経済・経済学に関するメモ。

西村和雄
重商主義とは、16世紀から18世紀の欧州では、重商主義の経済政策が採られていた。重商主義によれば、富とは金や銀の貨幣である。輸出を増やし、輸入を減らして、貿易黒字を生み出すことで、国家の富を増大することができる(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、272頁)。

思想・体系

松井彰彦
隣国が発展すると、その脅威におののく人々が出てくる。一七、一八世紀のイギリスでも似たような発想から、重商主義という経済思想が形成された(日本経済新聞社編著 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、142頁)。
伊藤元重
重商主義の最も中心的な考え方は、輸出はその国に貨幣をもたらすが、輸入はもたらさないので、輸出は好ましいが、輸入はあまり好ましいことではないというものです(伊藤元重 『はじめての経済学〈上〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、28-29頁)。
竹中平蔵
ひとことで言えば、重商主義とは貿易黒字至上主義だと考えればいい(竹中平蔵 『経済古典は役に立つ』 光文社〈光文社新書〉、2010年、37頁)。
橘木俊詔
のちになって重商主義にとってかわる経済政策や経済思想は学問的なバックグラウンドを保持しながら特定の主義を主張したのであるが、重商主義はこれを明確み主張した学説なり思想を背後にもっていたものではない。むしろ当時の経済現象、すなわちヨーロッパの王国が絶対主義を背景にして、軍事力を駆使して植民地との貿易を通じながら、国富を増大させるような政策をとったことが重商主義と称されるものである。あるいは学問のがまだ発達しておらず、政治や経済の現状だけが先走ったとも言える(橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、10-11頁)。
野口旭
歴史的な順序からいえば、重商主義こそが国際競争主義の元祖であったというべきかもしれません(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、63頁)。

重金主義

中矢俊博
国家は税制優遇や補助金などで輸出を奨励し、関税によって輸入を抑制することで貿易黒字を生み出し、金などの流入を促進させました(中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、13頁)。

アダム・スミスによる批判

アダム・スミス
軍艦の後ろ盾を持ち世界各地から金銀を集めるのが国を富ませる道だと説く重商主義を批判し、産業革命ないし産業育成が国の富む基本だということを『国富論』で述べている(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、45頁)。
アダム・スミス
富の源泉は労働だということを明示的に示している。つまり、重商主義がいうように貿易差額(黒字)で金銀を稼ぐことが富の源泉なのではなく、労働こそ富の源泉であるという、世の中の基本的な視点が冒頭で書かれている(竹中平蔵 『経済古典は役に立つ』 光文社〈光文社新書〉、2010年、45-46頁)。

ケインズの見解

根岸隆
ケインズは当時の支配的な経済学により否定されていた重商主義を「復権と尊敬とに値する」と主張しているのである。(中略)重商主義者は、その後の経済学者たちと異なり、この需要不足の問題を直感的に理解していたのだとケインズは考える。輸入額より輸出額が大きいという正の貿易差額は、いわば外国への投資であり、わが国の生産物への追加的な需要である。(中略)また、正の貿易差額による金の国内への流入は、金本位制のもとでは国内への貨幣の供給を増加させる。(中略)このように重商主義政策は実はケインズ政策、つまり有効需要確保の政策だったのである(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、249-251頁)。

現代の重商主義

橘木俊詔
重商主義は絶対王政の存在と植民地主義の下での経済思想なので、現代ではこの二つの条件を有している国はほとんどない。したがって、伝統的な意味での重商主義の役割は非常に小さい。しかしながらその政策や目的、たとえば貿易によって利益を得る、輸出を増大させるという重工主義などは、重商主義以降も生き続けた(橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、14-15頁)。
若田部昌澄
世間一般には重商主義はいまだに圧倒的な学説だ(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、150頁)
西川潤
重商主義は、国内の過剰生産を解消するとともに、貿易による収入を投資に向けて、経済成長の道を歩み出す上で有効な政策であった。今日のアジア発展途上国と高度成長期の日本も、このような輸出主導型成長の道を歩んできた(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、109頁)。

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