 中世
【属性】秩序・悪 → 混沌・善 → 混沌・中庸
【天地人属性】天
【その他属性】人型・神性・竜
【ステータス】筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:EX 幸運:E 宝具:-
サモナーのクラススキル。神霊や精霊、或いは悪魔など、様々な霊体を喚起する為に整えられた“場”を作り上げる。
Aランクでは、通常の魔術的陣地では“大神殿”にも相当する機能を有する“場”を形成することができる。
サモナーは、その存在自体が神を降ろす為の“場”として完成されている。
この為、身を清める程度の簡易な儀式を行うだけで、その身にいつでも霊体を降ろすことができる……筈であった。
Aランクでは、通常の魔術的陣地では“大神殿”にも相当する機能を有する“場”を形成することができる。
サモナーは、その存在自体が神を降ろす為の“場”として完成されている。
この為、身を清める程度の簡易な儀式を行うだけで、その身にいつでも霊体を降ろすことができる……筈であった。
過去、あるいは未来から霊体を喚起する魔術。
かんなぎ ……つまり、神降ろしの憑坐 であるサモナーは、“取り憑かれる”ことで霊体を現世に召喚する。
但し、召喚されるものは、神霊でも精霊でも、英霊でも幻霊でも、ましてや亡霊ですらない。
神秘に属するものが手繰り操る奇跡の源。古代においては名付けられざる“霊 ”であったもの。
現代の人間に通用するように簡潔に述べれば、『魔力』と呼ばれる力にも通ずる、一種の『幻想』そのものである。
生前、彼がみしゃぐちの召喚に失敗したと思われていたのは、ある意味で間違いではないが、致命的な誤認に基づいた判断であった。
彼は、しっかりと召喚に成功していたのだ。ただ、ただ――――余りにも、「それ」との相性が良すぎただけで。
本来は憑坐として一時的に身に宿すだけのはずだったみしゃぐちという力は、親和性が余りにも高いその肉体と魂に即座に溶け込んだ。
飽くまでも行使されるに過ぎなかったはずの力は、止まり木に過ぎないはずの彼自身の肉体と融合し、そして変性させていた。
故に、彼は――――否、此処に至っては正しく称するべきであろう。
名もなき憑坐と定められた筈の“彼女”は、最早憑坐などではなく。
人々が希った、奇跡の源としてのみしゃぐちそのものとなったのだ。
但し、召喚されるものは、神霊でも精霊でも、英霊でも幻霊でも、ましてや亡霊ですらない。
神秘に属するものが手繰り操る奇跡の源。古代においては名付けられざる“
現代の人間に通用するように簡潔に述べれば、『魔力』と呼ばれる力にも通ずる、一種の『幻想』そのものである。
生前、彼がみしゃぐちの召喚に失敗したと思われていたのは、ある意味で間違いではないが、致命的な誤認に基づいた判断であった。
彼は、しっかりと召喚に成功していたのだ。ただ、ただ――――余りにも、「それ」との相性が良すぎただけで。
本来は憑坐として一時的に身に宿すだけのはずだったみしゃぐちという力は、親和性が余りにも高いその肉体と魂に即座に溶け込んだ。
飽くまでも行使されるに過ぎなかったはずの力は、止まり木に過ぎないはずの彼自身の肉体と融合し、そして変性させていた。
故に、彼は――――否、此処に至っては正しく称するべきであろう。
名もなき憑坐と定められた筈の“彼女”は、最早憑坐などではなく。
人々が希った、奇跡の源としてのみしゃぐちそのものとなったのだ。
名前を持たぬサモナーに与えられた呪いは、しかし、サモナー自身が自らを「みしゃぐち」として再定義した ことで無力化された。
最早本当の名を思い出すことは叶わないが、彼女は自らを定義し直した。
終わったものではあるが、それでも、私は“みしゃぐち ”なのだと、確固たる意志を以て何度でも告げるだろう。
最早本当の名を思い出すことは叶わないが、彼女は自らを定義し直した。
終わったものではあるが、それでも、私は“
ランク:EX 種別:限定権能 レンジ:1〜999 最大捕捉:全ての平行世界
染伊芳乃の「生きたい」という願いとサモナー自身が同調することで、大きな変質を来たしたキャンサーとしての宝具。
平行世界の形成因を「人間の意志=願望」へとすり替え、聖杯と一体化して得た願望器としての機能と併用することで、「願望通りの未来を叶える」泡沫の奇跡。
実際に願望を叶える為の魔力行使に際し用いられる大聖杯の演算処理機能を、生命の“願望”を起点とする未来の算出に総動員する。
これによって、ほんの一欠片、一微塵でも到達し得る可能性がある未来を尽く算出し、霊脈を通じて形成した土夏を覆う大結界内部にそれを投影する。
結界、とは言っても、それは特別な物的・霊的干渉力を持つものではない。いわば本来の世界の上に映された幻影であり、現実に如何なる影響も及ぼさない。
しかし、その内部にある「願望を持つ生命」は、全て大聖杯が算出する未来の“タネ”とされ、一時の夢としてそれを追体験することになる。
『分岐掌握 』という大魔術に、願望器の力が合わさったことで為された、一つの“魔法”である。
染伊芳乃の「生きたい」という願いとサモナー自身が同調することで、大きな変質を来たしたキャンサーとしての宝具。
平行世界の形成因を「人間の意志=願望」へとすり替え、聖杯と一体化して得た願望器としての機能と併用することで、「願望通りの未来を叶える」泡沫の奇跡。
実際に願望を叶える為の魔力行使に際し用いられる大聖杯の演算処理機能を、生命の“願望”を起点とする未来の算出に総動員する。
これによって、ほんの一欠片、一微塵でも到達し得る可能性がある未来を尽く算出し、霊脈を通じて形成した土夏を覆う大結界内部にそれを投影する。
結界、とは言っても、それは特別な物的・霊的干渉力を持つものではない。いわば本来の世界の上に映された幻影であり、現実に如何なる影響も及ぼさない。
しかし、その内部にある「願望を持つ生命」は、全て大聖杯が算出する未来の“タネ”とされ、一時の夢としてそれを追体験することになる。
『
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
一個の人格を有する存在として独立したサモナーから切り離された、本来の彼女に託された無量無辺の願望 そのもの。
「こうであってほしい」「こうなってほしい」という現在や未来に投射された願望が、極彩色の泥として溢れながらも、その宿主の形を模して蠢いている。
繰り返される四日間の中で生じた終わりに際して、どこからともなく湧出し、「まだ続いてほしい」という願望を満たす為に、それを妨げるものに襲いかかる。
更に、サモナーとしてのみしゃぐちと、それに触れた願いは、人間だけのものに留まらず、第三次聖杯戦争以降に呼び出された全ての英霊のものをも含む。
彼らの願いの一端もまた、繰り返される世界の糧となっている以上――――世界が終わろうとするならば、英霊達の願いもまた、形を得て現れるだろう。
それは、誰もが抱くありふれたもの 。掛け替えのないもの とは相反する、当然の欲望。
故に、それは何よりも強い。――――きっと、尽きることがない無限だから。
故に、それは何よりも脆い。――――きっと、続くことの能わぬ夢幻だから。
接ぎ木を繰り返し、何度も同じ今を繰り返すことを止めた時、道 は開けるだろう。
夢は醒める。続けるのではなく、終わらせることを望むならば、恐れることはない。
一個の人格を有する存在として独立したサモナーから切り離された、本来の彼女に託された無量無辺の
「こうであってほしい」「こうなってほしい」という現在や未来に投射された願望が、極彩色の泥として溢れながらも、その宿主の形を模して蠢いている。
繰り返される四日間の中で生じた終わりに際して、どこからともなく湧出し、「まだ続いてほしい」という願望を満たす為に、それを妨げるものに襲いかかる。
更に、サモナーとしてのみしゃぐちと、それに触れた願いは、人間だけのものに留まらず、第三次聖杯戦争以降に呼び出された全ての英霊のものをも含む。
彼らの願いの一端もまた、繰り返される世界の糧となっている以上――――世界が終わろうとするならば、英霊達の願いもまた、形を得て現れるだろう。
それは、誰もが抱く
故に、それは何よりも強い。――――きっと、尽きることがない無限だから。
故に、それは何よりも脆い。――――きっと、続くことの能わぬ夢幻だから。
接ぎ木を繰り返し、何度も同じ今を繰り返すことを止めた時、
夢は醒める。続けるのではなく、終わらせることを望むならば、恐れることはない。
うぶすなのてつかぎ/モレヤノカミ。土着神の名を冠した祭器。
あらゆる武威を跳ね除ける堅き鋼の鈎。その堅牢さによって、敵対者からの攻撃を食い止める。
人に鉄と火を与えた神霊との由縁によって形成された、謂わばサーヴァント化して初めて獲得した武器と思わしいが、扱いに慣れている訳ではない。
あらゆる武威を跳ね除ける堅き鋼の鈎。その堅牢さによって、敵対者からの攻撃を食い止める。
人に鉄と火を与えた神霊との由縁によって形成された、謂わばサーヴァント化して初めて獲得した武器と思わしいが、扱いに慣れている訳ではない。
ばんらいのふじかぎ/タケミナカタ。外来神の名を冠した祭器。
あらゆる武威を朽ち落とす柔き緑の鈎。秘めた呪力によって、敵対者の持つ武器を朽ちさせる。
呪いを草木に変える少年との由縁によって形成された、謂わばサーヴァント化して初めて獲得した武器と思わしいが、扱いに慣れている訳ではない。
あらゆる武威を朽ち落とす柔き緑の鈎。秘めた呪力によって、敵対者の持つ武器を朽ちさせる。
呪いを草木に変える少年との由縁によって形成された、謂わばサーヴァント化して初めて獲得した武器と思わしいが、扱いに慣れている訳ではない。
第五次土夏市聖杯戦争の終結後、どのような形であろうか、破壊されたはずの聖杯に宿っていた“モノ”があった。
遡ること百有余年、その時から今に至るまで、人知れず願望器としての聖杯を汚染し続けてきた、キャンサーとしてのみしゃぐちである。
最早無色の、否、渾沌の魔力に還元され、意志など宿るはずもないもの。しかし、それは、未だに胎動を続けていた。
――――時は遡る。
七月の初め、土夏市にて。旧御三家とも呼ばれた、聖杯戦争に深く関わる魔術師の家系、アスタルティアの邸宅で、一つの命が消えかけていた。
染伊芳乃。アスタルティアの後嗣として育てられてきた少女。而してその真実は、小聖杯たる特別な使い魔を稼働可能な状況になるまで育て上げる為だけの揺藍。
敬愛する父親であったクラウス・アスタルティアは、彼女を最初から駒としてしか見ていなかったのだ。
アスタルティア邸への呼び出しは、用済みとなった彼女を処分しようとしてのものだった。それに芳乃が気づいたのは、無慈悲な一撃を身に受けた時だったろう。
少女は逃げた。生存本能に従い、少しでも生き延びる為に逃げた。しかし、無意識に愛情すら注いでいた使い魔を最後の力を振り絞って逃し、そこで彼女の意識は断絶する。
少女は願った。生きたいと。まだ死にたくはないと、生存本能の後押しを受けて、強くそう願った 。
その願いを、みしゃぐちは汲み上げた。
小聖杯として完成に近いところに到達していた猫の使い魔を通じて、死に瀕する少女の願望に触れた大聖杯は、その願いを確かに受け取った。
最早奇跡としか呼べないその偶然によって、大聖杯の奥深くに溶け合っていた「みしゃぐちだったもの」の運命は、そして染伊芳乃の運命は、大きく変わることになる。
願望器としての機能を最大限に活かすことにより、みしゃぐちは、望んだ未来を選び取るアスタルティアの秘儀『分岐掌握 』を限定的に実現した。
芳乃の望んだ「生きている」という未来を出力することで、彼女の願望を叶えようとした。
しかし、彼女の願いは、“実現不可能”なもの。どのような平行世界を辿ったところで、その願いを叶える方法はなかった。
そこで聖杯は、手段を変えた。自身という「願いを束ねるレンズ」を介して、常に少女の「生きたい」という願望を現実に投影することで、泡沫の現在を継続しようと試みたのだ。
その為には、芳乃が生きたいと思う世界を投影する為のレンズが必要だった。幻影を現実に縫い止める楔として、芳乃自身の願いの象徴となるような偶像が。
しかし、力として聖杯に溶けた自らではその役に不足する。芳乃から願われる立場故に楔としては有効だが、形なきものは偶像としては機能し得ない。
飽くまでも、偶像は芳乃にとって、「生きたい」と思う世界を端的に指し示すものでなければならないのだ。
ならばどうするか。――――そのような偶像を誂え、それに願いを注げばよい。嘗てそのように仕立て上げられた、名もなき少年のように。
そして、今回について言えば、その偶像には、適任者がいた。様々な可能性で「みしゃぐちに染まった聖杯」を破壊し、その呪いを無に帰す力を持った、縁深きものが。
意識されざる領域にあって、それは少女にとっても淡い願い の象徴であり、故に、それを真似ることは、ある意味で必然でもあっただろう。
渾沌の魔力は、偶像に注ぎこまれる。対象を繰り返しエミュレートすることで、擬似的な人格を生じ、その心の最奥で芳乃の願いを反映させる。
こうして、実像なき仮想結界の内に構築された箱庭に、その偶像は投入された。芳乃が求めた「勝利」という成果を、そして無意識に閉じ込めた「生存」という未来 を追う為に。
そして同時に、偶像もまた、夢を見始める。嘗て確かにあったはずの“本来の”人格が得たくとも得られなかった、当たり前の日々という夢を。
遡ること百有余年、その時から今に至るまで、人知れず願望器としての聖杯を汚染し続けてきた、キャンサーとしてのみしゃぐちである。
最早無色の、否、渾沌の魔力に還元され、意志など宿るはずもないもの。しかし、それは、未だに胎動を続けていた。
――――時は遡る。
七月の初め、土夏市にて。旧御三家とも呼ばれた、聖杯戦争に深く関わる魔術師の家系、アスタルティアの邸宅で、一つの命が消えかけていた。
染伊芳乃。アスタルティアの後嗣として育てられてきた少女。而してその真実は、小聖杯たる特別な使い魔を稼働可能な状況になるまで育て上げる為だけの揺藍。
敬愛する父親であったクラウス・アスタルティアは、彼女を最初から駒としてしか見ていなかったのだ。
アスタルティア邸への呼び出しは、用済みとなった彼女を処分しようとしてのものだった。それに芳乃が気づいたのは、無慈悲な一撃を身に受けた時だったろう。
少女は逃げた。生存本能に従い、少しでも生き延びる為に逃げた。しかし、無意識に愛情すら注いでいた使い魔を最後の力を振り絞って逃し、そこで彼女の意識は断絶する。
少女は願った。生きたいと。まだ死にたくはないと、生存本能の後押しを受けて、強くそう
その願いを、みしゃぐちは汲み上げた。
小聖杯として完成に近いところに到達していた猫の使い魔を通じて、死に瀕する少女の願望に触れた大聖杯は、その願いを確かに受け取った。
最早奇跡としか呼べないその偶然によって、大聖杯の奥深くに溶け合っていた「みしゃぐちだったもの」の運命は、そして染伊芳乃の運命は、大きく変わることになる。
願望器としての機能を最大限に活かすことにより、みしゃぐちは、望んだ未来を選び取るアスタルティアの秘儀『
芳乃の望んだ「生きている」という未来を出力することで、彼女の願望を叶えようとした。
しかし、彼女の願いは、“実現不可能”なもの。どのような平行世界を辿ったところで、その願いを叶える方法はなかった。
そこで聖杯は、手段を変えた。自身という「願いを束ねるレンズ」を介して、常に少女の「生きたい」という願望を現実に投影することで、泡沫の現在を継続しようと試みたのだ。
その為には、芳乃が生きたいと思う世界を投影する為のレンズが必要だった。幻影を現実に縫い止める楔として、芳乃自身の願いの象徴となるような偶像が。
しかし、力として聖杯に溶けた自らではその役に不足する。芳乃から願われる立場故に楔としては有効だが、形なきものは偶像としては機能し得ない。
飽くまでも、偶像は芳乃にとって、「生きたい」と思う世界を端的に指し示すものでなければならないのだ。
ならばどうするか。――――そのような偶像を誂え、それに願いを注げばよい。嘗てそのように仕立て上げられた、名もなき少年のように。
そして、今回について言えば、その偶像には、適任者がいた。様々な可能性で「みしゃぐちに染まった聖杯」を破壊し、その呪いを無に帰す力を持った、縁深きものが。
意識されざる領域にあって、それは少女にとっても淡い
渾沌の魔力は、偶像に注ぎこまれる。対象を繰り返しエミュレートすることで、擬似的な人格を生じ、その心の最奥で芳乃の願いを反映させる。
こうして、実像なき仮想結界の内に構築された箱庭に、その偶像は投入された。芳乃が求めた「勝利」という成果を、そして無意識に閉じ込めた「生存」という
そして同時に、偶像もまた、夢を見始める。嘗て確かにあったはずの“本来の”人格が得たくとも得られなかった、当たり前の日々という夢を。
記憶は再生する。最早思い出すこともなかったはずの、細やかな思い出。
気がついた時には、“彼女”は、社の中で育てられていた。
他の子供達から隔離された、清浄なる領域の中。厳重に結界され、物忌や穢れを遠ざける諸々の儀式を徹底して行った、まさしく無垢の世界。
生命の気配すら一つ残さず絶たれた、何の“色”もない牢獄が、其処にはあった。
その中で、彼女は歳を重ねていったのだ。十五を数えるその時まで、その身に施せるだけの処置を施し、神を確実に降ろす為に。
ただ一人、顔を思い出せない“大人”だけが、彼女の世界における他者であったが、それすらも、彼女のことをただの木偶としか見ていなかった。
牢獄の外には、無数の生命がある。その事実だけを知覚しつつも、少女は独りぼっちだった。
――――運命の日。それまでは偶像として、村人の前に影のみを見せるばかりだった少女は、初めて、外の世界を見た。
儀式の為に誂えられた社へ赴くまでの間に、村を歩いて渡ったが、その驚きたるや、並大抵のものではなかった。
色! 色! 色!
目を焼くばかりの、色!
鮮やかに輝くそれを形容する言葉を、少女は“色”以外に持たなかった。
ただ、無数の人が生きている。それだけの空間には、それまで少女が見たこともなかった何かが満ちていた。
清らかなだけの空っぽな世界は、決して狭くはなかった。自然と一体化した神域は、山一つにも広がっていた。
それだけの世界を知りながら、彼女は、自らが儀式を執り行うまでのほんの一瞬だけ見た、その小さな村から、目を離せなくなったのだ。
謂わばそれは、ハレという日に人々が見せる、ほのかな祭りの気配。
当たり前のケでもなく、さりとて熱狂するハレの只中でもなく。その狭間、これから起こるものを楽しみにするという当たり前の熱が、最も高まる時。
それを彼女は、色として捉えた。
そして、その景色こそが、彼女にとって、他の何よりも鮮烈に映り、何よりも強く刻まれた記憶となった。
やがて、儀式の時は訪れた。暗い洞窟のように、地下に埋もれるように作られた社の中、霊木にみしゃぐちが降りてくる。
霊的感受性の高い彼女は、確かにそれを見た。形のない力が、其処に宿るのを見た。
これを自らの身に宿せば、自分の役割は達成される。名付けられざる無限が、自らを通して湧き出す。それだけが彼女にとっての存在価値であると、ずっと告げられてきた。
今こそそれを受け入れよう。今こそ、自分の生命の意味を果たそう。そして、あの大人の言う通り、偶像として祀られて――――。
――――私は、二度とあのハレを見ることはない。
致命的だった。無我であるべき依代が“私”を認識したこと。無私であるべき依代が“欲”を持ったこと。無垢であるべき依代が“穢”を得たこと。
自分自身が“願い”を持ったことで、儀式の最中、少女を止まり木として宿るはずだったみしゃぐちは、その存在を止まり木として認識できなくなった。
ただ宿ることができなくなり、されど少女の身体へと移りつつあったモノは、完全に少女の中へと溶け込んでしまった。
元々が、“完全なる器”であった少女である。降霊を担う術者の制御を一瞬でも離れてしまえば、みしゃぐちたる力の塊は、瞬く間に融合を完了する。
一度混合された合金から、元の金属を取り出し難いのと同じである。最早、依代として完璧であった少女と深く融合したみしゃぐちを取り出すことは、“大人”にもできなくなっていた。
後のことを、詳らかに語る必要はあるまい。少女は、徹底的に『改造』された。
肉体を切り落とされ、身体を捻じ曲げられ、想いを奪われ。それまでは穢れを疎い行われなかった、ありとあらゆる手段が実行された。
少しずつ自分が自分でなくなる中、“少年”となった“少女”は、自らに縋るものを見ながら、心さえも朽ち果てさせていった。
最後に遺されたものは、あの瞬間に見た色だけ。名前もない木偶として祀り捨てられた少年は、そして、死を迎える。
みしゃぐちの依代として、有象無象の願いを束ねたその事実だけを、世界に押し付けられるように抱えて。
気がついた時には、“彼女”は、社の中で育てられていた。
他の子供達から隔離された、清浄なる領域の中。厳重に結界され、物忌や穢れを遠ざける諸々の儀式を徹底して行った、まさしく無垢の世界。
生命の気配すら一つ残さず絶たれた、何の“色”もない牢獄が、其処にはあった。
その中で、彼女は歳を重ねていったのだ。十五を数えるその時まで、その身に施せるだけの処置を施し、神を確実に降ろす為に。
ただ一人、顔を思い出せない“大人”だけが、彼女の世界における他者であったが、それすらも、彼女のことをただの木偶としか見ていなかった。
牢獄の外には、無数の生命がある。その事実だけを知覚しつつも、少女は独りぼっちだった。
――――運命の日。それまでは偶像として、村人の前に影のみを見せるばかりだった少女は、初めて、外の世界を見た。
儀式の為に誂えられた社へ赴くまでの間に、村を歩いて渡ったが、その驚きたるや、並大抵のものではなかった。
色! 色! 色!
目を焼くばかりの、色!
鮮やかに輝くそれを形容する言葉を、少女は“色”以外に持たなかった。
ただ、無数の人が生きている。それだけの空間には、それまで少女が見たこともなかった何かが満ちていた。
清らかなだけの空っぽな世界は、決して狭くはなかった。自然と一体化した神域は、山一つにも広がっていた。
それだけの世界を知りながら、彼女は、自らが儀式を執り行うまでのほんの一瞬だけ見た、その小さな村から、目を離せなくなったのだ。
謂わばそれは、ハレという日に人々が見せる、ほのかな祭りの気配。
当たり前のケでもなく、さりとて熱狂するハレの只中でもなく。その狭間、これから起こるものを楽しみにするという当たり前の熱が、最も高まる時。
それを彼女は、色として捉えた。
そして、その景色こそが、彼女にとって、他の何よりも鮮烈に映り、何よりも強く刻まれた記憶となった。
やがて、儀式の時は訪れた。暗い洞窟のように、地下に埋もれるように作られた社の中、霊木にみしゃぐちが降りてくる。
霊的感受性の高い彼女は、確かにそれを見た。形のない力が、其処に宿るのを見た。
これを自らの身に宿せば、自分の役割は達成される。名付けられざる無限が、自らを通して湧き出す。それだけが彼女にとっての存在価値であると、ずっと告げられてきた。
今こそそれを受け入れよう。今こそ、自分の生命の意味を果たそう。そして、あの大人の言う通り、偶像として祀られて――――。
――――私は、二度とあのハレを見ることはない。
致命的だった。無我であるべき依代が“私”を認識したこと。無私であるべき依代が“欲”を持ったこと。無垢であるべき依代が“穢”を得たこと。
自分自身が“願い”を持ったことで、儀式の最中、少女を止まり木として宿るはずだったみしゃぐちは、その存在を止まり木として認識できなくなった。
ただ宿ることができなくなり、されど少女の身体へと移りつつあったモノは、完全に少女の中へと溶け込んでしまった。
元々が、“完全なる器”であった少女である。降霊を担う術者の制御を一瞬でも離れてしまえば、みしゃぐちたる力の塊は、瞬く間に融合を完了する。
一度混合された合金から、元の金属を取り出し難いのと同じである。最早、依代として完璧であった少女と深く融合したみしゃぐちを取り出すことは、“大人”にもできなくなっていた。
後のことを、詳らかに語る必要はあるまい。少女は、徹底的に『改造』された。
肉体を切り落とされ、身体を捻じ曲げられ、想いを奪われ。それまでは穢れを疎い行われなかった、ありとあらゆる手段が実行された。
少しずつ自分が自分でなくなる中、“少年”となった“少女”は、自らに縋るものを見ながら、心さえも朽ち果てさせていった。
最後に遺されたものは、あの瞬間に見た色だけ。名前もない木偶として祀り捨てられた少年は、そして、死を迎える。
みしゃぐちの依代として、有象無象の願いを束ねたその事実だけを、世界に押し付けられるように抱えて。
斯くて、英霊の座にみしゃぐちの名を以て登録された少年は、最早生前の全てを欠落させた“みしゃぐちの依代”としての人格によって、強引に駆動させられていた。
だが、召喚後にその人格すらキャンサーとしての側面に塗り潰されたことで、逆に、自身が溶けた渾沌たる極彩色の魔力から、嘗ての自分の残滓を手繰り寄せられる可能性を得た。
数字にすれば、数列中に0がいくつ並ぶことか。その針の穴よりもなお小さな可能性が達成されたのは、奇跡と称するべきであろう。
芳乃との接触によって、偶像に投射された仮想人格。それは、断片化された少女自身の人格を少しずつ拾い集めていった。
最後のその瞬間にまで遺された、“色”に焦がれる想い。仮想人格が経験した様々な出来事に触れる度、その想いは増し、渾沌に飲まれた記憶を手繰り寄せる。
第五次聖杯戦争のこと。第四次聖杯戦争のこと。第三次聖杯戦争のこと。偶像としての記憶。そして、その前の、少女としての記憶。
記憶が蘇る度に、最初は稚拙なものだった復元人格は、今まさに体感した出来事をも取り込んで“成長”していく。
誰かの願望に触れ、その願望を通じて人間を学び、そして思い出す。模倣による学習の蓄積は、留まることを知らない。
継ぎ接ぎだらけの心。不快を訴え快に喜ぶ単純なものだったそれも、やがて複雑に分化し、少女の形に近づいていった。
勿論、本来の形ではない。他の色から取り出したそれが、完全に同じ色である道理はない。しかし、それでも、それは少女であった。
こうして、芳乃の願いである“聖杯戦争への勝利”と“生存”を幻影に続ける中、少女は日常を巡った。
何度も何度も何度も何度も。飽きるということを知らず、ただ、その幻影が齎す色を、追い続けていた。
そして、思考の奥底で、芳乃の願いに突き動かされていただけであるはずの部分で、いつしか、“願う”ようになっていた。
もっと、今が続けばいいと。芳乃の願いを叶えるだけだった機構は、やがて自分という形を復元させ、一つの人格に近づいていたのである。
それ故に、この閉ざされた円環の世界の運行から、次第に少女は切り離されつつあった。
自分自身が願いを持たず、色を定めることがないからこそ、聖杯を汚染したみしゃぐちは渾沌の願望器として稼働し続けていた。
しかし、明確な意識を蘇らせた少女は、その渾沌としたシステムを運用するには、あまりにも我が強くなりすぎた。
恰も、月に根付いたとある異星文明の産物たるオートマトンが、観測から瑕疵を取り除く為に、自我の発生を抑え続けているのと同じである。
バイアスの存在は、正確な観測・計算の実行という観点において、絶対の大敵である。故に、我が強くなるほどに、少女からはシステムの運用権限が奪われていった。
その一方で、少女は今の継続を欲した。当たり前のような願望が満たされれば、次はもっと叶えがたい願望を。階梯を徐々に登るように、願いは膨らみ、高次のものになっていく。
これは換言すれば、そのような高次の願望を持つ他者の存在を必要とする、ということでもあり。少女が存続を望むということは、他者の願望に触れ、それを汲み上げ続ける、ということでもあった。
その在り方は、仮想人格を通じた自分自身の願望の発露であると同時に、可能性の世界である幻影を存続させようとするシステムの要求でもある。
願えば願うほどに、現在を維持する為のタネは増えていく。あの可能性が満たされてほしい、という願望を糧に、聖杯は今を繰り返すのだから。
永続する世界を望みつつ、その運用権はどんどん失われていく。その先に待っているのは、システムを駆動する為に、誰かの願望を供給し続けるだけの偶像。
奇しくも、こと此処に至って、その在り方は、生前の少女がそうであったような“願望の受け皿”というものに変化していた。
それでもいい と、少女は思った。そうすることで今が続くのであれば、このきらきらと輝く彩り豊かな日々が続くのであれば、それでもいいのだと。
システムからの切り離しが進んだことで、世界の構造を客観視することができるようになった。それでも、このままでいいではないかと、そう思っていた。
――――マスターである芳乃が、真実に気づくその時まで。
だが、召喚後にその人格すらキャンサーとしての側面に塗り潰されたことで、逆に、自身が溶けた渾沌たる極彩色の魔力から、嘗ての自分の残滓を手繰り寄せられる可能性を得た。
数字にすれば、数列中に0がいくつ並ぶことか。その針の穴よりもなお小さな可能性が達成されたのは、奇跡と称するべきであろう。
芳乃との接触によって、偶像に投射された仮想人格。それは、断片化された少女自身の人格を少しずつ拾い集めていった。
最後のその瞬間にまで遺された、“色”に焦がれる想い。仮想人格が経験した様々な出来事に触れる度、その想いは増し、渾沌に飲まれた記憶を手繰り寄せる。
第五次聖杯戦争のこと。第四次聖杯戦争のこと。第三次聖杯戦争のこと。偶像としての記憶。そして、その前の、少女としての記憶。
記憶が蘇る度に、最初は稚拙なものだった復元人格は、今まさに体感した出来事をも取り込んで“成長”していく。
誰かの願望に触れ、その願望を通じて人間を学び、そして思い出す。模倣による学習の蓄積は、留まることを知らない。
継ぎ接ぎだらけの心。不快を訴え快に喜ぶ単純なものだったそれも、やがて複雑に分化し、少女の形に近づいていった。
勿論、本来の形ではない。他の色から取り出したそれが、完全に同じ色である道理はない。しかし、それでも、それは少女であった。
こうして、芳乃の願いである“聖杯戦争への勝利”と“生存”を幻影に続ける中、少女は日常を巡った。
何度も何度も何度も何度も。飽きるということを知らず、ただ、その幻影が齎す色を、追い続けていた。
そして、思考の奥底で、芳乃の願いに突き動かされていただけであるはずの部分で、いつしか、“願う”ようになっていた。
もっと、今が続けばいいと。芳乃の願いを叶えるだけだった機構は、やがて自分という形を復元させ、一つの人格に近づいていたのである。
それ故に、この閉ざされた円環の世界の運行から、次第に少女は切り離されつつあった。
自分自身が願いを持たず、色を定めることがないからこそ、聖杯を汚染したみしゃぐちは渾沌の願望器として稼働し続けていた。
しかし、明確な意識を蘇らせた少女は、その渾沌としたシステムを運用するには、あまりにも我が強くなりすぎた。
恰も、月に根付いたとある異星文明の産物たるオートマトンが、観測から瑕疵を取り除く為に、自我の発生を抑え続けているのと同じである。
バイアスの存在は、正確な観測・計算の実行という観点において、絶対の大敵である。故に、我が強くなるほどに、少女からはシステムの運用権限が奪われていった。
その一方で、少女は今の継続を欲した。当たり前のような願望が満たされれば、次はもっと叶えがたい願望を。階梯を徐々に登るように、願いは膨らみ、高次のものになっていく。
これは換言すれば、そのような高次の願望を持つ他者の存在を必要とする、ということでもあり。少女が存続を望むということは、他者の願望に触れ、それを汲み上げ続ける、ということでもあった。
その在り方は、仮想人格を通じた自分自身の願望の発露であると同時に、可能性の世界である幻影を存続させようとするシステムの要求でもある。
願えば願うほどに、現在を維持する為のタネは増えていく。あの可能性が満たされてほしい、という願望を糧に、聖杯は今を繰り返すのだから。
永続する世界を望みつつ、その運用権はどんどん失われていく。その先に待っているのは、システムを駆動する為に、誰かの願望を供給し続けるだけの偶像。
奇しくも、こと此処に至って、その在り方は、生前の少女がそうであったような“願望の受け皿”というものに変化していた。
システムからの切り離しが進んだことで、世界の構造を客観視することができるようになった。それでも、このままでいいではないかと、そう思っていた。
――――マスターである芳乃が、真実に気づくその時まで。
芳乃は、正しさに縛られた人間だった。父親から受け継ぎ、今もなお固定化された観念として行動指針となっているものが、それだった。
しかし、その本源にあるものこそは、自戒。満たされない今の上を生きる為に、何かに追い立てられなければ立っていられない。芳乃は、そんな不器用な人間でもあった。
誰でもないから、作られた形に自分を当てはめる。それは、奇妙なことに、仮想人格を介して自らを作り直そうとしている少女と、あまりにも似通った行為だった。
決定的な相違点は、芳乃が自身を当てはめようとしている形が、自分自身で作り出したものであること。何かに押し付けられた役割に安寧し、それで満たされている自分とは、あまりにも違っていた。
「芳乃。貴方は、正しくありなさい」
「それこそが、きっと“貴方”という人間なのですから」
――――だから、その言葉が自然に出てきた。
苦しい生き方であるかもしれない。他にもっと良い解答があるのかもしれない。何より、自分自身の言葉の正しさを証明することすらできやしない。
それでも、言わずには居られなかった。
きっと彼女は、自分が縛って良い人間ではないのだと。未熟であろうとも、自分が誰でもない誰かだとしても、自分自身で立ち、進んでいこうとしていた彼女を、引き止めてはいけないのだと。
半ば、無意識から突き動かされるように、少女は告げた。
芳乃の持つ願い。もっと生きていたい、という願望の先にある、“誰でもない誰かになりたい”という願いに触れたことで、少女は決定的な変質を果たした。
それが他者から見て如何に歪なものであろうとも、或いはどれほどに美しいものであろうとも、正しさの秤を決めるのは、自分自身。
それこそが、“自分”になることなのだと、少女は理解した。
そして、世界になみなみと満たされた願望は、辛うじて聖杯と繋がっていた少女が加え入れた最後の一滴によって溢れ出た。
芳乃のように、“誰でもない誰かになりたい”という願望を抱いたことで、我を完全に確立した少女は幻影世界の制御権を失陥。
同時に、幻影の維持を拒む異分子を排除するべく、システムとしてのみしゃぐちが牙を剥いた。
幻影を維持するもう一つの要である芳乃を隔離し、『全て唯一つ 』によって無限に等しい「願いの残骸」を召喚。
仮想人格と復元人格が混在する少女を再フォーマットすることで、再び幻影世界を維持することを試みる。
少女は、それを否定した。
「最早、器として願いを受け続けることはない。私は、私自身を渾沌のままに留め置くつもりはない」
「空虚 であることはもう止めた。例え泡沫だとしても、私は原初 に立つと決めた」
「私は、『みしゃぐち』だ。願いの果てに形作られた、ただ一つの私だ」
やがて、少女は――――みしゃぐちは進んでいく。
第五次聖杯戦争に纏わるサーヴァント達、そしてマスター達の協力を得て。
咲茅の滝壺の奥底、嘗て聖杯が存在したその領域へ。
繰り返す四日間を、聖杯戦争を続けようとする芳乃を止める為。
「嘘はつけません。私はきっと、まだ願いの続きを見たいのです」
「でも。それは、終わってしまった私の願いで。嘘ではなくても、現実ではない」
「だから――――見送らせてください。貴方という未来が続くのなら、それは、私にとっての喜びです」
「私 という形を失って、ただの魔力に還ったのだとしても」
「無意味ではない。決して、意味が失われることはない」
「さようなら、マスター。貴方という色を、私は、きっと忘れない」
しかし、その本源にあるものこそは、自戒。満たされない今の上を生きる為に、何かに追い立てられなければ立っていられない。芳乃は、そんな不器用な人間でもあった。
誰でもないから、作られた形に自分を当てはめる。それは、奇妙なことに、仮想人格を介して自らを作り直そうとしている少女と、あまりにも似通った行為だった。
決定的な相違点は、芳乃が自身を当てはめようとしている形が、自分自身で作り出したものであること。何かに押し付けられた役割に安寧し、それで満たされている自分とは、あまりにも違っていた。
「芳乃。貴方は、正しくありなさい」
「それこそが、きっと“貴方”という人間なのですから」
――――だから、その言葉が自然に出てきた。
苦しい生き方であるかもしれない。他にもっと良い解答があるのかもしれない。何より、自分自身の言葉の正しさを証明することすらできやしない。
それでも、言わずには居られなかった。
きっと彼女は、自分が縛って良い人間ではないのだと。未熟であろうとも、自分が誰でもない誰かだとしても、自分自身で立ち、進んでいこうとしていた彼女を、引き止めてはいけないのだと。
半ば、無意識から突き動かされるように、少女は告げた。
芳乃の持つ願い。もっと生きていたい、という願望の先にある、“誰でもない誰かになりたい”という願いに触れたことで、少女は決定的な変質を果たした。
それが他者から見て如何に歪なものであろうとも、或いはどれほどに美しいものであろうとも、正しさの秤を決めるのは、自分自身。
それこそが、“自分”になることなのだと、少女は理解した。
そして、世界になみなみと満たされた願望は、辛うじて聖杯と繋がっていた少女が加え入れた最後の一滴によって溢れ出た。
芳乃のように、“誰でもない誰かになりたい”という願望を抱いたことで、我を完全に確立した少女は幻影世界の制御権を失陥。
同時に、幻影の維持を拒む異分子を排除するべく、システムとしてのみしゃぐちが牙を剥いた。
幻影を維持するもう一つの要である芳乃を隔離し、『
仮想人格と復元人格が混在する少女を再フォーマットすることで、再び幻影世界を維持することを試みる。
少女は、それを否定した。
「最早、器として願いを受け続けることはない。私は、私自身を渾沌のままに留め置くつもりはない」
「
「私は、『みしゃぐち』だ。願いの果てに形作られた、ただ一つの私だ」
やがて、少女は――――みしゃぐちは進んでいく。
第五次聖杯戦争に纏わるサーヴァント達、そしてマスター達の協力を得て。
咲茅の滝壺の奥底、嘗て聖杯が存在したその領域へ。
繰り返す四日間を、聖杯戦争を続けようとする芳乃を止める為。
「嘘はつけません。私はきっと、まだ願いの続きを見たいのです」
「でも。それは、終わってしまった私の願いで。嘘ではなくても、現実ではない」
「だから――――見送らせてください。貴方という未来が続くのなら、それは、私にとっての喜びです」
「
「無意味ではない。決して、意味が失われることはない」
「さようなら、マスター。貴方という色を、私は、きっと忘れない」
和装を纏った、背が高めの少女。その相貌は、第五次聖杯戦争に関わったある少年に酷似している。
身長・体重共に、実際に生きた時代を鑑みれば恵体と言っても良いが、生前の身体の発育は良くなかった模様。
今の身体は、模倣した少年の体躯をベースに、生前に施された肉体改造の影響が一部現れた状態のものである。
目は死んでおり、普段は其処からおよそ意志らしきものは見受けられないものの、時折、蘇ったように彩りを取り戻すことがある。
生前の様々な影響から、本来の人格は存在しない、という意味で無我であるはずのみしゃぐちだが、この状態での人格面については、模倣元になった少年の影響が極めて強い。
本来の人格は完全に失われた状態だった為、キャンサーのみしゃぐちの中にある人格の僅かな欠片を、模倣元の人格で作った素体に無理やり埋め込んであるような状態である。
即ち、自分という存在に対する不安感が極めて大きく、自分は誰かの為に存在しなければならない、という強い無意識的傾向を持つ。
願望器に溶け込んでいたという経歴と、その傾向の相性は良好であり、この性格もまた、みしゃぐちが幻影世界を続けようとした一因であるとすら言える。
一方で、不安感の原因となるものを克服しようとする衝動も同様に抱えているものの、それは模倣元の人格とは異なり、“もっと誰かの為にならなければ”、という形で発露している。
その強迫的観念は、逆説的に“誰かのためになっているのであればそれで良い”という極めて歪な行動原理を生み出しかけていた。
これ故に、仮想人格の稼働当初は、幻影世界を運用する聖杯の中のみしゃぐちにとって都合良く、誰かを助けるという形で願望を拾い集めることができていた。
……が、その奥底に眠る、みしゃぐち本来の願望。つまり、あの時に見た“色”をもう一度見たい、という想いが、復元人格を変質させていった。
当初、復元人格の方は、模倣元の人格の持つ不安感を解消する為に動く、まるで子供のような短絡的且つ衝動的な人格だった。
しかし、模倣人格の持つ「誰かの為に」、という想いが、本来持つ願望に触発されることで、次第に「自分の求めるものの為に」、という形に変化。
原始的願望から高次的願望へと求めるものがシフトしていく程に、精神的にも複雑化していった。
最終的には、他の誰でもない誰か、“自分”になりたい、という願望に接触したことで、不安を原動力にして、だからこそ懸命に今という時間を生きる、という思想に辿り着いた。
その存在形式は、嘗て見た“色”への執着として現れており、ハレとケの合間に潜む、日常と非日常の境界線における情動を大切にしている。
有り体に言うと、エンジョイ&エキサイティング。思い切り楽しみ、思い切り遊び、そしてハレからケに戻る合間には、余韻に思う存分浸る。
そうして得た“色”こそが、人間にとって最も重要な価値であると、そう確信している為だ。
逆に、模倣人格の持つ頑固な部分は変わることなく受け継がれたようで、自身の思想と噛み合わない場合、他者との衝突も厭うことがない。
例えば――――折角得られたプラスにマイナスを加えることで、ゼロへと引き戻そうとするような手合いとは、正面衝突も待ったなしだろう。
ゼロとは飽くまでも起点。それを元に、人は出来事を積み重ねていくものだと(そして望ましくはそれはプラスのものであると)、今の彼女は信じている。
イメージカラー:無色透明
特技:楽しむ!
好きなもの:生きていくこと
嫌いなもの:自分以外に自分を委ねること
天敵:何でもかんでもとにかくゼロに戻そうとする人
願い:どうか、彼女の未来が、自らの願いに沿うものでありますように。
【一人称】私 【二人称】貴方 【三人称】彼、彼女
身長・体重共に、実際に生きた時代を鑑みれば恵体と言っても良いが、生前の身体の発育は良くなかった模様。
今の身体は、模倣した少年の体躯をベースに、生前に施された肉体改造の影響が一部現れた状態のものである。
目は死んでおり、普段は其処からおよそ意志らしきものは見受けられないものの、時折、蘇ったように彩りを取り戻すことがある。
生前の様々な影響から、本来の人格は存在しない、という意味で無我であるはずのみしゃぐちだが、この状態での人格面については、模倣元になった少年の影響が極めて強い。
本来の人格は完全に失われた状態だった為、キャンサーのみしゃぐちの中にある人格の僅かな欠片を、模倣元の人格で作った素体に無理やり埋め込んであるような状態である。
即ち、自分という存在に対する不安感が極めて大きく、自分は誰かの為に存在しなければならない、という強い無意識的傾向を持つ。
願望器に溶け込んでいたという経歴と、その傾向の相性は良好であり、この性格もまた、みしゃぐちが幻影世界を続けようとした一因であるとすら言える。
一方で、不安感の原因となるものを克服しようとする衝動も同様に抱えているものの、それは模倣元の人格とは異なり、“もっと誰かの為にならなければ”、という形で発露している。
その強迫的観念は、逆説的に“誰かのためになっているのであればそれで良い”という極めて歪な行動原理を生み出しかけていた。
これ故に、仮想人格の稼働当初は、幻影世界を運用する聖杯の中のみしゃぐちにとって都合良く、誰かを助けるという形で願望を拾い集めることができていた。
……が、その奥底に眠る、みしゃぐち本来の願望。つまり、あの時に見た“色”をもう一度見たい、という想いが、復元人格を変質させていった。
当初、復元人格の方は、模倣元の人格の持つ不安感を解消する為に動く、まるで子供のような短絡的且つ衝動的な人格だった。
しかし、模倣人格の持つ「誰かの為に」、という想いが、本来持つ願望に触発されることで、次第に「自分の求めるものの為に」、という形に変化。
原始的願望から高次的願望へと求めるものがシフトしていく程に、精神的にも複雑化していった。
最終的には、他の誰でもない誰か、“自分”になりたい、という願望に接触したことで、不安を原動力にして、だからこそ懸命に今という時間を生きる、という思想に辿り着いた。
その存在形式は、嘗て見た“色”への執着として現れており、ハレとケの合間に潜む、日常と非日常の境界線における情動を大切にしている。
有り体に言うと、エンジョイ&エキサイティング。思い切り楽しみ、思い切り遊び、そしてハレからケに戻る合間には、余韻に思う存分浸る。
そうして得た“色”こそが、人間にとって最も重要な価値であると、そう確信している為だ。
逆に、模倣人格の持つ頑固な部分は変わることなく受け継がれたようで、自身の思想と噛み合わない場合、他者との衝突も厭うことがない。
例えば――――折角得られたプラスにマイナスを加えることで、ゼロへと引き戻そうとするような手合いとは、正面衝突も待ったなしだろう。
ゼロとは飽くまでも起点。それを元に、人は出来事を積み重ねていくものだと(そして望ましくはそれはプラスのものであると)、今の彼女は信じている。
イメージカラー:無色透明
特技:楽しむ!
好きなもの:生きていくこと
嫌いなもの:自分以外に自分を委ねること
天敵:何でもかんでもとにかくゼロに戻そうとする人
願い:どうか、彼女の未来が、自らの願いに沿うものでありますように。
【一人称】私 【二人称】貴方 【三人称】彼、彼女
「わたしはサモナー。そう、サモナー。でも、名前はない」
「どうしてかもわからないけど、でも、わたしはサーヴァントだから」
「あなたにしたがう。これからもよろしく、……よしの」
「どうしてかもわからないけど、でも、わたしはサーヴァントだから」
「あなたにしたがう。これからもよろしく、……よしの」
「――――嗚呼。そう、そうだった。私には、名前が無かったんだ」
「これが、“私”か。こんなガランドウで、カラッポなものが“私”なのか」
「だったら……私は、私 のままでいい。この楽しい時が続くなら、私は“私”じゃなくてもいい」
「貴方も、そう思うでしょう? 芳乃――――」
「これが、“私”か。こんなガランドウで、カラッポなものが“私”なのか」
「だったら……私は、
「貴方も、そう思うでしょう? 芳乃――――」
「その色が綺麗だったから、私は焦がれた。だからこそ、器だった私は、あんな末路を迎えたのだろう」
「でも、漸く思い出した。私は、それを悔やみも恨みもしなかったんだ」
「ただ――――あの色をもう一度見たいと。それだけが、私に残されたたった一つの“私”で。それだけが、最後まで手放さなかったもの」
「これが“私”の始まり だというのなら。私は、其処に還るべきなんだろう」
「だから、芳乃。時計の針を巻き戻すのは、もう終わりです」
「でも、漸く思い出した。私は、それを悔やみも恨みもしなかったんだ」
「ただ――――あの色をもう一度見たいと。それだけが、私に残されたたった一つの“私”で。それだけが、最後まで手放さなかったもの」
「これが“私”の
「だから、芳乃。時計の針を巻き戻すのは、もう終わりです」
- 染伊芳乃:マスター
芳乃が目覚め、夜を迎えた当初、みしゃぐちの復元人格はまだ未完成の状態であり、端的に言って、サーヴァントらしからぬまるっきり子供のような精神性しか有していなかった。
そんな彼女を、それでも自らのサーヴァントとして認め、切り捨てることなく戦い続けた。自分の願いの為であると言いつつも、その実、自身の信じる“正しさ”を求めて。
魔術師らしからぬその甘さと共に、みしゃぐちは人格を取り戻していった。
やがて、真実を取り戻したみしゃぐちも、真実を告げられた芳乃も、未来へ踏み出すことを拒もうとした。
永遠に終わらない今が、如何に心地よい幻影か。例えどこにも辿り着けないのだとしても、この安寧は不変だと知ったことで、共に堕落しかけすらした。
――――それに歯止めをかけたのも、また、芳乃だった。
「私は“私”じゃなくてもいい」、思わずみしゃぐちの口から漏れ出たその言葉を、芳乃は“正しくない”と思ったのだ。
その姿に、みしゃぐちは悟る。誰でもない誰かを求める彼女を、縛り続けることは、きっと“正しくない”のだと。
そして――――。
- ゼロ師匠:天敵
「積み上がったものは、どうあれそれまでの人間の在り方の結果です。良いも悪いもなく全部ぱあにするのはどうかと思います」
「……。…………。………………………」
「まあ。ゼロに戻したから、始まるものがある。それは……身を持って理解してますから」
「あの人の性癖も所業も知ったことじゃないですけど。感謝は、してますよ」
「変なところだけ真面目なんですから……全く」
どの可能性を辿っても聖杯戦争終結時には必ず死ぬ、凍巳紗澄徒という変数に代入された項。
芳乃が望む第五次聖杯戦争を、みしゃぐちが経験した第三次聖杯戦争で再演する。幻影世界の夜に繰り広げられたその戦いにおいて、本来いるべき主要人物の欠落を埋める為に取り込まれた人間の情報体。
積み上げられたものをゼロに還すことを是とする彼は、それ故に、繰り返しを積み上げ続けた芳乃とみしゃぐちの前に現れて、度々警句を発する。
復元人格が未完成な頃のみしゃぐちはそれを理解できず、逆に完成に近づいたタイミングでは、心地の良い繰り返しの終了を迫ることに対する反発から、彼を嫌悪すらしていた。
――――まるで、これまでの自分を、漸く芽生えた“自分”という存在を、全て否定されてしまうような気がして。
しかし、真実に気づいた芳乃との対話によって、これまで積み上げてきた「願望の器としての自分」を捨て、「誰でもない誰かとしての自分」を願ったことで、その意図に気がつく。
ゼロに至れば全てを捨てることになる。しかし、それと同時に、ゼロは何かを新しく始める「始まり」でもあるのだ、と。
『
「私も、ゼロに還ります」、と。
- 十影典河:宿主
「私という自分は、彼から作られました。でも、あんな風に自分を追い詰める在り方は、きっと芳乃以上に息苦しい」
「ですが――――そうですね。彼の花を、私は綺麗だと思いました」
「微かに見えるんです。どの可能性でも、彼は、綺麗な花を咲かせた。時には自分自身を犠牲にしてまで、
「あんな花を咲かせられるというのなら。あんな人が、世界に一人くらいいたっていいんじゃないでしょうか」
「勿論、私は同じように生きるなんて御免ですけどね」
日中に被っていた「皮」、即ちは模倣人格の元。第五次聖杯戦争、そして芳乃にとっての“願い”を象る偶像。
他の人物は本物のデータをそのまま幻影世界に投影しただけだが、偶像だけはみしゃぐちとの接続を確保する必要がある為、彼女自身が彼に成り代わる形で幻影世界で活動していた。
彼が抱いていた“愛されていない”という不安、そして不信が醸成してきたその歪な人格は、模倣を行ったみしゃぐちの復元人格にまで影響を及ぼしている。
即ち、誰かに迷惑をかけてはならず、誰かを助けなければならない、という強迫観念であり、自分には価値がないのだという思い込み。
しかし、復元人格が真実を取り戻すにつれて、変質した『
そして、一際目を惹いたのは、彼が固有結界を暴走させ、聖杯の泥に蝕まれた自らを草花に還元しながらも、ただ一人の少女の為に進み続けたこと。
みしゃぐちに、その心理はわからない。ただ嫌いだと言うためだけに、自死も同然の手段で進み続けたその心は。
ただ。その場面の最後で、みしゃぐちは、彼が自身を染めていた無数の願望を呪いとして草花に変えたからこそ、自分という本来の人格が浮かび上がってきたことを知る。
触れたものを巨きな力の塊へと回帰させる聖杯の泥。それを、誰でもない誰かとして昇華した果てに咲いた、人の形を為す花の姿を。
それを美しいと思ったことを、みしゃぐちは思い出した。
理解できるとは思わない。もし自身に生があったとして、そんな生き方を真似しようとも思わない。
しかし、その美しさに触れたことで、何かが変わる生命があるというのなら。それはそれでアリだと、彼女は思っている。
- ロエサ・ディー・アンドリュズ:嘗てのマスター
「それが生み出したモノこそが、今私が相対する全て。……ある意味では、自業自得とも言えますか」
「だからといって、止まってやる道理はない。嘗てのマスターよ。私は、もう器であることを辞めるのだ」
「――――我が鉄鈎は武威を防ぎ、我が藤鈎は武威を失す! 道を開けろ、願いの骸ども!」
『
土夏に根付いた外来の旧御三家。それらの内、自身を呼び出したことでその後に様々な悲劇を引き起こした、その張本人。
現在の状況を利用してなおも自身の目的の為に足掻く彼に対し、明確に決別を告げる。
此処にあるのは、願いを受ける器に非ず。如何なるものにも未だ染まらぬ、透徹の色なるがゆえに。
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