経済・経済学に関するメモ。

岩田規久男
対外直接投資の増加の結果、地域から製造業を中心とする産業がなくなってしまうことを産業空洞化といいます(岩田規久男 『景気ってなんだろう』 筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉、2008年、103-104頁)。
森川友義
日本の労働賃金の上昇の上昇とともに、日本の企業は、より安価な労働力を求めて、中国やベトナムといった国に拠点を移して製品をつくりはじめました。しかし、そうすると、日本の雇用状況は悪くなります。工場を移した分だけ、国内の従業員が減ってしまうのですから。これがいわゆる「産業の空洞化」(とくに1980年代の急速な円高により、企業が安い労働力を求めてアジア諸国に生産拠点を移したために起こった、国内の生産縮小と雇用減少を指す)という現象です(森川友義 『どうする!依存大国ニッポン』 ディスカヴァー・トゥエンティワン〈ディスカヴァー携書〉、2009年、46頁)。
森川友義
「産業の空洞化」とは、天然資源や安価な労働力を求めて民間企業が海外に生産拠点を移すといった問題ですが、拠点を移すといった問題ですが、拠点を移すかどうかは個々の企業の合理的意思決定に基づいて行われているものであり、また天然資源に恵まれないというわが国の特殊な事情と世界でも有数の高賃金労働力という現実を踏まえると、企業のミクロの意思決定が日本というマクロレベルに影響を与えているという構図であっても、政治の力でこれを食い止めるというのは、なかなかむずかしくなります(森川友義 『どうする!依存大国ニッポン』 ディスカヴァー・トゥエンティワン〈ディスカヴァー携書〉、2009年、64頁)。

反論

野口旭、田中秀臣
この「高コストだから空洞化する」といった推論は、じつはそう述べる論者自身が、比較優位を十分理解しておらず、絶対優位に基づく思考に陥っていることを示しているのである。というのは、「各国の同一産業における絶対的な生産性=実質生産コストの格差は、必ずしもそれぞれの国の生産および輸出の妨げにはならない」ということこそが、まさしく比較優位の本質だからである(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、88頁)。
伊藤修
「中国の人件費によって日本の一〇分の一、二〇分の一なので勝負にならず、日本は空洞化してしまう」といったことはありえないのである(実際には最近コスト差は大幅に知事縮まっている)。たとえコストが一〇〇分の一だったとしても、そんな状態はつづかず、「全面敗退」はありえない。現に中国は日本から巨額の輸入をしている(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、181頁)。
伊藤修
しかし日本経済全体でみれば、ふつう他の産業が代わりに拡大し、空洞化には直結しない。(中略)本当の問題は、縮小する産業から拡大する産業へ労働力などが移動しなければならないことであり、それは簡単ではないことである(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、180頁)。

対策

大和総研
今後、日本経済が高い成長を遂げるためには、技術革新を牽引役としなければならないのです。それによって、空洞化の痛みも緩和されますし、産業構造のいっそうの高度化が実現可能となるわけです(大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、121頁)。

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