ノスしるべ作文コンクール2019 テーマ【Op.2】Entry21
ピアノのゲームと曲の小話
ノスタルジアOp.2というゲームには「残日の聲」という曲がある。
これを読む人はきっとほとんどがノスタルジアユーザーだろうから、もうみんなお馴染みの曲かもしれない。
私にとってのノスタルジアの始まりは、この「残日の聲」だった。
初めに少しだけ自分の話をさせてもらうと、音ゲー自体に直近数年間のブランクがあって、復帰したのが2019年の春頃の話。メイン機種はギターフリークスかポップンかなあと思うものの、その時によってまちまちなやんわり多機種勢…
ノスタルジアが登場したのはちょうどそのブランクの期間辺りだったから、どんなゲームなのか最近まであまり知らなかった。
そんな私がノスタルジアを「よし、やってみよう」と思ったきっかけのうち、かなりの割合を占めているのがこの「残日の聲」。
そもそものこの曲との出会いは、(公式の確定情報はないのでふわっとした書き方をするけれど)「残日の聲」の作曲者「ToWha」の正体だと囁かれているアーティストがかつて私が好きな人らしいと聞かされて、気になって「ToWha」名義の曲を聞いてみた、というちょっとミーハーなノリだった。
当時はまだ「凪を穿つ」は登場しておらず、「枕元で聞いた不思議な国のお話」と「残日の聲」を順番に聞いた。「枕元」がなんというかこう、あまりにも「そうですね…」という曲調で正直少し笑ってしまったんだけど(名義、変える必要あるんですか…!?)私の心を射抜いたのは、「残日の聲」の方だった。
「残日の聲」、この曲は、ダークですごく繊細で、そしてなんて可愛い曲なんだろう!
例えるなら、重厚だけど甘くて華やかな沢山のフリルで飾られているゴシック・アンド・ロリータファッションの趣きのような、そんなイメージの可愛らしさ。なんじゃそりゃ…という感じだけど自分にもよく分かりません。初っ端からポエムのような比喩を炸裂させてしまうくらい、とにかくこの「残日の聲」という曲に心奪われた。
どうしてもこの曲を筐体で聞きたくなった、譜面と合わせて曲を体感したかった。私は、音楽ゲームの曲を一番最高のセッティングで楽しむことが出来る環境は、ゲームセンターの筐体から流れる曲を、譜面を理解しながら叩いている時だと今も昔も信じている。
こうして遅ればせながら私もノスタルジアの世界に飛び込むことになった。
そもそもBEMANIプレイヤーとして復帰した時、印象としてノスタルジアユーザーがかなり多くて、その事に少し驚いた記憶がある。やや尖った言い方に聞こえるかもしれないけど、「新しいゲームがきちんと人権を得ている」と思ったのだ。音楽ゲームが世に登場してもう長い時間が経ったし、たくさんのタイトルが現れては消えていく昨今、新しいものを成功させるのはすごく難しい。だけどノスタルジアは目の肥えたヘビーユーザーにも愛されていた。自分が始めるまでは少し不思議に思っていたけど、体感してみて「愛されるだけの世界がノスタルジアには確かにある」とよく分かった。
素人目にも、このゲームはものすごく「こだわって」作られているのが分かるのだ。こだわりを持って作られてるゲームは、やっぱり楽しい。
自分は液晶をタッチするよりボタンを叩くゲームが好きなので、その辺の相性もあったのかもしれない。でもボタンを使ったゲームは正直最初の敷居が高い。ノスタルジアは自分にはその敷居がかなりちょうどよかった。簡単過ぎない歯ごたえがあって、でもしっかりとした演奏感があって、やっていて楽しい、気持ちいい。低難易度がこんなに楽しいゲームは久しぶりだった。譜面の割り方にも他のゲームとは違う特徴があるような気がした。
それとノスタルジアをやって驚いたのが、徹底されたゲーム全体のデザインだ。これはビジュアル面だけの話ではなくて、世界観の作り方、という言い方の方がより正確かもしれない。
正直ノスタルジアを始めるまでは、音楽ゲームに限らずゲームはゲーム性がなにより一番、雰囲気やデザインに関してはそれほど重視していなかったけれど、その考えがノスタルジアによって完全に覆された。本当にびっくりした。
自分の好みの話をすればポップだったりビビッドな色合いだったりが趣味なので、ノスタルジアのように柔らかくて切ない、アンティーク調のビジュアルは普段の好みの路線からは遠いところにある。だけどそんな好みの補正を無視してもノスタルジアのデザインは素晴らしい。そしてそんなテイストに寄り添う収録楽曲陣、考察の余地を残すストーリーとキャラクター達。全てが丁寧に丁寧に用意されていて、全ての要素がこのノスタルジアというゲームを作っていた。ゲームとしての気持ちよさに、確かにこの世界観が影響していた。
そんなノスタルジアの世界のストーリー考察やゲーム性について、詳しい話は有識者に任せておくとして、私は私の好きな曲の話をしようと思う。
ノスタルジアを始めるきっかけになった「残日の聲」はもちろん特別な曲で大好きなんだけど、洗練されたノスタルジアオリジナルの楽曲群はとにかく素敵な曲が多い!
まず気に入ったのが「n番目の女」。情熱的でノリノリで演奏出来る曲調がすごく自分好み。デフォルトで置いてあるのも良かった。
「Voyager」は一目惚れ…ならぬ一聞き惚れ。爽やかでキラキラしてて、晴れの日の朝の水面みたいなとっても綺麗な曲。
「一夜の恋」はこれ音楽ゲームの曲のひとつという枠に収めたままでいいの!?カフェとかバーで演奏されて欲しい…!と感銘を受けたオシャレすぎる1曲。
オリジナル曲だけでも挙げればキリがないし、さっきも書いた通り版権楽曲やクラシック、他機種からの移植曲も厳選された良曲ばかり。
ノスタルジアやGITADORAのように楽器がモチーフになっているゲームだと、そのゲームに合わせて楽曲内の楽器の音量バランス調整やアレンジが施されることが多いけど、ノスタルジアはこれがまた良い。お馴染みのBEMANI楽曲の新しい側面、今までにない魅力を体感することが出来る。
ここでもまたいくつか具体的に曲を挙げてみようと思う。
ノスタルジア版「僕の飛行機」、これなんかもう存在が奇跡では?これをゲームで遊ぶのに相応しい舞台は間違いなくノスタルジアしかない。Vレア版とはまた音源は違うけど、そこからずっとこの曲はノスタルジアのことを待っていたんじゃないかなとすら思える。
アレンジ…というか、音源の差が衝撃だったのは「Idola」。元々好きな曲だったけどノスタルジアの「Idola」はピアノの音が本当に星みたいに綺麗で、神話の世界の存在みたいに感じられた。
そして絶対に絶対に外せない一曲、2018年の大型連動「BEMANI SUMMER GREETING」で登場した「Puberty Dysthymia」。
私はこの曲がとにかく本当に本当に大好きで、BEMANIに本格的に復帰するきっかけになったのもこの曲だし、詳細はここでは割愛するけどこの曲との出会いも運命だと本気で信じている。好きすぎてもはや具体的にどこが好きなのか分からなくなってる気もするし、細かい好きなところをひとつひとつ無限に挙げられる気もする。「Puberty Dysthymia」ガチ恋勢だと言ってもいい。(音楽に対するガチ恋って一体なんだ…?というのは自分でもよく分からないけど…)
どの機種で聞く「Puberty Dysthymia」も最高だけど、ピアノとギターの音色がメインのこの曲が一番綺麗に聞こえて、映えるのはやっぱりノスタルジアだ。ノスタルジア、「Puberty Dysthymia」を最高の音楽にしてくれて本当にありがとう…!
ノスタルジアOp.2でこのゲームの魅力にどっぷりハマって、時が流れて気がつけばタイトルはOp.3に。今作でも素敵な楽曲にたくさん出会えることを期待して、自分のペースでこれからも楽しんでいこうと思う。
2019.12.7 矢澤豆太郎
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