経済・経済学に関するメモ。

飯田泰之
累進課税 課税の対象となる収入が多いほど、税率も高くなる税制(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、208頁)。
小塩隆士
直接税の代表選手である所得税は、所得の高い人ほど税率が高い、つまり高所得者ほど多くの社会的貢献を求める仕組みになっています。これを税の累進性といいます(小塩隆士 『高校生のための経済学入門』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2002年、194頁)。

経済学の見地

ハル・ヴァリアン
経済学者が累進課税のメリットをあまり評価しない理由を、経済学者のハル・ヴァリアンはこう説明する。現実の世界では、収入は本人の生産性と税率だけで決まるわけではない。たとえば運もある。(中略)運がよかっただけで高収入を得ている人は、累進課税で高い税率を課せられても働き方を変えるわけではない。したがって税の効率性は損なわれないはずだ。むしろ、たまたま得た収入に課税するのは当然ではないか。それなのに従来のミクロ経済学者は、運が大切な要因であることを見過ごしている。だから、最適税率に関しても見込み違いしている可能性が高いのだとヴァリアンは指摘する(トーマス・カリアー 『ノーベル経済学賞の40年〈上〉-20世紀経済思想史入門』 小坂恵理訳、筑摩書房〈筑摩選書〉、2012年、162頁)。
ミルトン・フリードマン
格差是正を狙いとした累進所得税制が、実態的に格差是正に寄与していないことを明快に示した。確かに、表面税率では高所得者ほど高税率になる仕組みだが、負担軽減措置や節税の余地があるため、実効所得税率(=実際に払った所得税率÷所得額)はある所得水準以上になると下がってくる。「累進課税はむしろ富を保護する税制」と皮肉った(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、101頁)。

ビルト・イン・スタビライザー

田中秀臣
たとえば経済が過熱すれば税収が伸びることで経済を鎮静化させ、また経済が停滞しているときは経済を回復させる効果を所得税はもつ(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、85-86頁)。

累進課税強化による経済成長促進効果

飯田泰之
90年代のアメリカに安定的成長をもたらした原因のひとつは、ビル・クリントン政権が累進課税をきつくしたことです。(中略)強めの累進の坂が、景気の乱高下を防ぐんです(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、192頁)。

労働意欲への影響

伊藤元重
過度な累進性の下ではより多くの所得を税負担が高くなることになり、労働意欲を阻害する結果にもなりかねません(伊藤元重 『はじめての経済学〈下〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、36頁)。

雇用への影響

ハマメッシュ、スレムロッド
ハマメッシュ教授とスレムロッド教授は、高所得層ほどワーカホリックになりやすいのであれば、累進所得税をかけることがワーカホリック対策として有効であると主張している(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、183頁)。
大竹文雄
日本の所得税の累進度は九〇年代後半から低下してきた。長時間労働が問題になりだしたのも九〇年代後半からである(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、183頁)。

日本

飯田泰之
加えて他の先進国並みの累進課税率を適用することで、成長による税収増はもっと大きなものになるでしょう(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、225頁)。
小泉祐一郎
「ビルトイン・スタビライザー」と呼ぶ。(中略)日本ではこの機能が低下している。なぜならば、累進課税の累進度を低下させてきたから(小泉祐一郎 『図解経済学者バトルロワイヤル』 ナツメ社、2011年、136頁)。
田中秀臣
所得税の最高税率は、1986年まで約70%だったのが、段階的に引き下げられ、1999年には37%にまで下がった。最近では多少上げている。累進税率を引き下げることで、所得税の経済安定化効果を損なってしまった(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、85頁)。
八田達夫
所得税率が高いために自発的に悠々自適の生活に入る人は少ない。高い所得税率はフルタイム労働者の労働供給をほとんど抑制していないといえよう。(中略)所得税率の引き上げは財政再建の有効な手段になりうる(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、199-200頁)。
三和総合研究所
従来の所得税制には、働き方によって所得の捕捉率が異なる問題(いわゆるクロヨンなど)が指摘されており、必ずしも税負担が公平・平等であるとはいい難いのである(三和総合研究所編著 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、204頁)。

代替案

竹中平蔵
かつて竹中平蔵は累進税は不公平であるとして人頭税導入を主張していた(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、208頁)。

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