経済・経済学に関するメモ。

経緯

森永卓郎
ワークシェアリングは、アメリカのようなアングロサクソン型の市場原理には馴染みません。基本的にはヨーロッパ型の社会民主主義の中で生まれた発想です(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、152頁)。

インサイダー・アウトサイダー理論

条件

大竹文雄
緊急対応型のワークシェアリングが従業員に受け入られるかどうかは、その企業の従業員のタイプがどういうものかということに大きく依存している。第一に、安全志向が強い従業員が多いかかどうか。第二に、生活水準を一時的に下げることに抵抗が少ない従業員かどうか。一度つくった生活習慣に固執するタイプの従業員がこれを受け入れることは難しい。第三に、高齢者が多いかどうか。(中略)これ以外には、人員整理の順番が明確になっていないこともワークシェアリングの導入には重要である(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、171頁)。

効果

大竹文雄
緊急回避的な一律賃金カットは、企業にとっては、解雇による従業員の技能の喪失を防ぐというメリットをもっている。(中略)従業員にとっては、賃金がゼロになるか、現状の賃金を維持できるかという一種のギャンブルである解雇に直面するよりは、確実に雇用は保障されるけれでも賃金が低下するという一律賃金カットのほうが安心である(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、165頁)。
大竹文雄
一律賃金カットを受けた従業員のなかには、他の企業において現在の賃金水準とほぼ同じ代替的な雇用機会にに恵まれるものも存在する。そうした従業員にとって一律賃金カットは離職を促すもとなり、優秀な従業員だけが転出してしまうということになりかねない。(中略)同率の賃金カットと解雇は、企業にとって同じだけの人件費削減策にならない可能性がある。(中略)人々が賃金を自分の能力に対する評価だと考えていれば、賃金が引き下げられると、あたかも自分の能力が低く評価されたと受け止め、労働意欲をなくしてしまう可能性がある(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、166-168頁)。
竹中平蔵
ワークシェアリングは、ある意味で優秀な人材もそうでない人材も同様に雇用することを意味しており、資源の有効配分という視点から見ると、それほど優れた制度とは言えない。あくまで、失業率が急激に高まるような場合の「緊急避難」として、必要に応じて考えるべき性格のものであろう(竹中平蔵 『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』 ぎょうせい・第2版、2001年、153-154頁)。
野口旭
日本企業は1998年ごろから本格的なリストラを進める同時に、労働者の総賃金を抑え、解雇を抑制するように努めた。これが日本流のワークシェアリングです。(中略)2001年から再び、前回をしのぐリストラの大嵐に見舞われています。ワークシェアリングは、雇用情勢を好転させる切り札ではなさそうです(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、215頁)。
田中秀臣
働く時間を正規ないし非正規問わず、シェアしろと。でもこれもまた景気がよくなるという問題とは無縁です。売り上げは同じですから、単に八時間一人で働いていた人の労働時間をふたりでわけるだけで、見た目の失業は減りますが、それで経済全体の景気がよくなるわけでもなく、みんが単に平等に貧しくなるだけで、貧しさの均衡状態が訪れるだけです(麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣 『日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕』 藤原書店、2012年、90頁)。
安達誠司
労働分配率を引き下げるための措置として、ワークシェアリングと賃下げの共有を指摘しているが、デフレが長期化し、企業経営者や労働者がデフレ予想をもちつづける限り、このような措置はモラールの低下や無力感を生み出すだけであり、かえって、日本の潜在成長率を削いでしまう結果になるのではないか(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、168頁)。
竹中平蔵
企業が常勤の人を減らすけれどもパートタイム増やします、パートタイムでも自分の思った仕事ができますということになったら、結果的に多くの人が多様なかたちで自分の希望する職に就けるようになると思うのです。私は、これが日本型ワークシェアリングだと考えています。(中略)働く側にとっても企業にとっても幸せなのは、目いっぱい働きたい人にはたくさん働いてもらう、ある一定期間だけその仕事をやりたい人には二時間やってもらう、ある一定期間だけやりたい人にはその期間内一生懸命やってもらうというように、みんなが自分のやりたい仕事を、自分の働きたい形態でできることではないでしょうか。それが本当の意味でのワークシェアリングだと思いますし、それを日本は目指すべきだと思います(竹中平蔵 『あしたの経済学』 幻冬舎、2003年、250-251頁)。

各国の背景・動向

オランダ

野口旭
10%の失業率が2%まで下がりましたが、生産性も低下してしまいました(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、144頁)。

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