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修司 5/3(日) 01:22:11 No.20090503012211 削除
隠し事を持っていると、些細な事にもビクビクしなければなりません。
どんなに旨く隠しているつもりでも、もしもと思う気持ちが働くのです。
今の妻は、その恐怖に怯えているのかも?

「この前の電話だけどな、誰だか分かったよ。見せたいものがあるんだ」

着替えも済ませずソファーに座り、深刻な声で溜息を吐きながらなのですから都合の悪い話なのは感づいているはずです。
こちらに目を向ける妻の表情に不安の色を隠せないのが分かりました。

「悪いとは思ったが、色々調べさせてもらった」

視線に落ち着きがありません。

「電話の話をした時、由梨絵は誰だか分かっていたんだろう?」

「・・・いいえ・・・」

その後に何か続けたかったのでしょうが、言葉を飲み込んだようでした。
これから私がどんな話をしようとしているのか分からない以上、余計な事を話さない方が得策だと思ったのでしょうね。

「回りくどい話はしない」

興信所の調書を妻の前に突きつけたのでした。

「食事に誘った時に見ちゃったって言ったよな。
変な電話の後だったんでな。まさかと思いながらも疑ってしまった。それは知っていたよな。
あの後電話も来ないし、お前の様子も不自然だった。真面目過ぎたものな。
それで今回の出張に目を付けたのさ。
何かあるんじゃないかとね。でもな、信じたいと思う気持ちが強かった。
だから調べさせてたんだよ。ちゃんと目を通して答えてくれないか」

ゆっくりと封筒を開いて中の調書を見ている表情が暗くなり、顔色がみるみる青白くなっていきます。

「この前の人と一緒だったんだな」

「・・・・・・・・・・・」

「黙っていたって、そこに全てが記されてる。ホテルの部屋も一緒だったんだろう。
言い逃れは出来ないよな」

何か良い言い訳を考えようとしても、興信所の調書は完璧です。
言えば言うほど墓穴を掘るでしょう。そのくらいは妻も気付いています。

「何時から疑っていたの?」

視線を逸らし、時には合わせて聞いてきます。

「あの電話からだ。俺の番号を教えたのは、お前か?」

「違うわ。教えたりしない・・・」

「そうか。まぁ、いいや。だけど何時から、こんな関係になった?」

「・・・・・・・・・」

「俺と別れたいか?」

「・・・・そんな事、思っていないわ・・・・・」

うつむいて呟くように答えました。

いくら夫婦でも、長い歴史の中では色々な出来事が起こるものだと思います。
私だって潔白ではありません。道理的には妻だけを責める訳に行かないのでしょうが、自分の事は棚に上げるのが人間なのです。

「誤魔化しは利かないのだから、全て隠さずに話してくれ」

伏せていた顔を上げましたが視線が定まっていません。
どのような話を聞かされるにしろ、ショックなものになるのでしょう。
私も肝を据えて向い合います。

「・・・・貴方・・・ごめんなさい・・・・この書類の通りです・・・・でも・・・急に彼の助けが必要になって来てもらったの・・・・
こんな事は今回が初めてなの・・・・貴方が疑っているような事は・・・・」

「そうかな?初めてだろうが無かろうが、そんなのはいいじゃないか。
一回も二回も関係ないんだよ。
俺は初めてだとは思っていない。だいたいホテルで待ち合わせてたと記されてるだろう。急に来てもらったんじゃないな。騙そうとしても後が辛くなる。全て話せよ」

しばらく沈黙の後、私にぼんやりと視線を合わせてきました。

「何処まで知ってるのですか?」

「この調書以上は知らない。だけど俺にしてみれば、これが全てなんだ」

「・・・・許してくれるの・・・」

「・・・・分からない・・・・何故こんな思いをしなければならないのかも理解出来ていないいんだ・・・・」

私の眼光は、きっと鋭いでしょう。嘘は見逃しません。

「ごめんなさい。この通りです・・・でも・・・ごめんなさい」

『でも』の後に続く言葉は何なのでしょう。

「うん、それは此処に示されてる。俺は由梨絵が如何して家族を裏切ったのかを知りたい。何故こんな事に・・・・・」

私の気持ちも昂って次の言葉が出ませんでした。
この時、私は色んな感情が入り乱れて、これからの行き着くところが何処なのかも考えていませんでした。


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