経済・経済学に関するメモ。

大竹文雄
高度の技能をもった移民を受け入れ国にプラスの影響を与えることを否定する経済学者はほとんどいない(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、208頁)。
大竹文雄
外国人労働者と国内労働者が同質的であって、同じような仕事をしているのであれば、外国人労働者の増加は国内労働者の賃金を引き下げる。しかし、その場合でも、国全体からみると便益がある可能性が高い。それは、機械や設備といった資本が労働とはある程度補完的だからだ。外国人が増えると、増えた労働力を完全に雇用するためには賃金が低下することになる。もし、資本と労働が補完的であれば、低賃金でより多くの労働を雇って生産量を増やすに伴って資本への需要が増える効果が発生し、資本所得が増加する。つまり、国民にとってみると、賃金所得が低下した効果と資本所得が増加した効果の両方があり、資本所得が増える効果のほうが大きいことが知られている。したがって、外国人労働の増加による便益は、所得分配を変化させるが、日本人の所得を増加させるので、適切な所得再分配政策があれば、日本人全体は外国人労働の増加によって便益を受けるのである(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、203頁)。
大竹文雄
日本人労働者が高度な労働を行い、外国人労働者が単純労働をしていて両者の労働が補完的であれば、単純労働者の外国人労働者の増加は、高度な労働をしている日本人労働者の賃金を引き上げることになる。ただし、日本人の単純労働者と外国人労働者が代替的であれば、単純労働をしている日本人労働者の賃金が下がることになる。つまり、日本人労働者内での賃金格差が拡大する。逆に、高度人材に絞った外国人労働者の増加は、日本人の高度技術者の賃金が低下することになるが、単純労働者の賃金を引き上げることになり、両者の賃金格差は縮小することになる。(中略)高度労働の外国人労働者であれば、高い所得で税金を支払ってもらえる上に、福祉への依存もが低いと予想でき、イノベーション促進による経済成長を高める効果も期待できる(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、204-205頁)。
中野剛志
移民といっても単なる労働力ではなく、文化を背負った人間です。したがって、移民を大量に受け入れるに当たっては、文化的な摩擦を必ず発生します。特に不況になり、失業が増大すると、トラブルは深刻化します。移民を率先して受け入れてきたヨーロッパでも、近年、さまざまなトラブルが発生しおり、移民政策が成功したとは必ずしも言えないのではないでしょうか。いずれにせよ、移民政策は、労働力の補填という単純な経済の問題ではなく、もっと慎重な検討を要する問題だということです(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、95頁)。

アメリカ

マイケル・サンデル
多くのアメリカ人がおそれているのは、大勢のメキシコ移民をアメリカに受け入れると、公共サービスにかかる負担がかなり重くなり、既存の国民の経済的な豊かさが損なわれることだ。この懸念が正当化できるかははっきりしない。(中略)生まれる場所は偶然であって、資格の理由にはならないから、豊かさを守るためという名目で移民の規制を正当化するのは難しい(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、299頁)。

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