経済・経済学に関するメモ。

松原聡
プライマリーバランスとは、「税収等(歳入から公債金収入を除いた額)から」、「一般歳出等(歳出から借金の返済や公債金収入を除いた額)」を引いたものです(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、108頁)。

概要

三菱総合研究所
プライマリー・バランス(基礎的財政収支)とは、税収から、利払費を除く政府の支出(政策経費)を引いたいわば政府の本業に伴う単年度の収支のことだ。(中略)もしプライマリー・バランスが収支ゼロであれば、公共サービス提供のための支出を税負担でちょうどまかなえることを意味する(三菱総合研究所編著 『最新キーワードでわかる!日本経済入門』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2008年、154頁)。
UFJ総合研究所調査部
プライマリー・バランスが財政破たんに陥るリスクをを回避するために重要なチェック指標ともなるからです(UFJ総合研究所調査部編著 『50語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2005年、184頁)。
森川友義
プライマリー・バランス(基礎的財政支出)というのは、元利合わせた国債費を除く歳入と歳出の差のこと。プラスになれば、借金はこれ以上増えないので、いずれは返せるという前提になります。景気の上下によって歳入が変わるために、年ごとに返済額は変わりますが、何十年、何百年かかろうが、いずれは返せるという目途になります(森川友義 『どうする!依存大国ニッポン』 ディスカヴァー・トゥエンティワン〈ディスカヴァー携書〉、2009年、123頁)。

名目成長率および金利との関係

竹中平蔵
GDPの名目成長率が名目金利より大きいという条件の下では、基礎収支のバランスさえとれば、財政の破綻は防ぐことができます(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、116頁)。
竹中平蔵
通常の場合、金利よりもGDPの伸びは高いので、財政健全化が進むことになるのです。しかしもし、金利を支払う前の段階で財政収支が赤字になっていると(つまりプライマリーバランスが赤字のままですと)、GDPに対する国債残高の比率もどんどん高くなり、それが続けば、財政は完全に破綻する懸念が高まるのです。つまり重要な点は、金利を支払う前の財政収支をゼロ以上にして、これ以上国債残高が増えないようにすることなのです。金利のほうが成長率よりも高い状態になるとこのとおりにはいきませんが、通常はこれが満たされると見れば、とにかく最低限、金利分以外に新規に国債を発行しないようにすれば、借金の負担は年々相対的に減ることになります(竹中平蔵 『あしたの経済学』 幻冬舎、2003年、182-183頁)。

日本

松原聡
2007年度予算では「税収等」が57.5兆円、「一般歳出等」が61.9兆円なので、プライマリーバランスは4.4兆円の赤字となっています(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、108頁)。
原田泰、大和総研
政府は、国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させる目標を掲げている。小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫の各内閣で達成期限を2011年度としていたが、世界的な金融危機と厳しい不況により、麻生太郎内閣では目標を先送りせざるを得なくなった(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、41頁)。

識者の見解

松原聡
プライマリーバランスを黒字にしても、そこから国の借金を減らしていくのはかなり難しいと思われます。借金547兆円を返済するには、仮にプライマリーバランスを毎年10兆円ずつ黒字にしても、約55年かかることになってしまいます。しかも、これは金利ゼロの状態が続いた場合で、金利が上がれば、さらに膨大な時間がかかることになるのです(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、108頁)。
岡部直明
OECDの国々で財政の目標をプライマリー・バランスに置いている国は、日本以外にどこもありません。国債の利払いや発行も含めた通常の財政収支のGDP比、それに、長期債務残高のGDP比が国際比較の基準になっているわけです。(中略)財政の出口戦略としては、財政目標をプライマリー・バランスではなく国際基準に見合った目標に変えていくことが肝心です(岡部直明 『ベーシック日本経済入門』 日本経済新聞社・第4版〈日経文庫〉、2009年、107-108頁)。
田中秀臣
プライマリーバランスは簡単に言うと、「税収マイナス政府支出」のことでしかない。この数字自体が黒字になろうが赤字になろうが、ほとんど大きな意味はない。政府の財政を個々の家計にたとえると、ある期限まで給料(税収)よりも支出のほうが大きく赤字が続いても、ローンを組み、あるいは資産を売却すればそれで話が済んでしまう。個々人でいえば、もちろんこのローンの返済がちゃんとできないのであれば、破産のリスクが増えるだろう。実は国の経済でも破産のリスク(財政危機)のメカニズムは同じだ(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、34頁)。
田中秀臣
この財政危機を回避するには、プライマリーバランスに注目するのではなく、名目金利と名目GDP成長率に注目するのが経済学の標準的な考え方である。名目金利のほうが名目GDP成長率よりも高ければ、「国債の新規発行分と名目GDPの比率」は整合性を失い、財政危機がやがて訪れる。他方で、名目GDP成長率のほうが名目金利よりも高ければ、この財政危機は回避される。これを「ドーマー命題」という。要するに、経済成長ができていれば財政危機に陥る可能性は少ない、ということだ。家系でいえば、借金をする金利よりも給料の伸び率のほうが大きいので、年数が経てば新たな借金をすることがなくなることを意味する。既存の借金もやがて減少していくだろう。名目金利と名目GDP成長率だけに原則として注目すればいいので、プライマリーバランスが黒字だろうが赤字だろうが財政危機には関係ない(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、35頁)。

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