経済・経済学に関するメモ。

間接金融

岩田規久男
個人が投資信託を購入する場合は、間接金融に分類されます(岩田規久男 『日本経済にいま何が起きているのか』 東洋経済新報社、2005年、48頁)。

直接金融と間接金融

三菱総合研究所政策経済研究センター
金融活動は一般に、「直接金融」と「間接金融」という2種類に分けることができます(オフィステクスト・三菱総合研究所政策経済研究センター 『手にとるように経済がわかる本』 かんき出版、2009年、160頁)。
内田勝晴
家計が直接、社債や株券、国債などを買うことにより、貯蓄が企業や政府に移り、貯蓄の相殺が行われる。これを直接金融という。また、家計が銀行など金融機関におカネを預け、企業や政府がその金融機関からおカネを借りる場合もある。これは間接金融だ(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、50-51頁)。

各国の傾向

小塩隆士
直接金融と間接金融のどちらが重要かは、国によっても異なります(小塩隆士 『高校生のための経済学入門』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2002年、166頁)。
河野龍太郎
資金調達構造は、日本が間接金融中心であるのに対して、米国は直接金融中心だといわれる。多くの人は、こうした両国の経済システムの違いに注目する。したがって、一方を高く評価している時には、他方を否定的に捉える。(中略)しかし、時期によって好不調はあるにせよ、日米両国ともに、他の国々と比べると、経済はうまく機能してきたといえる(ダイヤモンド社編著 『日本経済の論点いま何が問題なのか』 ダイヤモンド社、2004年、126-127頁)。
河野龍太郎
一国経済の経済システムは、それぞれの国のこれまでの経済事情によって、他の国と異なるのが普通である。法律、税制など様々な制度に大きく依存している。このため、経済システムの評価は、は長期的視野に立って行われるべきものだが、これまで見たように景気循環と同じく極めて短期的視野で評価されやすい。一見、合理的でないように見える慣行が存在しても、長期で見れば、経済的に合理的な慣行であることも多い。不況期に「システムがおかしいから、それをドラスティックに変えよう」と安易に言うべきではない(ダイヤモンド社編著 『日本経済の論点いま何が問題なのか』 ダイヤモンド社、2004年、127頁)。

日本

戦前からバブル崩壊まで
三菱総合研究所政策経済研究センター
日本では戦前から、銀行に代表される「間接金融」が中心となっていました。(中略)これは当時の政府が、銀行を主軸にした金融システムをつくり上げようとしたためです。資金をできるかぎり銀行に集めて、それを日本経済のために重要と思われる産業に重点的に供給されるようにしたのです。これは、戦後の経済復興や高度経済成長に大きな役割を果たしました(オフィステクスト・三菱総合研究所政策経済研究センター 『手にとるように経済がわかる本』 かんき出版、2009年、160、162頁)。
三橋規宏、内田茂男、池田吉紀
日本経済が欧米へのキャッチアップを急いでいた時代には、銀行を通じて資金を企業に流す間接金融方式が大いに力を発揮した(三橋規宏・内田茂男・池田吉紀編著 『ゼミナール日本経済入門』 日本経済新聞出版社・第24版、2010年、258頁)。
岩田規久男
護送船団行政の下で、確かに戦後長い間、日本では銀行は一行も倒産しなかった。その意味で銀行経営は安定していたから、預金者は預金の安全性を気にすることなく、安心して預金することができた。他方、銀行は大量に預かった預金を原資として、企業に融資し、戦後の高度成長とその後の安定的な成長に寄与したと言えるだろう。しかし、それがもたらした弊害も大きかった。「銀行を一行たりともつぶさない」ということは、費用ばかりかさんでサービスの悪い銀行でも生き残ることを意味する(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、67頁)。
岩田規久男
戦後、大蔵省は長期資金が著しく稀少になったため、都市銀行や長期信用銀行を直接的、間接的に行政指導することによって、起債市場を通ずる資金配分の量や価格(金利)、起債銘柄を厳しく規制した。(中略)長短金融分野規制の下で、企業の起債は厳しく制限されたから、債券を発行することによって資金調達できる企業は限られていた(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、69頁)。
岩田規久男
長期信用銀行、なかでも最も大きな政治力を持っていた日本興業銀行は、長い間、起債規制の緩和に強く抵抗(つまり、レント・シーキング活動)し続けたのである。そのことが日本における起債規制の緩和を大きく遅らせ、社債市場の発達を妨げた(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、69-70頁)。
川村雄介
80年代頃から日本経済は成熟化し、構造的な低成長になるとともに経済・金融のグローバル化が著しく進んでいきました。(中略)もはや間接金融中心の金融のしくみは、時代遅れになってしまいました(川村雄介 『図解雑学 日本の金融 (図解雑学)』 ナツメ社・改訂新版・第2版、2007年、144頁)。
岩田規久男
八〇年代の初めの外国為替管理法の改正と八〇年代半ばの起債規制の緩和が挙げられる。これらの措置により、外債による資金調達が自由化されると共に、国内での転換社債や新株引受権付き社債の発行も自由化された。これらの金融自由化によって、主要企業の社債発行による資金調達比率は、八五年から八九年にかけて、八・五%から一七・四%に上昇した(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、117頁)。
岩田規久男
八〇年代に入って起債市場が自由化されるにつれて、長期貸出は起債と競合するようになり、大企業は社債の発行によって資金を調達するようになった。業績がよく、市場で名声を確立した大企業にとっては、煩わしい審査を受ける銀行からの借り入れよりも社債発行の方が金利も安く便利な資金調達だったのである(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、70頁)。
松原聡
そんな日本の金融機関の弱点があらわになったのは、バブル崩壊後でした。(中略)さらにバブル期に、銀行は融資先の支払い能力をろくに審査せず資金を貸し出していたため、多額の不良債権を抱えました。護送船団方式の金融システムでは、とても処理しきれない額だったのです(松原聡 『日本の経済 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!)』 ナツメ社、2000年、116頁)。
野口旭
一部の論者は、バブルよりもむしろ、「間接金融の偏重」という、従来の日本の金融システムにおける「構造問題」の存在を指摘しています。つまり、日本の資本市場は、直接金融ではなく間接金融に過度に依存しすぎていたのであり、そのことが、バブルとその崩壊による経済的攪乱を増幅させたというわけです(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、144頁)。
金融ビッグバンとその後
川村雄介
バブル崩壊により、銀行の受けた打撃まで横並び。政府は従来の金融行政の見直しを迫られた(川村雄介 『日本の金融 (図解雑学)』 ナツメ社・改訂新版・第2版、2007年、143頁)
三菱総合研究所政策経済研究センター
そこで政府は90年代後半に「金融ビッグバン」と呼ばれる金融制度の大改革をスタートさせました(オフィステクスト・三菱総合研究所政策経済研究センター 『手にとるように経済がわかる本』 かんき出版、2009年、162頁)。
川村雄介
「日本版金融ビッグバン」によって起こった金融に関する変化は、一言で言うと「貯蓄から投資へ(間接金融から直接金融へ)」という流れだと言えます(川村雄介 『日本の金融 (図解雑学)』 ナツメ社・改訂新版・第2版、2007年、24頁)。
松原隆一郎
間接金融優位を直接金融優位へと転換させる政策として、金融自由化と護送船団方式の解体が行われた(ダイヤモンド社編著 『日本経済の論点いま何が問題なのか』 ダイヤモンド社、2004年、77-78頁)。
飯田泰之
近年では自力モデルだけで成長するのは難しくなってきている。これは貸出先、投資先の国際化が進んでいるからだ。仮に貯蓄が増えても、それが国内の投資先に向かうとは限らない((飯田泰之 『世界一わかりやすい 経済の教室』 中経出版〈中経の文庫〉、2013年、131頁)。
岩田規久男
戦後、八〇年代までは、銀行型間接金融中心の企業金融が大きな問題を抱えることなくすんだのは、経済全体が右肩上がりで、全体として貸倒れのリスクが小さかったからである。(中略)これからの企業金融は銀行がリスクの大半を負担するのではなく、個人投資家や機関投資家が広く薄くリスクを負担し合う構造に変化すべきである(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、264-265頁)。
竹中平蔵
高度経済成長期においては、企業にいかにお金を安定的に回すかが非常に重要でした。その時期、企業が設備投資さえすればGDP全体が高くなり、家計も潤うという循環があったからです。そのため、銀行が企業に安定的にお金を流す間接金融の制度にも大きな意味がありました。もちろん、これは今日でも重要なことですが、その一方で、個人の金融資産の利回りを上げる必要も出てきました。つまり、金融における資産運用面の役割が、より重要になってきたというわけです(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、71頁)。
大和総研
企業で見た場合、多くの新興企業は土地などの担保物件を持っていませんので、外部から資金調達をする必要があります。しかし、間接金融優位の日本は、開業資金の調達が相対的に難しくなります(大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、122頁)。
森永卓郎
日本は欧米に比べて間接金融の比重が高いのは事実です。しかしそれは、中小企業が多いという日本の産業組織と不可分に結びついているものです。そして、世界中どこを見ても、中小企業は間接金融で、大企業は直接金融というのが大まかな分担になっています。中小零細企業は、間接金融に頼らざるをえないのです(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、90頁)。
森永卓郎
間接金融を守る以外に、日本の中小企業を守る手だてはないと思います。にもかかわらず間接金融から直接金融に持っていけという人は、ベンチャー以外の中小企業はみんなつぶれてしまえと思っているとしか考えられません(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、93頁)。
松原隆一郎
金融自由化と銀行と証券会社が同じ土俵で競争にさらされるようになっても、現金や預金など安全性資産ばかりが保有されている(ダイヤモンド社編著 『日本経済の論点いま何が問題なのか』 ダイヤモンド社、2004年、78頁)。
三菱総合研究所政策経済研究センター
日本における最近の金融活動の特徴は、「直接金融」の比重が高まっていることです(オフィステクスト・三菱総合研究所政策経済研究センター 『手にとるように経済がわかる本』 かんき出版、2009年、160頁)。

ヨーロッパ

松本保美
一般に欧州企業の資金調達は間接金融の比率が高いので、不良債権が増大する可能性が高い。(中略)欧州の銀行は2008年以降軒並み貸し渋りに入っており、世界経済は今後為替市場の崩壊、株安、需要減退から縮小に向かうのは確実である(安藤潤・塚原康博・得田雅章・永冨隆司・松本保美・鑓田亨 『平成不況』 文眞堂、2010年、58頁)。

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