経済・経済学に関するメモ。

経緯

アーヴィング・フィッシャー
フィッシャーは、大不況から回復するには、貨幣供給を増やし物価水準を負債契約が結ばれた時点の水準にまで引き上げた上で、その水準を維持する必要があると述べている(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、99頁)。
田中秀臣
歴史上最初のインフレ目標採用国はスウェーデンで、中央銀行であるリクスバンクが一九三一年に「通貨プログラム」という名の下に物価水準目標を設定しています。このプログラムは一九三七年まで続いています(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、249頁)。
田中秀臣、野口旭、若田部昌澄
30年代に物価水準目標政策を実施したスウェーデンを除くと、世界で最初にインフレ目標政策を採用したのが、ニュージーランド。88年、当時の財務相が約6%あったインフレ率を数年間「1-0%程度」に抑制する方針を表明。90年には、新中央銀行法にもとづき、正式にインフレ目標を設定した。97年から99年にかけて物価水準が前年比でマイナス、年間インフレ率が1%に低下した際に、超金融緩和によってデフレから脱却した(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、51頁)。

各国の設定

野口旭
健全なインフレ率は、これまでの人類の経験則から2-3%といわれている(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、95頁)。
岩田規久男
インフレ目標採用国の中央銀行は、資産価格や原油価格の高騰によって、実際のインフレ率が中期的に目標インフレ率よりも高くならないと予想される限り、資産価格や原油価格を引き下げるための金利引き上げ政策(これを金融引き締め政策といいます)はとらない、という方針を採用しています(岩田規久男 『景気ってなんだろう』 筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉、2008年、160頁)。
高橋洋一
本当はインフレ目標は「2%以下」というような言い方をすべきものです。失業率が最低になったときのインフレ率の許容量のことだから、「2%以下」という言い方をするECB(欧州中央銀行)なども含めて、「何%以下」という言い方をしているところが多い(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、56頁)。

政策の有用性

田中秀臣
インフレ目標2%ということは、将来時点では貨幣に対する超過供給が発生するようにするということ。そうなると、現在の市場では超過需要が発生します。売れ残りが解消され、人手不足になって、失業が解消されたりします。デフレが解消されれば予想実質金利の高止まりを解消することになり、企業はお金を借りようとするインセンティブができ、設備投資も増えます。なぜなら、企業は予想実質金利というものを事実上考慮して設備投資や在庫投資を行っているからです。ただし、インフレ期待を起こさせるためには、招来にわたってマネーをたくさん供給し続けますよと言わないと、誰も信じません。ですからインフレ目標をつくって、インフレ目標が達成されるまでは量的緩和をやり続けると宣言することが必要になります。量的緩和は、言っってみれば、インフレ目標のおまけみたいなもので、将来時点でみんあにインフレが起こると思わせることができるのであれば、国債購入でなくとも、株を買ったり、土地を買ったり、ポテトを買ったりして日銀が貨幣を供給しても別にいいわけです(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、118頁)。
岩田規久男
われわれが提案した政策の採用により、資産価格の大幅な下落や民間投資の強度の低迷、さらに過大評価された円レートといった問題は解消に向かうことになろう(岩田規久男編著 『昭和恐慌の研究』 東洋経済新報社、2004年、288-289頁)。
岩田規久男
市場参加者の間に「中央銀行は、金融政策を中期的に目標インフレ率を達成するように運営することにコミットする」という動学的整合性に対する信頼が形成されると、中央銀行のインフレ予想の発表だけで、市場金利や株価や為替レートなどがは適切な方向に反応するため、中央銀行はごくわずかに政策金利等の政策変数を変化させればよいことを示している(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、150頁)。
田中秀臣
現在の先進国(日本、ユーロ圏、イギリス、アメリカ)は、それぞれインフレ目標を設定していて、その目標値を大きく上回るようなインフレになれば、積極的に金融引き締めにコミットするように公約している。どんなに経済が過熱していてもその結果としてインフレが目標値以上に高騰すれば、やがて中央銀行が金融引き締めに転じるであろうと、多くの市場関係者たちが予測し、またはすぐに予測できなくても次第に学習することで、自分たちの経済上のポジションを金融引き締めに適合したものに変更する。これによって自己実現的に経済は金融引き締め型に転換していく、というのがインフレ目標の重要なポイントだ。簡単に言うと、人々の予測をコントロールしていく政策である(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、211頁)。
田中秀臣
現在の日銀政策委員である原田泰氏は、(1)マネーと物価は連動している、(2)物価はいきなり猛烈に上昇するのではなく半年以上、通常は1年から数年かかる、ことを指摘している。このことから、中央銀行はインフレ目標を設定することで、物価が上昇し始めても十分にインフレを抑制することが可能だ、ということになる(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、212頁)。
田中秀臣
インフレ目標は上限も定めるが、デフレに陥らないようにできるだけ目標値に近い水準を目指して経済を運営するのが、いまの中央銀行の標準であり、日本もそうだ(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、212頁)。
ベン・バーナンキ
委員会のメンバーから「インフレターゲットを採用することによって物価安定の方が優先され、雇用が確保されないのではないか」という質問が出た。それに対してバーナンキは「インフレターゲットは物価と雇用の安定の両方に貢献することができる」と言い切っている(田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、174頁)。

政策の効果

岩田規久男
一九九〇年代以降、一九八九年にニュージーランドが採用し始めたインフレ目標政策を採用する国が増大し、二〇〇八年秋に世界金融危機を原因とする世界同時不況発生するまで、極めて良好な成果を収めた。(中略)どの国もインフレ目標政策採用後に、インフレ率が低下する一方で、実質成長率が上昇していることから分かるように、インフレ目標政策は良好な成果を収めている(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、171-172頁)。
岩田規久男
1980年代とインフレ目標政策採用後の93年から2008年までのイギリスのマクロ経済成果を示したものである。インフレ目標採用後に、成長率は安定的に上昇し、インフレ率は低い水準で安定し、失業率は低下したことが分かる(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、144頁)。
岩田規久男
インフレ目標採用後のオーストラリアのマクロ経済効果はきわめて良好である(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、149頁)。

日本

田中秀臣
日本銀行はこれに先立ち、二〇〇〇年一〇月にも「『物価の安定』についての考え方」という報告書を発表していますが、当時の報告書の結論は、「物価の安定を数値で示すことは適切でない」という、あきれかえるようなものでした(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、194頁)。
田中秀臣
二〇〇六年版では六年前よりは踏み込んで、「物価の安定」とは「消費者物価指数でみて変化率がゼロ%の状態」であり、許容範囲として「〇%から二%までならばいい」という具体的な数字が挙げられています。しかしこれは単なる委員の感想の中央値であり、政策責任を負った政策目標とはいえません。実際に福井総裁は「政策目標ではない」と説明しています(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、194頁)。

導入推進論

ポール・クルーグマン
現時点で金融緩和の余地がなくとも、将来の時点では金融緩和の余地があるからそれにコミットすることで、流動性の罠から脱出してデフレとデフレ期待を克服することができるできるとした。この将来の金融緩和の具体案としてクルーグマンはインフレターゲット(インフレ目標)政策を提示した。(中略)しかしクルーグマンのインフレターゲット政策の核心は、市場参加者の期待形成に影響を与えるということにある。(中略)つまりクルーグマンの提案はマイナスの実質利子率を達成することで経済の不安定性を解消する、というわけである(田中秀臣 『経済政策を歴史に学ぶ』 ソフトバンククリエイティブ〈ソフトバンク新書〉、2006年、185-186頁)。
ポール・クルーグマン
わざわざ日本向けに書き下ろした近著『危機突破の経済学』(PHP研究所)の中でも、「日本の場合、大型の財政政策は難しいので、金融政策としてインフレ・ターゲットを導入すること」を提唱し、インフレ目標としては「以後一〇年間については四%」という「高め」の率を推奨しています(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、103頁)。
日本銀行の見解
速水優
インフレターゲットというのは、インフレの国が採用しているのでデフレの国がやっているというのは聞いたことがない(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、111頁)
白川方明
11月3日の講演では、「インフレ的な政策を採用すれば、さまざまな問題が起こる」ので「そうしたことは中央銀行は決して行わない」と強調している(勝間和代・宮崎哲弥・飯田泰之 『日本経済復活 一番かんたんな方法』 光文社〈光文社新書〉、2010年、181-182頁)。
反論
加藤寛
「インフレ目標論」も、将来不安があるのに、通貨増発による物価上昇の目標をお上が示せば国民は消費を増やすと考える点で単純過ぎる(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、220頁)。
伊藤修
国民の先行き見通し(期待)に働きかけることが大事なのはまさに正しい。しかし、物価は安定していて引き締めに入れないかたわらでバブルが荒狂い、巨大な災厄をもたらした経験を、日本はつい近年にもっている。中央銀行は、物価だけではなく、資産価格が正当な水準から離れて暴れていないかなども注視し、総合的に、また予防的(forward looking)に、政策を運営しなければならないのではないか(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、134頁)。
ジョセフ・E・スティグリッツ
スティグリッツはインフレ目標政策を一般には批判しているが、それは、目標インフレ値が低すぎて失業を解決できないケース(EU)があるからである(田中秀臣編著 『日本経済は復活するか』 藤原書店、2013年、177頁)。
ジョセフ・E・スティグリッツ
インフレターゲット論は、少なくとも短期的にはマネタリズムより害の少ない宗教である。(中略)日本の場合のインフレターゲット論の問題点は、それが短期的に間違った変数に注目することにあり、インフレターゲット政策へのコミットメントが信用できるものだとすれば、そのために金融当局は間違った戦略を長期にわたって推進することになる。金融政策は実質金利(インフレターゲット論者はこれに注目する)よりも、むしろ信用のアベラビリティ(可用性)を通じて景気に影響を及ぼすのである。金融当局が景気をどの程度刺激しているかは、今現在の実質金利(あるいは長期実質金利)よりも信用供給の拡大に注目したほうが正しく推測できる(ジョセフ・E・スティグリッツ 『スティグリッツ教授の経済教室-グローバル経済のトピックスを読み解く』 藤井清美訳、ダイヤモンド社、2007年、27-28頁)。
中野剛志
中央銀行がインフレ目標を宣言して、金融緩和をしただけで、人々がインフレ予想になるという予想を抱くとは限らないということです(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、179頁)。
中野剛志
金融緩和によって増大したマネーが、必ずしも国内の投資や消費に向かうとは限らないという点にあります。(中略)結局のところ、実際に需要不足を解消し、物価が上昇し始めるという実効行性のある政策が必要なのです。しかし、金融政策だけでは、その実効性を上げることができません(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、182頁)。
中野剛志
岩田氏は、自らの「インフレ・ターゲティング」政策の主張を正当化する理論的背景として、トーマス・J・サージェントの経済理論を挙げています。たしかにサージェントは、歴史的事例を引きつつ、金融政策の転換が人々の予想に影響を与え、インフレを抑制したと論じています。しかし、注意すべきは、サージェントの理論はインフレ対策に関するものであり、彼が歴史的実例として引いているのもインフレ退治の事例だということです。つまり、サージェントはデフレ・レジームの議論をしているのです。岩田氏は、このサージェントの理論がデフレ対策にも応用できるとしているのですが、それが可能であるかは疑問であることはすでに論じたとおりです(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、186頁)。
中野剛志
デフレ脱却は、金融政策だけではなく、あらゆる手だてを総動員するレジーム・チェンジでなければ成し遂げられないのです。日銀だけが「インフレ・ターゲティング」政策を導入して金融緩和を行っても、単なる焼け石に水に終わるのではないでしょうか(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、188頁)。
反論に対する反論
田中秀臣
実際、ニュージーランドなどでデフレ退治に成果を上げている。また、デフレ予防のため、各国ともインフレターゲットに上限だけでなく、下限の数値目標を入れており、このことからも高インフレ対策と同時にデフレ対策としても機能していることがわかるだろう(田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、16頁)。
ベン・バーナンキ
バーナンキの背理法は、もし日銀が通貨を発行してもインフレが起きないとしたら、日銀が日銀券を発行することで世界中の資産を買い占めることができてしまう。そんなことはありえないから、インフレが起きないという前提が間違っている。だからインフレが起きるというわけです(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、115頁)。
岩田規久男
銀行が貸出を増やさないからマネーが増えないと思っている人は少なくないが、銀行が証券を買えばマネーは増えるのである(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、258頁)。
岩田規久男
どんなに長期国債の買いオペ額を増やしていっても、インフレが起こらないというものである。仮にそうであれば、日本銀行は約四〇〇兆円存在する長期国債をインフレを起こさぬままに買い切ってしまうことができる。(中略)それだけマネーが溢れてもなおインフレが起こらない状況はあり得ない、と考えるのが経済学の常識であり、歴史が教えるところである(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、262-263頁)。

ハイパーインフレ懸念

田中秀臣
「岩石理論」とは「それまで斜面で止まっていた岩石を押して転がすと、すぐに加速して止められなくなり、猛スピードで転がって斜面の下の住民を押し潰してしまう」というもので、「デフレからハイパーインフレへの瞬間的なジャンプ」を主張する理論です(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、246頁)。
岩田規久男
インフレ・ターゲットを採用している中央銀行は、すべてインフレ率をほぼターゲットの範囲内に維持しており、ハイパー・インフレを起こした国は存在しない(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、262頁)。

設定数値について

岩田規久男
この政策を採用すると、ハイパー・インフレに発展する危険性があると危惧されるかも知れない。しかし、その危険性はインフレ・ターゲットに上限を設定する(われわれの提案では3%)ことによって回避できる(岩田規久男編著 『昭和恐慌の研究』 東洋経済新報社、2004年、288頁)。
森永卓郎
インフレターゲットというのは、物価上昇率の目標圏を設定するものであって、その範囲の上限を超えれば、今度は逆に金利を上げるか資金供給を絞って物価上昇率を下げるように誘導します。そのためにも目標圏の設定するわけです(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、135頁)。
森永卓郎
だから高めに出てくる消費者物価指数の上昇率をインフレターゲットにする場合は、ゼロを目標にはできません。消費者物価上昇率がゼロの場合は、本当の物価上昇率はマイナスだからです。逆に、一-三%程度の物価上昇率を目指すということは、実際には物価は変わらないか、ほんの少しの上昇にしましょうということなのです(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、134頁)。
岩田規久男
インフレ・ターゲットとしては、下限一%、上限を三%程度に設定することを提案する(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、258頁)。
岩田規久男
岩田規久男は、具体的なインフレ目標として、消費者物価指数の前年比上昇率が1年後に1%、2年後には3%と、期限を切って設定する必要があるとする(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、99頁)。
ジョセフ・E・スティグリッツ
日本で議論されている目標は最低限のインフレ率の実現をめざすもので、インフレを高進しないように上限を目標に据えた他国のケースとは異なる。例えば三%程度のインフレ率を目標にするのが良いのではないか(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、96頁)
国際通貨基金(IMF)
その月に公表されたばかりの国際通貨基金(IMF)のリポートでは、「4%を目標にしたほうがいい」とされている(高橋洋一 『高橋教授の経済超入門』 アスペクト、2011年、56頁)。

期待インフレ率の応用

片岡剛士、田中秀臣
いくつかの指標があるのだが、代表的なのはBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)だ。ただしBEIはその都度の株価などの変動に大きく影響をうける。そのためある一定の期間でその動きをみる必要がある(田中秀臣編著 『日本経済は復活するか』 藤原書店、2013年、331頁)。

注意点

田中秀臣
経済学の目標というのは、実質GDPの水準を拡大することと、雇用の改善。それだけですよ。インフレ目標はあくまで経済成長や雇用の安定という最終目標との関係でいえば、中間目標です(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、54頁)。
田中秀臣
そもそも、インフレ目標がなぜ2%なのかといえば、経済学的に言えば、デフレに落ちない程度の余裕を持たせるということで、1・5%でも、完全雇用水準で、経済が安定していてデフレに陥らない保証があればそれでいい。1・5%でもいいし、1・7%でもいい。逆に言うと、2%を超えてもいい。4%でも5%でも。完全雇用とインフレ目標の関係を伸縮的に考えるのが、本来のインフレ目標政策の在り方です。あくまでも完全雇用が主(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、55頁)。
田中秀臣
インフレ目標は、あくまでも中間目標であって、最終的な目標は、実質GDPや雇用の改善。言葉としては「目標」と入っているけれど、手段であって中間目標です。しかも、この中間目標は、現在のFRBも日銀もそうですが、ある程度の幅を持っている。これって厳密に目標の設定を考えていないということで、あとは雇用や経済状況を見て裁量的に金融政策はやる、ということなんですよね。インフレ目標は、厳密なルールではなく、いわばルールと裁量が組み合わさった伸縮的なものなんです(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、57頁)。
高橋洋一
インフレ率は、是が非でも上げなければいけないというものではない。雇用達成で、インフレ率が上っていなければ、むしろ褒められるべきことです。もちろん、給与の話を考えれば、インフレ目標に達していたほうがいいですけれど、雇用に絞って、そこだけで評価すればいい(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、58頁)。
田中秀臣
インフレ目標は是が非でも追求しなければいけないものなんですよ。そうでないと期待をコントロールする政策として失敗してしまい、それが雇用や経済成長を不安定なものにします。僕がインフレ目標絶対主義を避けるべきといっているのは、あくまでもゴールを達成するための中間地点であるということを忘れるな、ということです。ただ中間地点を求めることをやめてしまうとそれはインフレ目標の政策効果をすべて失ってしまうので、そこは是が非でも追求しないとダメです(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、58-59頁)。

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